| 「日司連消費者問題対策推進委員会の消費者問題に関する取り組みの現状〜クレサラ問題を中心に〜」 |
1.簡裁代理権取得によるクレサラ執務の変容
これまで、司法書士は、自己破産手続、個人債務者再生手続、特定調停手続、不当利得返還訴訟などの各種債務整理手続きについて、書類作成を主にとして、本人の後方支援という形で関与してきた。
一方、司法書士法改正により、これらの職務権限に加え、簡裁代理権が付与されることとなり、一定の範囲内ではあるが、代理人としての関与が可能となったことから、執務遂行に大きな変革が求められることとなった。
クレサラ事件に限って言えば、多重債務事案において、各社の債権額は90万円以下であることがほとんどであるため、司法書士に代理権が認められることとなり、弁護士とほぼ同様の職務権限が与えられることとなっている。
代理権がなかったこれまでにおいては、代理権がない故に、十分な債権調査を経ることなく、手続きの選択を強いられてきたが、代理権取得を機に、これまでのウィークポイントであった債権調査を徹底するべく、日司連では、「クレサラ・ヤミ金事件処理の手引き(民事法研究会)」を出版し、全国の司法書士に一定の指針を示した。
つまり、受任後、債務整理開始通知と同時に全取引過程の開示を各社に求め、債権調査を徹底する。その後、確定残債務額に応じて各種法的手続きを選択するという、言ってみれば、原則中の原則とも言える執務姿勢を基本としたのである。
もちろん、弁護士会と同様、利息制限法の遵守、将来利息の減免といった原則も呈示している。
また、本手引き書には、債権調査後の各種手続き(破産、再生、特定調停、不当利得返還訴訟など)についても、脱稿時点で考えられる諸問題についてほぼ網羅しており、経験の少ない司法書士にとっては格好の手引き書となっている。
全国に普く存在する司法書士が、当委員会の示した執務原則に則ってクレサラ事件を処理することによって、より多くの多重債務救済が可能になるものと考えている。
なお、司法書士の代理権の範囲については、業者等からの問い合わせも少なくないが、ここで改めて、司法書士法の考え方を提示しておくので、参考にされたい。
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いわゆるクレサラ事件に関する司法書士法第3条1項6号に定める「訴訟の目的の価額」等の考え方
1.民事訴訟手続
現行の裁判所法33条1項1号によれば、簡易裁判所における民事訴訟は、「訴訟の目的の価額が90万円を超えない請求」と規定しています。そして、その判断基準は、民事訴訟法の価額の算定に関する規定によります。
つまり、その価額は、「訴えで主張する利益」によって算出することになります(民事訴訟法8条1項)。この「訴えで主張する利益」とは、原告が全部勝訴の判決を受けたすれば、その判決によって直接受ける利益を客観的かつ金銭的に評価して得た額であります(以上、注釈司法書士法参照)。
従いまして、典型的には次のように考えられます。
@不当利得返還請求訴訟
請求額が90万円を超えないものについては、代理権が認められます。
A債務不存在確認訴訟
不存在を主張する額が90万円を超えないものについては、代理権が認められます。
B貸金返還請求訴訟、立替金請求訴訟に関する応訴
原告の請求額が90万円を超えないものについては、代理権が認められます。
2.特定調停手続
「調停を求める事項の価額」の算定につきましても、裁判所法33条1項1号に定める額についての算定ですから、民事訴訟法8条、9条の基準により算定され、基本的には民事訴訟手続きにおける「訴訟の目的の価額」についての算定と異なりません。
特定調停について、「調停を求める事項の価額」となるのは、申立人が受ける経済的利益です。
そして、この経済的利益とは、残債務の額ではなく、残債務額の支払免除、支払猶予又は分割払い等の弁済計画により、債務者である申立人が受ける利益と考えられています。
従いまして、例え90万円を超える貸金債権についての特定調停の申立であっても残債務額の支払免除、支払猶予又は分割払い等の経済的利益が90万円を超えない場合には、代理権が認められることになります(以上、注釈司法書士法参照)。
3.任意整理手続
一方、相談及び裁判外の和解の代理につきましては、次の要件を満たすものに限って代理権が認められています。
@民事に関する紛争であること。
A簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となる紛争であること。
B紛争の目的の価額が裁判所法33条1項1号に定める額を超えないものであること。
従いまして、特定調停事件等における代理権の範囲と同様の基準によって判断することになりますので、「紛争の目的の価額」の算定は、残債務の額ではなく、弁済計画の変更によって債務者が受ける経済的利益によることとなります(以上、注釈司法書士法参照)。
以上のとおり、問題となるのは、2.特定調停手続 3.任意整理手続における経済的利益(特に分割払いの場合における経済的利益)の算出方法であります。
これについては、次のとおり算出するものと考えられます。
(ア)例えば、300万円の債務につき、90万円を免除し、210万円を即時に一括返済をする特定調停・和解については、90万円が債務者の受ける経済的利益となります。従いまして、代理権が認められることになります(注釈司法書士法参照)。
(イ)また、600万円の貸金を3年後に一括払いする特定調停・和解については、600万円についての猶予期間に対する運用利益相当額と考えられますから、600万円×0.05(民法404条)×3年=90万円となります。従いまして、代理権が認められることになります。なお、債務者が商人である場合には、年6分の商事法定利率によると考える余地があります(注釈司法書士法参照)。
(ウ)一方、160万円の債務につき、80万円を免除し、80万円を1年8ヶ月(20回払い・毎月4万円の返済)で分割返済をする特定調停・和解については、80万円と残債務の80万円に対する猶予期間に対する運用利益相当額と考えられます。この場合は、(イ)と異なり、毎月の分割返済によって残債務額が減少してきますから、当初の一月の経済的利益は、80万円×0.05÷12=3333円となりますが、翌月分の経済的利益は、76万円×0.05÷12=3167円となるものと考えられます。
そこで、それ以降も同様に計算すると、分割払いによる経済的利益の合計額は35000円となりますので、本件の経済的利益の合計は、80万円+35000円=83万5000円となります。従いまして、代理権が認められることになります。
なお、債務者が商人である場合には、年6分の商事法定利率によると考える余地があります。
このように、特定調停手続・任意整理手続における経済的利益は、単純に残債務額の金額を基準に判断されるものではありません。残債務額の金額が90万円を超えていたとしても、司法書士が代理人となれる事案も多いと考えられますので、くれぐれもご注意ください。
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2.ヤミ金融問題に対する取り組み
本年1月1日から全面施行となった、ヤミ金融規制法の制定にあわせて、日司連では昨年「ヤミ金融被害救済の実務(民事法研究会)」を出版、脱稿時点における最先端の実務ノウハウを会員に提示した。
クレサラ対協においては、既に高水準の手引き本を出版していたが、それらの書籍を入手しているのは限られた司法書士であるのも現実であるため、日司連の編集での出版により、より多くの司法書士にそのノウハウが行き渡ることを目標にした。
ただし、一定の目的は達せられたものの、出版後もヤミ金融被害はどんどん形を変えており、最新のノウハウについては、なかなか会員に周知できていない状況であり、今後の課題と言える。
3.取引履歴を開示しない業者に対する対応
当委員会では、債権調査に関して、開示に応じない業者に対する情報を全国の会員から集約し、日司連として、監督官庁に対する行政処分を申し立てるシステムを構築中である。
4.ヤミ金融口座の強制解約等に関する対応
当委員会では、ヤミ金融口座の強制解約等につき、それらの情報を全国の会員から集約し、日司連として、財務局に報告する等のシステムを構築中である。
(平成16年1月)