法律実務家の「現場」を発信し続けることこそ最大の広報活動

  

  1.そもそも法律実務家の「広報」とは

 「広報」と辞書で引いてみると、『官公庁・企業・各種団体などが、事業内容や活動状況を一般の人に広く知らせ、理解を求めること。また、その知らせ。』とあるが、法律実務家又は法律実務家団体としての広報は、より一歩突っ込んだものでありたい・あるべきと考えている。
 すなわち、上記の定義を素直に解釈すれば、「司法書士の職務内容について」や「クレサラ110番のご案内」といったものが典型的な広報にあたると考えられるが、それだけには止まらないものを目指したいということである。
 筆者が考える法律実務家の広報とは、@法律実務家にアクセスしたいと考えている利用者の需要に応える積極的な情報提供と、A市民・国民に各種立法・法改正に係る問題について専門家としての提言・意見を明言していくこと、の二つであると考えている。
 @は、例えて言うなら、多重債務問題を抱えて誰に相談したらよいのか迷っている市民・国民に対して、「多重債務に関する法的解決メニューを分かりやすく情報提供すること」や「どのような法律家・相談窓口にアクセスすればよいのか」などを広く知らしめることである。これは、日司連や単位会、全青司や青司協で行うことも必要であるし、個人のHPなどでも簡単にできる。
 特に、「多重債務に関する法的解決メニューを分かりやすく情報提供すること」については、分かりやすくというのがポイントであると思われる。つまり、教科書に書いてあるようなことを知らしめるのではなく、実務家ならではの視点を加え、難解と思われがちである法律問題について、噛み砕いて提供することが必須ということである。  そして、多重債務問題に限らず、あらゆる分野において、これを行うことが必要であると考えられる。
 ここまでは、まったく異論はないことと思う。既に、日司連や多くの単位会のHP・個々の司法書士事務所のHPなどでも行われているところである。
 一方、Aについては、まだまだこれからの検討課題と言わざるを得ない状況にある。しかし、法律家としての役割をじっくり考えてみれば、当然のことと理解いただけるはずである。
 法律問題の現場を知る我々だからこそできる、いや、だからこそ言わなければならない、知らしめなければならないということである。
 特に、全青司や日司連のような法律家団体は、この点についてきちんと対応していく必要があろう。

2.法律実務家の活動は、当然に社会的な活動に発展する。

 法律実務家として、日々の業務に携わり、各種紛争の現場に存在し続ければ、誰でも必ず社会的な矛盾や問題点に遭遇することとなる。この点は、裁判実務に顕著ではあるが、不動産取引や会社法、成年後見の問題でも基本的には同様であると考えられる。
 その際、法律実務家としてどのような対応をするのか。この点が極めて重要となるが、安易に現状を肯認し、機械的な事務作業に流されるだけでは、もはや法律実務家とはいえない。単なる事務屋というべきであろう。
 すなわち、法律実務家の日々の業務は、当然に社会的な活動に発展すると考えられるのである。
 そうであれば、一方で、紛争解決の最前線に存在しながら、その一方では、各種法改正運動に身を投じるというのが、ごくごく自然な法律実務家のあり方と考えられるし、また責務であるとも評価できよう。
 さらに言えば、これを継続させることが肝要であるわけであるが、継続することによって、当然に発信し続けることが可能となり、これが先のAに直結することになるのである。
 個人事務所では難しいのであれば、青司協などの団体で行うことも考えられるし、弁護士らとの協同で行うこともできよう。
 敗訴者負担法案に対する反対運動もそうであったが、弁護士を中心とする法律家団体と消費者団体などとの連携によって、大きな成果を得ることが可能となるケースもある。現在では、全青司が中心となり、多くの司法書士を巻き込んでいる出資法の上限金利引き下げ運動についても同様である。
 まずは、こうした運動に能動的に参加してみることをお薦めしたい。

3.結果として、司法書士を知ってもらう(広報?)良いきっかけとなる。

 こうして、一人ひとりの司法書士が、法律実務家として、社会活動を行い、その当然の帰結として外部に向かって発信し続けることによって、司法書士という存在が広く知られることとなり、一般的な評価にも繋がることとなる。
 詰まるところこれに尽きると思われる。

4.最後に〜一人ひとりの司法書士が、司法書士制度の「広報」的存在に!〜

 筆者は、既述したように考え、微力ではあるが自分なりに実践してきたつもりであるし、今後も継続していきたいと思っている。
 最後に、今、司法書士が広報すべきことを述べて、本稿の締めくくりとしたい。
 @「アイフル行政処分」にかかる多重債務問題、A会社法改正に関する問題、B法テラスに関する問題、Cゲートキーパー規制に関する問題。
 もちろんその他にも重要な課題は多いが、この4つが司法書士業務に直結し、今、まさに私たちが広報しなければならない最大の問題であろう(ちょっと前には、「個人再生」「成年後見」「民事法律扶助」と繰り返し述べていたことを思い出しました)。
 常に、アンテナを張り巡らし、市民・国民に有益と考えられる法律問題を広報し続けること、そして、それが法律実務家としての活動に裏打ちされたものである限りにおいて、司法書士は、大多数の市民・国民の支持を得られるものと確信するものである。
(平成18年6月)




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