| 「改正民事再生法がいよいよ施行〜積極的な取り組みを!」 |
ご承知のとおり、民事再生法の特則として、個人債務者再生手続に関する法律が平成13年4月より施行されることとなっている。
自己破産件数や特定調停手続が増加しつづけている状況下において、破産手続と違い住宅を手放さないでの債務整理が可能となっていること、特定調停手続と違い債権元本額のカットが可能となっていることなど、メリットも多いこの手続に、これまでであれば自己破産手続や特定調停手続を利用したであろう多重債務者の多くがシフトしてくることが容易に想像できる。
実際にその件数は、全国規模で言えば、数万件となることはほぼ間違いないであろう。
したがって、これまで全国的レベルで多重債務者の救済活動を積極的に行なってきた私たち司法書士事務所に、施行直後から多くの事案が寄せられることも間違いないと考えられる。
一方において、自己破産手続、特定調停手続と同様、法律専門職に依頼するだけの資金的余裕の無い人たちが、やむなく本人申立を行うというケースも相当数にのぼると考えられるところであるが、この場合においては、裁判所の補助的機関として個人再生委員が選任されることが予定されており、再生計画の作成に関する勧告などの職務に従事することとなっている。
そして、この個人再生委員の給源として、衆議院法務委員会においても議論されているとおり(詳細については、HPを参照のことhttp://www.shugiin.go.jp/itdb_main.nsf/html/index_kaigiroku.htm)、第一義的には弁護士とされているものの我々司法書士も想定されており、大きな期待を寄せられているところでもある。
つまり、申立書類の作成(もちろん、単なる書類作成にとどまらず、再生計画の履行までのケアが期待されていることは、クレサラシンポジウムにおける始関参事官の講演においても強調されていたところである。)という従前のスタイルに加え、地方裁判所から個人再生委員として選任されるという新しいスタイルの関与形態も目前に迫っているのである。
ところで、日司連では、早くからこの問題に積極的に対応をしてきた。
昨年早々、消費者問題対策推進委員会の古橋委員長、芝委員、宮内委員らが立法担当者からのヒアリングを受けたことから始まり、昨年夏には、日司連消費者問題対策推進委員会の中に個人再生部会を立ち上げている。
そして、10月に開催したクレサラシンポジウムにおいては、立法に関して中心的な役割を担ってきた始関正光参事官の講演と部会委員によるパネルディスカッション等を行なった。
また、部会では、それらと並行して、司法書士に的を絞ったマニュアル本の作成や施行前の全体研修会などの企画にあたってきたのである。
なお、このマニュアル本は、民事法研究会より、施行前に出版されることとなっており、同時に、債務者の再生計画案を、相談を受けながらシュミレーションすることを容易にするためのソフトも作成中である。是非、この両方を入手していただき、この手続に積極的に関与していただきたいと思う。
さらに一方においては、立法担当者や最高裁の担当者らとの協議も重ねており、法の解釈や施行後運用などについて議論も重ねてきた。その一部が、きんざいから出版される「登記情報」2月号、3月号に掲載される事になっているので、こちらも是非一読していただきたい。
さて、そんな中で、常に感じることができるのは、立法担当者、最高裁判所、学者らの我々司法書士職能に対する「大きな期待」である。もちろん、この「期待」は、個人再生委員としての裁判所の補助的役割に限らず、むしろ、再生債務者の再生に申立から計画の履行までに積極的に関与してもらいたい、という「期待」である。
我々は、近年、激増する多重債務者に対して、全国的な規模において、積極的に法的救済活動に関わってきた。もちろん、まだまだ十分とは言えない状況ではあるが、一定の評価は得ているものと考えられる。そして、その評価が、今般の新しい手続に関しての「期待」に繋がっているのであろうと推測されるのである。
一方において、この個人再生手続は、条文を一読しただけではなかなか理解できない、複雑なものになっているのはご承知のとおりである。
これまで我々が多く扱ってきた自己破産手続や調停手続に比較しても、難しいものになっていることは間違いない。
そもそもが民事再生法の特則として制定されていること、一方で、個人債務者が利用しやすいものにするために、民事再生法の多くの規定を適用除外していることなどが、理由にあげられよう。
したがって、各単位会においては、早急に徹底した研修の機会を設定し、来る施行に備えなければならないであろうと思われる。
また、円滑な手続の進行のためにも地方裁判所との協議の機会も早急に持たなければならないであろうし、住宅ローン債権者である銀行などの金融機関らとの公式な協議も必要になってくると考えられる。
さらに言えば、先に述べたとおり、司法書士が個人再生委員に選任されることも想定されていることもあるのであるから、各地方裁判所に対して、この手続に関与することが可能な会員のリストアップも必要に応じてしていくことも考えられよう。
また、場合によっては、単位会で個人債務者再生手続のサポートセンターのような組織を立ち上げることも検討の余地がある。
ところで、現在、様々な角度から司法制度改革の議論が盛んに行なわれていることは周知の事実であり、その結論は、我々司法書士にとっても大きな影響を及ぼすことは間違いないと考えられる。
しかし、法律家としての実績が社会的に十分認知されていないのであれば、当然のことではあるが、その存在感は弱く、弁護士大増員の荒波に巻き込まれてしまうであろうと思われる。
我々は、クレジット・サラ金問題を一つの取っ掛かりとして、全国的なレベルで消費者側に立脚した法律問題に積極的に取り組んできた。そして、それらの実績は、まだまだ不十分ではあるが、ある程度においては社会的にも認知されてきている。
そして、今般の個人再生手続は、その延長にあると同時に、我々にさらなる大きな飛躍のチャンスをもたらすものであると考えられる。先行している「成年後見」や「民事法律扶助」、さらには、この法律と日を同じくして施行されることとなっている「消費者契約法」とその意味においては同様である。
平成13年4月1日、この日をスタートとして、同じく法律専門職である弁護士と、どちらが質や量を含め良い法的サービスを利用者に提供できるのか、真剣に競争し、互いに刺激しあい切磋琢磨していきたい、そう考えるものである。 (平成13年2月)