「CFJ」過払金返還一斉提訴
情報隠蔽の隠れミノ! 残高放棄は責任放棄!
平成16年4月1日
司法書士 宮内豊文
1 一斉提訴までの経緯
司法書士は、これまで書類作成業務をつうじて多重債務者問題に携わってきたが、平成15年7月から簡裁訴訟代理関係業務として簡易裁判所における訴訟の代理人や裁判外和解業務の代理人として、多重債務者問題に携わり職務を遂行してきた。
多重債務者の代理人として任意整理を進める中で、大手貸金業者CFJにおける取引履歴の不開示など看過することができない問題が発生しており、今般の一斉提訴に至った。
2 CFJの任意整理における問題点
@取引履歴の不開示
多重債務処理の一方法として任意整理があるが、任意整理における基本は各債権者から取引履歴の開示を受け、これを利息制限法により引き直し計算を行うことにある。
今回一斉提訴に至ったCFJについては、取引履歴の開示に応じてもらえない事例が多発しており、任意整理が遅滞し債務処理に支障を来たしている。任意整理においては、長期にわたり利息制限法超過利息を支払ってきた場合には、この超過利息の返還を求め、残存する他の債務の返済に充てることが行われ、債務者の生活再建に役立てられている。
A不可解な残高放棄書
一部の事例では、任意整理に着手し取引履歴の開示を求め交渉を行っている債務者代理人である司法書士に対し、残高放棄書なる書類を送付し、取引履歴の開示を拒む事例も相当数発生しており、ここでも任意整理が遅滞している。この残高放棄書が発行された取引については、すべての取引経過が開示されていないなため断定できないが、過払金が発生している事例について残高放棄書を発行し、取引履歴の開示を拒む手段として用いられているのではないかとの疑問をもっている。
金融庁事務ガイドラインにおいては「債務者、保証人その他の債務の弁済を行おうとする者から、帳簿の記載事項のうち、当該弁済に係る債務の内容について開示を求められたときに協力すること。」が定められている。
CFJは、残高放棄をすることによって、取引履歴の開示を求めている者は債務者ではなくなり、もはや『債務の弁済を行おうとする者』に該当しないので、ガイドラインによる取引履歴の開示義務が無いと考えているようである。
しかしながら、契約関係にある当事者間(貸手・借主間)には、契約によって結びつけられた一個の有機体として信義則が支配しているというべきである。
貸金業者と消費者との取引においては、貸手が金融の専門家であるのに対し、借手は一消費者に過ぎないのであるから、契約に関する情報や判断能力において、構造的に貸手が圧倒的優位に立っている。
特に包括契約に基づき長期間にわたって貸付と返済が多数回繰り返されている場合には、借手である消費者が包括契約以後の多数回の貸付けと返済の全てについて記録を保存して内容を把握しておくことは、現実問題として不可能あるいは著しく困難であり、通常の貸金における弁済の問題と同視することはできない。
一方の貸手である貸金業者は業務として契約に関する情報を管理・保存しているのであり、貸手が借手に対してその取引の経過に関する情報を開示することは容易になし得ることであり、その他に開示することによって貸手が不利益を被るとは考えられない。
したがって、貸手である貸金業者は、借手である消費者に対し、その取引経過を開示すべき義務を信義則上負っていると考えられる(同旨判決多数)。
B合併問題
CFJ鰍ヘ、ディックファイナンス鰍ノ平成15年1月6日アイク梶A潟ニマットライフが合併し、商号をCFJ鰍ノ変更したものである。合併後においては、一つの法人となったのであるが、任意整理においては、合併前の商号ごとの債務処理ではなく、一つの法人としての債権・債務の処理が通常だと考えられる、CFJにおいては、これに応じようとしない。
例えば、アイクに50万円の債務、ディックファイナンスに30万円の過払いがある場合には、これを差し引きし20万円の債務の返済と考えるのが通常であるが、これに応じようとせず、アイク、ディックファイナンスそれぞれ別々の債権・債務として交渉を求めるのである。
C債権譲渡
CFJの合併前の各社において、顧客に対する債権について債権譲渡が行われている。債権譲渡の主なものは以下のとおりである。
日専 → アイク
タイヘイ → ユニマットライフ
タイヘイ → アイク
マルフク → ディックファイナンス
債権譲渡が行われた場合にも、利息制限法による引き直し計算は、債権譲渡の前後を通じて行われるべきであるにもかかわらず、CFJは債権譲渡前の取引履歴の開示に任意に応じようとしない。
3 一斉提訴の趣旨
CFJについては、以上のとおり様々な問題点が指摘されており、これまで個々の司法書士が任意整理の中で事実解明に努めてきたところであるが、CFJの情報開示に消極的な姿勢から、事実関係が充分に解明されておらず、個々の司法書士による対応には限界があると判断した。
また、CFJの取引経過の開示に対する消極的な姿勢を裁判所に訴えるについても、個々の事例ごとに提訴を行っていたのでは充分でないと判断した。
そこで、今般県内の司法書士有志でCFJに対する過払金返還一斉提訴を行い、CFJの取引履歴不開示についての問題点を裁判所に訴え訴訟の場で明らかにするとともに、報道関係各社の協力を得て広く県民に訴えようとするものである。
尚、このCFJ過払金一斉提訴は、静岡県の一斉提訴を端緒として、今後全国一斉提訴を呼びかける予定である。
※ 最高裁は、武富士の取引経過非開示事件について平成15年3月13日債務者側からの上告を棄却する決定をした。この決定は、債務者側からの上告が、限定された上告理由(憲法解釈の誤り、憲法違反)等に該当しないこと、及び上告受理の申立ての理由(最高裁判例違反、法令の解釈に関する重要事件)に該当しないことをもって、上告棄却、上告審として受理しないとしたものであり、貸金業者の取引履歴の開示義務については何ら判断をしていない。
一部貸金業者においては、この最高裁決定を曲解し、最高裁が貸金業者の取引履歴の開示義務を否定したものだとして、この決定をよりどころに取引履歴の開示を拒む業者も現れているが、極めて遺憾である。枚方簡裁平成15年9月30日判決においても、判決理由において前記最高裁決定について「貸金業者の取引履歴開示義務を否定したものでないことは明らかである」としている。
尚、上記最高裁決定の原審である名古屋高裁平成14年2月20日判決においては、「取引関係にある債権者と債務者は、信義に従い誠実に権利を行使し、義務を履行すべきであるから、その行為の態様、なされた状況その他諸般の事情によっては、貸金業者の取引経過に関する情報の不開示が信義誠実の原則に著しく反し、社会通念上容認し得ない違法な行為と評価される場合があり得るところ」として取引履歴の開示義務を認めているのである。
但し当該事案においては「その違法性を主張する者は、これを基礎づける具体的な事実を主張すべきであるが、本件において、このような事実を具体的に認めるに足りる証拠はない。」として、主張・立証が足りないことをもって借主側の主張を退けたものである。
(平成16年4月1日)
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