消費者契約法と訴訟手続


.消費者トラブルに巻き込まれた場合、少額訴訟手続を利用して解決することは可能でしょうか?

.  当ホームページにも詳述していますとおり、少額訴訟手続は、訴額が30万円以下の金銭を請求する事件について、原則として、一回の審理で判断を下すという画期的なものであります(民事訴訟法368条以下)。

 そもそも、消費者トラブルというものは、比較的少額なものが多く、30万円以下のものも非常に多いのが現実ですから、この手続によって容易に解決が図られることになれば、消費者側にとってこれほど良いことはありません。

 実際、悪徳商法に関する書籍等の中には、この手続による解決を薦めているものも散見されます。

 しかしながら、現実には、後に述べるようないくつかの注意すべき点が存在しておりますから、少額訴訟を利用の際には、調停や通常訴訟などの他の手続を含め、そのメリット・デメリットを十分理解したうえで一つの選択肢に加えていただきたいと思います。

 さて、少額訴訟手続を選択するうえで、まず注意したいのが、「金銭を請求する事件」という要件です。具体的には、「20万円を払え」といった請求がそれに該当するのですが、そうではない「商品を引き渡せ」とか「支払義務が無いことを確認する」といった請求はすることができない、ということになっています。そのような請求をする場合、通常の訴訟手続を利用せざるを得ません。

 また、一回の審理で結論を出すというメリットは、証拠が事業者側に偏在しているであろう多くの消費者トラブルに関して言えば、消費者側に必ずしもメリットをもたらすものではないことにも注意したいところです。

 つまり、少額訴訟手続においては、その性格上、即座に取り調べの可能な証拠に限って採用されることとなっていますが(法371条)、消費者トラブルの多くは、決め手となる証拠は事業者が所持していることが少なくなく、そのようなケースにおいては、少額訴訟手続で勝訴判決を勝ち取ることは難しいと言わざるを得ません。

 もう一つ考えられるのが、相手方となる事業者の所在の不明です。先に述べましたように、この少額訴訟手続は、相手方の所在が不明の場合には利用することが出来ません。そして、消費者トラブルというものは、特に相手が悪質な事業者の場合、実体や所在が不明なケースが少なくないのが現実なのです。

 これらのような場合は、通常の訴訟手続や調停手続も視野に入れて検討することが必要になってきますので、注意してください。

 さて、それでは消費者トラブルに関して、具体的にどのような場面でこの少額訴訟手続を利用でき、その特性を発揮させることができるのでしょうか。

 典型的なものとして考えられるのが、契約を取り消した場合における契約金などの返還請求であります。このような既払い金の返還請求事件に関しては、上記の「金銭を請求する事件」としての要件を充たすものですから、少額訴訟手続を利用することができます。

 ただ、ここでも注意しなければならない点があります。

 少額訴訟手続とはいえ、あくまで裁判手続でありますので、契約を取り消しすることができる事由が発生していることについての立証責任は、消費者側にあるという点です。

 例えば、事業者が勧誘に際し、重要事項について不実の事実を告げたことによって、消費者を誤認させて契約を締結した場合を想定してみてください。

 この場合には、契約を取り消すことが出来るとされているわけですが、事業者が不実の事実を告げたという事実に関しては、消費者側に立証責任があるということになります。

   このように、少額訴訟手続は、一回の審理で結論が出るという点、専門家に依頼せず自身での申立も容易で、費用もほとんどかからないという点などにおいて画期的な手続ではありますが、@金銭の請求をするものでなければ利用できない、A事業者の所在が不明の場合は利用できない、B主張したい事実の立証が困難である場合には勝訴も困難である、といったようなデメリットもありますから、これら念頭に入れて手続を選択するように注意してください。




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