消費者契約法と訴訟手続


.消費者契約法による取消しに伴う売買代金返還請求を実際に少額訴訟で行なう場合の書式、注意事項はどのようになりますか。

.  次に、今般施行されることとなった消費者契約法の規定を使った、典型的な少額訴訟を想定してみたいと思います。

 いわゆる「資格商法」を例に、「不実告知」「断定的判断の提供」を理由として契約を取り消し、支払済みの金員を取り返そうというものです。

 「不実告知」とは、事業者が、契約締結に際して、契約の基本的な事項やその他消費者の判断に必要な重要事項について、不実のこと、つまり真実又は真正でないこと、事実と相違することを告げた場合です。

 「断定的判断の提供」とは、確実でないものが確実である(例えば、利益を生ずることが確実でないのに確実である)と誤解させるような決めつけ方をしたことをいいます。

  訴状(少額訴訟)

 本年御庁に少額訴訟による審理及び裁判を求める回数   1回

〒422−****  静岡市****
           原  告   甲野太郎
           電  話   054ー***ー****
           ファックス  なし

〒***ー****  *****
           被  告   株式会社****
           上記代表者代表取締役 ****

売買代金返還請求事件

     訴訟物の価格   金250,000円
     貼用印紙額    金2,500円

請求の趣旨

1、被告は、原告に対し、金250,000円および訴状到達の翌日から支払いずみまで年6分の割合による金員を支払え。
2、訴訟費用は被告の負担とする。
との判決ならびに1項、2項につき仮執行の宣言を求める。

紛争の要点

1、原告は、**を主たる業務とする**株式会社に勤務しており、事業としてではなく、事業のためでもなく本件契約当事者となった消費者である。
 被告は、業として各種の資格試験などの講座や教材の販売をする事業者である。

2、原告は、平成12年5月17日、被告から送付されてきたダイレクトメールの「***診断士という資格は今一番有望視されている公的資格である。合格率も現在ではまだ高く、開業後も高収入が期待できる。」との内容を信じ、当該資格を取得して将来は独立開業する目的で、被告の販売する上記資格試験に必要だとされている教材一式を購入し、同年6月1日、代金全額金250,000を指定された被告銀行口座に振り込むという形式で支払った。

3、しかしながら、その後、原告が、***診断士という資格について調査したところ、公的資格ではなく、***診断士協会という民間団体において認定されている民間資格であるということが判明した。

4、したがって、本件契約は、消費者契約法第4条第1項第1号の「不実告知」及び同条同項第2号の「断定的判断の提供」に該当する取消うべき契約である。

5、そこで、原告は、平成12年6月23日、被告に対し、配達証明付内容証明郵便において本契約の取消しを通知すると同時に、同書面到着後10日以内に支払済みの売買代金の返還を請求したが、現在に至るも返還がなされていない。

6、よって、原告は被告に対し、請求の趣旨記載のとおりの裁判を求める。

証拠方法

1、甲第1号証   ダイレクトメール
2、甲第2号証   振込明細書
3、甲第3号証   **診断士協会パンフレット
4、甲第4号証   内容証明郵便
5、甲第5号証   配達証明書

添付書類

1、訴状副本                 1通
2、甲号証写し               各2通

平成12年7月31日

                上記原告   甲野太郎  印

静岡簡易裁判所  御中



 一般的な注意事項として、まず費用の問題があげられます。司法書士や弁護士などの専門家に依頼しない場合、訴額に応じた印紙(本件では2500円)と書類を郵送するために必要な郵便切手5000円程度(訴額は関係ありません)の予納が必要になります。詳しくは各地の簡易裁判所にお聞きください。

   一方、証拠方法ですが、事業者の嘘や断定的な判断を直接・間接に証明できるものをすべて提出するということになります。本件では、ダイレクトメールが存在していますので比較的容易に証明することが可能になるわけですが、すべてのケースにおいてこのような証拠が存在するわけではなく、むしろ、このようなケースは少ないであろうと考えられます。

 なぜなら、悪質な事業者であればあるほど、今般の消費者契約法の制定により、法の網を巧みにくぐりぬけるような手段を考えるからです。

 決定的な文書の証拠が無い場合、どうしても「言った言わない」の水掛け論になり、消費者側の主張を裏付けるものが無ければ、訴えは棄却されるということになってしまいます。事業者との電話における会話を録音しておけば、それは有力な証拠になり得ましょうが、現実にはそのようなケースは多くありません。

 そうした場合、先にも述べましたように、少額訴訟手続を利用した解決は簡単ではないと言わざるをえません。

 ただ、訴訟手続は、勝ちか負けかの判断だけではなく、お互いの譲歩による和解という解決手段もあり、現実に、非常に利用されているものですから、和解を念頭にこの手続を利用することも考えられるということは言えましょう。




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