Q.事業者に対する支払いについて、クレジットを利用している場合でも、少額訴訟手続による解決は可能でしょうか。
A.
事業者に対する代金の支払いについて、いわゆるクレジット契約を利用している場合が少なくありません。
つまり、事業者に対して、クレジット会社が一括して立替払いをし、購入者である消費者は、クレジット会社へ月々支払いを継続するという形態です。
この形態において、事業者と消費者の間に、何らかのトラブル(事業者の倒産や商品の瑕疵など)があった場合、クレジット会社への支払いを停止することができるか、また、既払金の返還請求をすることができるのか、という問題が出てきます。
上記のような形態の契約は、基本的には、事業者と消費者の売買契約等とクレジット会社と消費者の立替払い契約の2つの別個の契約であると考えられていますから、前者の契約にトラブルがあったとしても当然には後者の契約に影響を及ぼさない、という解釈がなされていました。
しかし、それでは、消費者は、事業者の倒産により商品を受領していないにも関わらずクレジット会社への支払いは継続させなければならないという非常に酷な結果を強いられる可能性があるわけです。
そこで、昭和59年の改正によって設けられた割賦販売法30条の4によって、消費者は事業者との契約上のトラブルを理由として、クレジット会社の支払請求に対抗できるようになったわけです。これが「抗弁権の接続」と言われるものです。
また、平成11年の訪問販売法改正により、これまで割賦販売法30条の4の適用のある「指定商品」ではないとされていた特定継続的役務提供契約についても、クレジットを利用して支払いをしている場合には、例えば、業者が契約途中で倒産してしまったため役務の提供を受けることができなくなったり、事情があって途中で契約を解約したりした場合には、消費者はそれ以降のクレジット会社に対する支払いをストップすることができるようになったのです。つまり、「抗弁権の接続」が認められるようになったわけです。
一方、最近では、いわゆる消費者金融業者があたかもクレジット会社のように装い、実際には、通常の金銭消費貸借契約を締結しているケースが目立っており、問題になっていましたが、このようなケースにつきましても、上記の「抗弁権の接続」は適用になり、改正法ではこれを明文化しています。
しかしながら、その一方で、クレジット会社への既払い金の返還請求は認められるのかという問題が残されています。もし認められるとしたら、少額訴訟による解決は可能なのでしょうか。
裁判所の判断は、既に述べましたように、本来事業者と消費者との契約とクレジット会社と消費者との契約は別個のものであるという考え方に基づいており、割賦販売法30条の4の「抗弁権の接続」の規定は、特別に創設されたものであるから、事業者に対する抗弁事由を本来第三者であるクレジット会社にも抗弁できることにしただけであり、未払いの割賦金の支払いを拒絶する効果はあるにしてもそれ以上の効果は認められない、というものがほとんどのようです。
つまり、既払金の返還請求を認めない、というのがベースになっています。
確かに、二つの契約は形式的には別個のものではありますが、実際の契約締結過程及び両者の関係を見れば、事業者が窓口となっているうえ、クレジット会社と事業者は加盟店契約により極めて密接な関係にあります。
そうであれば、クレジット会社には、加盟店契約を締結するというような業務提携をするにあたって、事業者の信用調査をするなどの責任や監督責任があるとも考えられますし、クレジット会社の監督官庁である通産省の通達にもそれと同様の主旨と考えられるものが存在しています。
したがいまして、上記のような裁判所の判断は極めて形式的にすぎるものであると言わざるを得ないと思われます。
ただ、現段階におきましては、上記のような判断が主流となっていますから、「抗弁権の接続」の規定を根拠に、少額訴訟手続によってクレジット会社に対する既払金返還訴訟を提起したとしましても、よほど特殊なケースでない限り、基本的には同様の判断がなされるものと考えられます。
この点につきましては、今後の消費者側に立った裁判例の蓄積を待ちたいところです。
一方、今般施行される予定の消費者契約法の第5条の規定が、クレジット会社に適用されるという場合が想定されます。
同条によりますと、消費者契約の実態を踏まえ、事業者が第三者に対して消費者契約の締結の媒介(消費者に勧誘をすることを含む。)を委託し、当該委託を受けた第三者が、消費者に対して第4 条第1項から第3項までに掲げる行為をした場合についても、それぞれ第4条第1項から第3項までの規定を準用することとする、とされているからです。
つまり、クレジット会社は事業者でありますから、事業者であるクレジット会社からの媒介の委託を受けた第三者である販売店(加盟店)が不実告知などを行なって消費者を誤認させたような場合には、売買契約についてはもちろんのこと、直接クレジット契約をも取り消すことが可能になるものと考えられます。
そうであるとすれば、この消費者契約法第5条の規定により、クレジット契約を取り消したうえ、クレジット会社への既払金を不当利得であるとして、返還請求訴訟を提起できる道が開かれることとなったと言えましょう。

