「小さなトラブル110番」実施!
平成10年1月1日から、ついに新民事訴訟法が施行されました。
まだまだ、実際には形に見えた変化は表れていないようですが、今後の実務の蓄積によって、より迅速で適正な民事裁判が徐々に実現されていくのだと考えています。
さて、今回の民事訴訟法改正の一つの大きな目玉として、少額訴訟制度の新設があります。
このホームページでも、特集という形で大きく取り上げ、少額訴訟が実際に運用された場合を予想してみました。
しかしながら、静岡簡易裁判所においても、私の聞いた範囲においては、まだ少額訴訟は数件しか提起されておらず、いまだその実際の効能については未知の状態であります。
また、先日の中日新聞によりますと、名古屋簡易裁判所において、初の少額訴訟が提起されましたが、事例が少額訴訟になじまないということで、裁判官の判断により通常訴訟に移行されたということで、訴えを提起した人のコメントとして、「1回で判決が出るということで提訴に踏み切ったのに、納得できない。」というようなものが掲載されていました。
こうした状況を考えますと、この少額訴訟制度が、本当の意味で、専門家ではない一般の人にとってアクセスしやすい裁判所に変化していくためのきっかけとして機能していくためには、まだまだ越えなければならないハードルが多いのではないかと感じています。
その大きな一つに、少額訴訟制度の一般的認知度が極めて低い、という事実があります。
各都道府県における弁護士会や司法書士会において、積極的な広報活動を実施しているのですが、まだまだ実際には知られておりません。
そこで、もっと多くの人に、この少額訴訟制度を知ってもらい、泣き寝入りを強いられている小さなトラブルの実態を調査するということを目的として、私が所属している静岡青年司法書士協議会が主催して「小さなトラブル110番」という電話無料相談会を、平成10年2月8日に実施しました。
すでに、東京、神奈川、愛知といった司法書士会においては、同様の電話無料相談会を実施しており、各会とも1日で100件に近い相談を受けています。
これは、2割司法(存在するトラブルの全体の2割程度しか、司法による救済を得られていない。)という言葉をはっきりと裏づけるものになったものであると考えています。
つまり、少額であることから、専門家に依頼することを躊躇せざるを得ない現状が明確に表れたものであったのです。
静岡においても、臨時電話を5台設置し、多くの相談電話に備えました。
事前に記者発表を行い、民事訴訟法改正の経緯から少額訴訟制度の新設や予想される相談事例などを説明し、翌日の静岡新聞などに記事として扱ってもらいました。
テレビによる広報が出来なかったため、他会に比較すると相談件数は少なかったものの、その相談内容については、他会と同様の傾向が見られました。
以下に、相談内容の主立ったもの、典型的な少額トラブルを挙げてみたいと思います。(他会の相談事例も参考にさせてもらいました。)
1.貸したお金が戻ってこない!「10万、15万と2回にわたってお金を貸しました。2回目のときに念書を入れてもらったのですが、何度請求しても返してくれません。」 |
2.敷金を取り戻したい!「引っ越しをする際、大家さんから、クリーニング代などを差し引くと、ほとんど敷金は残らないと言われました。ほんとうなのでしょうか?」 |
3.賃借人が家賃を払ってくれない!「何度も家賃の支払いを滞る賃借人でしたが、とうとう4カ月も滞納しています。未払い家賃を回収して契約を解除したいのですが。」 |
4.商品の代金を支払ってくれない!「電化製品の小売店を経営していますが、納品したにもかかわらず代金を支払ってくれないお客がいます。どうしたものでしょう。」 |
5.子供が隣の犬に噛まれた!「公園で遊んでいた子どもが、隣の家の犬に噛まれ、病院で治療を受けました。治療代を請求したいのですが。」 |
6.携帯電話の充電器から発火!「充電するたびに高熱を発していたのですが、特に問題はないはずだと思って使用していました。ところがちょっと目を離したすきに、発火し、絨毯や畳を黒焦げにしてしまいました。製造元から賠償責任を問えますか?」 |
7.会社が給料を払ってくれない!「化粧品のキャンンペーンガールとして、時給1000円で1週間アルバイトをしましたが、アルバイト代を1日分しか払ってくれません。」 |
8.看板代金を払ってくれない!「ある飲食店に看板制作を頼まれたのですが、納品したにもかかわらず、その代金を支払ってくれません。」 |
9.追突事故、自動車の修理代金は?「徐行運転をしていたところ、後方から追突され、バンパーが凹んでしまいました。修理代等を請求したいのですが?」 |
10.先輩の飲食費を立替。その請求は?「飲みにいくたびに、後で払うから立て替えておいてくれ、と頼まれ20万円くらい飲食費を立て替えたのですが、いい加減に払ってもらいたいと思っています。」 |
11.つけがたまった常連の飲食代金を回収したい。「最近常連になったお客が、だんだんつけをため、そろそろと思い請求しているのですが、なかなか支払ってくれません。」 |
いかがでしょうか?
思いあたることが、いくつかあるのではないでしょうか?
望まなくとも、誰もが当事者になってしまう可能性を持つ、上記のような小さなトラブルでありますが、少額訴訟制度の適切な運用によって、紛争額に見合った低廉で迅速な解決が図られるようになることを願ってやまないと同時に、法律専門職である司法書士という立場から、トラブル解決に向け、適切な助言、そして場合によっては書面作成を通じてのお手伝いができるよう努力していきたいと考えています。