1.全青司「生活保護・自立支援プログラムにおける多重債務解決プログラムの創設のご提案」(人権擁護委員会)
(1)全青司人権擁護委員会(古根村博和委員長)では、厚労省及び全青司会員が対応可能な地域の地方自治体・福祉事務所に対して、「生活保護・自立支援プログラムにおける多重債務解決プログラムの創設のご提案」をさせていただきました。趣旨は次のとおりです。ご協力いただける方がいらっしゃいましたら是非ご連絡いただきたいと思います。
政府の「生活保護の在り方に関する専門委員会」の報告書(以下、「報告書」という)が平成16年12月に出されていますが、その中で「被保護世帯と直接接している地方自治体が、被保護世帯の現状や地域の社会資源を踏まえ、自主性・独自性を生かして自立・就労支援のために活用すべき「自立支援プログラム」を策定し、これに基づいた支援を実施することとすべきである。」とし、その上で、「地方自治体は、自立支援プログラムの策定・実施に当たり、個別の自立支援メニューを所管する他の部局との調整をし、ハローワーク、保健所、医療機関等の関係機関との連携を深めるとともに、(1)就労支援、カウンセリング、多重債務問題、日常生活支援等に関する経験や専門知識を有する人材の活用等、(中略)地域の様々な社会資源を活用することにより、その独自性を生かした実施体制を構築することが必要である。」としています。
この報告書を受け、一部の地方自治体では、自立支援プログラムについて検討をし、具体的には就労支援プログラムなどの実施の取り組みを始めています。就労支援プログラムの実効性については、様々な問題点が指摘されているところですが、保護受給者の自立を目指し、地方自治体がこれまでにない行動を始めたことは評価することできます。
しかし、一方で、前記報告書において指摘されている多重債務問題への取り組みが、地方自治体において、実際に保護受給者の多重債務問題の解決に向け、何らかのプログラムが検討策定され、実施されているとの報告は受けておりません。これまでは、一部の問題意識のあるケースワーカーによっては、法律専門家や法律扶助協会などを紹介していたようだが、ほとんどのケースにおいては、全く何らの指導もせず、放置されている状態です。本来、生活保護費を借金の返済に充てることは生活保護制度の性質上問題であり、保護受給者がそのような状態に陥っていることが把握された場合には、ケースワーカーとしては、改善に向け、対応すべきですが、多重債務問題は高度に法律問題であり、ケースワーカーの専門性の範囲を超え、対処の仕様がないことの現れであると思われます。
「多重債務解決プログラムの創設」
そこで、全青司において、今後、地方自治体及び各福祉事務所に対して、自立支援プログラムの一環としての多重債務解決プログラムの創設を提唱していくことをご提案させていただきます。
具体的には、@生活保護申請者または保護受給者に借金問題(多重債務とは限らない)があることが判明した場合、A本人の同意を得て多重債務解決プログラムを実施、Bケースワーカーからの連絡を受け、担当司法書士が福祉事務所・本人宅・担当司法書士事務所にて本人と面談にて相談(3日以内に相談を実施)、C法律相談のみで終結した際には、司法書士から担当ケースワーカーに終結報告(相談費用は本人に費用負担の無い(財)法律扶助協会の法律相談援助制度を活用)、D相談後、受託の際は、自己破産・時効援用・過払金返還請求などの事案に応じて、(財)法律扶助協会を利用(原則、本人による費用償還あり)、E事件解決後、司法書士から担当ケースワーカーに終結報告、とのスキームを検討しています。
この多重債務解決プログラムを検討するにあたっては、以下の事項を配慮しています。1つは、生活保護申請者または保護受給者に多重債務問題があることが判明したした場合、早急に法律家による相談を受けることができる体制を整備することです。司法書士・弁護士が多重債務事件を受託した際には、各債権者に受任通知を発送しますが、これによって、本人・家族・保証人等への督促・連絡が停止され、本人をはじめとする家族の精神的・経済的安定につながります。そのため、ケースワーカーより連絡を受けた場合には、3日以内に相談を受けることとしました。相談場所に関しては、当該福祉事務所や司法書士事務所でも構いませんが、本人がそこまでの交通費が捻出できない場合、また精神障害等の症状により外出することが困難な場合には、担当司法書士が本人の自宅及びその周辺まで相談に行くことも可能としました。
2つ目は、相談費用をできるだけ低廉に抑えることです。いうまでもなく、生活保護を必要とする方からの相談ですので、経済的に苦しい状態であることは明らかです。そこで、(財)法律扶助協会を利用し、これによって、法律相談のみであれば本人負担は無く、また、実際に破産手続き等を依頼する場合、原則償還をすることになりますが、この金額も低廉であり、本人の経済状況によっては、償還義務を免除する手続きをとることも可能です。
3つ目は、多重債務解決プログラムの参加者の多様性に応じた運用ができる体制を構築することです。多重債務を負っている者の中には、ギャンブルやアルコール依存・精神障害・DV被害・ホームレス等の背景を有している者も少なくありません。こうした方への配慮が十分なされるよう、受託する司法書士においては、高度な権利擁護の意識を有する者が担当するよう、事前の研修等を実施することが不可欠です。また、福祉事務所においては、多重債務解決プログラムに参加したにもかかわらず、取り組みが不十分な者については、あくまで、多重債務解決プログラムへの参加は当事者の任意であることを認識した上、生活保護の停廃止の事由にならないよう、配慮していただきたいと考えます。
ついては、地方自治体や福祉事務所において、上記多重債務解決プログラムの趣旨の説明と導入にむけての検討をしていただきたくお願いいたします。 以 上
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