自由民主党 金融調査会
貸金業制度等に関する小委員会 御中
論点整理2・金利問題についての意見書
平成18年6月29日
日本司法書士会連合会
消費者問題対策推進委員会
消費者法制検討委員会
平成18年6月27日貴委員会の論点整理(案)について、当委員会の意見を提出する。
はじめに
貸金業者の金利の問題は経済の問題であることが望ましい方向であるが、現実の貸金業者の貸付金利には、市場原理である需要と供給関係による価格決定が適正に機能してこなかったものであり、市場の問題事例であることを念頭に置かなくてはならない。
市場経済では「市場の機能不全」が起こり得るのであり、その主な理由として、@独占の存在A供給者・需要者間における情報の非対称性などが挙げられるが、消費者信用市場はこれらのいずれにも該当する市場である。
市場が健全に機能する前提としては、情報が共有化され、市場のプレイヤーは、この情報をもとに、合理的判断により行動することが必要であるが、消費者信用市場には、このような前提が不完全である。
次に、市場経済の問題点として、市場経済により資源配分は効率的になるが、必ずしも公平になるとは限らない点も指摘しなければならない。すなわち、それによって貧富の格差は拡大する傾向が強まる例も少なくないとされる。市場経済の最も発達した国は、アメリカであるが、貧富の格差の問題はいまさら説明する必要もない状況であり、国民全体の20%は銀行取引ができない現実ある。最近の事例では、昨年のハリケーン被害における貧困層の惨憺たる現実を見れば明らかではなかろうか。
3.金利問題
(1)出資法と利息制限法の一本化(グレーゾーン金利の廃止)
【意見】賛成である。出資法の上限金利(年29.2%)を現行利息制限法の制限金利(年15〜20%)に引き下げるべきである。
【理由】司法書士の業務経験から、相当長期に亘る消費者金融の利用者の大半が、それぞれの返済総額について利息制限法を適用して計算し直せば、債務完済または過払いの状態となっていることを知悉しており、また本年1月の最高裁判決で、期限の利益喪失の特約ある場合に、出資法の上限金利による支払利息にみなし弁済の適用ができないとの司法判断が示されたこと、利息制限法を超える利息は元本に充当されるとの判例が確立していることから、上限金利の引き下げが必要と考える。
(2)新たな金利水準の問題
○出資法は刑罰、利息制限法は私法上の有効性を規定するとの相違あり
【意見】出資法上限金利は、現行利息制限法の制限金利(年15〜20%)と同一にすべきである。
【理由】貸金業制度の全般を検討するにあたっては、出資法と利息制限法という金利の二重構造の存在を無視することはできない。貸金業界も指摘のとおり、不当利得返還請求の件数は急上昇している。これは、貸金業規制法43条所定の要件を具備しない貸金業者が、本来得ることのできない利息制限法超過利息を不当に取得していることの現われである。貸金業規制法43条の存在そのものが、利息制限法違反を常態化させる原因であった。
貸金業規制法43条を撤廃するにあたっても、出資法と利息制限法の上限金利は同一のものにすべきである。仮に「出資法は刑罰、利息制限法は私法上の有効性を規定するとの相違」を理由に、両法の上限金利に差を設けることがあれば、これまでと同じ結果をもたらすことになる。
一連の最高裁判決により、貸金業者が貸金業規制法43条の要件を満たす場合は、極めて限られることが明確になった。しかし、最高裁判決以降も、東京証券所一部上場企業である大手貸金業者を含めて、貸金業者は利息制限法制限利率を超過する金利での貸付を継続し、違法な金利を収受し続けているのである。
また、不当利得返還請求が急増しているとはいえ、これは司法書士・弁護士に依頼した者や裁判手続きをとった一部の者だけであり、それ以外の多くの利用者は現在においても違法な金利により計算されたフィクションの債務を払い続けさせられているのである。
健全な企業であれば、最高裁判決により違法であることが認定されれば、自ら進んで違法状態を解消すべく対策を講じ、不当利得金については自ら進んで返還すべきであるのにこれをしようとしない。
○司法(最高裁)の判断をどのように受け止めるべきか
【意見】立法化にあたり、利息制限法を原則適用とする司法(最高裁)判断を反映すべきである。
【理由】一連の最高裁判決は、貸金業規制法43条の適用は極めて限られた範囲に限定する旨を明確にした。一連の最高裁判決の底流には、貸金業者の業務の適正化から債務者保護の徹底の方向を示し、利息制限法の原則適用の立場を再確認した。これらの最高裁判決の背景には、高利貸付けの横行とこれによる被害の拡大を直視したものといえる。
○金利引下げが多重債務の防止に資するか否か
【意見】金利引下げが多重債務の防止に資するものと考える。
【理由】現在の貸金業者の金利水準は、利息制限法制限利率を超過し、この高金利が多重債務を生み出していることは厳然たる事実であり、当然に、金利引下げが多重債務の防止に資するものと考える。
貸金業者の業界団体である日本消費者金融協会の2005年版消費者金融白書によれば、消費者金融の平均的利用者像は、借入数1顧客当たり平均3.3社、平均利用総額145万円となっており、3社以上から借入をしている顧客が全体の60%に達していること、利用期間は平均6.2年であり、10年を超える顧客が全体の約28%、5年以上利用している顧客が全体の約50%近いこと、また、消費者金融利用者の平均所得は年収439万円で、400万円未満が47.4%を占めていることが報告されている。
そして、貸付金利の平均は年25.43%、25%以上29.2%未満の高利の貸付が72.4%となっている。
この調査結果は、消費者金融の利用者の多くが、借入を完済できないまま高金利を返済し続ける、言わば「借金漬け」の状況に陥っているという実態を浮き彫りにしているものと考えられる。
つまり、消費者金融の利用者の多くが低所得者層であり、返済余力が乏しいことから高金利を支払い続けるために新たな借入を行うといういわゆる雪だるま状態となって多重債務者に陥っていくという構造なのである。
また、消費者金融の調達金利は、与信量の9割以上を占める大手の場合は年2%程度で、業界全体でも、年4.41%とされている。そこで、消費者金融は大手を中心に年25〜29.2%という高金利で、貸せば貸すほど儲かることから、テレビCMなど多量の広告で借金の抵抗感をなくし、無人契約機を利用して支払能力を大幅に超過する過剰な貸付を行っているのが現状である。
このような現状は、高金利問題が、多重債務問題の大きな原因の一つであることを根拠付けるものと考えられる。
○ヤミ金融との関連(金利引き下げにより増加するか否か)
【意見】上限金利引き下げがヤミ金融を増加させたことを裏付けるデータは存在せず、金利を引き下げた場合にヤミ金が増加するとの意見は、合理性を欠くものであり、相当でない。
【理由】一部に、金利を引き下げた場合にヤミ金が増加するとの意見があり、平成12年に「上限金利を下げた結果ヤミ金融が増えた」しかし、上限金利引き下げがヤミ金融を増加させたことを裏付けるデータは存在せず、以下のとおり合理性を欠くものである。
@ ヤミ金融自体は「トイチ」「トサン」などの呼称で、平成12年の出資法金利引下げ以前にも存在していた。ヤミ金融の社会問題化と上限金利の引き下げには、何らの因果関係も存在しない。
A 平成12年の出資法改正とヤミ金融被害の報道の急増が、偶々、時期を一にしていたため、貸金業界は両者を関連付けようとするが、ヤミ金融の多くが暴力団関係者によるものであることは、警察の捜査によって明らかとなっている。
B ヤミ金融業者の融資対象は、多重債務者や破産歴のある者、信用情報がブラックである者等、信用力の著しく悪化した資金需要者であり、彼らは出資法改正前の上限金利40.004%の時代においても、登録貸金業者の融資対象とはなっていない。
C 平成12年以後ヤミ金融が増加した時期は、小泉内閣の構造改革が進められ、国民の痛みが最高潮に達した時期であり、失業者の増大・収入の低下・貯蓄を有しない世帯の増加など国民の貧困化が進んだ時期である。
以上のとおり、上限金利の引き下げとヤミ金融の存在には、何らの因果関係も合理的な裏付けも存在しない。ヤミ金融被害は、金利の問題と別に議論すべき問題である。
○既に多重債務に陥った者がヤミ金融を利用する可能性と、制度改正により新たな多重債務者の発生を防止することとの比較衡量
【意見】既に多重債務となっている者がヤミ金融を利用する可能性は当然に存在するが、貸金業者の貸出上限金利を引き下げた場合、多重債務に陥っていない者や今後貸金業者を利用する者については、金利負担は低くなり、多重債務に陥る可能性は減少するので、必然的にヤミ金融被害も減少することになる。
【理由】多重債務者がなぜヤミ金融を利用するのかといえば、既存債務の高金利の支払に追われるからである。
貸金業者の貸出上限金利を引き下げた場合、既に多重債務となっているものに対する恩恵は少ないであろうが、多重債務に陥っていない者や今後貸金業者を利用する者については、金利負担は低くなり、多重債務に陥る可能性は減少するので、必然的にヤミ金融被害も減少することになる。
○消費者向けと事業者向けの区分の是非
【意見】区分すべきでない。
【理由】消費者金融を利用する事業者の圧倒的多数は零細事業者である。事業者に対する貸付金利を消費者と別に定めるとの考え方には、事業者は一般消費者と異なり、情報や交渉力において貸金業者との間に格差が存在しないとの思考が働いている。しかしながら、消費者金融を利用する零細事業者の金融に関する情報・契約に関する情報や交渉力は、一般消費者と変わりないのであり、貸金業者との間に情報・交渉力の格差が存在する。
一方において、情報・交渉力において貸金業者との間に格差が存在しない一定規模以上の事業者が存在することも事実であるが、そもそも、情報・交渉力において貸金業者との間に格差がない事業者は、貸金業者から高利で借入をすることはなく、利息制限法制限利率以下の金利で調達するのであるから、事業者向け貸付けについて消費者向け金融と別に議論する実益がない。
そもそも、世の中には「高利であっても融資を受けたい」などという需要は存在せず、「高利であるが借りざるを得ない」という需要が存在するだけである。
○手数料、保証料の問題
【意見】規制が必要である。
【理由】平成12年の出資法上限金利引下げ以降、形態的には別法人であるが実際には支配下にある保証会社などを介在させて保証料などの名目をもって金員を徴収する貸金業者が増加している。出資法上限金利と利息制限法上限金利と同一にするに際しては、これを保証料名目などにより潜脱することのないような措置を構ずるべきである。
○特例金利の是非(例:少額短期の貸付)
【意見】少額短期の貸付等に特例金利を認めるべきではない。
【理由】上限金利設定にあたり、「少額50万円・短期1年以内は例外を認める」ということは利息制限法よる資金需要者の保護を骨抜きにするものであり、現行法の制度改悪につながるものである。
「50万円の融資を1年で終了して、以後は貸さない」という貸金業者は存在しないのであり、業者が利益を上げるためには、「長期」にする必要があるために、借換えを繰り返し結果として長い取引を余儀なくされ、破綻に追い込まれていくのである。
零細企業の融資をしているロプロなどの業者から借り入れをしている債務者によれば、「短期小口の貸付」の宣伝につられ貸付を申込み、保証人を付けられて、取引を長く継続させられ、結果として債務者は破綻していくのである。すなわち、年利29.2%の金利を支払って、なおかつ企業経営が成りたつ企業はほとんど皆無である。
○経過措置(例:準備期間、既存貸付にかかる金利の取扱い等)
【意見】既存貸付け(金員が現実に交付されている)についての金利については、当然に改正前の金利が適用されるべきであるが、この場合でも、貸金業規制法43条の要件を厳格に解釈し、これが満たされていない場合には利息制限法を適用すべきである。
法改正後の新規の貸付けについては、速やかに新法を適用すべきであり、段階的な金利引下げなどの方策を採るべきでない。
【理由】現状においても、最高裁判決により殆どの貸金業者との金銭消費貸借取引について貸金業規制法43条の要件が満たされていないにもかかわらず、貸金業者は違法な金利を収受し続けており、段階的な金利引下げは、この現状を追認することになる。
一部には、金利引下げが行なわれた場合に、ハイリスク層(多重債務者)が貸金業者からの借入から排除される結果、これにより貸金業者の貸し出し総額を減少させ、これにより国民全体の消費支出を減少させ、ひいては景気にも影響をもたらすとの意見もあるが、この考え方は明らかな誤りである。
ハイリスク層(多重債務者)の借入は、既存借入の返済のためのものであり、そもそも、このような借入は消費支出を増大させることはなく不健全な資金需要といえるものである。
一方、ローリスク層にとっては、金利引下げにより借入需要が増大し、これによって消費支出が増大されることが予想され、景気を押し上げることにもなる。
したがって、全体としては金利引下げにより、貸金業者の貸出総額は増加することが予想されるので、総量規制の強化としてガイドライン等を作成し、遵守されなければ、業務改善命令等の措置を施すべきである。
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