『「貸金業制度等の改革に関する基本的考え方」の検討状況について』に対する意見
2006年8月28日
日本司法書士会連合会 消費者問題対策本部
多重債務問題対策部
第19回貸金業制度等に関する懇談会で示された『「貸金業制度等の改革に関する基本的考え方」の検討状況について』(以下「原案」という)に対し、その項目ごとに、意見およびその理由を指摘する。
○ 参入規制
@ 財産的基礎要件
【意見】原案に賛成する。
【理由】貸金業者の現在の財産的基礎要件(個人300万円、法人1000万円)は、貸金業としては低額過ぎて相当でないと考える。個人・法人を問わず、最低でも1000万円以上とすべきである。
A 貸金業務取扱主任者
【意見】貸金業務取扱主任者の業務および責任の明確化を求める。
【理由】原案では、@貸金業務取扱主任者の資格試験化、A営業所及び事務所毎に登録主任者を選任すると示されているが、宅地建物取引主任者のように、貸金業務取扱主任者を個々の契約へ必要的に関与させることを前提に、貸金業務取扱主任者の業務および責任の明文化を求める。
例として、原案が ○ 説明義務の強化等 の項目で指摘する「契約内容を説明する書面を事前に交付する」際、その説明を貸金業務取扱主任者が行わなければならない等の規定を設け、これに違反した場合の罰則を明文化する等の方法が考えられる。
○ 貸金業協会の自主規制機能強化
【意見】カウンセリングの運営主体を貸金業協会に担わせることに反対する。
【理由】○ カウンセリング体制の充実 の項目に併せて理由を述べる。
○ 広告・勧誘規制の強化
【意見】1.表示方法や内容が不当な広告に対し、金融庁による監督を強化すべきである。
2.貸金業協会内に、広告内容の審査機関を創設すべきである。
【理由】1.2.資金需要者のほとんどがテレビCMやダイレクトメール、新聞雑誌に掲載された広告を目にして融資を申し込むのが実態であるから、その表示方法や内容は、正確かつ資金需要者にとって分かりやすいものでなければならない。先般、金融庁では都市銀行の行う住宅ローンに関する広告内容の一部に不当性があるとして是正勧告がなされていたが、同様に貸金業者が行う広告についても、金融庁の強いリーダーシップに基づく監督強化が図られるべきである。
一方、広告の表示方法や内容の不当性は、貸金業協会内部の委員のみの自主規制に委ねることには実効性に疑問が残る。そこで、貸金業協会内に、外部委員を招聘し、広告に関する苦情や相談の受付、不当な広告の是正や排除を目的とする広告審査機関を創設することを提案する。
○ 取立規制の強化
【意見】取立規制の違反につき、民事効の制定を求める。
【理由】貸金業者のノルマ至上主義が、さまざまな違法取立をもたらしてきたことは報道等により明らかである。よって、取立規制の実効性を確保するためには、違法行為に対するペナルティーが課され、違法取立をすることがかえって貸金業者に経済的損失をもたらす制度が求められる。
具体的には、違法取立を受けた債務者が借入金債務相当額の損害を被ったたものと推定する規定を設けるなどの措置が考えられる。
○ 公正証書作成委任状にかかる規制強化
【意見】貸金業者による公正証書作成委任状の取得を禁止すべきである。
【理由】公正証書作成を委任した旨の認識がまったくないまま強制執行を受けるというトラブルが、商工ローン業者を中心として後を絶たないのであるから、貸金業者による公正証書作成委任状の取得自体を禁止すべきである。
○ 説明義務の強化等
【意見】1.新規契約あるいは契約更新の際には、例外なく貸金業務取扱主任者による契約内容の説明を行うべきである。
2.記載事項の簡素化、書面の電子化には反対する。
【理由】1.○ 参入規制 で指摘したとおり、新規契約あるいは契約更新の際、貸金業務取扱主任者が契約内容を説明し、説明した旨および貸金業務取扱主任者の氏名を明記した書面を保存・開示の対象とすることにより、債務者の契約内容への理解が深まり、予期せぬトラブルの防止につながる。この説明は、すべての新規契約あるいは契約更新時に適用されるべきである。
なお、自動契約機による借入れについては、安易な借入れを助長し、多重債務問題の原因となっているところから、対面与信を原則とすべきである。
2.多くの委員から反対があったように、記載事項の簡素化、書面の電子化は、原案が打ち出す「説明義務の強化」と相反するものであり、当会もこれに反対する。
○ 監督手法の強化
【意見】原案に賛成する。
【理由】消費者保護の観点から、金融庁等の監督手法の強化は不可欠と考える。
なお、すべての登録業者の事業報告書提出義務違反に対する行政処分は、提出義務の実効性を担保するため、業務停止等の重たい処分とすべきである。
○ 罰則の適正化
【意見】原案に賛成する。
【理由】多重債務を防止し、借り手保護の健全な貸金業制度を構築するには、無登録営業、無登録業者による公告・勧誘等が行われないようにする施策が必要である。
○ 信用情報機関
@ 貸金業者が個人向け貸付けを行う場合、金融庁が一定の要件の下指定する信用情報機関の信用情報の利用を義務づけ。
A 個人信用情報保護のための規制
【意見】1.登録情報を特定する符号・番号等を貸金業規制法18条書面の記載事項とすべきである。
2.信用情報機関ごとの情報交流は、借入総額と借入件数に限定して行うべきである。
3.交流情報の取得は、貸付審査の目的に限定されるべきである。
4.不当な情報取得に対する規制・罰則の制定を求める。
【理由】1.原案が ○ 過剰貸付規制の強化 で指摘する総量規制の適性化が担保されるためには、すべての貸付情報が信用情報機関に登録されていることが不可欠である。貸金業者が貸付けを行った後、信用情報機関への登録を特定する符号・番号等を貸金業規制法18条書面の記載事項とすることで全件登録が担保されるから、そのための法改正と、これに対応する信用情報機関のシステム整備が求められる。
2.3.4.同じく総量規制の適性化のためには、各信用情報機関に登録されたいわゆる「ホワイト情報」の交流も不可欠である。一方でこれを無制限に認めることは、逆に、「貸し込み」や「おまとめローンの勧誘」といった貸金業規制法30条2項違反行為を助長する原因ともなり得るため、慎重な対応が求められる。
そこで、ホワイト情報の交流は借入総額と借入件数に限定するものとし、その利用目的も「貸付審査」に限定されるべきであり、融資の申し込みを受けていない段階で勧誘等の目的をもって交流情報を取得することは、厳に禁止されるべきである。目的外使用を厳に制限することは、原案が指摘する A個人信用情報保護のための規制 にも資するものである。
また、目的外使用を排除、個人情報保護を徹底強化するため、不当な情報取得に対する規制・罰則を明文化すべきである。
○ カウンセリング体制の充実
【意見】カウンセリングの運営主体を貸金業協会に担わせることに反対する。
【理由】貸金業協会の行うカウンセリングには、利息制限法を無視した返済の強要、過払い事案についての破産申立の強要といったトラブル事例が現実に報告されており、公平性・中立性の確保という点で疑問が残る。
そこで、貸金業協会自らの出資によるカウンセリング機関を別途設け、司法関係者の必要的関与の下、公平・中立なカウンセリング業務が行われる基盤を整備することを提案する。
○ 過剰貸付規制の強化
@ 返済能力の調査義務
A 過剰貸付けの禁止
【意見】1.下記のいずれかを超える貸付けについて、資金需要者の提出した年収等及び可処分所得を証する資料に基づき返済能力を審査することを義務付けるべきである。
(1)貸金業者1社あたり50万円または当該資金需要者の年収額の10%のいずれか低い額
(2)他社をあわせて総額150万円または当該資金需要者の年収額の3分の1のいずれか低い額
2.1.の資料は、保存・開示義務の対象とすべきである。
3.過剰貸付け違反に対する民事効・行政処分の制定を求める。
【理由】1.2.3.迅速な貸付けという資金需要者の要請に応えつつ、過剰貸付けの防止にも対応するため、上記(1)(2)基準を設け、この範囲では簡易な審査での貸付けを認めることとすべきである。一方、当該基準を超える貸付けについては、年収等だけでなく、資金需要者の可処分所得を証する資料(家計表、預金通帳の写し等が考えられる)の提出を求め、書面に基づく厳格な審査を課すことで、返済能力の範囲を超える貸付けの防止を図るべきと考える。
また、実効性を確保するためには、違反行為に対する民事効や行政処分の制定が不可欠であるが、資金需要者の提出した資料につき、貸金業者の保存・開示義務を課すことにより、後日の紛争の場面において過剰貸付けであったか否かの判断が容易となる。
上記(1)(2)の基準を超える額を融資した貸金業者が、当該資金需要者の返済能力を証明できない場合には、当該貸付金の返還を求めることができないなどの規定が考えられる。
○ 支払額・返済期間の適正化
【意見】原案に賛成する。
○ 上限金利の見直し
【意見】1.出資法の上限金利は、現行利息制限法の上限金利と一致させるべきである。
2.利息制限法第4条中、「1.46倍」とあるのを「1倍」に変更することを求める。
【理由】1.原案では、刑事罰に関する構成要件の明確性という問題を指摘し、口頭にて「上限金利を20%に一本化する」との案も提示された。利息制限法の上限金利を20%に一本化するのか、出資法の上限金利を20%に一本化するのかは必ずしも明らかでないが、貸金業制度等に関する懇談会が資金需要者の保護を目的として議論を重ねてきた経緯に照らすと、前者は「金利引き上げ」という相反する結論を導くことになり、容認できない。後者の場合、みなし弁済規定が廃止されるという前提に立てば、年利20%とする10万円未満の貸付け契約が刑事罰の対象とはならず、結果として利息制限法違反行為を常態化させるおそれが高い。
多くの委員からの指摘もあるように、数字だけの違いであって、構成要件が不明瞭になるとの指摘は妥当性がなく、出資法の上限金利は現行利息制限法と一致させるべきであり、貸付け額により適用利率を定めるべきである。
2.出資法の上限金利が利息制限法の上限金利と一致することとの整合性を図るため、利息制限法4条が定める遅延損害金の利率は、利息制限法の上限利率の1倍と変更すべきである。
○ 上限金利の特例措置
【意見】少額短期貸付けに関する特例の導入に反対する。
【理由】委員からの指摘があったように、「少額短期の資金需要」の定義付けがなされていない状態では、原案がどのような資金需要を想定しているのかが判然としない。「旅先での手許不如意」などが例に挙げられるが、極めて限定的な場面であって、あえて特例を設けるほどの需要があるとは到底考えられない。
また、「給料日前の1週間程度の生活費」の需要に応えるために「1ヶ月程度」の短期で特例を設けるとの意見も出されたが、このような資金需要は、「毎月給料日前には資金不足が生じる」という点で「短期」ではなく恒常的な資金需要のであり、慢性的な生活苦にある者の資金需要とその性質は変わらないのであり、特例による保護に値しない。
業界側出身の委員以外は、ほぼ「特例否定」で一致している中、あえて特例を設けるのであれば、原案の指摘する「資金需要」を明快に提示すべきである。多くの委員同様、特例の導入には強く反対する。
昭和39年から昭和43年の最高裁判決によって、利息制限法はそもそも例外を許さない強行法規であることが明らかにされたにもかかわらず、貸金業規制法43条によりグレーゾーン金利が認められた結果、多重債務問題を深刻化させ今日に至っている。平成16年以降の一連の最高裁判決により、利息制限法の厳格適用が明確化された現在において、特例金利を認めることは、グレーゾーン金利の過ちを再び繰り返すことに他ならないのである。
○ 金利の概念
【意見】ATM手数料、保証料、媒介手数料等、あらゆる名目により取得した金銭を「みなし利息」とすべきである。
【理由】「みなし利息」については、利息制限法3条および出資法5条に明文規定があり、この解釈の問題ではあるが、現実に保証料等が利息制限法の潜脱を目的として取得されている現実があり、看過できない。出資法の上限金利引き下げが骨抜きとならないためにも、例外なく「みなし利息」に該当する旨を明確にし、利息制限法および出資法の「みなし利息」の定義を統一すべきである。
○ 経過措置
【意見】みなし弁済規定の廃止、出資法の上限金利引き下げにつき、直ちに施行すべきである。
【理由】みなし弁済規定の廃止は、各委員間で一致した合意点であり、経過措置により存続させる理由はない。出資法の上限金利引き下げについても、委員からの指摘のとおり、すでに6年間据え置かれてきた現状にあり、貸金業界においても引き下げは受け入れざるを得ないものとの認識にあろう。現に、複数のカード会社では、キャッシングの金利を利息制限法所定の範囲内に自主的に引き下げているが、これは出資法の上限金利引下げを見据えた動きにほかならない。
このように、出資法の上限金利引き下げは既に各方面で十分に予測され、準備されつつあるものであり、原案が指摘する「激変」の生じる余地は少なないものと考える。
○ セーフティネット
【意見】原案に賛成する。
なお、関係省庁のみならず、地方自治体等との連携した取組みも検討すべきである。
【理由】緊急小口資金制度については、制度広報の周知徹底の強化が必要であり、生活福祉資金貸付制度については、現行の貸付金額(1世帯5万円)の増額等の見直しも必要であり、関係省庁のみならず、地方自治体等との連携した取組みの検討も必要であると考える。
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