共謀罪に反対する声明
2006年8月23日
〒160-0004 東京都新宿区四谷1−2
全国青年司法書士協議会
会 長 大 部 孝
政府は、共謀罪法案(犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案)を、2003年の通常国会から幾度にわたり国会に提出し、毎回廃案となりながら、またも2006年の通常国会で強行に審議に入ったが成立せず、さらに次期国会で継続審議の姿勢を示している。
もともと多くの問題点が指摘される上記法案について、修正案がいくつかの限定を加えたことについては一定の評価をし得るものの、そもそも指摘されている問題点についてはいまだ改善されないまま、繰り返し国会審議に持ち込む政府の姿勢には、当会としては、遺憾の意を表せざるを得ない。
当会としては、国民の権利の保護に寄与する司法書士の使命に基づき、現段階における上記法案には強く反対する。
なお、当会が指摘する上記法案の問題点は、以下のとおりである。
(共謀罪法案の問題点)
@ 本法案の契機は、国連越境組織犯罪防止条約に基づくものであるが、この条約の目的は、国際的な組織犯罪を防止するものであることは明らかである。そうすると、我が国の国内法の犯罪類型として、国境を越える類型の犯罪に限って適用する旨を規定するべきであるし、またそうすることは条約の趣旨に反するものではない。にもかかわらず、本法案は、「長期4年以上の懲役又は禁錮」という枠組みで、道路交通法・破産法等、およそ国際的組織的犯罪集団とは無縁と思われるものまで、その枠組みに一律に組み入れられている。その結果、対象犯罪が600以上にも及び、あまりに広範となっている。先ずはこのことがA以下のすべての問題点の根源となっている。やはり、共謀罪は、現実に国際的組織的犯罪集団が行うと予測される犯罪類型に限定して対象犯罪を定めるべきであり、また、そのような立法は可能である。
A 本法案では、自首した者の罪を減免するという規定が盛り込まれているが、この規定によれば、自ら共謀を持ちかけた者が自首して刑を免れることができ、共謀を持ちかけられて困惑している者が共謀罪に処せられる場合がありうる。刑事訴訟法によって仮に囮捜査が可能となれば、このようにして不当な処罰がなされる危険がある。また、一旦共謀に加わった者は犯罪の実行をやめることを他の共謀者に説得し、その合意ができたとしても、それだけでは共謀罪の適用に関して減免を受けることはできず、警察に自首する以外に刑の減免を受ける方法がないということになる。法案が、自首した者について免除ではなく「減免」と規定されている以上、これを望んで自首する者が多いとは思われない。つまり、このような法案では、必ずしも犯罪を未然に防止するという、そもそもの法案の目的を達成することはできない。
B 修正案では、団体の定義について一定の限定を加えるが、この限定は、団体の「活動」に着目して限定を加えたものであって、その団体の過去の犯罪経歴等はまったく要件とされていない。したがって、団体の一部の構成員が一定の犯罪の共謀を行ったことだけで団体自体に犯罪目的ありと解釈される。よって、修正案をもってしても、団体自体に限定が加えられたと解することはできない。その結果、犯罪性のない会社や市民団体、労働団体など組織犯罪集団でないものも法案が想定する団体に含まれてしまうことになり、憲法21条が保障する一般市民の「集会・結社の自由」が侵害される危険性が高い。
C 修正案では、共謀に加えて、「犯罪の実行に資する行為」が必要であるとして処罰の対象を限定するが、「犯罪の実行に資する行為」は、文言上、幇助や予備行為・準備行為よりも、極めて抽象的であり広く解しうる。よって、このような概念を加えたとしても、処罰の対象を限定することにはならない。その結果、一定の発言が犯罪の実行に精神的に寄与しているとして、「行為」ではなく、「意思」や「思想」を処罰することになり得るのであるから、憲法19条が保障する「思想・信条の自由」が侵害される危険性が極めて高い。
D さらに、共謀罪を立件し、公判を維持するためには、犯罪捜査の段階において、前記の囮捜査のみならず、個人の会話や電話・電子メール等の内容そのものが共謀の証拠として重視されることは明白である。よって、捜査機関による通信傍受が広く横行する事態となることは容易に想像される。すなわち、共謀罪の捜査のために、広く市民のプライバシーが密かに監視の対象とされ、ひいては憲法21条が禁止する「検閲」に道を拓き、また同条が保障する「通信の秘密」を侵害するものとなる。
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