司法制度改革の時代を司法書士として生きる!
〜全青司活動現場からのレポート〜




当番司法書士制度(仮称)の構築について(平成17年4月30日)

 1.当番司法書士制度(仮称)の構築について

(1)基本方針

 総合法律支援法が制定され、来年に施行されようとしている。
 その目的は同法1条によれば、『この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、法による紛争の解決が一層重要になることにかんがみ、裁判その他の法による紛争の解決のための制度の利用をより容易にするとともに弁護士及び弁護士法人並びに司法書士その他の隣接法律専門職者のサービスをより身近に受けられるようにするための総合的な支援の実施及び体制の整備に関し、その基本理念、国等の責務その他の基本となる事項を定めるとともに、その中核となる日本司法支援センターの組織及び運営について定め、もってより自由かつ公正な社会の形成に資することを目的とする。』とされている。
 そして、その基本理念は、同法第2条によれば、『総合法律支援の実施及び体制の整備は、民事、刑事を問わず、あまねく全国において、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会を実現することを目指して行われるものとする。』と極めて明確であり、全青司としてもこの理念について全く異論はない。
 もちろん、青法協等がかねてから指摘し続けてきた、支援センター構想がもたらす刑事弁護と弁護士自治に関する諸問題については、共感できるものである。すなわち、「平成16年5月に成立した「総合法律支援法」は、青法協の長年の要求であった被疑者段階の国選弁護人制度を実現するもので、この点では大きな意味を持つが、その反面、国選弁護人の指命等の重要な業務を、法務大臣が監督する独立行政法人である支援センターが行うなど、さまざまな問題点がある」という意見については全青司としても関心を払う必要があろう。
 しかし、民事事件に限定されるであろう司法書士の関与形態については、先に述べた弁護士のような刑事弁護に絡んだ弁護士自治の問題は想定できないが、他方において、「総合法律支援法に盛り込まれた司法書士職能の責務をどう考え、どう実績を重ねていくのか」という問題がより深刻なものになると考えられる。
 ところで、同法による支援センター構想によるいわゆる「司法ネット」は、先に述べた基本理念を即座に達成できうるものになるのであろうか。
 全青司の答えは「否」である。予算の問題等、現状では、各県に拠点が一つ置かれる程度に留まるものと考えられることを鑑みれば、よほど効果的な広報や人的基盤等がなければ、法の定める基本理念にはほど遠い結果となることすら懸念されよう。
 もちろん、各県において、事情は大きく異なるであろうが、我々司法書士は司法アクセスに資する職能として国から期待されている現実を単純に受け止めるだけでは不十分と考える。つまり、司法支援センター構想に対する積極的な協力はもちろんであるが、それだけに留まらず、この構想でさえ埋めることのできない司法過疎に対する対応こそ、全青司で補うべきであると考えるものである。

 一方、日司連においても、平成18年度からの日本司法支援センター制度のスタートに照準をあわせ、平成17年度から「司法書士総合相談センター」事業を全国展開する模様である。
 初年度は全国50の司法書士会で会の事務所所在地と他の地域に一箇所以上のアクセスポイントを設ける意向であり、事業開始後3年後には、300箇所を超える「センター」が設置されることを目標としているとのことである。
 そして、各司法書士会によるサービス提供窓口として機能させるために、@各地域で毎月一回以上の相談会を開催する、A専用電話を設ける、B利用者の希望に応じ司法書士に振り分けることができることが設置の要件とされている。
 しかしながら、これについても決して十分とは言えない。
 まず、第一に、アクセスポイントが圧倒的に足りない。第二に、相談会の実施回数が圧倒的に足りないと考える。
 もちろん、このセンター構想を否定するものではないが、これが現実化されたとしても、総合法律支援法の理念には程遠いものと考えざるをえない。

(2)簡易裁判所の現状

 一方、改正司法書士の施行に伴い、多くの全青司会員が、全国の簡易裁判所の法廷に立つこととなった。そして、必然として簡易裁判所の現状を目の当たりにすることとなった。
 そこには、これまで繰り返し述べられたとおり、一部の消費者金融業者、信販業者を原告とし、専門家に支援されない消費者が被告となっているいわゆる業者事件が大量に処理されているという現実があったと言わざるを得ない。
 被告席に座る消費者を見て、私が代理人に就いていたら・・・と歯痒い思いをしたことのある会員は多いのではないだろうか。
 すなわち、全国の簡易裁判所においても、依然として、司法過疎と言わざるを得ない状態が続いていると言わざるを得ないのである。

(3)これまでの司法アクセスの困難性

 司法アクセスを充実させるためには、なぜこれまで十分な司法アクセスが保障されていなかったかを検討する必要がある。これまで様々な場所において検討されてきたことではあるが、ここで再確認してみたい。全青司としては、これを次のとおりと考える。

@司法書士・弁護士へのアクセスが悪い。
(1)司法書士・弁護士が1人もいない,あるいは1人しかいないいわゆる司法書士・弁護士ゼロ・ワン地域など司法アクセスの過疎地域が存在する。
(2) 市や県等の各相談窓口において,法律相談や紛争解決機関などへのアクセスに関する情報が十分に集約・整理されていない。そのため、相談者に対し,必要な情報提供や適切な紛争解決機関への振り分けが行われていない。当該相談窓口等での相談の結果,司法書士・弁護士等への依頼が必要となる場合にも,直ちに受任手続につながらない場合がある。
(3)敷居が高い。
(4)費用に不安がある。
(5)アクセス手段が分からない。

A司法書士業務範囲が知られていない。

B法律扶助の手続が知られていない。

C専門家に依頼した場合の費用対効果の点で不安がある。

(4)司法アクセスの拡充のために

@様々な無料相談会へのアクセスの周知徹底

 利用者が自身の抱える紛争等に関して、どのような解決方法が考えられるのか、容易にアクセスできる第一の手段は、市や県などの主催する無料法律相談、司法書士会・弁護士会などの無料法律相談であろうと思われる。
 したがって、このような相談会が、いつ、どこで開催されているのかを周知徹底させることが重要であろう。
 この点については、各単位会(本会・青司協)が行うべきものであり、その方が機能的であり効率的であろう。
 しかしながら、仮に、様々な無料相談会へのアクセスの周知徹底がなされたとしても、実際に必要に応じて受任する専門家が具体的に存在しなければ、司法アクセスの拡充には繋がらない。

A司法書士業務の周知徹底

 改正司法書士法の施行からまだ日が浅いこともあり、いまだに国民に司法書士の新しい業務範囲が知れ渡っているとは言い難い状況がある。
 したがって、司法書士に何ができるのか、その職務範囲についての広報も継続して行わなければならない。
 この点については、全青司としてもHP等でより一層充実化を図る必要があると考える。
 しかしながら、仮に、司法書士業務の周知徹底がなされたとしても、実際に必要に応じて受任する司法書士が具体的に存在しなければ、司法アクセスの拡充には繋がらない。

Bゼロワン地域に対する対応

 全青司では、古くからこの問題に対しては、「巡回法律相談」事業等として積極的に取り組んできた。
 また、日司連でも、近時この問題にフォーラムの開催等積極的に取り組んでいるが、今後の取り組みの強化がおおいに期待される分野である。
 究極的には、ゼロワン地域における司法書士の開業、もしくは、公設事務所等の設置によるしかないものと考えられるため、全青司としては、巡回法律相談事業の継続はもとより当該地域における開業希望者に関する支援を継続していく所存である。
 しなしながら、この問題は極めて大きく、これらの活動のみで、即座に解決できる問題ではないことは、そうした活動に従事してきた会員をはじめとする会員全員の共通の認識であろうと思われる。
 さらに、仮に、当該地域に専門家が開業したとしても、極めて少数の事務所に事件が集中することが容易に予想されるところでもある。実際に必要に応じて受任する専門家が具体的に複数存在しなければ、やはり司法アクセスの拡充には繋がらない。

C費用の明確化

 専門家の報酬体系は、利用者にとって分かりやすいものでなければならない。報酬基準が廃止された現在、各事務所の報酬体系は自由化されるに至ったが、決して不明瞭であってはならない。
 しかしながら、仮に、専門家の費用の明確化がなされたとしても、それが費用対効果の点での不安を払拭できないものであれば、利用者は専門家への委任を躊躇せざるをえないであろうから、司法アクセスの拡充には繋がらない。

D法律扶助制度についての周知徹底

 法律扶助の審査の現場からも言えることだが、過去に法律扶助制度を利用したことのある利用者は皆無に等しく、いわゆる持ち込み事案においても、「知らなかった」と回答する利用者が圧倒的多数を占めている。
 この事実は、法律扶助制度を知らない当事者の扶助相当と考えられる事件が、極めて多数潜在的に存在していることを予想させる。
 全青司としても、法律扶助制度についての周知徹底について継続的に検討する所存である。
 しかしながら、仮に、法律扶助制度についての周知徹底がなされたとしても、扶助の審査基準を満たす事件でなければならないことは当然である。
 また、審査基準を満たす事件であっても、第一回口頭弁論期日を間近に控えた被告事件の場合、地域によっては、審査日を待たねば受任が困難という問題も残る。

E費用対効果の問題について

 例えば、金10万円の貸し金請求訴訟を欲している相談者がいたとする。事情聴取をしてみても和解の成立の見込みが低いと考えら得る場合、多くの専門家であれば、相談者にとっての費用対効果を鑑み、受任をしないか本人による少額訴訟を勧めるということになるものと思われる。もちろん事案によっては、僅少な報酬で受任する場合もあろうが、そもそも訴額が極めて低額の事案のとき、相談者自身が委任を躊躇している現実も決して少なくないであろう。委任に至らない泣き寝入りである。
 当然、訴額の極めて低い事件の中には、訴訟ではなく裁判外における和解交渉によって解決が図られるものも少なくないであろうが、極めて少額であっても絶対に泣き寝入りをしたくないという相談者のニーズを放置することもまた許されないのではないだろうか。

F専門家の敷居が高いとの批判について

 全青司は、常に利用者である市民の身近な存在であり続けることを宣言し、実践してきた。この点についてはこれからも変わらない。

(5)当番司法書士制度(仮称)の必要性

 このように検証していけば、おのずと、現在、どのような場所で、また、どのような事件において司法過疎が顕著であり、専門家の支援が最も必要とされているのか、言い換えれば、全青司の当番司法書士制度(仮称)が、どのようなところに最も必要とされているかが見えてくる。

 具体的には、

@いわゆるゼロワン地域の事件
A全国の簡易裁判所に膨大に提起されている、原告を消費者金融業者・信販業者等とする、いわゆる業者事件の被告事件
B極めて訴額の少ない事件

 になろうかと考える。

 @については、そもそも受任できる専門家が不在であるから、訴額や事件の種類を問わず必要であることには異論なかろう。
 ただし、法律扶助制度においても、審査会の事前の承認を条件として一定範囲内における出張旅費(旅費・宿泊費については実費等)の立替支出を認めている。事案によってはこれを検討できる余地があるので注意が必要であろう。

 Aについては、当事者は、いわゆる多重債務状態に陥っている場合が多いと想定され、そうであれば、究極的には法律扶助を利用した破産手続等にシフトすることになるものと考えられるが、現実に提起されている訴訟を放置することは給与等の執行の余地を残すこととなり望ましくない。
 一方、法律扶助により、当該事件を委任する余地もあるが、扶助の要件としての「勝訴の見込みがないとはいえないこと」を満たさないものが多いと考えられる(例外的に不当利得返還請求訴訟の反訴が可能な事案もあろうが、大多数は事実に争いはないものと思われる。)。
 したがって、この種の事件に対する必要性も高いと考えられる。
 一方、法律扶助審査が頻繁に行われている地域であれば格別、第一回口頭弁論期日までに審査日がなく、審査日を待てずに受任が必要な場合も考えられる。
 しかし、このような場合、緊急な手続が必要な事件の取り扱いとして、「第一回期日が迫っているとき」には、期日変更が可能であれば延期をさせ、変更不可の場合には第一回期日に出席し法律扶助の手続中であることを説明するよう指示するという対応を指導することになっている。
 したがって、他の要件を満たしている事案であれば、上記のような対応ができる余地もある。

 Bについては、そもそも法律扶助制度の利用ができない可能性が高い。すなわち、少額事件(訴額が50万円未満)は、受任者の費用や強制執行の費用との関係で、代理援助では必ずしも利用者に経済的利益が期待できず、受任者の確保が困難であることから、一般には代理援助としては決定をしにくいというのが現状だからである。
 もちろん、相談を担当した司法書士が受任の意思を表明し、利用者が立替費用の償還等について了解していれば援助は可能となる。代理援助ではなく書類作成援助を検討することも費用対効果の点で有効と考えられる。
 したがって、法律扶助が利用できれば法律扶助を利用することができるが、訴額の問題で、それが困難である場合には、やはりこの制度の必要性は高いと考えられる。




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