1.ADRに関する取り組み(代表者会議に向けて)
裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR基本法)が制定され、日司連においてもセンター構想が提示され、各単位会本会にセンターが設置されようとしています。
どの程度の利用がなされるのか、私には予想できませんが、いずれにせよ全国の単位会でこのセンターの中心を担うのは全青司会員であることは間違いないでしょう。
全青司においても、ADRに対する取り組みについて昨年度以前から議論を継続してきたところでありますが、施行を間近に控えた現在、利用者である国民の視点に立ち、いかに実践していくべきか検討しなければならないでしょう。
(1)ところで、和田仁孝教授によれば、ADRの基本理念は大きく次の二つに分かれるとされています。
@裁判協働型理念
最上部に「裁判」、真ん中に「ADR」、一番下に「交渉」というピラミッド型というイメージ。
時間もかかり、コストもかかり、簡単にアクセスできない、まさに限定的な裁判についての補完的存在としてのADRという理念であり、裁判と類似の法的解決をより簡便提供する、本来満たされるべき権利が裁判外でも満たされるような役割を担う存在としてのADRであります。
A脱裁判型理念
裁判とは異質な、あるいは裁判を超えたニーズにも応答できるそうした解決を提供していく存在としてのADRという理念。
今般制定されたADR法は、その規定から、まさに@の理念に基づいていると言えますが、それはADRと定義されるもののごく一部でしかありません。
まずは、ADRというものの範囲に属するものにどのようなものが存在するのか、そして、それらの特徴、メリット・デメリットをその理念とともに的確に押さえておく必要がありましょう。
(2)一方、これも和田仁孝教授の論考によりますが、ADRに向けられたニーズは以下の3つに分類されるとしています。
@効率性ニーズ
国民の権利意識の高まりにより、次第に増加している紛争を効率的に処理する必要性(同時に、社会全体としても正義を浸透させていこうという発想)。
国から見れば、上手に紛争をADRにも振りわけ、訴訟が重要な事案に専念できるようにすることと、大量の紛争処理ニーズにより簡易・迅速に応答できるようにすることがニーズとされてきた。
A専門性ニーズ
科学技術の高度発展により、いわばオールマイティである裁判制度では対応しきれない紛争類型につき、より専門的な観点からの処理をスムーズかつ的確に行う必要性。例として、特許、医療、境界、登記などの分野。
B日常性ニーズ(もっとも根源的なニーズ)
法システムでは対応できないような感情的な問題や人間関係的な問題などに対する応答についての必要性。
これまでであれば、企業や地域社会、家族親族のネットワークなどの共同的な社会関係の中で解消されてきた紛争が、共同体の崩壊・希薄化によって法律家の前に現れてくる。医療の世界を考えると非常に分かりやすい(これまでは、専門知識に基づいて病気を治すのが仕事であったが、近時では、高齢者のケアやホスピスでのケア、生活習慣病への対応などが当然とされ、医学部のカリキュラムにも患者とのコミュニケーション・スキルが組み込まれている。)
ADRによれば、紛争処理の過程で何を扱うか、どのようにプロセスを構成するか、どういう解決を創り上げるかについて自由度が高く、様々な形で設計できる。
(3)このようにみていきますと、既存の紛争解決手段の枠では捉えきれない新しい視点が、脱裁判型理念であり、これによれば日常性ニーズにも対応できるのではないかという可能性を感じ取れるかと思います。
さらに言えば、個人的には、どうせ単位会に調停センターを作るのであれば、利用者にとってその特徴が分かりやすく、有益なものにしたいという視点が最重要だと思っていますので、既存のものに置き換えられるものであればあまり意味がないのではないかと考えています。つまり、仮に、司法書士会が民事調停のようなことをやったとしても、執行力も付与されないのであれば、利用者にとっては、より権威性のある裁判所を利用した方がいいのではないかという視点であります。
そうであれば、あくまで個人的な見解ですが、各単位会における調停センターは、脱裁判型理念に基づく調停、いわゆるメディエーションに特化したものにしてしまう方が、利用者にとっては分かりやすいし、また、利用価値もあるのではないでしょうか。漠然とそう考えています。
皆様のご意見をお伺いしたいところです。
(4)さて、7月に仙台で行う予定の代表者会議については、以前から予告しているとおり、ADRをメインテーマとした企画を考えております。
基本的な考え方としては、ADRの中でも、とりわけ新しい可能性を持った紛争解決手段であるメディエーションというものに対する理解を深めていただき、今後の取り組みについてのヒントを掴んでもらいたいというものです。
そして、全青司としては、今後ADRについて、どのようなスタンスで取り組んでいくべきかを、皆様と一緒に考えたいと思っています。近日中に文書にて正式なご案内をさせていただきます。代表者の皆様におかれましては、是非とも、地元での議論を進めていただきたいと考えています。
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