司法制度改革の時代を司法書士として生きる!
〜全青司活動現場からのレポート〜




全青司主催「金利引き下げ集会」と「消費者シンポジウム」In愛知司法書士会館(平成17年7月4日)

  1.金利引き下げ集会(全青司制度委員会消費者法制部会 中里功会員)

 平成17年7月2日(土)、3日(日)、愛知県司法書士会館において、全青司主催の「金利引き下げ集会・消費者シンポジウム」が開催されました。設営にご協力いただいた地元昭和会の皆様、愛知かきつばたの会の皆様に改めて御礼申し上げます。

(1)開催趣旨については、下記のとおりです。
 消費者問題、ことにクレジット・サラ金の被害者救済活動に携わる者は、最先端の情報を常に収集しそこで駆使された法理論を自身の頭で消化する責務があります。ことに新たな問題に直面した場合、仲間が集い英知を結集して局面を打破するために議論を重ねることは、被害者救済へのエネルギーを養うことに寄与します。数年来の継続事業として定着した全青司・消費者問題シンポジウムは、時代時代のホットな論点に焦点を当てることで、多くの会員のエネルギーを喚起してまいりました。平成17年度の第1回シンポジウムは、施行されて間もない「個人情報保護法」を取り上げます。同法は取引履歴を拒む業者側の盾になるのか、逆に取引履歴の開示を請求する側の矛になるのか。出席者の皆さんと大いに議論したいと考えております。
 一方、実務に没頭するだけが法律家の使命ではありません。法律家は運動家でもあるべきであり、この点は、司法書士が弁護士の後塵を拝する点ではないでしょうか。平成19年1月に出資法上限金利の見直しが予定されており、平成17年は上限金利引き下げを実現するために重要な1年となります。そこで今回は、広く一般市民にも呼び掛け「金利引き下げ集会」を同時開催することとしました。金利自由化政策を取った韓国のサラ金事情の報告と映画「草の乱」を通じ、出席者全員で金利引き下げの必要性を共有したいと考えます。本集会が、上限金利引き下げに向けた大きな市民運動のスタート地点となることを期待して止みません。
 個人情報保護法・金利引き下げ、いずれも機を得た論点です。実務面・運動面の両面で多大な成果が得られることを確証しております。多くの会員諸氏のご出席をお待ちしております。

(2)この問題につきましては、全青司としても日司連としても、早くから問題意識を持ち取り組んできたつもりですが、情勢は極めて厳しいという認識でおります。当日の挨拶の中でも申し上げましたとおり、月刊クレジット・エイジ7月号に掲載された内閣府副大臣・金融サービス制度を検討する会事務局長である西川公也氏のインタビューによりますと「年29.2%という金利は決して高くない・・(中略)・・本来は、健全な市場競争で決める自由金利であるべき。」と明言されています。また、宮城県貸金業協会は、政府が地域を限定し規制緩和の特例措置を設けて経済活性化を目指す趣旨である「構造改革特別区域制度」に基づき、「ヤミ金融回避特区」の申請をし、貸付利率の上限を年40.004%まで認めよ、と提案しています。つまり、特区の実現により、資金需要者がヤミ金融から借り入れる被害を防止するという主張であります。
 まず、西川氏の主張は、早稲田大学の坂野教授と同様のものでありますが、机上の理論と言わざるをえないと思います。すべての消費者が自律的に合理的に行動できるという大前提があるのであれば、健全な市場競争ということもありえましょうが、その前提が無い以上、「規制」はやはり必要になるものと考えられます。多重債務被害の現場に存在する法律家・司法書士だからこそ、その現場の実態について声をあげていく必要があると思います。また、宮城貸金業協会の主張は、明らかに間違っていると言わざるをえません。なぜなら、既に述べているところですが、ヤミ金融業者がターゲットにしている層は、29.2%の金利で借りることができない層ではなく、既にブラックである層(過去に破産をした層など)であるからです。これについても、現場にいる私たちだからこそはっきり言える事実がたくさんあるはずです。

(3)さて、集会のプログラムですが、静岡県司法書士会榛葉隆雄司法書士による金利の説明からスタートし、日弁連消費者問題対策委員会消費者倒産法部会平井宏和弁護士による「日弁連の韓国視察の報告」、ジャーナリスト横田一氏による「韓国のサラ金事情」と、金利規制を撤廃した韓国がどのような状態になったのかという詳細なレポートに移りました。
 韓国のサラ金事情につきましては、以前も報告しましたとおりですが、規制緩和論者の理論に従えば、金利の規制緩和が進んだ韓国は借り手にとっては天国のような存在のはずにもかかわらず、現状は、サラ金規制法施行以前の日本と言っても過言ではないような状況といわざるをえないと思います。韓国と同じ轍を踏むことは絶対に避けなければならないと思います。

(4)また、プログラムには予定されていませんでしたが、当日ご参加いただいた日弁連消費者問題対策委員会消費者倒産法部会の伊澤正之弁護士による金利問題についての最新の現状報告、そして、衆議院議員岡本みつのり先生からのご挨拶、参加できなかった国会議員の方々の電報披露などもあり、実に有意義で盛りだくさんの内容になったと考えています。

(5)水谷英二司法書士による趣旨説明の後、映画「草の乱」の上映会(協力:愛知かきつばたの会)です。実は、私もこの映画を観るのは初めてでありまして期待をしていました。結論から申し上げると、とても誠実に作られている良質な映画であるという感想をもちました。

 時代の背景、あらすじ等については、公式ホームページを参照していただきたいのですが、その中から一部引用させていただきたいと思います。

 当時、明治政府は中央集権、軍備増強を急ぎ、デフレ、増税策を推進した。世界的な不況による生糸価格の暴落と相まって養蚕農民たちは困窮していた。そこに付け込み極端な高利をむさぼる高利貸によって多くの農民が身代限り(現代で言う破産)となり田畑を取り上げられた。農民たちは各地で闘いを起こした。中でもこの秩父の闘いは自由民権運動と結び合い、政府打倒を視野に入れた点においても江戸時代に繰り広げられた一揆と明らかに一線を画していた。「圧制を変じて良政に改め、自由の世界として人民を安楽ならしむべし」(田中千弥「秩父暴動雑録」より)彼らは、家族たちのために、苛政に痛みつけられる仲間たちのために、巨大な権力に対し自らの命をかけて立ち上がった。

 公式ホームページによりますと、当時と現代は重なり合う部分が多いので、秩父事件は大きな意味を持ち続けていると結んでいます。基本的には同感ですが、当時との決定的な違いは、例えば出資法上限金利自由化という本日の議論に限定しても、武装蜂起という最終的な手段以外にも、創意工夫によって、様々な運動展開が想定できる点にあると考えられると思います。

(6)最後に中里功制度委員のリードのもと「金利引き下げの実現に向けて」というテーマで会場の皆様と議論をする時間を設けさせていただきました。この議論のまとめとして、2つの提案をさせていただきました。一つ目は、それぞれの地元で市民公開型のシンポジウムを実施していただき、そこに国会議員をお招きするということ、二つ目は、金融庁が設置した「規制の総点検のための目安箱」への投書です。 これにつきましては、7月29日がリミットですのでご注意ください。

 先般の日司連総会においても、金利引き下げを求める決議が賛成大多数で採択され、各都道府県の司法書士会においても、ほとんどの会で同趣旨の決議が採択されているところであります。
 単なる決議に終わらせてはいけません。今からが正念場です。この集会に参加された全国の司法書士が、この集会を契機として、地元での具体的な活動に繋げていただくことを祈念しております。

2.消費者シンポジウム(全青司消費者問題対策委員会 稲本信広委員長)

 さて、二日目は、実務研修でございます。消費者金融業者に対する取引開示と貸金業規制法43条に関する近時の判例動向がテーマとなっています。
 第1講は「個人情報保護法と取引履歴開示請求」(熊本県青年司法書士会・澤田章仁会員)であります。澤田会員はLECでの講師もされているということで、さすがに準備も万全、話しっぷりも実に堂々としたものでした。もちろん、基本的なところからきちんと押え、解釈の分かれている点についても言及した講義内容は非常に興味深いものでありました。澤田会員におかれましては、ぜひともこの分野における研究・実践を継続していただき、その成果を別の機会にもご披露いただきたいと思います。
 ところで、業者の取引開示義務につきましては、キャスコの事件が最高裁に係属中であり、近くに結論が出る模様であります。仮に、この最高裁の判断により取引開示義務が認められることとなれば、多重債務被害救済の現場は、またひとつ大きな武器を得ることになりましょう。注視しておく必要があります。
 第2講は、「現在のサラ金の個人情報保護法による対抗の現状報告」(東京青年司法書士協議会・力丸寛会員)です。業者ごとの対応の現状と対策についての報告がなされました。
 なお、福田哲也幹事(福岡会)からは、業者の求めに応じ、依頼人の個人情報を提供することについての問題点が指摘されております。この点につきましては、全青司においても早急に議論を重ね意見をまとめたいと考えているところです。
 最後は、稲本委員長のリードによる「情報交換〜43条問題と最新判例」であります。全国の会員から様々な情報提供があり、参加者にはとても参考になったと思います。すべてを記憶しておりませんが、司法書士代理事件の控訴審(いずれも控訴審は弁護士代理)についての判決言渡期日は下記のとおりとなっていますので、ご報告しておきます。
@平成17年8月31日 アコム  控訴審判決 埼玉
A平成17年9月12日 プロミス 控訴審判決 金沢



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