司法制度改革の時代を司法書士として生きる!
〜全青司活動現場からのレポート〜




会長声明(消費者団体訴訟の管轄について・最終報告を受けて)(平成17年7月21日)

  1.会長声明(消費者団体訴訟の管轄について)

 今般、国民生活審議会消費者団体訴訟制度検討委員会が取りまとめた最終報告を受けて、消費者団体訴訟を管轄する裁判所について、以下のとおり声明を述べる。
 なお、最終報告に関しては、管轄の問題以外にも指摘すべき点があるが、これらについては今後予定されている意見募集の時期に改めて当会の意見を述べることとする。

声明の趣旨

 消費者団体訴訟の管轄裁判所は、「被告である事業者の普通裁判籍所在地を管轄する裁判所」に限定せず、少なくとも現行民事訴訟法第5条第5号及び第9号所定の裁判所にも管轄を認めるべきである。また、同条第9号の「不法行為があった地」とは、「事業者による不当な契約条項の使用もしくは不当な勧誘行為があった地」とすることを明文化すべきである。

声明の理由

1 はじめに

 平成17年6月23日にまとめられた国民生活審議会消費者団体訴訟制度検討委員会の最終報告(以下、「最終報告」という)では、消費者団体訴訟を管轄する裁判所について、「被告である事業者の普通裁判籍所在地を管轄する裁判所」を基本とするのが適切であるとされている。その理由として、@個別具体的な被害者の救済を求めるものでないこと、A同時複数提訴による弊害に対処する必要があること、B制度の円滑な運用を図る必要があることをあげている。さらに、こうした趣旨を踏まえつつ、双方当事者の合意による管轄など、一定の例外を認める必要があるとしている。
 最終報告が、消費者団体訴訟の管轄裁判所を、現行民事訴訟法よりも限定する趣旨であれば、今後の立法作業に重大な影響を及ぼしかねないことから、看過することができない。消費者団体訴訟制度の利用を阻害しないためにも、少なくとも管轄裁判所を現行民事訴訟法よりも限定することには反対する。

2 当事者間の衡平

 事業者が現に反復継続して不当な行為(不当な契約条項の使用もしくは不当な勧誘行為)を行なっていることが明らかな場合に、その地を管轄する裁判所に管轄を認めず、事業者の本店所在地のみに管轄を認めるというのでは、余りにも事業者の利益のみを偏重することとなり、当事者間の衡平を欠く。
 消費者被害は全国あらゆる地域において発生する可能性があり、そのことは、裏を返せば事業者が全国あらゆる地域において営業活動を行ない、利益を上げているということを意味している。
 にもかかわらず、ある特定の地域において事業者が不当な行為を行ない、それによって当該地域において消費者被害が発生した場合に、当該地域において活動している消費者団体が、事業者の本店所在地を管轄する裁判所に出頭しなければならないというのでは、制度の利用を著しく阻害する結果となる。このことは、例えば北海道や沖縄等の地域で限定的に発生した消費者被害を想定してみれば一層明らかとなるであろう。
 仮に、最終報告のとおり管轄を限定した場合、差止請求訴訟の回避を目的として、本来の活動地域とは異なる場所に形式的に本店所在場所を定める事態も想定される。

3 消費者被害における証拠の所在

 一方、消費者行政や消費者運動が比較的活発でない地域が悪質事業者のターゲットとされ、当該地域において消費者被害が集中的に発生する場合が少なくない。このように、消費者被害が特定の地域で発生した場合であっても、放置しておけば被害が全国に拡大する虞があり、被害の未然防止のためには事前の差止めを求める必要性が大きい。このように、特定の地域で現に消費者被害が発生している場合、差止請求訴訟において不可欠な、被害事実の裏付けとなる人的及び物的証拠の多くは当該地域に存在していることから、当該地域を管轄する裁判所、すなわち「事業者の不当な行為があった地を管轄する裁判所」で審理することが妥当である。

4 同時複数提訴による弊害への対処

 同時に複数の消費者団体訴訟が異なる裁判所に提起された場合、中小規模の事業者にとって応訴の負担が大きいとの指摘があるが、この問題は、下記のとおり解決されるべきであり、管轄を限定する理由とはならない。
 第一に、同時複数提訴のうち、事業者を困惑させる目的でなされたことが明らかな、いわゆる不当提訴については、最終報告においても、「一定の不適切な訴えの提起自体を認めない仕組みを導入する」こととされている。このように、不当提訴についてはそもそも訴えの提起自体を認めるべきでなく、管轄の問題とは次元を異にするものである。
 第二に、明らかな不当提訴を別とすれば、同時に異なる裁判所に訴えが提起されること自体は、消費者団体訴訟に限ったことではなく、現行法上も予定されていることである。そのような場合には、むしろ民事訴訟法第17条等による移送によって調整が図られるべきである。仮に、提訴された裁判所で審理を行なうことが、被告たる事業者にとって応訴の負担が著しく大きいというのであれば、事業者は移送を申し立てることが可能であり、最終的にいずれの裁判所で審理するのが妥当かについて、裁判所が判断すれば足りる。

5 まとめ

 以上の理由により、消費者団体訴訟の管轄裁判所を現行民事訴訟法よりも限定するような立法には断固として反対する。最終報告で例示されている、「双方当事者の合意による管轄」を認めることは当然のこととして、現行民事訴訟法上、被告の普通裁判籍所在地を管轄する裁判所以外で、消費者団体訴訟の管轄裁判所に該当する、民事訴訟法第5条第5号の「事務所又は営業所の所在地」と、同条第9号の「不法行為があった地」の裁判所については、管轄を認めるべきである。
 なお、差止請求訴訟においては、「不法行為があった地」の概念が必ずしも明らかでない場合も想定されるため、この場合の「不法行為があった地」とは、「事業者による不当な契約条項の使用もしくは不当な勧誘行為があった地」とすることを明文化すべきである。


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