司法制度改革の時代を司法書士として生きる!
〜全青司活動現場からのレポート〜




全青司近畿ブロック研修会In大津(「日本版LLC・LLPの概要」など)(平成17年7月24日)

  1.全青司近畿ブロック研修会In大津(「日本版LLC・LLPの概要」など)

(1)平成17年7月23日(土)、24日(日)は、全青司近畿ブロックにお招きいただきました。滋賀県青司協の皆様、お疲れ様でした。ありがとうございました。
 第1講は、立法担当者でもある経済産業省産業組織課、LLCチームリーダーの石井芳明氏による「日本版LLC・LLPの概要」です。第2講は、埼玉県青司協の矢島亮会員による「オンライン指定庁における書面申請の実務報告」、第3講は、全青司制度委員会のメンバー(正影秀明委員長、渡邉経子常任、西澤英之担当副会長)による「オンライン申請について」であります。
   100名近くの参加者による本研修会ですが、会社に関連するテーマと不動産登記に関するテーマという、司法書士にとっての2大テーマの最先端を真正面から取り上げたということで、非常に充実した内容になっています。個人的にも本当に勉強になりました。ありがとうございました。

(2)さて、第1講は、LLP「有限責任事業組合」についてであります。立法担当者による講義ということで、個人的にも非常に勉強になりました。改めて、感謝申し上げたいと思います。
 有限責任事業組合契約に関する法律が平成17年8月1日に施行される予定であり、この法律により規定されているのが、株式会社や有限会社などと並ぶ、LLP「有限責任事業組合」という新たな事業体であります。そもそも、どのような背景でこの法制化が実現したのでしょうか。

(3)能見善久東京大学法学部教授を座長とする研究会の取りまとめによれば、「海外では、企業同士のジョイント・ベンチャーや専門人材の共同事業を振興するため、LLP(Limited Liability Partnership)やLLC(Limited LiabilityCompany)という新たな事業体制度が整備されている。これらの事業体は、出資者が出資額までしか事業上の責任を負わず(有限責任制)、出資者が自ら経営を行うので組織内部の取り決めは自由に決めることができる(内部自治原則)。さらに税制面では、LLCやLLPには課税されずに、その出資者に直接課税される(構成員課税制度)ため、LLCやLLP段階で法人課税が課された上に、出資者への配当に課税されることを回避できるメリットがある。こうした効果により、海外のLLCやLLPは活発に活用されている。」とされ、「我が国においては、こうした3つの特徴を兼ね備えた事業体は存在しない。例えば、我が国では、株式会社を活用して共同事業(合弁事業など)を行うことが通例であるが、この場合、出資者は有限責任だが、出資金額の多寡に応じた利益や権限の配分しかできず、税制面では二重課税の調整があるとはいえ、法人課税が課された上に出資者への配当に課税される(法人段階での損失が発生した場合に、出資者の他の所得との通算もできない)。映画製作委員会や建設共同事業体(ジョイント・ベンチャー)の例に見られるように、共同事業を民法組合で行う場合も見受けられるが、この場合には、出資額の多寡に拘らず利益や権限を出資者の貢献に応じて自由に決めることができ、構成員課税の適用を受けるというメリットがあるものの、出資者は全員無限責任を負うという問題がある。」と指摘されています。
 このような問題意識からできた法案ということを押さえておけば、その概要についての理解も早まるのだろうと思います。

(4)具体的には、LLPは、@構成員全員が有限責任で、A損益や権限の分配が自由に決めることができるなど内部自治が徹底し、B構成員課税の適用を受けるという3つの特徴を兼ね備えています。海外の類似の事業体であるLimited Liability Partnership(リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ)と同様、通称でLLPと称しています。 この有限責任、内部自治、構成員課税の3つの効果によって、大企業同士、大企業と中小企業、産学連携、専門人材同士などの様々な共同事業が促されると見込まれているところであります。

(5)つまり、現行法上ですと、株式会社の場合、出資者は有限責任ではありますが、1株1票の原則で、取締役などの設置が強制されており、法人課税が課された上に、出資者への配当にも課税されるというデメリットも少なくありません。一方、民法組合の場合には、出資額の多寡に拘わらず利益や損失を出資者の貢献に応じて柔軟に配分でき、構成員課税のため、組合段階には課税されず、出資者に直接課税されることにはなりますが、出資者は全員が無限責任ということになってしまいます。そこで、@【有限責任制】出資者が出資額までしか責任を負わない。A【内部自治原則】出資者が自ら経営を行い、利益や損失の配分などを柔軟に決めることができる。B【構成員課税】出資者に直接課税されるので、法人課税を課された上に、出資者への利益分配にも課税されるということがない。という3つの特徴を持ったLLPが求められたということであります。

(6)それでは、どんな利用を想定されているのでしょうか。(1)高度サービス産業<ソフトウエアの専門人材集団><映画製作>(2)中小企業連携<金型メーカーと成形加工メーカーの連携>(3)ベンチャー<大手機械メーカーとベンチャー企業との共同研究開発><大手電機メーカーからのスピンオフ・ベンチャー>(4)産学連携<ゲノム解析の応用研究を進める大学発ベンチャー>(5)研究開発<大手電機メーカー同士の次世代技術の共同研究開発><燃料電池を使った家庭用発電装置の共同研究開発>(6)産業再編<石油業界石油生産部門における設備の効率的利用>(7)物流の効率化<農家と食品加工・流通業との連携>といったものとの指摘がありました。特に司法書士としては、上記(2)についての依頼が多いものと想定されます。

(7)具体的には、「高い技術力と目利き能力を持つ金型メーカーA社、3次元CADを使い高度な設計のできる金型メーカーB社、エンジニアリングプラスチックの材料技術に詳しい加工メーカーC社、多様な材料の成形加工技術を有するD社が、共同で高性能自動車部品を開発・製造する。」という想定事例において、株式会社で実施した場合、@出資比率に応じて議決権や配当割合が決まり。技術力による貢献に報いることができないこと、A取締役会などの設置が必要であること、B開発投資による赤字を、親会社の所得と通算できないということ、C黒字の場合、会社に法人税が課された上に、親会社への配当にも課税されることなどのデメリットがありますが、LLPを選択することによって、@開発への技術力による貢献の大きい企業に、出資比率以上の多くの議決権と利益分配を与えることができること、A取締役会などの設置が不要であること、B構成員課税となる予定であって、開発投資による損失を、親会社の所得と通算できること、C利益が出れば、LLPには課税されず、親会社への利益分配に直接課税されることなどのメリットを享受できるとのことであります。

(8)LLPで事業を行うに当たっては、株式会社の設立と比較して、簡素であります。 すなわち、@組合員が、LLP契約(有限責任事業組合契約)を締結する。 A契約に記載した出資金を全額払い込む(現物出資の場合はその全部の給付をする)。 B事務所の所在場所を管轄する法務局において組合契約の登記をする、という手順になります。
 この際、組合員同士の契約の効力は@Aを完了した段階で発生し、組合員の有限責任制等に関する第三者への対抗力はBの段階で発生することとなります。なお、会社と異なり、公証人による定款認証の手続きは必要ありませんし、設立に関して、経済産業省の認定や許認可は必要ありませんが、従業員を雇用する場合などに必要な労働基準監督署への届出など、 諸官庁への届出は上記とは別に必要となります。

(9)一方、LLPには法人格が無いことから、@契約主体性、A財産の安定性などについての問題が残ります。まず、@については、「LLPは、その組合員の肩書き付き名前で契約し、その効果はLLPの全出資者に及ぶ。」という結論になっています。Aについては、「LLPは、知的財産権や不動産を組合財産として保有でき、出資者の個人債権者はこれを差し押さえることができない。LLPの財産は、組合員個人の債権者は差し押さえることができないし、分割禁止となるし、強制執行も出来ない(LLP法で規定)。この他、不動産登記簿上にLLP契約に基づく財産であることを明示できる予定。」ということであります。

(10)それにしましても、簡裁代理等関係業務然り、企業法務然りでありますが、われわれ司法書士が依頼人に提示しなくてはならないメニューが極めて多様化していることに注意しなくてはなりません。結論としては自己研鑽以外に無いわけですが・・・・

(11)第2講は、埼玉県青司協の矢島亮会員による「オンライン指定庁における書面申請の実務報告」であります。唯一のオンライン庁である上尾出張所内の会員による貴重な報告であります。とても詳細な報告でありましたので、とても紹介しきれるものではありませんが、上尾の報告を聞くたびに「いったい何のための、誰のための改正であったのだろうか、今しなければならない改正だったのだろうか」という気持ちを禁じえないのが正直なところです(もちろん、不動産登記の専門家である私たちは、法改正が行われた以上対応しなければならないことは当然ですが)。皆様はいかがお考えでしょうか。

(12)第3講は、全青司制度委員会のメンバー(正影秀明委員長、渡邉経子常任、西澤英之担当副会長)による「オンライン申請について」であります。
 正影秀明委員長による概要説明の後、渡邉経子常任による「登記実務アンケート・中間省略登記について」、西澤英之担当副会長による「登記実務その他の問題点について」です。登記立会いに関して、西澤副会長の私案が紹介されていますが、これにつきましては、全青司制度委員会および執行部で検討を重ねた上、何らかの方法でご提示させていただきたいと考えています。


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