1.「ゲートキーパー立法」について(三青会)
(1)平成17年7月29日(金)は、今年度第二回目の青法協(弁護士)と青税(税理士)の皆様のとの会議、「三青会」です。テーマは幹事会の青法協からの提案で、「ゲートキーパー立法」に関する対応です。
この法律は、刑罰の強制をもって、弁護士等の専門家に依頼者を密告させる法律であると指摘されています。すなわち、弁護士等の専門家は、依頼人が「マネーロンダリングの疑いのある取引」をしている場合、国に対してそれを通報する義務を負うことになり、通報したことを依頼者に内報したり、通告を怠った場合、処罰されることになるからです。
(2)さて、このような規制のアイデアは、1999年10月にモスクワで開催された国際組織犯罪対策G8閣僚級会合において、効果的な資金洗浄(マネー・ロンダリング)対策の基準を世界中に広めるために、国際的な取り決めとして採用されたことに発しているようです。すなわち「金融システムへの組織犯罪資金の流入を防ぐことも、また促進することもできる、弁護士、会計士、企業設立代理人、監査人その他の金融取引媒介者に、適当な場合には、一定の責任を課すことを考慮することを合意した」ということであります。
(3)一方、ゲートキーパー規制の具体化は、FATF(金融活動作業部会)に委ねられているようです。FATFというのは、1989年のG7アルシュサミット宣言をうけてマネー・ロンダリング対策推進のために設立された政府間機関であり、事務局はOECD内に設置されているようです。
(4)いずれにせよ、こうした動きを受け、わが国の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部は、昨年12月10日に「テロの未然防止に関する行動計画」を策定、「FATF勧告の完全実施に向けた取組み」として、『 国際的なテロ資金対策に係る取組みであるFATF 金融活動作業部会の「40の勧告(平成15年6月改訂」及び「9の特別勧告」を完全実)施するため、経済産業省、財務省、法務省、金融庁、国土交通省その他関係省庁は、銀行、証券会社、保険会社等に加え、ファイナンス・リース、宝石商、貴金属商、両替商、弁護士、公証人、会計士、不動産業者等に対して、顧客等の本人確認、取引記録の保存及び疑わしい取引の届出の義務を課すことなどについて、平成17年7月までにその実施方法を検討して結論を得ることとする。その結果、法整備を必要とするものについては、平成18年の通常国会に所要の法律案を提出し、法整備を必要としないものについては、平成18年上半期までに所要の制度の整備を行うこととする。』という方針を打ち出しています。
つまり、弁護士等に対する、疑わしい取引の報告義務等の規制は、テロ対策の一環としての政府方針であり、本年の7月までに・・・・というわけであります。
(5)さて、このゲートキーパー規制の何が問題なのでしょうか。それは、弁護士等の専門家の守秘義務との「相克」に尽きると言えましょう。
弁護士や司法書士などの独立した専門職は、専門職として、依頼人の秘密を守る法的義務を負担していることによって、信頼関係が構築されています。これが崩れてしまったとき、私たちは依頼人の利益を実現できるのでしょうか。制度的な信頼を損なうことにはなりませんでしょうか。極めて、慎重な検討が必要であろうと考えられます。
(6)国の方針は、2006年の通常国会における立法化であります。もう時間がまったく無いと言っても差し支えないでしょう。しかし、Web上でも、ほとんど情報が見つからないような状態です。今後、相当な速さで進められることが予想されますので、注意が必要でしょう。
(7)日弁連においては、通報先を日弁連にするための会規改正の臨時総会を予定しているようです。これにより、@日弁連が審査権を持つことにより守秘義務の範囲の第一次判断権を持つことになる、A会員が報告すべき「疑わしい取引」とは何かにつき、日弁連が客観的に疑わしいと認められる類型を明示的に定め、漠然としたものまで報告義務を負うことを阻止できる、B報告義務違反があってもその制裁は刑罰ではなく、日弁連が当該重大性を判断した上で行う懲戒処分となる(会員にしてみれば、自己責任で金融庁に報告すべきか否かを刑罰のリスクをかけて判断する重圧から免れることができる)、C国民も、日弁連への通報を、当局に対する密告とはイコールと判断しない、などのメリットがあると言われています。
しかし、その一方で、日弁連の審査の適否について、金融当局の指揮監督を受けることになるのであれば、弁護士自治に重要な影響を与えることにもなるという批判も根強いものと思われます。
(8)不動産取引を業務とする、私たち、司法書士についても、当然、この法律の網にかかってくるものと考えられますが、そのとき、一人ひとりの司法書士がどのように考えていけばいいのか、全青司が、そして、日司連がどのように考えていくべきなのでしょうか。
私は、この法案には反対の意見表明をすべきであると考え、今般の三青会においても、その点についての合意がなされました。具体的には、皆様の意見をお聞きした上で、連盟での意見書を提案したいと考えているところです。
是非ともご意見を全青司までお届けください。私に直接でももちろん結構です。
2.全国一斉生活保護110番報告(全青司人権擁護委員会主催)
平成17年7月30日(土)は、すでにご案内のとおり、全国10箇所(日程が異なるところを含めれば13箇所)において、全青司人権擁護委員会主催の標記110番を実施いたしました。
日ごろから多重債務被害救済に取り組む司法書士にとっては、生活保護の問題は身近な問題ではありますが、まだまだその運用等についての改善を求めたり、あるべき生活保護制度に対する提言という点については、不十分であったと言わざるを得ません。ホームレス支援に積極的に関わる一部の先駆的な司法書士によって、数年前から、その問題点は指摘されてはいましたが、全国的な運動にまでは至っていなかったというのが正直なところでしょう。
今般の全国一斉110番は、多重債務の現場に生きる法律家として、生活保護制度の問題に対して今後どのような取り組みができるか、また、していくべきかという点について、ひとつの大きな前進のきっかけとなったのではないかと考えているところです。
私は、東京会場において参加させていただきましたが、この問題に詳しい弁護士、司法書士、そして、福祉事務所の方などのアドバイスを受ける機会に恵まれたことをとても感謝しております。そして、それと同時に、そのような方々と話をさせていただくことによって、この深く大きな問題に対し、全青司として何をすべきか、していかなければならないのか・・・と考え、現在も悩んでいるところであります。
しかし、全国でこの一日だけで250件もの相談が寄せられているという現実を、まず見据えていかなければならないのだろうと思っています。そして、やるべきことは、まず、現場を知る法律家だからこそ出来る、現場の声の集積・分析、そのうえで、現在進められている生活保護制度の改正について、正論での意見提言・・・・このようなことではないかと一定の結論を出しているところです。是非、この点につきましても、皆様のご意見をお聞かせいただきたいところです。
最後になりましたが、110番の相談にあたっていただきました全国の相談会場の皆様には、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
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