1.事務ガイドライン(第3分冊:金融会社関係)の一部改正(案)に対する意見書
(1)消費者金融業者の取引履歴開示に関する最高裁判決を受け、金融庁では、事務ガイドラインの改正に着手し、広く意見募集を行いました。まずは、その趣旨と概要は次のとおりとなっています。
1.改正の趣旨
貸金業者に取引履歴の開示義務があり、正当な理由に基づく開示請求を拒否した場合には行政処分の対象となり得ることを明確化するとともに、併せて、弁護士等の代理人を通ずる場合を含め、取引履歴の開示が求められた際の本人確認の手続について明確化するもの。
2.改正の概要
(1)貸金業者の取引履歴開示義務の明確化
事務ガイドライン3-2-2において、貸金業の規制等に関する法律第13条第2項で禁止されている「偽りその他不正又は著しく不当な手段」に該当するおそれが大きい行為の事例を列挙しているところであるが、これに、顧客等の弁済計画の策定、債務整理その他の正当な理由に基づく取引履歴の開示請求に対してこれを拒否すること、を加える。
(2)取引履歴開示請求の際の本人確認手続きの明確化
取引履歴の開示を求められた際の本人確認の方法として十分かつ適切であると考えられるものとして以下を例示する。
@顧客等自身が開示請求をする場合であって、金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律(以下「本人確認法」という。)に規定する方法による場合
A顧客等の代理人が開示請求をする場合であって、以下イ〜ハの書類の全てを提示する場合
イ 顧客等の本人確認のための書類(本人確認法施行規則に規定する本人確認書類(写しを含む。)であれば十分かつ適切である。)
ロ 顧客等の署名・捺印により代理人との間の委任関係を示す書類(債務整理についての委任関係が示されていること等により取引履歴開示請求についての委任関係が推認し得るものを含む。捺印は、イの書類が本人確認法施行規則に規定する本人確認書類(写しを含まない。)であれば、必ずしも印鑑登録された印鑑又は契約書に捺印された印鑑によらなくてもよい。)
ハ 代理人の身分を証明する書類(弁護士、司法書士等が代理人である場合は、ロの書面において事務所の住所、電話番号等の連絡先が示されていればよい。)
3.実施時期 平成17年9月中下旬より適用する。
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(2)これに対して、当会では、一定の評価をする一方、一部に大きな問題があることと、より一層の改善を求める趣旨で、次のとおりの意見書を提出しております。
意見の趣旨
1,改正の概要(1)貸金業者の取引履歴開示義務の明確化につき、顧客等の弁済計画の策定、債務整理のみならず、過払金返還請求を正当な理由として明示すべきである。
2,改正の概要(1)貸金業者の取引履歴開示義務の明確化につき、開示義務のある取引履歴とは顧客と貸金業者の契約当初(顧客と貸金業者の取引の途中、貸金業者において債権譲渡・営業譲渡・合併がなされた場合、債権譲受前・譲渡会社・被合併会社からの取引履歴を含む)からの開示義務があることを明確化すべきである。
3,改正の概要(2)取引履歴開示請求の際の本人確認手続きの明確化につき、顧客等自身が開示を求める場合において例示されている、金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律(以下、本人確認法という)による本人確認は不要であるとすべきである。
4,改正の概要(2)取引履歴開示請求の際の本人確認手続きの明確化につき、弁護士・司法書士が代理人となり開示をもとめる場合、例示されているイ・ロ・ハの書面全ての提示は必要なく、「顧客等の代理人が弁済計画の策定、債務整理、過払金返還請求につき顧客等よりその処理の依頼を受け、受託した旨の通知のみで足る」とすべきである。
5,「偽りその他不正又は著しく不当な手段」に該当する行為に「当該顧客の帳簿を破棄すること」を加えるべきである。
意見の理由
1,(1)上記の最高裁判決においては、取引履歴の開示がない場合、債務者は、「弁済計画を立てることが困難となったり、過払金があるのにその返還が請求できないばかりか、更に弁済を求められてこれに応ずることを余儀なくされるなど、大きな不利益がある」とその判断の理由に示している。
(2)また、「過払金返還請求」が正当な理由として例示されない場合、既に取引が完済により終了しているようなケース、あるいは特定調停により債務不存在が確認されているケースにおいて、「債務の弁済を行おうとする者」ではないとし、貸金業者が取引履歴の開示に応じない事も考えられる。
(3)以上から、貸金業者と債務者との間の貸付に関する紛争の発生を未然に防止し、又は生じた紛争を速やかに解決する事をはかる、事務ガイドラインにおいては、取引履歴の開示請求の正当な理由として「弁済計画案の策定、債務整理」のみならず、「過払金返還請求」についても明示すべきであると考える。
2,(1)貸金業者は契約の当初からの取引履歴を保存しており、契約の当初からの取引履歴を開示しなければならないのは上記最高裁判決に述べられていることである。
しかしながら、一部の貸金業者によっては、10年分の取引履歴しか開示しない業者もある。これは、商法上の帳簿保存期間が10年とされていることからくる誤解であると思われる。
ついては、貸金業者において保存期間を誤解し、一部の取引履歴しか開示がなかった為に弁済計画の策定、債務整理、過払金返還請求において、紛争が発生することがないよう開示義務のある取引履歴は契約の当初からである旨を明確化すべきであると考える。
(2)@近時、貸金業者間において、債権の譲渡・営業譲渡・合併が盛んに行われている。これらの場合において、債権の譲受・営業の譲受した貸金業者において、債権譲受前・営業譲受前の取引履歴については、保管していない旨の主張がなされる。その様な主張がなされた場合、弁済計画の策定、任意整理、過払金返還請求が困難となる。
Aまた、貸金業者間の債権譲渡・営業譲渡に際し、貸金業者は、当然のことながら、みなし弁済をめぐる紛争を想定し、契約を締結している。紛争がおこる可能性を予想し、契約をする以上、債権譲渡・営業譲渡をする貸金業者の取引履歴についても、債権譲受・営業譲受をする貸金業者において引継・保管されてしかるべきである。
B合併においては、存続会社が被合併会社を包括承継するのであるから、被合併会社の取引履歴については、存続会社において保管されてしかるべきである。
C以上から、貸金業者において債権譲渡・営業譲渡・合併がなされた場合、紛争の発生を未然に防止するためにも、引継・保管され、開示義務のある取引履歴は債権譲受前・譲渡会社・被合併会社からの取引履歴を含むと明確化すべきである。
3,(1)いわゆる本人確認法は、そもそもテロリズム集団に対する資金供与の防止・組織的犯罪集団のマネーロンダリングの防止・公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金提供等が金融機関を通じて行われることの防止を目的としており(本人確認法1条)、預貯金契約等の締結の際に(同法3条)、厳格な本人確認を金融機関に義務付けたものであるところ、取引履歴の開示の場面では、特定の債務者から特定の貸金業者に対し、「資料」の開示を求めているに過ぎないこと、およびこれによって本人確認法1条が想定する事態は絶対に起こり得ないことなどから、本人確認法を適用するがごとき本件ガイドライン一部改正(案)3−2−8(1)@の本人確認方法を規定するのは極めて不適切であると考える。
(2)本人確認法施行令5条において顧客等について既に本人確認等を行っていることを確認する方法において確認する事が出来るため、「顧客等しか知りえない事項その他の顧客等が本人確認記録等に記録されている顧客等と同一であることを示す事項の申告をうけること」で足ると考える。例えば顧客自身が開示を求める場面としては、対面による場合、電話・郵便等による場合が考えられるが、その様な場合であれば、住所・氏名・生年月日及び貸金業者が顧客に付している会員番号を確認すれば足りると考える。また、その開示についても本人限定郵便によるなどすれば足りると考える。
(3)さらに貸金業者によっては、本人確認書類を複数徴求するなどして、実質、取引履歴開示義務を免れる事を考えるところも出てくるものと思われる。であれば、上記最高裁判所判決の趣旨を埋没させる結果とも成りうる。
(4)よって、本件事務ガイドライン一部改正(案)において本人確認手続きの明確化として、本人確認法による本人確認は、顧客等自身が開示を求める場合において例示すべきでないと考える。
4,(1)弁護士・司法書士が、債務者より自己の債務の処理を受託するにあたっては、当然の事ながら、充分かつ適切に本人確認を行い、債務者と間で委任契約を締結しているのであり、貸金業者に対し改めて本人確認書類・委任関係を示す書類を送付する必要はないと考える。
(2)よって弁護士・司法書士が代理人となり、顧客等の取引履歴を開示請求する場合においては、本件事務ガイドライン一部改正(案)において要求するイ・ロ・ハの書類を送付する必要はないと考える。
5,貸金業者と債務者の取引が長期になればなるほど、過払金が発生している蓋然性が高くなる。そして、債務者は過払金を返還する権利がある。
一方、貸金業者は、先にも述べたとおり、帳簿の保存期間を10年と誤解し、それ以前を破棄したと主張することがある。この貸金業者が取引履歴の一部を破棄したと主張し、一部の取引履歴しか開示しない目的は、利息制限法所定の利率を超過する不当利得の返還を免れることであると思われる。
このような場合においては、貸金業者は債務者の権利を一方的に害し、貸金業者においては不当な利得を残すこととなる。
よって、貸金業者が取引履歴を破棄することは、不正ないし不当なものであると明示すべきであると考える。
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