司法制度改革の時代を司法書士として生きる!
〜全青司活動現場からのレポート〜




当番司法書士の必要性再び(司法統計の結果に思うところを含めて) (平成17年9月24日)

1.当番司法書士の必要性再び(司法統計の結果に思うところを含めて)

(1)平成16年度の司法統計については、既に簡単な感想を述べたところであります。
 しかしながら、その際に指摘し忘れた重要な点もあり、また、その点が、本年度全青司活動の中で繰り返し述べている当番司法書士制度の必要性に強く関係していることから、改めて私の考えを記しておこうと思います。

(2)まず、「簡易裁判所 第一審通常訴訟既済代理人関与事件」の概要について、もう一度おさらいをしておくことにします。全国の簡易裁判所における既済事件総数は、347,851件であります。このうち、司法書士が原告又は被告代理人として関与した総数が、10,737件(全体の3.08%)であり、弁護士原告又は被告代理人として関与した総数が、33,638件(全体の9.67%)となっております。

(3)この数字に関しては、「簡裁代理関係業務が動きだしてからの日の浅さを考えれば、十分健闘しているのではないか。」という意見も一方では存在しているところでありますが、私の意見は、「この数字では『街の法律家』としてとても胸を張ることができない。利用者である市民の視点に立てば、極めて頼りない数字にしか映らない。」というものです。もちろん、任意整理などの裁判外での和解件数は反映されていませんし、簡裁事件だけが司法書士の実績を表す数字ではないでしょう。しかし、ひとつの大きなメルクマールであることは間違いないでしょう。

(4)ところで、冒頭に述べた、重要な点というのは、「被告事件に関する関与率」であります。
 司法統計によれば、原告の代理人として司法書士が関与した事件総数は、8883件ですが、被告の代理人として司法書士が関与した事件総数は、1200件にとどまります。一方、原告の代理人として弁護士が関与した事件総数は、15064件であり、被告の代理人として弁護士が関与した事件総数は、13561件となっています。
 これは何を意味するのでしょうか。おそらく、司法書士が原告の代理人として関与している事件のほとんどはいわゆる過払い金返還請求訴訟であると思われます(そのうち、7652件が金銭を目的とする訴えとなっていることからも明らかであろうと考えられます)。弁護士が原告の代理人として関与している事件の多くも過払い金返還請求訴訟であると思われますが(そのうち、13452件が金銭を目的とする訴えとなっていることからも明らかであろうと考えられます)、静岡簡易裁判所の事件を見る限り、例えば、特定の金融機関の代理人としての求償金請求訴訟、交通事故による損害賠償請求事件なども多く、司法書士よりも多様な事件が多く含まれているように思います(司法統計の内訳も司法書士の関与事件より、圧倒的に「その他の事件」の総数が多くなっています)。
 被告事件はどうでしょうか。数字からも明らかなように、弁護士は、原告代理人として関与している数とほぼ同様の事件について被告代理人として関与しております。もちろん、弁護士会全体のこれまでの実績から、裁判を起こされたらまずは弁護士に相談するという図式が定着していることに大きな原因があると思われますが、実際に司法書士の10倍以上の被告事件を受任しているという事実は謙虚に受け止める必要がありましょう。
 実際に、私の地元の静岡簡易裁判所においても、実に様々な事件について、被告代理人として弁護士が登場いたします。もちろん、私が原告代理人となっている事件についても同様です。

(5)一方において、当事者本人によるもの、すなわち、双方に司法書士・弁護士が代理人に就任しない事件が、304,055件となっており、全体の87%強となっている現実を重く受けとめなければならないと思います。
 確かに、簡易裁判所というのは、その名のとおり、国民が最も容易にアクセスできる裁判所であることに大きな存在意義があるわけですから、そもそも専門家に頼らず、自分で裁判を提起し、自分で法的解決を得る・・・・という事件が多くて当然でしょうし、それがひとつの理想形であるとは思います。
 しかしながら、この統計で出ている双方に司法書士・弁護士が代理人に就任しない事件のほとんどがいわゆる消費者金融、信販会社を原告とする業者事件であることを私たちは知っています。
 司法統計上は、いわゆる業者事件に関するデータはありませんが、本人訴訟の内訳として、金銭を目的とする訴えが298,724件(98%)となっており、普段から簡易裁判所の事件を傍聴している私たちの経験則から言えば、その内訳はほとんどが業者事件になるはずです。

(6)こうした状況は、何も平成16年度だけに限ったものではなく、少なくとも司法書士が多重債務事件に全国規模で取り組むようになったときには既に同様の状況でありました。
 そこで、平成14年に私が中心となって全青司簡裁事件受任推進委員会で編集した「簡裁クレサラ訴訟の実務(民事法研究会)」(なお、本書は改訂後「簡裁消費者訴訟の実務」と書名を変更しております)において、私は、冒頭で、簡裁代理権の取得を大きな契機として、まずはこの大量の業者事件の被告代理人に司法書士が就任していくべきであるということを強く訴えたつもりです。
 つまり、多重債務問題全般に全国の司法書士の多くが積極的に関与することになった点については、真の法律家への脱皮という評価ができると考えていますが、多重債務問題全体を大きく俯瞰してみれば、まだまだ司法書士の取り組みは不十分であり、質と量ともに不足している・・・と思うのです。
 それが端的に数字で表れているのが、この業者事件についてであり、簡裁代理権を得た私たちは、その利用者からの負託に応えるためにも、まずはこの部分からおさえていくことが必要であり、近道ではないかと個人的には考えているのです。

(7)そして、そのひとつの手段として、私は「当番司法書士制度」が有効なのではないかと常々考えておりました。
 噛み砕いて説明いたしますと・・・・

@業者から訴えられた被告が・・・・
A答弁書提出期限が迫っているけれどもどこへ相談していいかわからない・・・
B弁護士・司法書士事務所も知り合いがない・・・
C直接知らない事務所に行くのも費用面で不安がある・・・・
Dそうこう迷っているうちに、もう答弁書提出期限は過ぎてしまう・・・・
Eでも出頭しなければ・・・・
F出頭してみても、借りたことは事実だし、認めざるをえない・・・・
Gでもいいのですか?業者が主張する契約日以前にも借り換えはあったのではないですか?消滅時効は成立していませんか?そもそもほかの債務もありませんか?そうだとしたら安易に分割返済の和解をしても大丈夫なのでしょうか?
 と、こういうことであります。

 先にあげた司法統計の結果を考えれば、全国的にこのような事態3万件程度あると思われます。仮に、全国的に規模で、当番司法書士制度が定着し、業者から訴えられたらまず当番司法書士の窓口へ電話・・・・ということになれば、素晴らしいことではないでしょうか。

(8)もちろん、総合法律支援法に基づく司法ネットが近く施行されることになりますが、個人的には、こうした業者事件の被告事件についてまでのフォローが可能かどうか不安を持っています。この点については、日本司法支援センター構想についての不安(平成17年6月21日)において既に述べているところですので、こちらをご参照ください。
 また、法律扶助の利用をまず考えるべきという意見についても、基本的にはまったく賛成なのですが、「勝訴の見込みがないとはいえないことという要件を満たさない事案も多いと想定されること」「審査が頻繁に開催されていない地域も多いこと」などの理由から、ストレートに扶助の利用を勧めることができない事情があると考えています。

(9)先般、代表者の皆さまに対して、当番司法書士制度の導入について検討をされているかどうかのアンケートを実施させていただきました。
 東京、島根、滋賀が既に始動しているところでありますが、神奈川がこれに続き、これ以外にも6つ程度の単位会が前向きに検討をしていただいているということで頼もしい限りですが、検討をしていない単位会も依然として多いのが現状です。
 その理由の多くは、マンパワー不足ということになるようです。地方の単位会では、日司連が推進している「相談センター」「調停センター」などに大きな力を注ぐ必要があり、とても当番司法書士制度まで力を回すことは困難である、というのがその理由であると思われます。
 しかし、この点についても、私は、やり方の工夫によって解決できるはずであると考えています。例えば、単位会本会で設置する「相談センター」の一部に組み込むことはどうでしょうか。これにより、事業の重複を避けることもできますし、金銭的な問題も一定程度解決できましょう。
 また、何も毎日ではなくともいいわけですし、極端な話、電話を一本ひき、転送することによっても対応は可能であると思います。それぞれの地域の実情にあわせたやり方は必ずみつかるはずです。今一度、地元での前向きな議論をお願いしたいと考えています。

(10)繰り返します。私は、司法統計の数字を見て、やはり、全青司で提案している当番司法書士制度の必要性は極めて高い・・・・そう確信した次第です。    

 


home back