司法制度改革の時代を司法書士として生きる!
〜全青司活動現場からのレポート〜




大阪青年司法書士会40周年記念集会 (平成17年10月3日)

1.大阪青年司法書士会40周年記念集会

(1)平成17年10月1日(土)は、大阪・産業創造館で開催された標記集会にお招きいただきました。ありがとうございました。また、大阪青司協の皆さまお疲れ様でした。
 大阪青年司法書士会会長の浦井裕樹会員の挨拶によりますと、「1961年(昭和36年)から研究団体として活動していた「法親会」は,1964年(昭和39年)春,「大阪司法書士青年の会」として生まれ変わり,1965年(昭和40年)10月1日に,正式に会則を制定しました。私たちは,会則規定の日を青年会の誕生日と位置づけ,今年10月1日をもって満40周年を迎えることになりました。」となっております。
 また、40周年実行委員長であり、2000年度会長でもある長田弘子会員の挨拶には、『「自由に、楽しく、自主的に活動し、自己研鑽を重ねる。その上で制度さえも市民により良いものを希求し、司法書士界をリードする。若さゆえにできることを会員に伝え、若さゆえにつぶされてしまう会員の意見を堂々と表明するby東田智史(2001年度会長)」私は,そんな青年会を愛して止みません。40年の積み重ねの重さを感じ,そして未来に繋げていきたい。この40周年記念事業では,そんな思いを詰め合わせてお届けします。』と記されています。
 私も、青司協の存在意義は、まさにそのようなところにこそあると常々感じていたところであり、また、40年という長い間、そのことを実践されてきた大阪青司協の皆さまに心より敬意を表するものであります。

(2)基調講演は、「これからの社会に求められる司法書士〜若い法律家に期待する!〜」というテーマで、弁護士国府泰道先生からのお話をいただきました。
 国府先生は、古くから消費者取引被害に積極的に関与されており、なかにし呉服店クレジット集団名義貸被害事件や変額保険訴訟(判例時報1645号98頁)、大阪教育大付属高校池田学舎ブール事故死事件(判例時報1769号82頁)そして、信楽列車事故事件(大阪地判・判例タイムズ1010号96頁、大阪高判・判例タイムズ1116号93頁)などの著名な事件に被害者側・遺族側の代理人として取り組まれています。なお、信楽列車事故事件につきましては、その詳細が、書籍となってまとまっていますので是非ご一読ください(信楽列車事故〜JR西日本と闘った4400日・信楽列車事故遺族会弁護団編集・現代人文社)。
 また、先生は、大阪青年司法書士会とは古くから懇意のようでもあり、まさに今回の基調講演に相応しい人選であったと思います。
 いわゆる規制緩和を大きな契機とする、消費者法制の変遷、そして行政の役割、今後の法制度の在り方を大きな視点で俯瞰する先生の講義は、極めて大きな示唆に富み、また、法律実務家の最前線で活動されている事実に裏打ちされている言葉は、説得力に満ちていました。
 消費者にも武器を!行政や警察だけではなく・・・・つまり、消費者に企業を育てるという役割をきちんと担わせるべきだという理論、それに繋がる団体訴権についてなど、消費者問題に関わる私たちとしてはきちんと理解しておく必要がありましょう。
 最後に、「法の実現過程における心への配慮」の問題についても言及がなされました。先にあげたJR西日本との闘いの中で、被害者が望むものは決して金銭による賠償だけではなく、むしろ、謝罪や誠意といったものであったのでしょう。弁護団は、まったく遺族に対する直接的な謝罪をしようとしないJR西日本に対して、直接に謝罪を要求するのではなく、謝罪しないことを批判するという戦略をとっていった・・・・ということであります。紛争解決の場面では、常に考えながら行動をすることを余儀なくされるわけですが、このような社会的にも極めて大きな影響力を持つ事件における選択は苦悩の連続であったのではないでしょうか。

(3)次に、記念講演として、「満点バイクでアフリカ5000q」というテーマで、山崎美緒さんに貴重なお話をいただきました。実行委員会の案内を引用させていただく形で山崎さんをご紹介しましょう。
『山崎美緒さん(大阪外国語大学スワヒリ語専攻4回生)は,愛車・満点バイク(マウンテンバイク・自転車)で2004年10月5日にケニア・ナイロビを出発,南アフリカへ向けて5000キロを単独走破し,2005年1月21日に喜望峰ゴールしました。
 美緒さんは,就職活動を前に,自分の小ささを感じ,「このまま社会に出てもいいのか」,「世界には多くの人がいて,それぞれあらゆる角度から物事をみて、考えている。もっと多くの人やものに出会い、この世界を感じたい」という思いがありました。アフリカへ行くにあたって,当然反対もありましたが,お父さんの「思いを強くもて。石をもとおす思いは必ず達成できる」という言葉に後押しされ,アフリカ行きを決断しました。
 美緒さんは,2004年春に日本一周6000キロを自転車で単独走破して経験を積み,8月18日にアフリカへ出国し,ルートの下見をし,10月5日にケニアから喜望峰に向けて自転車で出発しました。治安の悪い地域も多く,丸刈りにして髭をつけて男装をしたり,感染症にかかり10日間療養したこともありましたが,美緒さんは喜望峰にゴールするまで,旅先で出会う人の暖かさふれ,助けられ,そして自然に感動し,多くの貴重な経験をしました。
 「身構えていったけれど,現地の人はみんな温かく,困ったときにはいつも助けてくれました。旅で出会った人たちからもらった力を,今度は私から伝えられるような活動をしたい」と言う美緒さん。講演会では,そんな美緒さんのアフリカ8カ国の体験談を,写真に沿ってお話していただきます。
 美緒さんの,「アフリカに行きたい」という,とてもストレートで強い思い,そしてそれを成し遂げるための綿密な計画力とチャレンジ精神には,心を動かされるものがあります。それは,美緒さんの思いの中に,私たちが青年司法書士として活動していく上で,持っていなければならない大切なスピリットと共通するものがあり,それを,とてもわかりやすく,ストレートに伝えてくれているからだと思います。
 自分の思いに忠実で,それを実現させるための強い意志と冷静な判断力,計画力を持つこと,未知の世界に飛び込む好奇心と行動力,そして多くの人と出会い,交流し理解し合うことの大切さ,そんなエッセンスを,彼女の体験の中から感じてもらえるのではないかと思い,この40周年記念事業の中で,美緒さんに講演をお願いしました。
 元気の固まりのような彼女から,きっと大事なものが伝わってくるはずです。』
山崎さんの話は、まさにこの案内のとおり、元気の出るお話でした。
 一方、山崎さんが紹介してくれたアフリカでの写真には、たくさんの子供の写真があったのですが、その子供たちの表情を見るたびに、私たちが何を失ってきたのかを突きつけられているような思いを禁じえませんでした。

(4)最後は、パネルディスカッションです。「求められる法律家を目指して」というテーマで、コーディネーターを1995年度大阪青年司法書士会長でもあり、元全青司会長でもある山内鉄夫会員がされ、パネラーとして、国府泰道弁護士、リーガルサポート大阪支部長であり元大阪青年司法書士会長でもある山本英樹会員、現大阪青年司法書士会会長浦井裕樹会員、そして私が登壇いたしました。
 非常に限られた時間ではありましたが、それぞれこうあるべきではないか・・・という熱い思いを語っていただきました。もしかしたら、短いコメントでは伝わり切らなかった部分もあるかと思いますので、改めてこの場を借りて私の個人的な意見を述べておきます。

@まず、司法書士は、簡裁代理権の取得、そして、ADR法等の制定により、紛争解決の担い手としての可能性を大きく広げることとなりました。その可能性は無限大だと考えています。
 新しい武器を利用者の視点で使いこなし、これが新しい司法書士による新しい紛争解決だ、と利用者に明確に伝えることのできるような「司法書士訴訟」(もちろん訴外も含みます)を早期に確立すべきでありましょう。先般の札幌全国研修会はそのひとつの契機となるはずです。

A私たちが自らを法律家と自己定義するのであれば、そのプロフェッションの特性として、当然に、公益的活動や社会活動に参画することが求められます。これまでの司法書士の大多数がそうした活動に消極的であったことは全く無関係であり、個々の司法書士の自覚と覚悟の問題であります。私は、全青司活動に参加する以前から、そう覚悟を決め実践してきたつもりです。

B質問があった「ミニ弁護士化に対する不安」についてもお答えします。そもそも「ミニ弁護士」というのは、どのような定義なのでしょう。おそらく、今般の司法制度改革の議論の中で批判されているこれまでの(または現在の)弁護士像というものが前提にあって、簡裁代理権を得た司法書士は、そのミニ版になっていくだけではないか・・・という危惧ではないのでしょうか。それとも、前提として国民の期待に十分応えている弁護士像があって、そのミニ版(簡裁だけの)であっても、それなら弁護士になれば良いのではないか・・・という思いでしょうか。
 まず、私は、自らを『法律家』と自覚し、実践活動をしていくのであれば、そのような法律実務家内部だけの些末な議論は俎上に載ることは無いと考えています。
 しかし、一方で、オールマイティである弁護士という法律家と対比したときの司法書士の権限の差異を考えれば、多くの司法書士が弁護士との差別化をどこで図るべきなのかという点で悩む気持ちも理解できます。特に、裁判実務に積極的に取り組む若手司法書士ほどその傾向が顕著であることも想像できます。
 この問題を考えるときに重要な点、私は、「紛争の主体は当事者であり、依頼人そのものである」という基本的な認識であろうと考えています。これも著書等で繰り返しているところではありますが・・・つまり、代理人として法廷に立てなくても、直接的に相手方と交渉ができなくても、本人支援という方法により、工夫することはいくらでもできるはずです。代理人になれなければ紛争解決ができないということは絶対にありえません。
 精神論になってしまうのかもしれませんが、制限されているからこそ、その範囲内で出来ることで知恵を出し合って形に残していくことに対する動機付けがなされるということも言えませんでしょうか。特に簡裁代理権以降の新進気鋭の司法書士に対しては、繰り返し述べておきましょう。地裁以上における本人訴訟の支援をきちんと身につけることを学ぼう・・・・と。
 さて、これだけでは、先ほどの問いの答えにはなっていません。私も司法書士である以上、司法書士の制度の将来を考えなければいけませんし、その中では、弁護士職能との対比は不可避でありましょう。
 以下、私見を述べますが、全青司会長就任にあたっての所信と同じであります。不動産登記・商業登記の専門家として存在し続けるということは、大前提でありますから、敢えて指摘していないだけでありますので念のため。

(@)経済的・社会的弱者の側に立つ法律家集団として存在すること。
(A)司法アクセスの拡充に資する法律家集団として存在すること。
(B)既存の紛争解決手段よりも利用者の納得度の高い、新しい紛争解決の担い手を目指す法律家集団として存在すること。
(C)隣接職能集団である弁護士と比較して、各分野において、同等以上の法的サービスを目指す法律家集団として存在すること

 これらを実践していく限りにおいて、司法書士制度の存在意義が消滅することは絶対にありえないでしょう。

C訴額が少額である簡裁代理関係業務の費用対効果の問題については、やはり、合理的な事務処理ができるような事務所体制と多くの事件を受任することによる経験、自己研鑽を怠らないことなどの対応しかないでしょう。一朝一夕に解決できるような筋合いの問題ではないのです。
 もちろん、個々の事件で考えれば明らかな赤字事件もあるでしょう。しかし、それは甘受していただきたい。士業なのですから。

(5)その後の記念式典では、歴代の会長が勢ぞろいいたしまして、それぞれ、青年会に対する深い愛情を語っていただきました。
 特に懇親会において、長田実行委員長が述べていた「大阪勢年司法書士会は全国の青年会をリードし続けた存在であり、この伝統をこれからも継承してく所存である」という言葉をとても力強く感じました。
 青年会、青司協は、自らが最先端の活動をしているという自負・自信がなくてはならないと常々感じていましたので、大阪だけではなく、各地の青司協が同様の気概を持って活動を継承して行っていただきたいと考えています。
 最後になりましたが、ひとつの節目に過去を振り返り今後のますますの発展を祈念し、早速翌日からそれを行動に起こす・・・・こうした行事はやはり重要です。セレモニーだけに終わるのではない、次世代への継承という視点に力点を置けば、こんなにも有意義なものはなかなか無いのかもしれません。是非、皆さまの地元でもご検討いただければと思います。    

 


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