1.日司連主催「消費者被害救済実務セミナー」 In 京都
(1)平成17年10月22日(土)、23日(日)、京都において、日司連主催の標記セミナーが開催されました。
これまで「クレサラシンポジウム」という名前で行ってきたものをリニューアルしたものですが、全国から500名程度の参加者をお迎えし、これまでの中でも最大規模の研修会となっています。10年ほど前、全青司で主催していた当時は、数十名の参加者であったことを考えれば、まさに「隔世の感」というところであります。
ちなみに、私は、現在も、このセミナーを企画運営している日司連消費者問題対策推進委員会の委員(昨年までは委員長)であり、今回も、「ヤミ金融被害への対処法」と「個人民事再生のいくつかの論点」という二つの分科会を担当させていただいております。
(2)さて、毎年、参加者が増加し続ける背景にはどのようなものがあるのでしょうか。私の予想するところでは、大別して、@クレサラ問題について、法律家としての自覚から取り組む司法書士の激増という「積極的要因」と、A登記事件の全体的な減少と寡占化による減少から取り組もうとする「消極的要因」があると考えられます。
結論から申し上げますと、取り組むきっかけはAに比重が置かれているとしても、ひとまずは大いに歓迎したいと思っています。なぜなら、どんな理由であるにせよ、まさにあらゆる法律問題の坩堝であり、また社会問題でもあるこの問題に一度取り組めば、必ず、法律家である自分自身の役割について見つめ直すことに繋がると思うからです。実際私もそうでした。(もっとも私がこの問題に取り組んだのは、司法書士に裁判事務書類の作成という権限が与えられている以上、破産申立書等の作成は当然に関わっていくべきという理由でありましたが。)
従いまして、今後のセミナーにおいても、単に、多重債務事案における法的技術を伝達するだけでなく、より根源的な問題提起と、それについて参加者の皆さまと議論できるような企画をしていくべきであろうと考えています。
皆さまはいかがお考えでしょうか。
(3)その意味において、初日の午前中から行われた、初学者向講座 「クレサラ入門」の講師宮里徳男会員(沖縄会)の講義は、まさに的を得たものであったと考えています。
なぜこの問題に積極的に取り組んでいるのか・・・・また、司法書士がどう取り組むべきなのか、宮里会員の熱い思いは多くの初学者の心に響いたものと確信しています。
(4)その後、基調講演「消費者法」は、京都産業大学法科大学院教授坂東俊矢先生であります。クレサラ問題だけではなく、消費者問題全般についての現状と課題について、多くの司法書士に学んでいただき、各種消費者問題についてもクレサラ問題と同様の積極的な取り組みを期待したい・・・そう考え、坂東先生に基調講演をお願いいたしました。
坂東先生の講義は、そのような当委員会の期待に大きく応えてくれる内容でありました。
キーワードとしては、「消費者被害の現実と契約不信というねじれ現象」「消費者の企業に対する不信感」「悪質業者をたたくだけでなく、通常の企業にもきちんと消費者の視点を伝えることが肝要」などという言葉が印象に残りました。
一方、今般の特定商取引法の改正により、「適合性の原則」が明文化されていますが、この点につき、行政規制に留まっているが、民事上の契約の効果にまで踏み込んだと理解すべきであるとの指摘がなされました。
(訪問販売における禁止行為)第7条 法第7条第3号の経済産業省令で定める行為は、次の各号に掲げるものとする。
1.2.(省略)
3.顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行うこと。
4.5.6.(省略)
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これまで、証券取引や商品先物取引の分野においては、多くの裁判例により確立されているところでありますが、適合性の原則違反については、損害賠償に対象となるというのが判例理論でありますから、特定商取引の分野においても、訴訟において必ず主張してほしいという指摘がなされたところです。
坂東先生の講義の締めくくりに述べられた言葉「消費者の権利を創造してほしい!」というエールを私たちは真剣に受け止めなければならないでしょう。
(5)基調講演の後は、分科会です。今回の特色は、参加者一人につき、4つの分科会を選択できるという点です。初学者用に入門的な分科会を設置し、経験者用に、上級編を設置させていただいており、前回以上に満足度の高いものになっていると思います。
それでは、お忙しいところ分科会の講師を務めていただいた皆さまに改めて感謝の気持ちを伝える意味も含めて、謹んで紹介させていただくことにします。敬称略です。
初日一コマ目、(1)破産手続入門編、講師芝豊(静岡)、(2)クレサラ入門T、講師田中祐介(大阪)、(3)利息計算の手法、講師外山敦之(新潟)、(4)ヤミ金融被害への対処法、講師小澤吉徳(静岡)、(5)消費者法概論、講師中里功(静岡)、(6)消費者教育T(消費者生活論)講師柏木信一(広島修道大学助教授)、竹村秀博(広島)。
初日二コマ目、(7)不当利得返還請求訴訟、講師水谷英二(愛知)、江里二郎(愛知)、(8)クレサラ入門U、講師田中祐介(大阪)、古橋清二(静岡)、(9)少額管財、講師野口雅人(東京)、黒澤賢一(東京)、(10) 個人民事再生のいくつかの論点、講師小澤吉徳(静岡)、下田代博之(静岡)、増田真也(静岡)、(11) 消費者契約法入門編、講師小口一成(長野)、大島徹也(富山)、(12) 保証債務、講師小寺敬二(静岡)、吉田善礼(福岡)。
二日目一コマ目、(13) 特定調停と債務整理、講師水谷英二(愛知)、江里二郎(愛知)、(14) 任意整理T、講師成瀬耕一(富山)、(15) 不当利得返還請求訴訟上級編、講師宮内豊文(静岡)芝 豊(静岡)、(16) 多重債務整理と倫理、講師野口雅人(東京)、黒澤賢一(東京)、(17) 消費者契約法上級編、講師小口一成(長野)、大島徹也(富山)、(18) 特定商取引法、講師大澄正人(静岡)、 池田誠治(愛媛)。
二日目二コマ目、(19) 破産手続上級編、講師赤松茂(静岡)、花田眞吾(静岡)、 アドバイザー古橋清二(静岡)、(20) 任意整理U、講師成瀬誠一(富山)、(21) 取引履歴再現の理論と実務、講師 石川芳弥(宮城)、(22) 個人債務者再生入門編、講師外山敦之(新潟)、(23) 抗弁の接続、講師池田誠治(愛媛)、大澄正人(静岡)、(24) 消費者教育U、講師柏木信一(広島修道大学助教授)、 竹村秀博(広島)。
(6)私も、消費者教育Uの分科会に参加させていただきました。そこでは、教師と司法書士の共同作業で行われている法教育の実践例についての報告がなされました。
京都では、国語の授業において、国語の教科書に契約文書を読むというカリキュラムあることを端緒に、教師主体で司法書士が補足するという形で授業をしているとのことでありました。
また、和歌山における、和歌山大学の大学祭実行委員会と司法書士会との共同作業による寸劇についての報告もなされています。
柏木教授からは、法教育の現場においては、受信するだけでなく発信させることが大事であるとの指摘がなされています。
日司連は、この分野における積極的な取り組みを約束する会長声明を出しています。今後の取り組みを期待したいと思っています。
(7)一方、第16分科会「多重債務整理と倫理(主に提携司法書士問題)」においては、次の内容の決議が行われたとのことであります。
「決議の趣旨」
東京並びに大阪を中心とする提携司法書士問題は、このまま放置しておくと、そう遠くない将来全国各地に普及し、司法書士制度に対する国民の信頼を失墜させる。そうなってしまっては、国民の権利を保全するという司法書士の職責を果たすことが不可能となる。従って、提携司法書士の撲滅は、司法書士全体にとってまさに緊急の課題である。しかるに、現行司法書士法を見ると、弁護士法と異なり、提携司法書士を禁止する明文規定すらない。また、提携司法書士の刑事告発を弁護士法を借用して行うのも本末転倒である。
そこで、平成17年度消費者被害救済実務セミナー第16分科会「多重債務整理と倫理(主に提携司法書士問題)」では、全国の司法書士会に対して下記の決議を行うこと、最終的には日本司法書士会連合会でも同様の決議を行うことを提言する。
「決議の内容」
(1) 非司提携の禁止に関する明文規定を司法書士法に盛り込む改正を行う
(2) 司法書士会が自主懲戒権を獲得すること
(3) 提携司法書士撲滅のため、各司法書士会における研修活動をより充実させること
(4) 提携司法書士撲滅のため、各司法書士会における相談活動をより充実させること
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(2)について、内容的に難しいという意見も当然出たようですが、提携問題はこのまま放置していけば、国民の司法書士に対する信頼を失墜させかねない重要かつ緊急の問題と考え上記の決議をしたとのことであります。
この点につきましては、皆様のご意見をいただければ幸いです。
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