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〜全青司活動現場からのレポート〜




全青司憲法シンポジウム〜事実(現場)から憲法を考えるin 博多 (平成17年11月8日)

 1.全青司憲法シンポジウム〜事実(現場)から憲法を考えるin 博多

(1)平成17年11月6日(日)午前9時から12時まで、福岡県司法書士会館において、標記シンポジウムを開催し、30名以上の参加者により熱心な議論が行われました。主催は、全青司人権擁護委員会、担当委員長は古田善宏会員(千葉会)です。

(2)まずは、企画趣旨を紹介させていただきます。

「国民主権,平和主義,基本的人権の尊重」。文字の上の知識として刻み込まれており,参議院の憲法調査会報告書においても「この三大原則(基本原理)は、戦後半世紀以上の年月を経て、我が国に定着しており、これを今後も維持すべきである」とされています。
 憲法前文でも宣言され、当然の前提とされているこの三大原則(基本原理)ですが,なぜ国民主権なのでしょうか,なぜ平和主義,基本的人権の尊重なのでしょうか。
 国政の最終的な決定権能が国民に存在すること(国民主権),戦争の徹底否定という態度の表明(平和主義),ものを言う自由・最低限度の生活の保障(基本的人権の尊重)という憲法のもつ根本的な価値観はすべて「個人の尊重」という考え方に基づいています。
 国家は個人のために存在しています。「すべて国民は,個人として尊重される(13条)」。豊かな人も貧しい人も,健康な人もハンディを持った人も,子どもも女性も外国人もすべて一人一人が個人として尊重されるべきだというのが,憲法が持つ永久不可侵の理念です。この理念が脅かされることのないよう,いかにして国家権力に歯止めをかけるかというのが憲法の役割であるということを常に認識しなければならないと思います。
今,改憲に向けた議論が加速しています。首相は「自民党がまず案を出すことで、各党も真剣な討議を促進しないといけない環境になる。国会、国民に大きな議論を喚起することは極めて意義が深い。多くの国民が理解を得る環境を醸成し、憲法改正という大きな事業をやっていきたい(9月30日衆院予算委員会)」と述べ,改憲への期待感を示しています。
 憲法を考えることは必要ですが,始めに改憲ありきの姿勢は問題です。改憲という流れに巻き込まれることなく積極的に議論をする時期にあるのは確かです。
 振り返ったとき,あのときが曲がり角だったと後悔しても遅いのです。
 全青司では、これまで、ストレートに憲法問題を議論する機会は多くありませんでしたが、日々の様々な活動における背後に常に存在するものは、例えば「基本的人権の尊重」というような憲法の理念でありました。第44回衆議院議員総選挙が自民党の圧勝に終わり、これをもって憲法改正の方向に大きく傾斜すると言われている現状において、全青司では、全青司活動の「現場」から見える「事実」のひとつひとつから、「個人の尊重」や「法の支配」、そして、憲法とは何か、憲法の存在意義を考え、そして改憲に向けた議論を検証してみたいと思います。
 
   
   
(3)第1部は、全青司活動の現場から考える憲法というテーマでのリレートークです。登壇順に紹介させていただきます。敬称略です。
 @生活保護問題(大田朋美・札幌)、Aこども問題(石井寛昭・神奈川)、Bホームレス問題(力丸寛・東京)、Cハンセン病問題(西山弓子・大阪)、D障害者問題(加藤正泰・神奈川)、E外国人問題(松岡均・神奈川)、F監視社会問題(大部孝・福岡)、G貸金業規制法43条問題(稲本信広・熊本)、H司法過疎問題(小澤吉徳・静岡)、IADR(安藤信明・東京)
 いずれも、各人の現場からのレポートということで、説得力に富むものであったと思います。

(4)第2部は、福岡県弁護士会の武藤糾明先生による講演です。個人の尊重と法の支配、憲法とは何か、憲法の存在意義を考え、そして改憲に向けた議論についてお話しをいただきました。
 武藤先生は、日弁連において「医療と人権問題」を扱う委員会に所属し、また、住基ネット差し止め訴訟の事務局長をされるなど、まさに人権問題の最前線で活躍をされています。
 極めて示唆に富む講義内容でありましたので、特に印象に残った点を記しておくことにします。
 武藤先生は、「そもそも憲法とはなにか?という点について、必ずしも理解が周知されていない。」と述べます。「9条も大事だが、それだけで本質は見えてこない。すなわち、最重要事は、個人の尊厳である。」と。つまり、権力を縛ることが憲法の本質であり、そうであれば、そもそも国民の義務の規定は本来不要であるはずであるということになります。また、新しい人権を規定する必要もないということになりましょう。このような武藤先生の指摘は極めて明快であると思いました。ちなみに、憲法改正に関して、9条についての意見については一致をすることができない日弁連も、「立憲主義を守ろう!」という一点においては意見の一致をみるという指摘がありましたが、憲法の本質を考えれば当然のことと言えるのかもしれません。 そして、自民党草案の最大の問題点は、13条の改正にあるとの指摘がありました。
 現行憲法の13条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」となっていますが、自民党草案によりますと、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」とされ、「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に置き換えています。
 この意味するものは何でしょうか。この点につき、武藤先生は、@軍事的利益を人権に優先させること、A治安強化施策を実施すること、その他ネオコンの政策を進めるうえで、違憲という批判をさせないこと(法の支配の回避)、であると指摘されています。
 また、そもそも「公共の福祉」に関する誤解が大きいとの指摘、すなわち、「公共の福祉」は人権に優先するものではない、個人の尊厳を削れるのは個人の尊厳だけである、とのコメントも印象に残りました。人権と公共の福祉の問題について、全青司においても、より深い議論をしていく必要がありましょう。

(5)さて、この憲法改正の問題については、皆さまがそれぞれ意見を持ち、また、こうあるべきという考えをお持ちなのではないかと思います。全青司としましても、皆様からの意見をお聴きしながら、役員間で一層議論を深め、憲法改正に対する意見を集約していきたいと考えています。  


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