1.未払い賃金・サービス残業110番全国一斉開催〜労働契約法の制定にも目を向けよう
(1)平成17年11月23日(水)の勤労感謝の日、全国主要都市13カ所で一斉110番を行ないました(実行委員長 赤松茂常任幹事・静岡会)。実施地区は、宮城県、福島県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県、山梨県、長野県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、島根県であります。参加いただいた単位会の皆様、お疲れ様でした。ありがとうございました。
また、今般、残念ながら参加を見送られた単位会の皆様におかれましては、次年度以降の参加を前向きにご検討くださるよう重ねてお願い申し上げます。
(2)近時、雇用情勢の悪化と労働者の権利意識の向上を反映して、個別労働関係紛争事件が急増しております。特に不況による賃金の未払いや管理職に昇進した途端に残業代が支払われなくなるといった相談がわれわれ司法書士のもとにも数多く寄せられております。
しかしながら、未払い賃金に関する紛争は、紛争の価額が少額であることが一般で、多くの労働者は泣き寝入りをしている現状にあり、実際に相談に訪れる労働者は氷山の一角であると思われます。 また、サービス残業に関する紛争にしても、労働者は昇進と引き換えに残業代の不支給を甘受せざるを得ないという労使慣行が蔓延しており、経営者と一体の立場にない限り労働時間法制の適用を受けるとする判例や同趣旨の通達が各職場にほとんど浸透していない実情にあります。そこで、今回は、個別労働関係紛争の中でも、特に相談件数の多い「未払い賃金・サービス残業」に特化した相談会を全国一斉で開催することといたしました。
(3)当日、私は、東京会場(全青司事務局)において、東京青司協の皆さまとご一緒させていただきましたが、労働新聞や読売新聞などの広報の影響もあって、多数の相談が寄せられています。東京会場においては、未払い賃金やサービス残業の相談のほか、休暇や休憩時間などに関する相談も寄せられています。集計結果と分析に関しましては、追ってご報告させていただきます。
(4)さて、厚生労働省労働基準局監督課政策係においては、「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」をたちあげ、中間取りまとめを発表しております。詳細につきましては、こちらを参照してください。
そして、これに対して、平成17年6月20日付で、(社)日本経済団体連合会労働法規委員会労働法専門部会は意見書を提出しており、日本労働弁護団も意見書を提出しているところです。
(5)中間取りまとめのポイントとしては、まず、「労働契約法の必要性」について、『近年の就業形態・就業意識の多様化に伴う労働条件決定の個別化の進展や経営環境の急激な変化、個別労働関係紛争の増加や集団的労働条件決定システムの機能の相対的な低下を踏まえ、また、労働者の創造的・専門的能力を発揮できる自律的な働き方に対応した労働時間法制の見直しの必要性が指摘されていることから、労使当事者が社会経済状況の変化に対応して実質的に対等な立場で自主的に労働条件を決定することを促進し、紛争の未然防止等を図るため、労働契約に関する公正かつ透明なルールを定める新たな法律(労働契約法)が必要となっている。』としております。
そのうえで、「労働契約法の性格」については、『労働契約法は、労働基準法とは別の民事上のルールを定めた新たな法律とし、履行確保のための罰則は設けず、監督指導は行わない(行政の関与は情報収集・提供等の援助や指針の策定にとどめ、紛争には個別労働紛争解決制度によって対応。)。また、労働基準法についても労働契約に関するルールの明確化の観点から見直しを行い、労働契約法と労働基準法とがあいまって時代の変化に対応した適正な労働関係を実現する。』としています。
また、「労働時間法制の見直しとの関係」については、『労働者の自律的な働き方に対応するためには、労働時間法制の見直しも検討する必要があるが、仮にその見直しを行う場合には労使当事者が業務内容、労働時間を含めた労働契約の内容を実質的に対等な立場で自主的に決定できるようにするための労働契約法が不可欠となる。』としています。
そして、労働契約法について、具体的には、労働契約の成立・変動・終了に関して要件と効果を規定することとし、検討すべき主なものとしては以下のとおりとされています。
@採用内定の留保解約権の行使はその事由が採用内定者に書面で通知されている場合に限ることとし、採用内定時に使用者が知っていたか又は知り得た事由による採用内定取消を無効とする。 A試用期間の上限を定める。 B就業規則による労働条件の変更が合理的なものであれば労働者を拘束する等の判例法理を明らかにする。 C労働契約の変更に関し、労働者が雇用を維持した上でその合理性を争うことを可能とする「雇用継続型契約変更制度」の導入について検討する。 D配置転換の際に使用者が講ずべき措置について指針等で示す。 E出向を命ずるには労働契約、就業規則又は労働協約の根拠が必要であることを明らかにする。また、当事者間に別段の合意がない限り、出向中の賃金は出向直前の賃金水準をもって出向元・出向先が連帯して出向労働者に支払う義務があるという任意規定を定める。 F配置転換、出向等に係る権利濫用法理を明らかにする。
G転籍に当たっては、転籍先の情報、転籍先での労働条件等を書面で労働者に説明して同意を得なければならず、書面による説明がなかった場合や転籍後に説明と事実が異なることが明らかとなった場合は、転籍を遡及的に無効とする。 H懲戒解雇、停職、減給の懲戒処分に当たっては、懲戒処分の内容、非違行為、懲戒事由等を書面で労働者に通知することとする。 I退職後の秘密保持義務を労働者に負わせる個別の合意等は、労働者の当該義務違反によって使用者の正当な利益が侵害されることを要件とする。 J安全配慮義務や労働者の個人情報保護義務を明らかにする。
K解雇は、労働者側に原因がある理由、企業の経営上の必要性又はユニオン・ショップ協定等の労働協約の定めによるものでなければならないこととし、また、解雇に当たり使用者が講ずべき措置を指針等により示す。 L解雇の金銭解決制度の導入について検討する。この場合、解雇についての紛争の一回的解決を可能とすることを目指す。 M労働者が使用者の働きかけに応じて退職の意思表示を行った場合、一定期間これを撤回することができることとする。
(6)このような極めて重要な法改正の動きに対し、全青司としましても、今般の110番、また、今後の継続的な取り組みを土台として、法律実務家司法書士としての立場から、より良い労働契約法の制定に向けて意見を述べていく必要があるのではないでしょうか。
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