司法制度改革の時代を司法書士として生きる!
〜全青司活動現場からのレポート〜




市民集会「出資法の上限金利見直しに関するタウンミーティング」(静岡青司協)(平成17年12月6日)

1.市民集会「出資法の上限金利見直しに関するタウンミーティング」(静岡青司協)

(1)平成17年12月4日(日)、静岡県司法書士会において、静岡県青年司法書士協議会(下田代博之会長)主催の標記集会が実施されました。参加者90名程度の市民集会となっています。
 ご参加いただきました議員等の皆さまにおかれましては、たいへんお忙しい中、本当にありがとうございました。心より感謝申し上げます。

(2)さて、先の第44回衆議院議員選挙では、郵政民営化問題がその中心的な争点となりましたが、各会員が日々多重債務者等救済に取り組でいる静岡青司協では、平成19年1月に予定されている出資法の上限金利の見直しこそが次期政局に向けての重要課題と考え、県内小選挙区全立候補者に対し、当該「見直し」についての見解を尋ねるアンケートを実施しました。
 今回の市民集会は、上記のアンケート結果を踏まえ、直接、間接に政策形成に携わる方々をお招きし、改めてこの問題に関する見解・意見を問い、またその方々と意見交換を行う「タウンミーティング」を中心とするものです。このようなタウンミーティング形式の市民集会を開催することにより、出資法の上限金利についての一般市民の関心・社会的関心を喚起し、延いては、今後、県内各地方議会に対する(金利引き下げ)請願活動を行うについてのその土壌作りとすべく、企画したものです。

(3)開催趣旨は次のとおりです。

『平成15年7月ヤミ金融対策法(貸金業規制法及び出資法の一部改正法)が制定された際、出資法附則12条において、これまで段階的に引き下げられてきた出資法上の上限金利(平成12年6月1日以降は年29.2%/出資法5条2項)について、「この法律施行後3年を目処として」、「資金需要の状況その他の経済・金融情勢、…(中略)…その他貸金業者の業務の実態等を勘案して」検討し見直しをするとされた。この「見直し」の時期は、平成19年1月と言われている。そして、上記の見直しに向けて、金融庁においても「懇談会」を設け、既に検討に入っているところである(※)。
 これに対し、貸金業者団体等では、規制緩和論を背景に、金利引き上げ・金利規制撤廃に向けた動きが盛んである。
 他方、年29.2%が上限利率である現在においてすら、全国で、多数の自己破産者、借金苦による夜逃げや自殺など社会問題が引き起こされている状況から、全国各地の高金利被害者団体やクレサラ対協等諸団体は、上限金利引き下げの運動を展開し、また、先の静岡県司法書士会定時総会及び日本司法書士会連合会(日司連)定時総会等においては、「出資法の上限金利引き下げを求める決議」が決議されている。
 わが静岡県青年司法書士協議会(静岡青司協)は、静岡県内の若手司法書士約80名で構成する研究・運動団体であるが、貸金業者の高金利貸付による弊害については、各会員が多重債務者救済の実務に携わる中で日々痛感するところであり、当協議会としても、出資法上限金利の引き下げを求めているところである。また、当協議会では、先の第44回衆議院議員選挙にあたっては、静岡県内小選挙区立候補者全員に対し、「出資法の上限金利見直しに関する公開アンケート」を実施している。 しかしながら、上記出資法の上限金利見直しの問題は、郵政民営化や年金問題と同様、国民の生活、経済活動に直結する問題であるにもかかわらず、いまひとつ国民的議論の対象とは言い難い状況にある。
 そこで、当協議会では、一般市民のこの問題に関する関心を喚起し、上限金利の見直しをより広範な国民的議論の対象となるきっかけとするべく、上記アンケート実施結果等を踏まえ、下記の要領で市民集会を開催することを企図した。』
(※)ここでの議論は、下記ホームページに掲載されている。 金融庁 総務企画局長の私的懇談会「貸金業制度等に関する懇談会」 

(4)まず、『レクチャー』として、宮内豊文司法書士(日司連消費者法制検討委員会前委員長)による「出資法の上限金利見直しにおいて何が問題となっているのか」というテーマでのこの問題の背景ならびに論点整理が行われました。
 1960年代には団地金融と呼ばれていた現在の消費者金融業者が、1973年のオイルショック・世界同時不況・産業界の資金需要の冷え込みに端を発した銀行のサラ金への融資により、第一次サラ金パニックが起き、貸金業規制法の成立・出資法の改正がなされたという背景、そして、第二次サラ金パニックから現在・・・・そのキーワードとしては、「自動契約機の稼動」「サラ金の新聞広告解禁」「サラ金会社の上場」「商工ローン問題」「ヤミ金融の跳梁跋扈」「銀行とノンバンクの融合」などであります。
 そして、「利息制限法と出資法」「貸金業規制法43条の矛盾」に関しては、そもそも利息制限法上無効な契約内容を書面に記載することによって、事後的に有効にするというおかしな構造についての指摘がなされました。  「利息制限法・貸金業規制法43条をめぐる最高裁の主な判決」「貸金業者の主張」についても、コンパクトに要点のみの指摘であり、簡潔で分かりやすい説明でありました。

(5)その後、プログラムにはありませんでしたが、会場の参加者からの報告がなされました。事業者の方で、かつて多重債務者であった方ですが、民商の葵道場のアドバイスにより、特定調停の手続を申し立て、最終的には債務はゼロとなり、一方において、400万の過払い金の存在が判明、司法書士に依頼して、この過払い金を回収、これまで滞納していた消費税や国保などの支払いに回して再起を図ったとのことであります。

(6)そして、『タウンミーティング』であります。各政党静岡県支部からそれぞれ代表者を招き、上限金利見直しに関する各党(県支部)あるいは代表者個人の意見・見解を聞き、また一般市民、司法書士ら参加者との間で意見交換を行うことを主眼とした企画であります。
 登壇者は、自由民主党(県議会議員)前沢侑様、公明党(県議会議員)前林孝一良様、民主党(衆議院議員)田村謙治様、日本共産党(元衆議院議員)平賀高成様の4名、進行(コーディネーター)は、中里功司法書士(全青司常任幹事・日司連消費者法制検討委員会委員)であります。

 以下、登壇者のコメントを質問ごとにあげておきます(敬称略)。

   
@質問1 貴党(若しくは貴殿)は、出資法上限金利見直しについて、どうお考えでしょうか。

「前沢」党としての回答はできない。県連でも議論したことなし。この機会に勉強したい。個人的には金利の見直しは当然、自由化はとんでもない。
「前林」党として明確な回答はない。個人的な意見にならざるをえないが、勉強したい。サラ金の金利は異常な数字と認識している。借りやすい環境について危惧している。
「田村」民主党のスタンスもまだ決定していない。経済的な視点から見れば、ある程度の収益は必要。リスクが高い層には高金利やむなしという意見もある。幅広く意見を聞きながら意見を集約したい。
「平賀」少なくとも利息制限法までに引き下げるべき、利息制限法の金利も引下げるべき。

A質問2 金利規制撤廃論・金利自由化論についてどう考えるか。

「平賀」 反対。
「田村」 個人的には反対。党も自由化という結論にはならないだろう。金利だけの問題ではなく、違法取立てや過剰与信の問題もある。金利を下げると廃業する業者も出る、そうすると利用者の利便性が低くなるという問題もある。銀行では貸してくれないのだから。
「前林」 反対。消費者を守るという立場から反対。
「前沢」 反対。緊急にお金の必要な人は切羽詰っているので、規制撤廃が行われたらどうなるか分からない。業界の現状からの一定程度の規制はやむなし。

B質問3 どの程度の金利が妥当と考えるか。グレーゾーンについてどう考えるか。

「平賀」 適正金利については判断が困難。通常の金利プラス6%くらいという意見もある。
「田村」 適正金利については判断が困難。グレーゾーンは撤廃すべし。対立意見の聴取、諸外国の調査等を踏まえて検討したい。
「前林」 適正金利については判断が困難。20%くらいか?グレーゾーンは撤廃すべし。借金をしなくてもいい環境づくり、セーフティネット作りが重要ではないか。
「前沢」 グレーゾーンは撤廃すべし。適正金利については判断が困難だが、消費者金融の利益は莫大であるから利息制限法程度が適当か・・・・

「木村達也弁護士」 適正金利については、日弁連も統一見解はない。一般産業並の利益を出すようなレベルが適正か・・ 
「大澄正人司法書士(日司連消費者法制検討委員会委員長)」 借りれなくなる層についてはセーフティネットとして国が施策を考えるべき。

C質問4 金利引き下げの結果、ヤミ金融が跋扈したとの主張について。

「前林」 直接関係はないのではないか。ヤミ金融は昔からある問題。
「平賀」 無関係。 
「前沢」 無関係との認識。
「田村」 基本的には無関係と思うが、借りれなくなってしまった層がどう動くか・・・セーフティネットといっても税金を補助するというのはいかがなものか。

D質問5 金利引き下げにより、中小貸金業者の倒産の恐れがあるという意見について。

「前沢」 利息制限法制定時の市中金利が何%だったかが重要。
「前林」 消費者・被害者の救済に視点を置く必要がある。企業努力で乗り越えて欲しい。
「平賀」 業界で審査を厳しくするなどの業界努力で乗り越えるべき問題。
E質問6 「銀行とノンバンクの融合(きんざい)」という書籍が、官僚の間で広く読まれているとのことだが、官僚の間ではどういう議論になっているのか?

「田村」 本書のような考え方は大勢ではないと思う。

F質問7 銀行とサラ金の一体化について 銀行の責任はどう考えるか。

「前沢」 賛成できない。
「前林」 消費者がきちんとしくみを知ることが前提。消費者教育の必要性。
「田村」 金融教育。銀行の社会的使命は重い。大手サラ金と手を組むのであれば、銀行がサラ金に対して金利引き下げを進言するなどの検討も必要では。

G質問8 地方議会への請願活動に対する協力について

「前沢」 党に帰って検討。
「前林」 個人的には協力したい。
「田村」 これから党の考えをまとめる。その結果方向性が同じになればすぐにでも協力したい。
「平賀」 賛成。
   


 また、一般の参加者の方からは、裁判所に行った経験から、「43条や17条分かりにくい。業者は18%でもやっていけるだろう。もっと弱者のことを考えて政治を行ってほしい。」「ヤミ金融被害の現場では極めて深刻な事態になっている。もっと現場を知ってほしい。」との意見がなされました。
 さらに、金融庁のHPにあげられている貸金業者に関するデータによれば、貸出残高が、19兆円(個人)、24兆(事業)の合計43兆ということであり、その金利として、10兆がもうけになっている現状も指摘がされています。
 そして、司法書士側の意見としては、司法書士の努力が不足してる部分も大きいのではないか、政治家が知らないということを批評するだけでは済まされない、法律家の責任というものをもっと考えるべきとのコメントもなされています。全くの同感であります。
 最後に、全体を通しての私の感想を述べておきますと、『議員・政治家に対する、専門家による継続的な情報提供の重要性を実感した。』ということに尽きます。繰り返します。これも法律家の重要な役割です。頑張りましょう!

(7)最後に、『出資法の上限金利引き下げに向けて〜司法書士会等の今後の取り組み・活動報告』として、木村達也弁護士・増田真也司法書士・大塚範之司法書士による報告がなされました。
 木村弁護士の「理屈が正しければ政策に反映されるのではない。そこには運動論がなければだめ」というコメントには身の引き締まる思いでありました。
 また、木村弁護士は、マスコミを動かす重要性についても、「抽象的な議論ではだめ。具体的な事件に基づくことが必要であり、これは弁護士・司法書士の仕事である」と喝破されています。
 引き続き、増田真也静岡県司法書士会常任理事(全青司事務局長)からは、静岡県司法書士会が主導して行う予定の地方議会への請願活動についての意義と今後の予定が報告され、大塚範之司法書士からは、必ずしも高金利被害者ではない一人ひとりに丁寧な説明をし、理解を求め署名をいただくことの重要さについての報告がなされました。
 さあ、皆さま一人ひとりの運動が今後を決定することになります。ともに頑張りましょう!


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