営業マン
「ぼんっ!」
何かが破裂したわけではない・・・σ(^^)が呼ばれたのだ!
ほぼ毎日のように、営業外回りで得意先を訪問するが、大口得意先の女性社員が私をこう呼ぶ。
30代前半の独身であるが、さっそうとしていて見ていて気持ちが良い。
なぜ「ぼん」なのか?たずねてみると意外な答えが返ってきた。
「だっていいとこのオボッチャンでしょう〜?ぼんぼんの息子やからぼん!」
大きな誤解をしていることを告げても、「いいのっ!ぼんでっ!!ぼ〜ん♪」
骨の折れる相手である。
今日も営業バックを片手に得意先を回る。
新規得意先開拓は苦手な分野だがそうはいっておれない。
3回目の訪問くらいから慣れてくるので先方を昼食に誘うようにしている。
俗にいう「ランチ営業」だ。
スーツの上着を脱ぎながら一言;「昔、重量挙げやってまして…」
皆一様にびっくりする。着やせするのでそんなふうにはみえないのだろう。
学校を卒業して、何ヶ月かのブランクがあったが一度スポットライトを浴びると癖になってしまい、
社会人になって3回ほど国体に出させてもらった。
(引退して復帰してくるゲイノー人の気持ちがなんとなく判る…)
自分ではクラークケントに似ていると思っているが家内に言わせると
「どこがクラークケントよ! Mr.オ○レそっくりじゃない!」と毒づく。(^^;;;
ランチを食べ終わるころには趣味の話に花が咲くが「釣りもするんですよ〜」というとへーっと感心される。
見た目はどうも「趣味は読書と音楽、ごろ寝」くらいにしか見えないという…
投げ釣り、磯釣り、船釣り…一通り話をするとたいそう話が弾む。
だんだん打ち解けてくるとギャンブルの話となることもあるが「麻雀もやるんですよ〜♪」
でほーっと皆意外そうに相槌を打つ。「今度ぜひ教えてください!」と控えめに頭を下げる。
学生時代フリーで打っていたなんて口が裂けてもいわない。
だんだん正体がばれてくる。「なんでもやるんですねえ…」
ギャンブルならなんでもできると言うわけではない。競輪競馬の類はまったくわからないし、将棋や囲碁もまったくダメ…
一番好きなのはチンチロリン!
どんぶりにサイコロを三つ落として出た目で勝敗を競うもので
戦前から存在しているらしいが、「ギャンブル」ではなく「バクチ」といった方が良いかもしれない。
(品のないことこの上ない…)
女性が同席していればサイコロは振れないから「九星による占い@相性診断」を振る。最近はブームとあってか、
「占い得意なんですよ〜♪」で必ず盛り上がる。あたるも八卦あたらぬも八卦だがずいぶんと勉強した甲斐あってか
意外と当たっているらしい…ホンマかいな〜
のってこない女性にはアロマテラピーやダイエットを振ったりもするが駄目押しは
「最近はクワガタにはまってまして…」「すごいですねぇー!」とみな眼を点にする。
インド、ネパールの高価なDAやニジイロの話を始めるともう止まらない(笑
…
ランチ時間をとうにオーバーしてしまう。先方は喜んでくれているようだがどうも営業には向いていないと思う。
6月某日 抜き打ちの本店監査が入った。
本来なら30分で終わるヒアリングだがこの監査人相当ユニークで監査開始10分後に釣りの話を振ってきた。「しめた!」
佐賀関の関アジ、関サバや玄海灘のいか船の話をぶちまける。
「いいですねー」を連発し始める。監査人の顔が緩んできた…きめ技はもちろんクワ話。
「実は趣味でくわがたのブリードをしています」から始まったがそれからの30分、
監査人の目はまさに子供の頃の、あの好奇心のかたまりのようなそれに戻っていた・・・

波とたわむれる著者
2000年8月20日;宮崎シーガイア
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