| 五十音順 (全719タイトル) |
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| あ | か | さ | た | な |
| は | ま | や | ら | わ |
『エンジェル・スノー』(03年5月11日鑑賞) もう3年も不妊治療を受けている夫婦。 乗り気でない医者の背中を押すようにして受けた治療が功を奏し、妊娠。それまでが辛かったぶんだけ、大きな幸福が夫婦に舞い降りる。 ところが、お腹の子供には重大な――。 子供が欲しくてできない夫婦の心情が細やかに描かれ、しっとりとした仕上がりの佳作になってます。 ただ、妻の両親は早くに亡くなってるから画面に登場しないのも当然だとして、でも、子供のことでいちばんうるさく言うのは夫の家族じゃないんだろうか。それがまったく出てこないのは理解に苦しむ。ドロドロのドラマにはしたくなかったんでしょうね。 (ハン・ジスン監督 2001年 韓国) トップへ 『笑う蛙』(VHS 03年5月8日鑑賞) 公金横領で詐欺罪に問われ逃亡中の夫。が、いきなり妻の前に現れ、少しの間匿ってくれ、などと都合の良いことを言い出す。妻も、少しの間なら、などと匿ってやることにする。ところが妻には新しい恋人がいて泊まっていくわ、妻の母親は逃亡中の夫の「性」的な悪口を言いまくるわ、とても穏やかに隠れていられる状況じゃない。 小さくまとまった低予算映画。出来は悪くない。 舞台にしても面白いんじゃないか。 (平山秀幸監督 2002年 日本) トップへ 『郡上一揆』(VHS 03年5月8日鑑賞) 定額ではなく、毎年の作によって年貢を決めることにする。こうすれば不作の年には年貢も少なくてすみますよ。と、こんな申し出が領主からなされる。でもこの「検見」法は、実際には火の車の藩財政を立て直すための増税案、百姓たちは反対運動に立ち上がる。闘う男、見守る女。んで、百姓たちは領主の首をすげ替える。殺された者たちは神様になる。 徳川も中期、豊かになった百姓たちが既得権益を守ろうと起こした本当はひどく退屈な裁判闘争を、史実につかず離れず、それでもけっこうドラマチックに描いている。当時の百姓の中には大変な知識人がいて、一揆とはいえ基本的には領主や幕府との知恵比べなのだったということがよくわかる。徳川貧農史観に毒されてないのがとてもいい。 真面目に作り込まれた良作。 なんだけど、「検見」法って、領主は替わっても施行されちゃうんだよな。だったら、この闘争、全く無駄ってことじゃん。領主の首をすげ替えたのを勝利みたいに描いて、「検見」の施行について全く触れないのは少しアンフェアじゃないのかね。闘争には負けたけど村の〈神〉になったからいい? そういうものかも知れんが(靖国の英霊ってそうだもんな)、なんか納得いかないぞ。 (神山征二郎監督 2000年 日本) トップへ 『少年義勇兵』(VHS 03年5月7日鑑賞) 植民地にされた経験を持たない国はアジアでは日本とタイだけだという。ところがこの二つの国が、まさに1941年12月8日未明、誤解によるとはいえ、数時間戦闘を交わすことになる。映画は、この戦闘に参加した少年義勇兵なる少年たちの物語。実話に基づくフィクションだそうです。 軍人が高校にやってきて義勇兵を募るところから始まって、訓練風景、高校生同士の恋のさや当て、日本人と結婚した姉を持つ弟の苦悩など、きっちりと日常が描かれた上で日本軍との衝突に至る。日本人と白人と、どっちの側につくのか、との高校生たちの議論も牧歌的に聞こえつつ、それでも「中立」を保つことの難しさをしっかりと感じさせる。 けっして中国やアメリカの出来の悪い反日映画の類じゃない。それはラストまで観ればわかる。 それにしても、なんでこのシチュエイションで関西弁! あまりにハマリ過ぎで、全体は実話に基づくフィクションなのに、あの一言を発したのが関西人だってことだけは疑いのない事実だったんじゃないかと思えてしまう。世界の中の関西弁を考えさせる一作でもありますな。 (ユッタナー・ムクダーサニット監督 2000年 タイ) トップへ 『鬼が来た!』(VHS 03年5月10日鑑賞) 第二次大戦終戦間際の中国・華北の寒村、その一軒に、闇夜、いきなり二つの麻袋が届けられる。麻袋を持ってきた「我」と名乗る男は、家の主人に、袋の中身は日本軍人、期日が来るまで預かっておけ、とモーゼル銃を額に突きつけながら命じる。 で、その日本人を巡って村の中でドタバタ喜劇が繰り広げられ、日本軍人と村人たちの間に仄かな心の交流が始まり、そして互いのすれ違いによる悲劇。転がる首が最後に笑んで、首切り達人の伝説が甦る。 冒頭、寒村を「軍艦マーチ」を演奏しつつ巡察する日本軍を見て、いかにも中国らしい奇怪な反日映画だと決めつけてビデオを止めてしまわないように(という私も一瞬、止めそうになったが)。このミスマッチも考証のうち、最後の悲劇への重い伏線となっている。 結局、日本兵を運んできた「我」は共産党員で、共産党さえ来なかったら平和だったんだ、ということでしょう。映画で住民を虐殺する日本軍のやり口もまさに実際の八路軍(共産党)の行動様式そのもの、これは解る人にしか解らないが、解る人には解ってしまう。つまり、実際は、共産党が親日分子あぶり出しのために日本人捕虜を村に預けて様子を眺め、結果、日本軍と取引した村人たちを全員裏切り者として虐殺した、と、そういうこと。映画での日本軍の印象が優しかったり残虐だったりチグハグなのも、八路軍の行為を日本軍に無理矢理重ねたからだとすればよく理解できる。そもそも当時の中国の田舎では、日本軍も八路軍も、ともに言葉の通じない余所者(鬼子)だったのだ。そして画面にまったく登場しない八路軍(共産党)こそ「鬼(幽鬼)」の名にふさわしい。原題は『鬼子來了』 この映画、中国国内では上映が禁止されているらしく、この解釈もそう的はずれではないと思う。 名作です。 (姜文監督 2000年 中国) トップへ 『ダーク・ブルー』(VHS 03年5月7日鑑賞) 第二次大戦中、チェコ空軍の多くのパイロットが志願してイギリス空軍に合流、連合国軍の一員としてドイツと闘った。なのに、ドイツの敗戦後、解放されたチェコに帰国したパイロットたちは、反逆者として強制労働キャンプに入れられてしまう。パイロットたちの祖国・チェコは、こんどは共産党に占領されていたのだった。 イギリスでは戦死した仲間は儀仗兵の礼砲に送られて埋葬された。ところが、生き残って帰国した仲間は祖国の収容所でイヌのように死んでいく。戦場にはあったヒロイズムや友情、そして愛など、祖国の労働キャンプにはカケラもない。輝いていた戦時中と、暗く澱んだ戦後と、映画は二つの時間を行き来しながら、戦争と平和の意味を考えさせる。 名作。 画のように美しいイギリスの田園地帯の上空で繰り広げられる空中戦の迫力に思わず引き込まれて観てしまい、そしてふと悲しくなる。地上ではエロ写真を融通しあったり、女を巡って争ったり、みんなまだまだ若いのに、と。 映像特典に庵野秀明監督の『式日』の予告編が入っていて、少し得した気分。 (ヤン・スヴィエラーク監督 2001年 チェコ・イギリス合作) トップへ 『9デイズ』(DVD 2003年5月7日鑑賞) 小型核兵器の取引中にCIAエージェントが別のテロリストに殺された。もし取引が宙に浮き、核兵器がテロリストの手に渡ればアメリカは大変なことになる。そこで白羽の矢を立てられたのが、殺されたエージェントの双子のきょうだい。確かに瓜二つだが、生まれた病院で生き別れて以来、一度も互いに会ったことはない。しかも、かたやCIAのエリート、かたやダフ屋のろくでなし。取引は9日後、いったいこのろくでなしをCIAのエリートに仕立て上げてまんまと小型核兵器を奪取することができるのか。アメリカを核兵器の脅威から守るため、ろくでなしをエリートに仕立て上げるCIAの一大プロジェクトが始まったのだった。ギャグ満載です。 ま、こんなもんでしょう、という感じの楽しみ方をすればそれなりの映画。 舞台となったチェコの街並みが美しい。 ( ジョエル・シューマッカー監督 2002年 アメリカ) トップへ 『スパイキッズ2 失われた夢の島』(DVD 2003年5月7日鑑賞) シリーズ前作に続いてラテン系の子供スパイが活躍します。 世界征服を狙う上司の陰謀を娘と息子が阻止しました、とそれだけのストーリーなんだけど、自分の作り出した奇怪な動物たちと「夢の島」に暮らす奇怪な生物学者という設定がけっこう面白く、最後の最後まで楽しめる。 機械にばかり頼ってるんじゃないよってメッセージも泣かせる。もちろん、奇怪な小道具は今回もてんこ盛りなんだけど。 ただ、バカバカしさがかなりアップしてるのはいっこうに構わんが、CGによる子供だまし度も高まっていて、それが少しだけ残念。 (ロバート・ロドリゲス監督 2002年 アメリカ) トップへ 『イン・ザ・ベッドルーム』(DVD 2003年5月6日鑑賞) 暴力夫と別れきれずにいる女とズルズル関係を深めていく一人息子、を理解しようとする父、なんとか関係をやめさせたい母。結局、事態は最悪の結末を迎える。息子は暴力夫に射殺されてしまったのだった。 裁判はそれが事故だったのか故意だったのかを巡って争われる。女の証言で事故の線が濃厚になり、それであれば息子を殺した男は懲役5年で済む。一人息子を亡くした悲しみと理不尽な裁判への憤りは理知的な夫妻を衝突させ、そしてなんともやりきれない行動へと向かわせる。 題名からアダルトな雰囲気を期待しちゃだめです。 けっこうよく作り込まれた喪失のドラマ。 女はコワイってことかも。 (トッド・フィールド監督 2001年 アメリカ) トップへ 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(DVD 2003年5月6日鑑賞) 前作『賢者の石』の評で、『ハリ・ポタ』は「多分日本ではコケる」と予言しておいたのだけど、第二作までに関する限り、この予言は大ハズレだとしなければならないだろう。だって受けてるものね。 でもね、これを見た回りの大人に感想を聞いた所じゃ、誰一人として面白いと感じた人がいないんだ。子供は喜んでた、とか、そんなんばっかりで。 んで、第二作、実際どうだったかって言うと、やっぱりハズレ。前作に比べて見せ場も多いし、設定も複雑になっていて、画面は面白くなってるんだろうけど、あまりにも思想的な深さに欠ける。秘密の部屋だって、その由来や思想的背景を説明しすぎて逆効果だし、ハリ・ポタの能力も中途半端、何がなにやら解らないうちに決着がついてしまってる。 5作目くらいにはコケるんじゃないか。 (クリス・コロンバス監督 2002年 アメリカ) トップへ 『38度線』(VHS 2003年5月2日鑑賞) 朝鮮戦争の話。 オランダ人も参加してたんです。 売春婦は「ママサン」で、売春宿の主は「トウサン」です。 間違って撃ち殺した娘の母親には「ミヤナムニダ(すみません)」と謝ります。 同じ部隊に「サカハシボーイ」なる韓国人兵士がいて、死ぬ間際にアリランを歌います。 最後の方、「一緒にファッキーパーキー(良くわからんが乱交だろう、多分)した仲じゃないか」とかって、無理矢理連れてきて輪姦した女の子に再び迫り、女の子も女の子でその言葉をマジに受け入れたりします。 親切な中国人兵士には恩を仇で返します。 なんだかムチャクチャな映画です。 (ハンス・シープメーカー監督 1984年 オランダ) トップへ 『ヴァージン・ハンド』(VHS 2003年5月1日鑑賞) 殺してバラバラにした妻の体。全部埋めたはずが、手だけが地表に残っていた。それにつまづいた全盲の女性の目が開く。マリア様の手(ヴァージン・ハンド)の奇跡だということで、その手を教会に置いて祈れば、いさりの男に脚が生えてくるわ、ペチャパイの女の胸がでかくなるわ、しょぼい男がいきなりモテるようになるわ、安易な奇跡が次々と起き、こうして街には巡礼者が続々とやって来るようになる。だが、妻を殺した夫はいたたまれず……。 設定は面白いのに、夫がダラダラと絡んでくる後半はダルイだけ。 だれか作り直して欲しい。 (アルフォンソ・アラウ監督 2000年 アメリカ) トップへ 『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』(VHS 03年4月30日鑑賞) キリストの血を受けたという伝説の聖杯を巡ってインディとナチスの相も変わらぬデッドヒート。今回はインディと父親とが親ナチ女性のカラダを共有してエディプス物語化が一気に加速、ナチも親ナチも死に絶えて、父子和解の大団円を迎えたのでした。 にしても、アメリカとナチスのキリスト教同士のしょ〜〜〜〜〜もない争いにイスラム教徒を巻き込むなよ。原題は「Indiana Jones and the Last Crusade」って、これが本当に最後の十字軍なんだろうな。イラク戦争も十字軍の続きに思えるんだが。 (スティーブン・スピルバーグ監督 1989年 アメリカ) トップへ 『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(VHS 03年4月29日鑑賞) これもまたアジア蔑視というか何というか、インドのマハラジャ(かな?)の豪邸の地下で復活しつつある偶像崇拝の邪教をインディアナ・ジョーンズが打ち砕く。ついでに児童労働者も解放して村に連れて帰ってあげましょう。 発端の上海のナイトクラブのシーンからして極めてけたたましく、〈ありえない〉アクションも満載なんだけど、シリーズ前作『レイダース』よりはまだ観ていられる。 (スティーブン・スピルバーグ監督 1984年 アメリカ) トップへ 『レイダース 失われた聖櫃〈アーク〉』(VHS 03年4月29日鑑賞) モーゼの十戒が刻まれた板を巡って正義のアメリカ人インディ・ジョーンズと悪のナチスのデッドヒート。〈アーク〉とは十戒の板を入れる箱のことですね。 結局、アメリカとドイツの盗掘合戦じゃないですか。んで、現地人に嫌われるドイツ人と、拍手をもって迎えられるアメリカ人。こんなのばっかり見せられてたら、そりゃ、イラクに攻めこうもうかって気にもなる(かも)。 オチもなぁ…結局、ユダヤの守り神たるモーゼがナチスを倒したってことでしょ。 アラブ人が徹頭徹尾白人の手下ってのも気になるし。 (スティーブン・スピルバーグ監督 1981年 アメリカ) トップへ 『GAMERA3 邪神〈イリス〉覚醒』(VHS 3年4月28日鑑賞) 金子ガメラ第三作。 前ガメラでは抑制されていた呪術的想像力がここでは全開、オドロオドロしいイメージが全編に溢れ、ナショナリスティックな経世さえ感じさせる。名作金子版『ゴジラ』への序章というべきか。 ガメラに親を殺された少女が奈良の山奥で伝説の怪獣と交感、敵討ちの権化と化した怪獣は京都駅でガメラと戦争。庵野秀明監督の『新世紀エヴァンゲリオン』と『ラブアンドポップ』を足して二を掛けたような、過剰さに溢れた佳作。 (金子修介監督 1999年 日本) トップへ 『ガメラ2 レギオン襲来』(VHS 03年4月27日鑑賞) 金子ガメラ第二作。 北海道に巨大隕石が落下した、はずなのに、現場からは隕石そのものが見つからない。自衛隊の調査、に加わる若い女性学者、NTTの職員など、第一作と同じく奇天烈な人間たちが型どおりに活躍する。完成度の極めて高い名作で、怪獣モノの達成の一つではある。のだけれど、宇宙からの侵略があった場合自衛隊はどう動くのか、というシミュレーション・シネマの側面もあって、そのことが想像力の羽ばたきをやや規制してしまっている。 (金子修介監督 1996年 日本) トップへ 『ガメラ 大怪獣空中決戦』(03年4月22日鑑賞) 金子ガメラ第一作。 プルトニウム輸送船が巨大な何かに接触して座礁、という出だしからして、社会派的な展開を予想させる。 海に沈んだ超古代文明の残した負の遺産「ギャオス」と、それを封じ込める味方の怪獣「ガメラ」。若い女の生物学者やガメラと感応できる少女、それにマンガチックな官僚など、奇天烈な役者の織りなす型どおりの物語は陳腐ながら妙にリアリティがあって楽しい。 (金子修介監督 1995年 日本) トップへ 『贅沢な骨』(03年4月24日鑑賞) 女の子二人の共同生活。そのうちの一人・ミヤコはホテトル嬢。この仕事、不感症だからやっていけるの、と。 だがある日、客であるシンタニとの行為で感じてしまう。ミヤコとシンタニとは金を介さない関係になり、女の子二人の共同生活は微妙に揺らぐ。 揺らぎながら破綻する。 シンタニの本名はわからない。職業も。でもなぜかそこにいてくれるとホッとする。という美味しい役どころを永瀬正敏が好演して佳作。 (行定勲監督 2001年 日本) トップへ 『大魔神』 『大魔神怒る』 『大魔神逆襲』(03年4月22日〜23日鑑賞) 下克上でのし上がった新しい領主はよそ者で、古い神を祭らず、それどころか神像破壊さえ企てる。もちろん悪いヤツだ。で、天罰が下る。 これがまあ、『大魔神』の大筋。いうまでもなく、新しい領主とは「アメリカ」。神像は靖国神社。大魔神とは英霊です。 『大魔神怒る』では、悪い領主が良い領主の治める平和な隣国に突然攻め込む。湖の利権を独り占めにしようとしたのだった。平和な国のお姫様は祈る。んで、大魔神がやってくる。これはまあ、良いクウェートに悪いイラクが攻め込んで、それをアメリカがやっつけてくれたって話ですね。 『大魔神逆襲』では、大量破壊兵器の製造工場(硫黄採掘現場)で強制労働させられている木こりたちを、子どもたちの活躍で目覚めた大魔神が助けます。これもまあ、イラクとアメリカですね。攻撃される前に大量破壊兵器の工場は徹底的に破壊しときましょう、てなものです。 今観ると、土着の素材を使ってるけど、プロットはけっこう西洋的。犠牲による神の出現なんて、ヴァーグナーかと思ってしまう。 どれも映像は美しく、古びていない。 『大魔神』(安田公義監督 1966年 日本) 『大魔神怒る』(三隅研次監督 1966年 日本) 『大魔神逆襲』(森一生監督 1966年 日本) トップへ 『モスラ』(03年4月10日鑑賞) 中村真一郎と福永武彦、それに堀田善衛が原作に参加して、監督はゴジラの本多猪四郎、名前だけでも超豪華、なんだけど、お話そのものが安保反対というか、アンポ粉砕というか、その手のイデオロギーに染め抜かれてるモンだからもうひとつのめりこめない。ひどく幼稚な感じがして。 資本主義と植民地主義に対置するにロマン主義だもんな。 海を渡る幼虫も今となっては微笑ましい。 東京タワーで羽化するシーンは斬新で凄いと思ったけど。 (本多猪四郎監督 1961年 日本) トップへ 『ゴジラの逆襲』(03年4月21日鑑賞) ゴジラと一緒にアンギラスなんてのが甦ってしまった。 二大怪獣の肉弾戦で大阪の街はメチャクチャ。 で、決着の舞台はなぜか北海道。 設定のムチャクチャさや結末のお粗末さにおいて、あらゆる二番煎じのお手本的存在となりうる記念碑的駄作。ただし、この当時の大阪の夜の街が叙情的に描かれていて、ここだけは素敵です。 (小田基義監督 1955年 日本) トップへ 『ゴジラ』『GODZILLA/ゴジラ』(03年4月9日鑑賞) 元祖ゴジラとハリウッド版。 大筋は同じ。 外国の悪さ(核実験)のせいでバケモンが生まれる。上陸して被害が出る。で、ちょっとすねたヤツの英雄的な働きで退治される。 筋は同じでも、やっぱり違うのはゴジラの性格でしょう。 元祖ゴジラは被爆者。正当に弔われなかった死者の怨念。まさに御霊の恐ろしさを体現しています。 それなら御霊は御霊らしく、呪術者に鎮めてもらいましょう。元祖ゴジラは隻眼の科学者の得体の知れぬ武器で海に沈む。まさに呪術。 ハリウッド版のゴジラは不法移民。よそから勝手にやって来てドンドン増える。 不法移民は不法移民らしく、送り出した国の責任で始末してもらいましょう。フランス人の大活躍で、GODZILLAは通常兵器で殺されてしまう。 どちらもけっこう面白いが、やっぱり名作といえるのは元祖。 『ゴジラ』(1954年作品 本多猪四郎監督 日本) 『GODZILLA/ゴジラ』(1998年作品 ローランド・エメリッヒ監督 アメリカ) トップへ 『フィアーズ・オブ・ウオー』(VHS 03年4月20日鑑賞) ドキュメンタリー番組制作のためにベトナムを再訪した元海兵隊員6人。番組は単なる回顧ではなく、誤爆事件の真相追求を目指していた。命令に背いて隊から離れた兵たちを、大尉は故意に爆撃したのか、それとも事故なのか。海兵隊員たち6人の心のわだかまりは数十年の時を隔てて消えていない。そしてぎくしゃくとした雰囲気をもてあましつつ、ついに一行は事件現場へ。 回想としてはさまれた戦闘シーンは極めてリアルで、たとえば衝撃波によって一瞬で内蔵を破壊されて死ぬ200トン爆弾の恐ろしさなど、こうやって映像化されるとやはりゾッとする。この爆弾による爆撃の後、蝋人形のように固まって死んだ北ベトナム兵士の死体の森のシーンは静寂の中に戦争の残虐さを訴えかける。 海兵隊万歳が鼻につくものの、最近のベトナムものでは出色だと思う。 (シドニー・J.フュリー監督 2001年 アメリカ) トップへ 『模倣犯』(03年4月19日鑑賞) 最低最悪・醜悪愚劣かと思って覚悟してたんけど、家で何か他のことをしながら観るのなら190円(レンタルビデオの廉価サービスの日の値段ね)は値段相応。 前半のぶち切れエピソード群を後半が意味づけていく手法はそれなりに上手く流れてる。ただ、シナリオの言葉が練られておらず、聞くに堪えぬ部分が多すぎる。 (森田芳光監督 2002年 日本) トップへ 『DRIVE ドライブ』(03年4月18日鑑賞) マンガチックな程にマジメで融通の利かないサラリーマンが銀行強盗団3人にカージャックされる。前の車を追え、と。でも、法定速度でしか走れないからすぐに見失う。こっから「ドライブ」は4人の心を巡る旅へ。ガシャガシャとした落ち着きのない事件が次々に起こり、「ドライブ」参加者は一人づつ消えていく。 つまらなくはないのに、どこかカタルシスに欠ける。 (SABU監督 2002年 日本) トップへ 『月のひつじ』(DVD 03年4月17日鑑賞) 1969年7月、人類初の月着陸。このテレビ生電波を地球側で受けとめたのはオーストラリアの田舎町にあるパラボラアンテナだった。 このアンテナ施設の3人とNASAから来た1人の科学者が、停電や、強風や、そしてなにより互いの不信感を乗りこえて、人類の偉業に参加する。 まあ、基本的にはそんだけの話。 見終えて、ちょっとだけ豊かな気持ちになります。 (ロブ・シッチ監督 2000年 オーストラリア ) トップへ 『アバウト・ア・ボーイ』(DVD 03年4月16日鑑賞) 人間は一人で生きていける。孤島のように。そう思い、一人で生きてきた38歳の男。こいつが単に女をナンパするためだけに「単身親協会(って言うのかな?)」に顔を出し、それが縁で12歳の男の子につきまとわれることになる。この男の子、自殺未遂歴のある母親がふたたび自殺するのではないかと不安で、自分以外にもう一人、母親を監視する人間をさがしていたのだった。 成熟を拒否したガキのような中年男と、奇妙にマセた男の子。その心の触れ合いと、回りの人間関係を巻き込んだドタバタがけっこう楽しい。独白を多用した心理描写も悪くない。 それにしても、トチ狂った母親って大変なモンだ。菜食主義にしても、ぶち当てられた鴨が即死するようなカッチカチのパンにしても、奇天烈な衣装にしても、全部、押しつけであって押しつけじゃない。〈議論して決めたこと〉だもんな。まったく、マ○ド○ルドぐらい行かせてやれよ、どのくらい不味いか知っとくのも、これからの人生に必要な経験だと思うぞ。 イギリスを舞台にしてるのに(と言っては悪いが)ジメッとしてなくて好感。 (ポール・ウェイツ&クリス・ウェイツ監督 2002年 英・米・仏) トップへ 『プロフェシー』(DVD 03年4月16日鑑賞) 予言ってなんで不気味なんだろう。 人は皆将来を知りたいと思ってるはずなのに。 それはきっと、ただ一つだけ確実な予言が、もはや、すでに、成されてしまっているからだろう。 すなわち、アナタは必ず死ぬ。あなたの愛する人も必ず。 原題は『THE MOTHMAN PROPHECIES』、直訳すると「蛾男の予言」。 なんかひどく安っぽい。 妻が病気で死ぬ。死ぬ間際に「蛾男(なんでしょう、きっと)」の画を残す。 夫の身辺に異様なことが起こり始める。 様々な予言が語られ始める。ろくな予言じゃないのに、なぜか当たる。 予言と死とが重なり合い、すれ違い、夫は妻の死を受け入れたのでした。 中身はそれほど安っぽくはない。でも面白いとは言えない。 (マーク・ペリントン監督 2002年 アメリカ) トップへ 『トリプルX』(03年4月15日鑑賞) 悪いヤツが奇妙に倫理的だったりするんだよな、ハリウッドって。 これもそう。 どうしようもないワルのはずが、このXって男、けっこう良いヤツじゃん、知的で、使命感もあって。 とにかくまあ、CIAが特別に雇い入れたエージェント・Xが夜や昼のプラハで大活躍、お約束のロシアのエージェント(もちろん女)も絡んで、この世を滅ぼそうとするアナーキー何とかとか言う悪の組織の陰謀を阻止、ド派手なアクションの連続で飽きさせない。 最近のこの手のものの中では良くできた方。ただし何にも心に残らない。 (ロブ・コーエン監督 2002年 アメリカ) トップへ 『明日があるさ THE MOVIE』(03年4月15日鑑賞) 総合商社のサラリーマンが有人ロケットに乗る。 んな、アホな。 アホです。でも吉本やから。吉本にアホや言うてもしょうがないでしょ。 私財をなげうってただ一人こつこつとロケットを開発しているジイさん、の夢に共感して次第にロケットにのめり込んでいくサラリーマン、の同僚や家族の想い。 もちろん実話ではありえない。 ペットボトルのロケットじゃあるまいし、あんなただの空き地でロケットを飛ばせるわけがない。ロケットより先に警官隊が飛んできてお終いでしょ。 それに、訓練も受けてない男の体が宇宙脱出速度のGに耐えきれるわけがない。奥さんの反対は当然です。 でも、こんなアホな部分よりも、むしろ会社の中で働くことのペーソスが良く描けていて、ロケットは飛んでも飛ばなくてもいいという気がしてしまう。 思ったよりまともな佳作。 それにしても、一つの課に関西人だけを集めるような商社があるんかしらん。大阪の商社なら、そりゃ、ほとんどが関西人なんだろうけど。 (岩本仁志監督 2002年 日本) トップへ 『スター・トレック 叛乱』(DVD 03年3月31日鑑賞) エンタープライズ号の乗り組みアンドロイドである「データ」が任地のバクー星で暴れ出す。知らせを受けた艦長はバクー星に飛び、データを回収、ところが、事件の裏には異様な陰謀が蠢いていたのだった。不老不死の隠者たちがひっそりと住む惑星と、その星を乗っ取ろうとするソーナ人の企み。惑星連邦の中枢も巻き込んだ大立ち回りが始まるのやら、どうなのやら。 お話は小さくまとまっていて、変に大作ぶってないところにやや好感。 (ジョナサン・フレイクス監督 1998年 アメリカ) トップへ 『スター・トレック ファースト・コンタクト』(DVD 03年3月31日鑑賞) 破壊したはずの機械生命体・ボーグの宇宙船は一瞬でタイムトラベル、21世紀の地球に降りてしまった。異種生命体とのファースト・コンタクト以前の幼稚な文明段階でしかない地球はたちまちボーグに征服され、未来は一瞬で変わってしまう。地球はボーグの惑星になってしまったのだ。 時間の渦の中にいたために変化をまぬがれたエンタープライズ号は、未来を賭けた対ボーグ戦を始めるのだった……。 設定が緻密な分だけ、人間造形の幼稚さが気になってしまう。 こんなにすぐキレる男を船長にするなよ、とかね。 (ジョナサン・フレイクス監督 1996年 アメリカ) トップへ 『スター・トレック ジェネレーションズ』(DVD 03年3月31日鑑賞) 『スター・トレック』シリーズの続編『スター・トレック ジェネレーション』初の映画版。 エンタープライズBは、処女航海という困難な状況下、巨大なエネルギーリボンに巻き込まれそうになった小型船を救った。のに、なぜかその小型船の乗客たちは救助されたことを喜んでいない。 それから70年後、エンタープライズDは、何の因縁か、エンタープライズBがかつて救助した小型船の乗客の一人だった科学者・ソランを再び救助する。ソランはエネルギーリボンの作用で現れる夢幻郷「ネクサス」へ、密かに、多大な犠牲を他人に払わせて、行こうとしているのだった。 SFの色んな要素がオモチャ箱のように放りこまれていて、楽しいと言えば楽しい。ただ、大人のSFファンとしてはもう少し政治性を求めたい。 (デヴィッド・カーソン監督 1994年 アメリカ) トップへ 『少女たちの遺言』(DVD 03年3月30日鑑賞) 原題は『女校怪談 二番目の話』なんで前作『囁く廊下〜女校怪談』(パク・キヒョン監督)の続きかと思ったんだけど、全く違う。前作では前面に出ていたイジメや管理教育批判等の社会性はかなり失われ、むしろ女子高生の心理に密着した人間関係の実験映画の趣が強くなっている。 同性愛カップルの血の味のするキス、そしてその一人の投身自殺、その動機となったかもしれない教師との肉体関係等々、エピソードの断片は、拾われた日記の世界と現実世界との交錯がもたらしたもの。合唱団の演奏する音楽もまた、現実と空想のない交ぜになった思春期のピュアな思考を思わせて、不思議な精神性を醸し出している。 ちっとも怖くないホラー。 日本版予告編がまんま『ラブ・アンド・ポップ』なのが笑える。 (キム・テヨン、ミン・ギュドン監督 1999年 韓国) トップへ 『E.T. −20周年アニバーサリー特別版−』(DVD 03年4月8日鑑賞) 子どもと宇宙人(E.T.)との出会い。心の交流。大人たちとの対立。別れ。 なんつーか、『E.T.』ものの約束事のほとんどがここにあったんだなって感じ。 家族の再生と和解は、超越的な存在によってしかなされないってことですかね。 神か、あるいは宇宙人によってしか。 なんだか酷く幼稚に感じられて、とても観てられなかったのはなぜだろう。 嫌な大人になったってことか。 (スティーブン・スピルバーグ監督 2002年(オリジナルは1982年) アメリカ) トップへ 『ル・ブレ』(DVD 03年4月8日鑑賞) 一言でいえば最初から最後まで、途切れることなくケタタマしいクライム・ムービー。 消えた当たりの宝くじを巡って、嫌々ながらコンビを組んだ脱獄囚と看守。ここに、脱獄囚をつけねらうかつての仕事仲間も割って入り、アフリカの広大な砂漠で、追いつ追われつのドタバタ劇が展開される。 湿っぽさは全くない。 砂漠のように明るく乾いた人間関係。 CGの使い方も効果的というか、やりすぎというか。こんなのも許容されてしまうところがフランスか、な。 (アラン・ベルベリアン監督 2002年 フランス) トップへ 『海辺の家』(DVD 03年4月6日鑑賞) ガンで余命4ヶ月を宣告された男が自らの手で家をリフォーム。手伝え、と、別れた妻との間に出来た息子を妻の家から半ば拉致してくる。この息子、顔ピアスに濃いメイク、どう見たってヨイコじゃない。そんな顔して「これは児童虐待だぞ!」とかってわめいてもなぁ。 んで、お決まりの家族の再建。父性の復権。でもその時、すでに父親はいない。 大筋は約束事の枠内で何の意外性もないけれど、細部の伏線がけっこう効いていて佳作。 (アーウィン・ウィンクラー監督 2001年 アメリカ) トップへ 『スナイパー』(03年4月5日鑑賞) ビルに囲まれた広場でかかってきた携帯、いま君を狙ってるんだ、と。見ればレーザー光線の赤いマーカーが胸にあたっている。狙われているのは大銃器メーカーの副社長であり、社長夫人でもある女性。この銃はあんたのとこの商品だろ、と。 スナイパーは娘を銃撃で亡くした男、アメリカの銃社会の現実を訴えようと、このような行動に出たのだった。 低予算B級丸出しなんだけど、携帯だけでつながったスナイパーと獲物が次第に心を通わせていく演出は悪くない。後味に苦いものが残るけど、これはまあ仕方ない、かな。アメリカの銃社会がそう簡単に変わるわけないものね。 ゴリゴリの社会派。『ジョンQ』よりも個人的には納得できる。 (カリ・スコッグランド監督 2002年 アメリカ) トップへ 『翼をください』(03年4月5日鑑賞) 少女漫画っぽいのはまあ、仕方ないかな。全寮制の女子校の話なんだから。でもなぁ。 同性愛関係にあった同室の女の子二人は同じベッドで寝ているところを目撃され、そのうちの一人は親にバレるのを恐れて不本意ながら男の子とつき合うようになる。捨てられた女の子は「愛」を求めて次第に精神のバランスを崩し、教室で、食堂で、破滅的な行動に出てしまう。 この二人と同室で、親との関係に悩む女の子の視点で物語は進むんだけど、これが作品の奥行きを狭めてしまったのではないか。なんだか全てが表層的で今ひとつ響いてくるものを感じない。 (レア・プール監督 2001年 カナダ) トップへ 『アップライジング 特別版』(DVD 03年4月3日鑑賞) 第二次大戦中のワルシャワでのユダヤ人蜂起(アップライジング)の話。 『戦場のピアニスト』と同じテーマを扱いつつ、ドイツの圧政に抗する蜂起から壊滅的潰走に至るまでのリーダーたちの動きを克明に描いて、まったく色の違った物語を練りあげている。 武器の入手経路、武器の種類の問題(拳銃は役に立たん、爆薬をくれ)とか、奇妙にリアリティがあってわかりやすく、また面白いんだけど、あまりにもユダヤ人リーダーたちが格好良すぎるんだよな。 でも映画の王道はこういうもんでしょう。結構良く出来てます。イスラエル建国マンセーなのが鼻につくが。 (ジョン・アブネット監督 2001年 アメリカ) トップへ 『サイン』(DVD 03年4月2日鑑賞) 宇宙人が攻めてくるってお話なんだろうな。 そう思って観るとひどくチャチで失笑もの。 自分のトウモロコシ畑にミステリーサークルが書かれた一家の話。 でも、登場人物たちの心の傷が妙にリアルでこの監督らしいというかなんというか。だからホラーじゃなく、危機を乗りこえることで〈家族〉が絆を取り戻す常套的な映画と思って観るのなら、それはそれなりの出来でしょう。『パニック・ルーム』の強盗が宇宙人になったと思えばいい。 ただ、暗い。 妻の最期など、とてつもなく暗くて観てられない。 (M.ナイト・シャマラン監督 2002年 アメリカ) トップへ 『ジャスティス』(DVD 03年4月3日鑑賞) 第二次大戦中、ベルギーにあったドイツの捕虜収容所。そこに入ってきた二人の黒人士官。連合軍の捕虜からも差別的な扱いを受け、しかもそのうち一人は濡れ衣を着せられてドイツ兵に殺されてしまう。そしてある夜、黒人に濡れ衣を着せたとおぼしき男が殺されたそのそばに、残ったもう一人の黒人が立っていた。ドイツ兵はいきなり銃殺しようとするのだが、裁判抜きに殺すのは許さない、と、捕虜側は、捕虜収容所にありながら軍法会議の開催を要求する。 期限付きで認められた軍法会議で被告を弁護するのはイエール大2年の新入り捕虜。誠実に真実に近づこうとするのだが、その真実の裏には捕虜たちの脱走計画があるのだった。この集団脱走計画の遂行のためには黒人への偏見を利用したイカサマ裁判も許されるのか。あるいは、この一人の黒人を救うために捕虜の脱走計画をバラしてしまうのか。 ギリギリと締め付けるような、平時と戦時の価値観のせめぎ合い。 ご都合主義的なラストさえなければ傑作中の傑作になっていただろう。 (グレゴリー・ホブリット監督 2001年 アメリカ) トップへ 『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(DVD 4月2日鑑賞) 家族の再生寓話。 子どもたちはみんな天才、3人とも10歳かそこらで才能全開、でも家庭は崩壊。 親父がいかんのだよ、ろくでなしめ。 んで、その親父が崩壊した家庭を立て直そうと大芝居、俺は胃ガンであと6週間の命なんだ、最後にみんな集まって、もう一回〈家族〉しようよ、と。 渋々集まって〈家族〉するテネンバウムたち。でも嘘はすぐにバレる。 親父は〈家族〉から追い出され、でも、本当に問題があるのは、かつての天才たちなんじゃないのか。みんなエキセントリックで、身勝手で。 結局、父によって崩壊した〈家族〉は、再び父によって心の絆として再生される。 アメリカ版『父帰る』かな。 (ウェス・アンダーソン監督 2001年 アメリカ) トップへ 『ぼのぼの クモモの木のこと』(DVD 4月1日鑑賞) 嫌なことを忘れさせてくれるという「クモモの木」の下に毎日立っている子。ここで待ってると、誰かがボクを迎えに来てくれるんだ、そう、お父さんが言ったんだ、と。 最初のうちは〈ぼの〉ファンへのサービス過剰の部分があってやや退いてしまうけど、スナドリネコさんが登場した辺りから『ぼのぼの』の最良の部分、〈せつなさ〉が前面に出てきてウルウル状態。家族探し、想い出探しの常套ストーリーなのに、しっとりとした味わいのある傑作に仕上がってます。劇場で見るんだったぁ〜。 同じCGでもアメリカのモノとは段違いの叙情性で、これからの日本アニメの方向性の一つを提供している。 (クマガイコウキ監督 2002年 日本) トップへ 『2001年宇宙の旅』(DVD 03年3月27日鑑賞) 10年ぐらいの周期で何度か観てるんだが、その度に印象が違う。 今回は、CGもない時代によくもまあここまで作ったもんだとあきれ果てた(このあたりの技術的なもの凄さについてはオタク的な解説本がなんぼでも出ています)。 それから内容の薄さにも。 だいたい冒頭のツァラトストラからして今となっては陳腐にしか聞こえない。 人類進化について言えば、この映画よりも現実の方がよほど神秘的で魅力的なんだよな。この映画では進化に「モノリス」(石版)という〈神〉を持ちこむことで、現実の進化の神秘性を逆に消してしまっている。 この進化の神秘性とは、つまり、無限ともいえる時間のことだ。実は、この無限の時間という概念こそがダーウィン進化論理解の鍵なのであり、逆に聖書の創造説を信じる人々にとっては受け入れがたい一線なのだった。ダーウィンの時代、キリスト教も種の進化は認めていたのだが、それは〈神〉がこの世を創造してからの間の変化であるという限りにおいて、であった。〈神〉は最初から今と同程度の多様な種を作っていたのだ、と。 ところが、ダーウィンは、人間が自らに都合の良い品種を作り出すように、自然もまた、〈神〉無しで多様な種を作り出す力があることを論理的に証明してみせた。もし無限の時間が与えられていれば、との前提で。もちろん、この前提は、この世が6000年前に作られたという聖書の世界観と決定的に矛盾する。 だが、〈神〉と〈無限〉と、どちらが神秘的だろう。 アリストテレスが科学から追放して以来、〈無限〉こそが神学の追究してきた〈神〉そのものであったことを考えれば、ダーウィン進化論は無神論ではなく、一種の弁神論とみなすべきではないだろうか。ダーウィンは〈神〉を〈無限〉と言い換えただけなのである、と。 進化とはそれ自体で神秘的なのに、この映画では、その理解の足らない人間が「モノリス」を置いたとしか思えない。 ちなみにこの世の誕生日は、一説によれば、グレゴリウス歴で10月23日、私と同じ日らしい。 (スタンリー・キューブリック監督 1968年 アメリカ) トップへ 『スーパーマンV 電子の要塞』(DVD 03年3月27日鑑賞) 冒頭の職安シーンからして前二作と雰囲気がまるで違う。 スーパーマンは添え物になり、敵の小悪党たちの存在感がググッと高まって、ヒーローという存在そのものの胡散臭さを問い返す。 市民の税金を食い物にしている、と職安で罵倒された男・ガスが一念発起、パソコン教室に通えばこんどはそこで天才的な才能を発揮、就職した会社のコンピューターを操作して小金を不正に手に入れる。それが小悪党の社長にバレ、ガスはコーヒー価格の人為的な操作に手を染める(この方法がバカバカしくて笑える)。ところがこの目論見はスーパーマンの活躍(この方法がまたバカバカしくて笑える)でおじゃんとなり、恨みを抱いた社長はガスに、スーパーマンの弱点であるクリプトナイトの合成を指示したのだった。 んで、ガスは、合成したクリプトナイトを使って、およそ人間が思いつく内でも最も幼稚な作戦を遂行したのだが、それがまたテキメンに効いて、スーパーマンは何とも言えぬケチなスネ者に変貌してしまう。酒に溺れ、薄汚れたコスチュームをまとって酒場でくだまく元ヒーロー。 ここらへん、自虐的で大好き。もちろんスーパーマンだからこそ、の奇跡の復活を遂げるんだけどさ。 この映画が作られた1980年代前半って、ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代で、アメリカがいちばん自信をなくしてた頃じゃなかったかな。 四作作られたシリーズ中で今でも観るに耐えるのはこれだけという気がする。 (リチャード・レスター監督 1983年 アメリカ) トップへ 『スーパーマンU 冒険編』(DVD 03年3月26日鑑賞) 前作の冒頭で追放された悪役三人が地球にやって来ます。地球の独裁者を目指して好き放題な(でも、ブッシュやフセインや金正日に比べたら、これがものすごくちゃちな)悪さをします。で、大統領もこいつらにひざまづいたそのころ、スーパーマンは何をしてたかっていうと、同僚の女性と北極の家でお楽しみだった。 んで、お楽しみついでに超能力もなくしてしまった。 ケンカじゃ街のどチンピラにも負けてしまう。 どうするスーパーマン! ということで、見せ場たっぷり、ご都合主義度も大いにアップして、またジーン・ハックマンのケチな悪党が実に愛すべき小悪党ぶり。 前作よりはまだ観ていられる。 (リチャード・レスター監督 1981年 アメリカ) トップへ 『スーパーマン』(DVD 03年3月25日鑑賞) クリプトン星の唯一の生き残りが地球にやってきた。 スーパーマンです。 こいつって、力学も生物学も超えたスーパーな存在だったんだなって今さらながら思う。でもちょっとスーパーすぎないか。まあ、ビルから落ちかけたヘリコプターを担ぎ上げるのはよしとするし、ジェット機のエンジンの代わりになるのもまあ許す。でもな、活断層をくっつけたり(ありえんぞ、ふつー。それに活断層って意味が解ってるのか? スーパーマン!)、時間のネジを巻き戻したり(どっからこんな発想がわく? それに大多数の地球人にとってはイイ迷惑かもしれんぞ)は、やりすぎじゃないのかね。結局、日本人が感じているような、〈自然〉への敬虔感情が欠けてるんですね、決定的に。 ミサイルを盗んでそれをカリフォルニアの活断層にブチこんで地震を起こそうって悪役がとことん間抜けで、ジーン・ハックマンの名演です。 (リチャード・ドナー監督 1978年 アメリカ) トップへ 『パンダコパンダ パンダ・コパンダ 雨降るサーカスの巻』(アニメDVD 03年3月24日鑑賞) 『トトロ』や『千と千尋』の先駆けと言える、無条件で楽しい二本。 早くに両親を亡くしおばあさんに育てられた女の子のもとに、ある日、パンダの親子がやってくる。おばあさんは法事でしばらく留守。パンダはお父さん、コパンダは子ども、そして自分はお母さんになった家族ごっこ。 なーんの影もない家族ごっこ。 爆走シーンや水にひたった街の独特の構図も素晴らしく、これだけでもアニメ史に残る傑作。 『パンダコパンダ』 (高畑勲監督 1972年 日本) 『パンダ・コパンダ 雨降りサーカスの巻』 (高畑勲監督 1973年 日本) トップへ 『白蛇伝』(アニメDVD 03年3月24日鑑賞) 日本初の長編総天然色漫画映画。 いや〜〜クダクダ理屈つけず、この勢いだけでも買おうじゃないか。 背景や表情がたまらなく美しい。 ひたる作品なんで理屈はつけまいと思ったが、でも、やっぱり、白蛇の精の美女と青年の仲を、なんで坊さんが裂こうとするのかわからない。毒蛇にたぶらかされたんならともかく。 大東映の社長が出てきて喋りまくる予告編も必見。 (藪下泰司監督 1958年 日本) トップへ 『太陽の王子 ホルスの大冒険』(アニメDVD 03年3月23日鑑賞) なんつーか、いくら社会主義でも物語には英雄(ヒーロー)って必要じゃないっすか。 でも、格好良すぎて英雄主義に陥っちゃ駄目じゃないっすか。 だから、そこんとこよろしくお願いっすね。 とゆー感じで作ったらこんなアニメができあがるんでしょうな。 イデオロギー優先の、でも酷くつまらないわけじゃない、なんか変な長編アニメ。 村を守るために悪魔と闘うホルス、実に超人的なんだけど、一人じゃとても立ち向かえない。みんなで闘いましょう、きっと勝てます。で、勝ちます。 物語のつじつまよりもイデオロギー。 ということにすら気づいていない幸せな一作。 宮崎アニメの源流の源流を知りたい人以外にはあまり意味がない。 (高畑勲演出 1968年 日本) トップへ 『ルーブルの怪人』(DVD 03年3月23日鑑賞) マジにルーブルでロケしてるもんな、こんな駄作というか、なんというか。 駄作じゃないな、いちおうみんな、演技はしてるもん。 まあとにかく、ミイラになった誰かの霊を冥土に連れていきましょうって話で、その冥土への水先案内人の霊がソフィー・マルソー演ずるところの女に取り憑いて怪人になって夜のルーブルをウロチョロするんです。 難点というか、は、ちっとも怖くないってこと。 だいいち最初から登場するあの霊ってなに? 全体がガラスのピラミッドのように偽物臭くて薄っぺら。 (ジャン=ポール・サロメ監督 2001年 フランス) トップへ 『トイ・ストーリー2』(DVD 03年3月22日鑑賞) 全作よりも遙かにCGが滑らかになり、お話も大人向けにグレードアップ、とくにジェシーの回想シーンはウルウルもんです。 カウボーイ人形のウッディは、ある日、イカニモそれって風貌のオタクにさらわれてしまい(とゆーか、盗まれてしまい)、そのオタクの部屋で、自分がかつて一世を風靡した人気番組のヒーローだったことを知る。自分はプレミアム人形だったんだ! しかもオタクの部屋には、かつての仲間、ガールフレンドのジェシーもいる。実はこのオタク、ウッディたち登場人物の人形全部をセットにして日本の「コニシ」さんに法外な値段で売るんだそうだ。 自分の価値を知ってしまったウッディは日本に行ってしまうのか、それとも仲間のいる子供部屋に帰るのか。 日本ってどんな国じゃ、と思ったのは私だけでせうか。 (ジョン・ラセッター監督 1999年 アメリカ) トップへ 『キューティ・ブロンド』(DVD 03年3月20日鑑賞) 原題はLegally Blonde、合法ブロンド? 法曹界に乗りこんでいくアーパーな女の子のサクセスストーリー。 つき合っていた男がハーバード・ロースクール(法科大学院、弁護士の養成機関ですな)に進学するという。30までに議員になるんだ、お前みたいなアーパーとつき合ってる暇はない、と捨てられる。んで、一念発起、ファッション科の原色優等生が灰色のロースクールへと殴り込む。向けられる冷たい視線や元カレのフィアンセのイジワルを乗りこえて……いったい何がしたいんだろう。 カレを取り戻しに入ったはずが、いつのまにか法科でのし上がることが目的になっていて、まあ、それはそれでしょうがない。あんな男、見るからにつまらんし。 こういうサクセスストーリーもあり得るんだな、と妙に納得。 フェミニストは必見。 (ロバート・ルケティック監督 2001年 アメリカ) トップへ 『ハイ・クライムズ』(DVD 03年3月20日鑑賞) 夫が突然、目の前でFBIに逮捕される。容疑は老若男女9人の殺害。アメリカ軍がエルサルバドルで作戦中の事件だという。 妻は有能な弁護士。なのだが、軍事裁判なので勝手が違う。軍人が軍人を裁く裁判は明らかに不公正で民間人には勝ち目がない。おまけにそこには陰謀の陰が見え隠れして、しかも妻の回りには得体の知れない影がつきまとう。 国家と軍隊を相手に闘うことの無力感と、それでも夫を助けたい愛とがせめぎ合い、結局のところどっちが勝ったんだか負けたんだか、いったい何が言いたいのやら……。 でも駄作、愚作の類ではない。 単純なサスペンスや正義派でもなく、『羅生門』のような迷宮ものでもなく、何かを描いて結論を出そうとはしてるから。でも、この結論は受け入れ難い。 あるいはこういう結論にしなければこれほどの軍批判はできなかったのか? それなら細部の矛盾も納得いくんだが。 (カール・フランクリン監督 2002年 アメリカ) トップへ 『キャスト・アウェイ』(DVD 03年3月20日鑑賞) ワーカホリックで時間管理の権化のような男が飛行機事故で無人島に流れ着く(キャスト・アウェイ)。んで、ロビンソンのような4年間をすごす。無事帰還するも、4年の不在の間に世間からは忘れられ(キャスト・アウェイ)、恋人にも去られ(キャスト・アウェイ)、でも仕事だけは手放さなかった。と、そんな話。バレーボールに顔を描いて話しかける所など、淡々とした無言の中に妙なリアリティがある。 ところで、『ロビンソン・クルーソー』がプロテスタントの理想を描いた書物だってことはよく知られているけど、この第二部を読んだことのある人は少ないんだな。第一部で見事な内面的な時間管理をもって無人島生活を乗り切ったロビンソンは、第二部ではさらにプロテスタント的な理想を貫くべく、シナの偶像(仏像だと思われる)の徹底的な破壊者となるんです。 そんなことを考えると、この映画は、ロビンソン物語が追及するようなプロテスタントの理想への柔らかな批判だとも言えますね。時間管理よりもゆとりが大事だし、偶像崇拝が必要なこともあるんだ、と。 (ロバート・ゼメキス監督 2000年 アメリカ) トップへ 『氷の微笑』(DVD 03年3月19日鑑賞) 全裸の男の両手を縛っておいて、アイスピックで滅多刺し。 もちろん、ベッドでね。 容疑者として一人の女性作家が浮かび上がる。同じやり方の殺人を本に書いてもいる。しかも狡猾で色っぽい雰囲気はとんでもなくアヤシイ。事情聴取でも、男の警官たちを前に、座った脚をゆ〜〜っくりと組み替える。何もつけていない短いスカートの奥が、釘付けにした男たちの視線をあざ笑う。 んで、スネに傷もつ刑事がこの作家に張りつく。 アヤシイ、んだけど、魅力的、なんだけど、妖しくて…と揺れ動くオッサンの心が微妙で、ちょっとこの辺は観てられません。 セックスの裏にある〈死〉への破壊衝動って、よくあるテーマを手際よくまとめている。ちょっと古くなった感じは否めないが。 (ポール・バーホーベン監督 1992年 アメリカ) トップへ 『少女情婦』(DVD) 『光の雨』の高橋伴明監督のピンク映画時代の傑作、と言われている。 どこが? わからん。 財布を落としちゃったの、500円貸してくれない? と男たちに声をかける少女。まずはお茶でも飲もうよ、と応じる男たち。ところがある若い男は、十円玉をひとつ渡し、これで家の人に迎えに来てもらえ、と。実はこの男、バイト中の浪人生で、ポケットの中身全部集めても400円くらいしか持ってない。で、なんとなく意気投合した二人は飲み屋から少女の部屋へ、そのままベッドイン。朝、浪人生の男は少女がヤクザの情婦であることを知る。数日後、ヤクザは保釈金を積んで帰ってくる。保釈金を出したのは組長の娘。以下、組み合わせが替わり場所が代わりの情交シーンの連続なんだけど、すべてが煌々とした明かりの下、ちっともエロスを感じないのは私だけでしょうか。 なんでピンク映画ってのはこれほど感性的な劣化が激しいんだろう。実際に人間がしてることはそれほど変わってないはずなのに。これも追求すべきテーマではありますな。(高橋伴明監督 1980年 日本 ) トップへ 『コンタクト特別版』(DVD 03年3月14日鑑賞) SFに題材を取った神学物語。 宇宙人がいると信じて育った少女は天文学者になり、宇宙からのメッセージを待っている。そして予算とか、人々の無理解とか、そういった苦難の末、ついに宇宙からのメッセージを受け取る。のだが、その映像にはヒットラーが映っていた……。人類初のテレビ放送を受け取り、送り返してきただけなのか、それとももっと政治的な意味があるのか。いや、もし人間より進んだ知的生命体が宇宙にいるとしたら、それは神の似姿としての人間の地位を危うくし、もとより我々の神の尊厳を傷つけてしまうのではないか。 政治、金、宗教が絡み合うアメリカでのミッションが失敗、「北海道アイランド」の日本趣味溢れるファンキーな基地でしきり直しというのも、なんだか妙にリアリティありますね。 (ロバート・ゼメキス監督 1997年 アメリカ) トップへ 『トータル・リコール』(DVD 03年3月13日鑑賞) 人間の自己同一性(アイデンティティ)は何によって保証されているのかって議論ですね。もし記憶をいじることが出来たら、人間のアイデンティティはどうなってしまうんだろうって物語。 火星で遭難する夢を見る主人公、その夢にはあまりにもリアリティがあり、しかも何度も繰り返す。これは変だ、と思い始めた頃から、日常世界が歪み始める。歪んで破局する。全てが作られた世界だった。そして、お前はお前じゃない、俺だ、と、過去の自分からのメッセージが届く。お前の記憶は作られたものだ、と。 火星民主化運動だとか、宇宙線を浴びて出来たミュータントだとか、この監督一流の悪趣味さは健在。シュワちゃんも熱演で楽しめる。 (ポール・バーホーベン監督 1990年 アメリカ) トップへ 『ロボコップ2』(DVD 03年3月11日鑑賞) 警官はストばっかりしてて正義のロボコップに「スト破り!」なんて暴言を浴びせてるし。カルトの教祖はイカレてて、そこのガキがまた憎らしいし。大企業のトップは合法的な極悪人で、ここに借金しまくって市の財政を破綻させたデトロイト市長はコメディアンみたいなイカレポンチだし。ロボコップの後継機と期待されたロボコップ2の暴走ぶりもハンパじゃないし。 様々な欲望がゴチャゴチャと描かれ、最終的には「人間」とは何かってことになる。 「正義」ではなく、「人間」を、ロボットをダシに描こうとしたってことですよね。 次第にエスカレートしていく悪趣味に耐えられるかどうかが評価の分かれ目。 観てもまあ時間の無駄にはなるまい。 (アービン・カーシュナー監督 1990年 アメリカ) トップへ 『ロボコップ〈特別編〉』(DVD 03年3月10日鑑賞) 『スターシップ・トゥルーパーズ』を通過して『インビジブル』で極限にまで至ったポール・バーホーベン監督の悪趣味も、ここではまだ萌芽に留まってるというべきか。 でもやっぱり悪趣味。 ただし、上品な悪趣味。 つまり風刺が効いてるってことですね。 犯罪者に殺され、ロボコップに改造されてしまった警官。記憶は消されているのだが、ある時、自分を殺した犯罪者集団の記憶がフラッシュバック。んで、復讐のために動き出す。 筋は単純だが、世界観がけっこう練り込まれてる。 まず、犯罪多発地帯の警察が民営化されてて、そこに人間の警官に替わるものとして試作品のロボコップが送り込まれるって設定。もちろんロボコップは大活躍、なんだけど、そこには大企業の陰謀がからんでて、背景には警官労組との対立もある、とこんな感じで、悪乗りともいえる社会派的な風刺の効き方が並じゃない。映像も、だんだんと盛り上がっていく演出も好きです。 (ポール・バーホーベン監督 1987年 アメリカ) トップへ 『スチュアート・リトル2』(DVD 03年3月9日鑑賞) 思春期を迎えるスチュアート。妹(これは人間)もできた。そろそろ一人前に扱って欲しいのに、ママは心配してばかりいる。だって、スチュアートは小さいんだもの。 でも自立の時は訪れる。それこそ天から小さなガールフレンドが降ってくる。このガールフレンドが可愛らしくて、魅力的で、実にアヤシイ。 で、やっぱり裏がある。冒険と、目覚めと。そして家族の再生。 心躍る思春期を空飛ぶスチュアートが見事に熱演して佳作。 80分足らずに短く引き締まってるのもいい。 メイキングも必見。 ちょっとした空き時間に観るにはお薦め。 (ロブ・ミンコフ監督 2002年 アメリカ) トップへ 『スチュアート・リトル』(DVD 03年3月9日鑑賞) 孤児院に子どもをもらいに行くリトル夫妻、で、養子にしたのがネズミのスチュアート。弟が来るんだ、と喜んでいた子どももがっかり。リトル家親戚一同もびっくり。でも驚きながらも受け入れようとする親戚たちに、子どもは「みんな、狂ったんじゃないの? これはネズミだよ」と反論の余地のない正論。 リトル家のネコはもっと面白くない。ネズミが〈家族〉になったら、その家のネコはネズミの〈ペット〉になってしまうのか? 屈辱だ。んで、陰謀を企む。 これって、きっと、人種の異なる養子の問題を描こうとしたんだな。 子どもの船は「WASP丸」だしね。 家族の再編と解体の危機、そして再生。 よくあるお話をネズミとネコの可愛いキャラが引き締めている。 (ロブ・ミンコフ監督 1999年 アメリカ) トップへ 『陽はまた昇る』(DVD 03年3月8日鑑賞) 一言で言えば、潤沢な開発費をもらって作ったソニーのベータマックスに後発のVHSが打ち勝つまでの人情話。みんなで頑張ったんですね。 でも、なんかなぁ〜〜〜。 これって、北朝鮮か中国あたりのプロパガンダ映画にも使えるぞ。 労働英雄の誕生だ! ってね。 もちろん、本物のプロパガンダ映画とは、面白さでは比較にならんとは思うが。 チープなりに、それなりによくできてるし。 今度は是非、負けた側、ソニーの開発者の側の視点から映画を作って欲しいな。 タイトルは『中天の陽も沈む』とか。 だって最近、ウチじゃVHSビデオって観ないもの。HDビデオとDVDばっかりで。 (佐々部清監督 2002年 日本) トップへ 『ザ・プロフェッショナル』(DVD 03年3月7日鑑賞) スマートに盗みをはたらくプロフェッショナルたち。だが、そのリーダーが迂闊にも防犯ビデオに顔を撮られてしまう。もう引退する、今回の分け前だけをよこせ、と盗品売り捌きの悪党に訴えるのだが、この悪党は言う、もう一度だけ仕事をしろ、もう準備は済んでるんだ、準備にも金がかかってるんだ。 仕事はしたくない、でも金は欲しい――。 ここから話は二転三転。仕事をするのかしないのか、逃げるのか逃げないのか、誰が味方で敵なのか、オセロの駒のように敵味方が入り乱れ、んで、スマートにお話は収束するかと思いきや、やっぱり悪党は悪党なんだ。 けっこう練り込まれた脚本が楽しい犯罪映画の王道。 デヴィッド・マメット監督 2002年 アメリカ トップへ 『スコーピオン』(DVD 03年3月6日鑑賞) エルヴィス・プレスリーのコスプレ5人組がラスベガスのカジノを襲う。この設定自体がバカを極めてるもんだから、襲撃以後の、山分けをめぐるトラブルもまたバカバカしいまでに錯綜、もちろんそこに女も絡んで裏切りと信頼の二転三転、おまけに悪党の二人がもしかしたらエルヴィスの隠し子ではないかというオチまでついていて、娯楽度の極めて高いけたたましい怪作。悪党たちがなぜか子どもに優しいのが微笑ましい。大人はためらいもなくドンドン殺すくせに。 (デミアン・リヒテンシュタイン監督 2001年 アメリカ) トップへ 『ダウン・トゥ・ヘル』(DVD 03年3月6日鑑賞) 北村龍平が30万円で作ったというインディーズ映画のDVD化。 殺人「鬼ごっこ」でなぶり殺しにされた男が甦ってきて復讐する。 そんだけ。 でも、随所に光るところがあって画面から目を離せない。 (北村龍平監督 1997年 日本) トップへ 『サウンド・オブ・サイレンス』(DVD 03年3月5日鑑賞) なんてセンスのない邦題。 精神科医の娘が誘拐される。犯人の要求は、心を病み心を閉ざした少女から、ある数字を聞き出すこと。期限は本日午後五時。警察に言ったら娘は殺すぞ、と。 パターンはおきまりの誘拐モノなんだけど、要求が変わってて面白いし、女性刑事が別口から同じ犯人たちに迫っていくって設定もひねりが効いている。だから難を言えばもう少し、聞き出すまでの心理的駆け引きをていねいに描いて欲しかった。娘と犯人(腕に「徳」って漢字を入れ墨している)の心理戦もけっこうハラハラさせ、でも、え、そんだけ、って感じで食い足りない部分がある。 (ゲイリー・フレダー監督 2001年 アメリカ) トップへ 『ザ・サバイバー 〜漂流者〜』(DVD 03年3月5日鑑賞) ロビンソンの漂流が家族単位だったらどうなるか。 こうなります、って映画。 イギリスから流刑の地へと送られる途中、嵐にあって囚人護送船は漂流、ロビンソン一家は無人島に流れ着く。末っ子だけは別のボートで他の場所へ漂流。この末っ子は7年後、数奇な運命をたどり、無人島で生き抜いていたロビンソン一家とけたたましい再会をする。 ロビンソンを狂信的なキリスト教徒に描いて秀逸。 (チャールズ・ビーソン監督 2002年 アメリカ) トップへ 『ドメスティック・フィアー』(DVD 03年3月4日鑑賞) 離婚した父母を復縁させようと、しょーもない嘘をついたりの問題行動を繰り返す12歳の男の子。だもんだから、母親の再婚相手がロクでもないヤツだと気づいて周囲に訴えても誰も信じてはくれない。ただ一人、本当の父親を除いては。 狼少年と継子虐めという説話的な骨格を、現代アメリカの父子関係で肉づけした家族ホラー。 ひねりも何もない。 思った通りの展開で、思った通りに終わる。 でもね、だから良いの。だから、ハラハラしながらも面白く観られるの。 これがもし、先の見えない展開で、ひねりやどんでん返しが随所にあったとしたら、とてもじゃないが心臓がいくつあっても足りない。 心理的な追いつめが結構効いていて、家族って、コワイ。 (ハロルド・ベッカー監督 2001年 アメリカ) トップへ 『アトランティスのこころ』(DVD 03年3月4日鑑賞) これって、日本人のために作った映画じゃないの? 少年期の悲しくて切ない、そして美しい映像は日本人向けに作ったとしか思えない。そう、まるで『ヒマラヤ杉に降る雪』みたいに。 あ、同じ監督か。 母子家庭。母親はどこか軽薄で危うげ。思いこんだらなかなか修正の効かない性格。第一印象に縛られまくるタイプかな。だから、二階に越してきた貧相なおっちゃんと息子が仲良くなるのが気にくわない。でも、おっちゃんはどっか不思議な雰囲気に満ちていて魅力があるし、息子にバイトも世話してくれる。息子はどんどん、おっちゃんにひかれていく。で、ある日の会話。 「(ガールフレンドと)キスしたかい?」 「まだ」 「そのうちきっとするよ。そしてそのキスは、君が残りの人生でやるだろう、どのキスよりも素晴らしいキスになるよ」 なんかもう、このセリフのためだけにこの映画があるんじゃないか。アンソニー・ホプキンス、名演です。子役の二人も素晴らしい。 筋とタイトルはよくわからんとしか言いようもないが。 (スコット・ヒックス監督 2001年 アメリカ) トップへ 『サトラレ TRIBUTE to a SAD GENIUS』(DVD 03年2月24日鑑賞) 思ったことが思念波によって周囲に筒抜けになる。この特異体質の人間のことを「サトラレ」といい、例外なく大天才である「サトラレ」たちは国家の厳重な保護下にある。かつて自分が「サトラレ」であることに気づいた「サトラレ」が結局は自らの運命を悲観して自殺してしまった、その反省からである。「サトラレ」が自らの体質の特異さに気づくことがないよう、本人の回りでは、周囲の人間を巻き込んだ壮大な(結構バカバカしい)お芝居が打たれているのだ。 で、「サトラレ」の一人で、小さな街で駆け出し外科医として働いている症例7号を国家の他の研究部門に回すため、これまた壮大なお芝居が打たれることになった。現場で動くのは女医の小松である。 小松は初めて「サトラレ」の思念波に触れ、むき出しの心をぶつけられることに戸惑う。 「サトラレ」は人を好きになってもすぐにばれる。ふられてもばれる。他の人を好きになってもばれる。しかもばれていることに気づかない。みんなで芝居をしてるから。 恋愛も無理だし、守秘が無理なら医者になどなれるわけはない。 だからといって、国家の思い通りにあっちからこっちと一人の人間を駒のように動かして良いものか――。 結構極端な設定で、実際、原作のコミックの方はあまり好きじゃないんだけど、この映画は悪くない。と思う。 本当に「サトラレ」がいるとしたらこういう青年だろうな、と思わせる安藤政信は演技してなくて天然なのが今回は素晴らしい。 (本広克行監督 2001年 日本) トップへ 『戦場のピアニスト』(03年2月25日鑑賞) これを褒めるのが映画通ってもんなんでしょう。 でも素直な感想を言えば、失敗作。 何が失敗といって、監督の意図が明らかに間違ってる。 監督は、感動するな、と言いたいんだ。 ただ逃げてただけの男が生き残り、ナチスの暴虐に反抗した人々は死んでしまったじゃないか、と。 政治的行動主義は常に裏切られるものだし、この世に英雄なんかいないんだ、と。 戦争に感動なんか、ないんだよ、とね。 でもこういうブンガク青年の独り言は、ハッキリ言って大作には向かない。 ただ、壮大な廃墟と化したワルシャワの街をピアニストが一人、トボトボと歩む姿は実に痛ましく、これは是非大スクリーンで観た方がいい。 実際、このシーンを撮りたいがために映画が作られたのではないかとも思われた。 でも、それだけ。 おすぎの褒める映画はやっぱりどっか問題がある、と改めて思った一本。 (ロマン・ポランスキー監督 2002年 ポーランド=フランス) トップへ 『トイ・ストーリー』(DVD 03年2月23日鑑賞) 子ども部屋のオモチャたちに意志があり、しかもコミュニティを作っていて、人間のいないところではノソノソとおもちゃ箱から這いだしてきて集会を開く。なんだか、童謡『オモチャのチャチャチャ』の世界を思わせて、それでも人間関係(とゆーか、オモチャ関係)は結構ドロドロ、中国の後宮よろしく、子どもというご主人様の寵をめぐっての熾烈な争いの繰り広げられる世界なのだった。 とゆーわけで、自分がオモチャだと気づかないままご主人様の寵愛どころかオモチャ部屋の人望まで独占してしまった宇宙の戦士と、それが面白くないカウボーイの歪んだ恋のさや当てが始まってしまったのだった。ところが、ひょんなことから二人は子ども部屋を出て壮大な(というかご近所での)冒険を繰り広げることになる。 友情! 努力! 勝利! の、『少年ジャンプ』の世界。 これが実は、大人が観ても結構面白い。 子供だましで幼稚で、それでいてシンプルに感動させるストーリーは、日本アニメが永遠に失ってしまったものなのかも知れない。 と、そんなことを考えさせられました。 (ジョン・ラセッター監督 1995年 アメリカ) トップへ 『アリ』(DVD 03年2月23日鑑賞) これもまた激しく人を選ぶ作品だろうな。 カシアス・クレイあるいはモハメド・アリについて共感と知識を持ってる人は大いに楽しむか、あるいは薄っぺらだとけなすかも知れない。 ボクシングが嫌いでアリについて何の感慨もない人は、それでも映画の作り、男の描き方に感動するかも知れない。 アリの最盛期。22歳で世界チャンピオンになり、ブラックムスリムに加わり、ベトナム戦争を罵倒して訴えられ、プロ資格を剥奪され、最高裁で無罪を勝ち取り、32歳、ザイールのキンシャサでフォアマンを破って奇跡の返り咲きを果たす。2時間半で切り取るにはあまりにも多くの事件があって、説明不足は否めない。登場人物の見分けもつきにくいし。 でもウィル・スミスの名演は突出していて、またカメラワークも確かさなんで、人間関係の輪郭は観ているうちに明らかになる。これが結構複雑。ムスリム関係、ビジネス関係、政府、ご近所、家族、妻たち、愛人等々。 スポーツはいつもナショナリズムや宗教やビジネスの道具とされてしまうんだけど、その中を泳ぎつつ自分を貫こうとした一人の男の物語としては悪くない。 ラストのフォアマンとの試合は結果がわかってて、それでも手に汗。 社会派の佳作。 (マイケル・マン監督 2001年 アメリカ) トップへ 『マジェスティック』(DVD) アカ狩り旋風吹き荒れるハリウッド。 共産主義者の疑いをかけられ会社との契約も破棄された脚本家・ピーター。 ヤケになり酔っぱらって運転した車は川に落ち、ある街の海岸に流れ着く。 記憶喪失、自分が誰かわからない。ところが街は、この男が映画館「マジェスティック」の戦死した息子にそっくりだということで、奇跡のお帰りなさいムード一色になる。第二次大戦に出征して帰ってこなかった若者たちの、悲しい想い出に沈み込んだかのような静かな街は、ピーターの出現で、水面に波紋が広がるように少しづつ明るさを増していく。廃館になっていた映画館「マジェスティック」も再開され、とまどいながら、ピーターも街を受け入れ始めていた。 ところがFBIの捜査はこの街にも……。 そしてまさに「マジェスティック(威風堂々)」な結末。 マスヒステリアに陥ってアメリカの基本理念である「自由」をないがしろにしたレッド・パージへの、おとぎ話的な抗議。結構感動作。 しょせんアメリカの国策映画だろ、との辛辣な批評もありそうだが。 (フランク・ダラボン監督 2001年 アメリカ) トップへ 『害虫 スペシャル・エディション』(DVD) 劇場公開版よりも改悪された部分がかなりあって、少しがっかり。 それでも『黄泉がえり』で塩田監督に興味を持った人が観るには充分。 珠玉作には変わりないし。 宮崎あおいがキャラキャラ笑いながら携帯でメールしてるメイキングも楽しいし。 ラストに出てくる林檎の意味もメイキングを観ればさらに明確になるし。 人を選ぶ作品であることに気をつけよう。 『害虫』評へ トップへ 『コラテラル・ダメージ』(DVD) シュワちゃん老けたなぁ、と感じさせるアップ。 家庭的な男が復讐の鬼へ変貌するはずなんだけど、そのへんの演技がどうしてもシュワちゃんじゃ物足りないんだな。平凡な消防士がなんでこんなにスーパーなんだって説明もないし。 とはいえそれほど駄目な映画じゃない。 テロの巻き添え(「コラテラル・ダメージ」って「仕方ない犠牲」って意味ね)で妻子を殺され、実行犯である「ウルフ」を追ってコロンビアに潜入する主人公。んで、テロリストに遭遇。拠点の村へと連行される。そこで、テロリストにも妻子がいて、闘う理由もあることを知る。独立戦争はアメリカの専売特許ってわけじゃないだろ、との殺し文句。 おまけに、復讐したいだけでやって来たんなら、報復テロとどこが違うんだ。 「違う。俺はお前だけを殺す」 つまり巻き添えで女子供を殺したりしないってことね。ところが、アメリカ人であるこの主人公の保護を名目に、CIAが裏で手を引く軍隊はその村を焼き払い、女子供も含めて皆殺しにしてしまう。アメリカのご都合主義に気づく主人公。ここまではいいとしよう。 ところがこっからは物語までもがアメリカのご都合主義に飲み込まれ、主人公はテロリストの美人の妻とアメリカに帰り、新たなテロの阻止へと、これまたスーパーな働きをすることになる。拠点の村ではちょっと人間的だったゲリラがアメリカに来たらゾンビ並みのバケモンに化けてしまってるのも悲しいし。 なんか、アメリカの矛盾を体現したような一本。 (アンドリュー・デイビス監督 2002年 アメリカ) トップへ 『ブレイド2』(DVD) ヴァンパイヤとの混血って設定が興味深かった『ブレイド』は映像もかなり日本的だった。日本文化があちこちにちりばめられていて、それを探す楽しみもありました。 今回の『2』は、敵がさらにパワーアップしてるところとか、かつての敵と手を組むところ、それから言わずと知れた日本刀(もどき)を振り回すところ、等々、より深いところで日本マンガの影響がキてる。ただし、舞台はよりヴァンパイアのオリジナルに近い東欧のどっか(だと思う)のヴァンパイアネーション。 ヴァンパイアに新種が現れ、ネーションを脅かしている。ヴァンパイアをつけねらうブレイドにネーションからの使者が来る。停戦して、共に新種と闘おう、と。 もちろんこの共闘がうまく行くわけはない。 裏切りがあり、失敗があり、血があり、内蔵があり、解剖があり、スプラッターとアクションの連続なんだけど、映像は血なまぐささを感じさせない。様式化されていて、奇麗でさえある。 『ブレイド』にも増して破綻してるシナリオはかなり疲れるシロモノですが。 (ギレルモ・デル・トロ監督 2002年 アメリカ) トップへ 『スパイダーマン』(DVD) これは見る人によって好悪の激しく別れる映画だと思う。 だって、チープなんだもん。 遺伝子改造蜘蛛に噛まれてスーパー蜘蛛の力を身につけるってのもお手軽なら、その蜘蛛と化した身体を喜んでビルの谷間を跳んだりするのも高校生にしてはガキすぎる。陰がない。石ノ森章太郎ならその身体を呪って二ヶ月くらいどん底に陥るところだ。 なのに、面白いんだもん。 何より主人公が社会へ向かって船出していく、その清々しさがいちばんの買い。そしてその清々しさと反対に次第に陰を帯びていく親友の表情。実は親友の父親は自ら身体を改造して悪のスーパーマンになっている。それも最初のうちは無意識の部分で悪さをしてたのに、次第に無意識の悪は意識をも浸食し、人格そのものが破綻していく。壊れていく父親を身近に見ながら息子はどうすることも出来ない。スパイダーマンも心までは救えない。 主要な登場人物の家族全てがどっか狂ってるのも変と言えばヘン。 ちょっと切ないラストも賛否両論だろう。 (サム・ライミ監督 2002年 アメリカ) トップへ 『不眠症―オリジナル版インソムニア―』(DVD) 『インソムニア』 白夜の地で起きた少女殺人事件。調査にやってくる刑事。容疑者を追いつめたものの、すんでのところで逃げられ、おまけに霧の中で誤って同僚を撃ち殺してしまう。様々な策を弄してうまく容疑者が発砲したように偽装したはずだったのに、犯人は刑事が同僚を撃ち殺すところを見ていたのだった。刑事のもとにかかってくる電話。取引の提案。追う側と追われる側の共犯関係が成立するかに思われて、やはり相互不信は抜きがたい。おまけに刑事は慣れぬ白夜に不眠症に陥り、正常な判断力を失っていく……。 ハリウッドでのリメイクったら、たいていつまんない二番煎じに堕してしまうんだけど、これは例外。別格で『インソムニア』が素晴らしい出来。監督もキャストも素晴らしい。伏線の張り方も、映像や心理描写も圧巻で隙がない。 言い訳に言い訳を重ねて自分を追い込んでしまった経験のある方には他人事とは思えないはず。 私っ? 他人事ですっ!(嘘) ただし、宣伝のやり方は拙い。 猟奇を求めて見る人は確実に裏切られるだろう。 『不眠症』(エーリク・ショルビャルグ監督 1997年 ノルウェー) 『インソムニア』(クリストファー・ノーラン監督 2002年 アメリカ) トップへ 『13階段』(03年2月14日鑑賞) 復讐の空しさを描いて秀逸。必見。 死刑囚の冤罪を晴らすため、刑務官・南郷と仮釈放中の服役囚・三上は10年前の事件を洗い直す。正義感からではなく、成功報酬ほしさ。この冤罪を晴らせば匿名のクライアントから1000万づつ得られるのである。 三上はちょっとした諍いから人を殺した罪の意識に心を閉ざしており、南郷にも暗い過去がある。二人はこの仕事にそれぞれの償いをも求めている。 ところが、ある重要な秘密の露見は、三上こそが真犯人ではないかとの疑いもたらし、物語は一気に流れ出す。幾重にも張られた罠。 殺人と死刑はどう違うのか。 傷害致死は犯罪なのに、刑務官の死刑執行は仕事だから無罪なのか。 罪と償い、憎しみと復讐。 やはり生きていくことこそが救いなのだと思わせるラストには賛否両論あるだろうけど、映画だから許す。 (長澤雅彦監督 2003年 日本) トップへ 『クロエ』(DVD) プラネタリウムの解説員と不思議な女・クロエとの恋。 広い窓のある部屋で新生活を始めた二人、なのにクロエはある日倒れ、レントゲンには胸に花の蕾のような影が写っている。その蕾のせいで片方の肺は機能停止に陥っていると医師は言う。蕾は手術によって取り出された。ところが、手術から完全に回復してもいないのに、残った肺にも蕾が現れ、今度は手術も出来ず、次第に衰弱していくクロエ。部屋の広い窓は次第に狭くなり、不思議な少年が訪れるようになって、クロエは静かに最後の時を迎える。 カリスマアーティストとその崇拝者の行状が二人の恋の道行きに見事に縫い込まれて物語を推し進め、キリスト教的な救済や愛の寓意が難解な画面を彩っている。 一歩間違ったら自己満足に堕していたような、佳作。 (利重剛監督 2001年 日本) トップへ 『MIB メン・イン・ブラック』(DVD) 宇宙からのエイリアンは実は地球に溢れていた。 エイリアン達は一人づつ(というか、本当は一匹づつと言いたい見てくれなんだが、地球人のように外側だけは偽装されて)管理され、一般市民はその存在にさえ気づかないでいる。 で、エイリアンにも悪い奴はいる。悪いエイリアンと闘うのが黒服に身を包んだ「MIB(メン・イン・ブラック)」。ベテランと新米。忍びよる地球の危機。ヒロインもいて、バカな敵もいて、とりあえず最後まで楽しい。 つーか、ストーリーよりも設定が面白い。 エイリアン=不法移民。 偽装=通称名。 として見ると、なかなか深い。冒頭からしてね。 (バリー・ソネンフェルド監督 1997年 アメリカ) トップへ 『MIB2 メン・イン・ブラック2』(DVD) MIBの新米は中堅となり、新米を教育する立場になっている。 またやってくる地球の危機と気色の悪いエイリアン。 出来の悪い続編の見本。 (バリー・ソネンフェルド監督 2002年 アメリカ) トップへ 『ランドリー』(DVD) 盗みがないようにコインランドリーを見張る青年。頭には小さい頃にマンホールに落ちた時の傷がある。脳にも傷があると人はいう。 恋人に騙された心の傷から万引きを繰り返す女。生まれ変わりたくてそれができない。一度は飛び越えた水たまりも二度目にははまる。 この二人の出会いと別れと再会と別れと……。 話そのものは全く非現実的で説得力のカケラもありゃしないのに、窪塚洋介の青年が見事なのと、日常の光を手のひらですくってきたような映像が美しい。ただし、長い。 オコジョかなにか、小さな哺乳類のような窪塚洋介の目が印象に残る。 (森淳一監督 2002年 日本) トップへ 『パニック・ルーム』(DVD) 離婚したての母娘が家を買う。いざというとき閉じこもるための部屋がある。それが、 「パニック・ルーム」 で、引っ越してきたその日、男3人が押し込んでくる。 母娘はお約束のようにパニック・ルームに逃げ込んで籠城。 ハンマー攻撃、ガス攻撃をなんとかしのぐのだが、娘は持病の発作を起こす。薬はパニック・ルームにはない…。 ホラーとか言うより、次から次へとよくもまあアホな事件が起こるモンだと関心してしまう。シリアスなのに、ドロボー三人組が間抜けで笑わせるし、元夫など何しに出てきたのかよく解らなくて失笑。 『エイリアン3』の監督らしい、けたたましいカメラ、やりすぎな演出がデタラメな設定と相まって、それなりの出来。 (デビッド・フィンチャー監督 2002年 アメリカ) トップへ 『竜二 forever』(DVD) 男の友情映画。映画の映画。 前衛的な小劇場でチマチマとした拍手を浴びる日々、これが金子正次には我慢できない。本編(映画)で主演をはるという夢に向け、まずはシナリオ『竜二』を完成させる。ところが主演が無名の金子では大手は取り合ってもくれない。監督の実家から出た金を元に限りなく自主制作に近い形でクランクイン。したものの、嫌々引き受けていた未経験の監督は途中降板、その他、家族の思いがあり、不倫があり、紆余曲折があって完成した『竜二』は大受け。するのだが、金子自身は33歳の若さで急死してしまう。 高橋克典は金子そっくりだし、木下ほうかや香川照之のワキも手堅くて結構爽やかに仕上がってます。 (細野辰興監督 2002年 日本) トップへ 『至福のとき』 巨匠の落日はたぶんここから始まるんだろう(『初恋のきた道』でだいたいの予想はついてた)。 さえない男が結婚しようとする。無職のくせに『至福旅館』の社長だと嘘をつく。婚約者は、それならば、前の夫の連れ子で盲目の女の子に住み込みで按摩の仕事をさせてやってくれと請い、男がしぶしぶ半日連れ出した隙に、黙って女の子の荷物を処分してしまう。行く場所の無くなった女の子を男やその無職仲間が世話をすることになるのだが、皆、無職の文無しで、結局は嘘を重ねていくほかない。そして嘘は破綻……。 おとぎ話的に面白い部分もあるんだけど、とにかく女の子の下着姿のシーンが無意味に多くてそのたびに興ざめ。 こんな路線はそう長く続かないと思う。 そしてこれもまた現代中国の大都市らしく金、金、金で後味が悪い。 (03年2月1日鑑賞 チャン・イーモウ監督 2002年 中国) トップへ 『T.R.Y.』 プロットがあまりにもイデオロギー考証に欠けていて、せっかくの巨大セットの味を殺してしまってる。 20世紀初頭、上海で抗清革命を狙う一団に目をつけられた日本人詐欺師。脅され、なだめすかされ、結局は日本軍の中枢を騙くらかして武器を革命集団に横流しする陰謀に加担してしまう。満州皇族のそっくりさんを使った陰謀は何重にも底があって、この辺は見ててテンポが良い。でもだんだんダラケてくる。一言で言えば無思想。 もし、こんな陰謀があったとしたら、日本軍の中枢はわざと騙され革命派に武器を横流して密かに革命を支援し、革命後の政権への一定の影響力を持とうとするのではないか。そういう流れに行くのかと思ったら、何のひねりもなく革命万歳、民衆万歳で終わってしまう。使った金の割に情けない出来。 (大森一樹監督 2002年 日・中・韓) トップへ 『黄泉がえり』 死んだはずの人間が帰ってくる。子供や、妻や、夫が。 自殺した中学生、ラーメン屋の店主、聾者の妻……蘇ってくる死者と親しい者たちの心の揺れが丁寧に描かれていて泣き所満載。 そして再会が唐突であったように、別れもまた唐突にやってくる。 狂言回しの厚生労働省の男は草なぎ剛の熱演。ただし全くの大根。監督のフォローが無かったら見るに耐えぬシロモノになっていただろう。竹内結子のものすごさが光ってます。忍足亜希子もまた素晴らしい。 ただ、さすが『害虫』の塩田明彦、観客を突き放した部分もあって、ベタベタのメロドラマには堕してはいない。(塩田明彦監督 2002年 日本) トップへ 『Ghost Soup』(DVD) 部屋に突然現れた謎の男女、出て行け、と、引っ越してきたばかりの青年・イチローに食ってかかる。イチローには何がなにやらワケがわからない。シナリオやセリフのテンポも最悪なんで、こっちまでわけがわからない。1時間ほどの作品の30分くらいまでそんな調子。岩井俊二の出発点ってこと以外に見る価値無い、見るのやめようかな、と思い始めた頃、現実とイチローの想い出が相互に混じり合い、不思議なカタルシスの世界に入る。カタルシスはなかなかだったけど、それまでの忍耐の時間をどうしてくれるって感じ。 深夜ドラマの怪作ではあるが。 (岩井俊二監督 1992年 日本) トップへ 『プラトニック・セックス』(DVD) 「被害者は私なんだけどぉ」 とかって、父親に悪態をつく娘は、輪姦されて病院から帰ってきたばかり。娘の髪を掴んでタンスに叩きつける父親を止めもせず、母親は力無く娘を眺めてる。 娘は家を出てお水の世界に入る。 借金漬けになる。 メル友と本当の恋人同士になる。 一緒に暮らし始めるが、お金と男を巡ってすれ違う。 とっても安易なお話、などと切り捨てられない芯がある。 主演の加賀美早紀が名演。 女の子から見たこの世、ってことなんでしょう。良くも悪くも。 (松浦雅子監督 2001年 日本) トップへ 『竜二』(DVD) 『竜二forever』と間違えて借りてきてしまった。おかしいとは思ったんだよ(少しだけ)、こんなに早くレンタルになるなんて。 んで、いつになったら映画を作り始めるんだとかってずっと画面見ながら思ってたし、80年頃の考証が並じゃなくて、よくまあこんだけ古い車集めたもんだとかって感心したりしながら、どこでこれがオリジナルだと気づいたかは秘密。 金子正次の驚異的な名演が光るヤクザ映画。 ヤクザ辞めて、それでも辞めきれないバカな男なんです。 妻も子もいるのに。 40を過ぎ、堅気への道が遠くなった今日この頃、身につまされる一本でした。 (川島透監督 1983年 日本) トップへ 『きれいなおかあさん』(DVD) 聾の子供をなんとか普通の小学校に入れようと奮闘する「きれいなおかあさん」。 でもなんか、全てが金、金、金なんだよな。 補聴器買うのに国家や自治体の補助も無いみたいだし、児童扶養手当とか、寡婦控除とか、そういう行政の姿がほとんど見えてこない。見えたと思ったら闇商売取り締まりの警官だったり。 ハリウッドだったら、この障害児を全面に押し立てて社会の変革なんてことになるんだろうし、もしこれが邦画だったら、障害児を育てることで大人達の絆がさらに深まるとかってことになるんだろうに。 結局、みんな砂粒のまま。 母親個人の努力と校長先生個人の好意が偶然咬み合った結果としてのハッピーエンド。 隙のない感動作だけど、何か釈然としない。 (スン・ジョウ監督 1999年 中国) トップへ 『暗い日曜日』(DVD) ドイツにナチスが芽生え始めた暗い時代、ブダペストのレストランで生まれた甘く悲しい名曲『暗い日曜日』。作曲した若いピアニスト・アラディはレストランのウエイトレス(なのか?)・イロナを巡って店のオーナー・ラズロと三角関係にあり(もしボクにもう少し慎みがなかったら、これを仲の良い穴兄弟と表現するところだ)、イロナの情報とラズロの口説によってレコードデビューする。ところがこの曲を聴いた良家の子女が次々と自殺してしまい、アラディは自分の曲に込められた、自分でも気づかぬメッセージを探して苦悩することになる。 ナチスのオーストリア併合、ブダペストにも吹いてくるユダヤ人排撃の風…かつてラズロによって一命をとりとめたドイツ人・ハンスがナチスの将校となってブダペストに帰ってくるや、時代の暗さはアラディの苦悩と重なり、ただではすまぬ緊迫した空気が漂い始め、そしてその空気は一発の銃声によって破られる。 あの時代の様々な要素が盛り込まれていて、見飽きないし、物語としても良くできている。ただし、これも男女を入れ替えたら鬼畜ものになってしまうんじゃないか。オーナーのオヤジと若いピアニストと、一日ごと、なんて、あまりに美味しすぎやしませんか? 暗い映画かと思ってたんだけど、この三角関係が微妙な味を出していて、軽みのある名作の一種でした。 (ロルフ・シューベル監督 1999年 ドイツ、ハンガリー) トップへ 『スコーピオン・キング』(DVD) 単純極まりない王権誕生譚。 覇王がいる。 全戦全勝。 なぜなら巫女がついていて、将来を読むから。 この巫女を暗殺すべく、周辺諸民族連合は暗殺者集団を雇う。 主人公たる暗殺者は負ける。そして逃げる。再び攻め込む。ロマンスがある。裏切りと和解がある。んで、勝つ。 ハムナプトラシリーズから生まれたにしてはストーリーがあまりに単純すぎる。 CGも期待はずれだし。 (チャック・ラッセル監督 2002年 アメリカ) トップへ 『春の日は過ぎゆく』(DVD) 身勝手は美人の特権とは言え、振り回される男はたまったものじゃない。 ストーリーと言えばそれだけなんだけど、韓国の四季を背景にした静かな画面は美しく、すれ違う二人の心を写して切ない。 仕事を通じて知り合った録音技師の男とラジオ局のDJの女。音によって接近した二人はラーメンによって結ばれ(女が男を部屋に誘うのに「ラーメン食べていかない?」)、キムチによってすれ違う(男が「父親に紹介したい」と言うと、「私キムチ漬けられない」)。一度は将来さえ誓ったのに(女が「あんな墓に一緒に入ろう」なんて言う)、結局別れ、そして再会…。 家族の絆の中に生きる男と一人で生きることを選んだ女の静かな切ない恋物語。 予告編の中に全部のストーリーが入ってます。 (ホ・ジノ監督 2001年 韓国・日本・香港) トップへ 『Jam Films』 邦画監督の7人のショートフィルム競作。 短いなりに、というより、短いからこそ、監督のエッセンスが濃縮されて画面から溢れる。溢れるに至らない作品もあったけど。 北村龍平の『the messenger‐弔いは夜の果てで‐』、岩井俊二『ARITA』の二作が最も監督らしさを出していた。だからハナとトリなのか。行定勲『JUSTICE』もこの人らしい。と、3作並べてみたら全部ローマ字の題名なのな。堤幸彦『HIJIKI』はオチが見え見えだけど面白かったから許す。望月六郎『Pandora-Hong Kong leg-』はこんなことあるか〜いって突っ込み入れたくなるほどバカバカしいが、官能的な映像に免じて許す。飯田譲治『コールドスリープ』は筒井康隆的なオチが筒井康隆自身によって語られるのが何となく許せない。唯一日本語題名の篠原哲雄『けん玉』がちょっと許せぬ駄作なのが悲しい。(2002年 日本) トップへ 『火山高』 火の山のような高校って意味かな。 ストーリーはね、なんか秘密の文書を巡っての校内の争いみたいなんだけどよく解らない。 主人公が誰かもよく解らない。 ハッキリ言ってシナリオが駄目! 駄目! 駄目すぎる。 ただ、以下の二点には注目。 1)韓国映画には珍しく画面に漢字が溢れてる。 2)アクションはCGとワイヤー使いまくり、それにデジタルペイントでレトロな雰囲気を出していて、まさに韓国版マトリックス。 1+2で、つまり日本マンガの矮小な猿マネ。 (2001年 韓国 キム・テギュン監督) トップへ 『夜を賭けて』 山本太郎君の名演については何も言うまい。愛してますよ、太郎! 韓国群山(「こおりやま」じゃないよ)に作ったオープンセットがすごい。 在日朝鮮人のルーツもの(考証は少し怪しいが)。 大阪の兵器工場跡地から金属塊を盗み出して売り払う。結構な金になる。でも結局は国家権力が勝つ。でもドロボー達も生き残る。 けたたましくて陳腐な演出はまるで小劇場の芝居を画面で見ているよう。だが、やってることのアホらしさと陳腐な芝居が次第に擦り合ってくるころ、物語には悲劇が芽生え、次第に毒々しい大輪の花へと育ち始める(しかし本当の悲劇は物語の外、清々しい顔で「北」に帰って行ったインテリ達の将来にこそ待っている)。 名作とは言い難いが「必見!」と言わせるパワーはある。 (2002年 日韓 金守珍監督) トップへ 『アイリス』 ボケ予防に頭や指先を使えとか言うけど、写流吐流も結局はボケて某望和亜流のお世話になったし、ピアニストやヴァイオリニストのボケ老人なんか数えるのも気の毒だ。人はどんなことをしたってボケるときにはボケる。人が人である以上、生老病死の厄災からは逃れることは出来ない。それがたとえ、アイリス・マードックのような聡明で明朗な女性であったとしても。 マードック! 『鐘』(悔しいが丸谷才一の名訳がある)の透明で美しい言葉の世界を築いた女性。 その精神が次第に言葉を失い、崩れていく。医療関係者は無駄だというのに、老いた夫はアイリスを必死で支えようとする。 愚か……あまりにも愚かで、むしろその老いが羨ましい。 マードックを知らない人には少々不親切な部分もあるけれど、役者が皆もの凄い名演で、佳作。 (2001年 イギリス リチャード・エア監督) トップへ 『CQ』 60年代後半から70年代はじめのロマン主義的革命運動への共感、そして監督の突然の降板による若手の起用、劇中劇で示される表現への苦悩……まるで『光の雨』なんだけど、雰囲気はまるで違う。『オースティン・パワーズ』をもっと上品にして、ヒューマンドラマの味をきかせ、細部を作り込んだらこうなるって感じの爽やか青春映画の映画。 ちょっと内向的な青年ポールは映画を作るためにアメリカからパリにやってきた。真実を撮るのだ、と、自身の生活や同棲相手にカメラを向けてばかりいる。仕事はB級スパイ映画の編集。ところがある日、監督がプロデューサーと衝突してクビになり、かわりの若手監督も事故で降板、突然ポールがメガホンを取ることに。 ちょっとタルいところもあるがまあまあ面白い。何よりお洒落です。あの時代への思い入れのある人にはお勧め。(2001年 アメリカ ローマン・コッポラ監督) トップへ 『K−19』 副題は「WIDOWMAKER」だってさ。未亡人製造機とでもいうのかね。 冷戦時代のソ連の新鋭ながらポンコツの(ここらへん注意ね)原子力潜水艦「K−19」。処女航海中に事故る。核反応炉の冷却水が漏れて核爆発寸前。修理のため、ただのレインコートを放射能防護服だと偽って乗組員に着せ、炉心のすぐそこまで送り込む。10分で交代なんだけど、炉心から帰ってきた若者はいきなり嘔吐、しかも全身の皮膚は放射能にやられて火ぶくれ状態、 「大丈夫だ、次!」 またも健康な若者が炉心に送り込まれ……。 デタラメ……。 思えば『Uボート』にはまだ救いがあった。 原子力じゃないもの。 それに映像と音楽に「詩」があった。 のうのうと生き延びしっかりと老いた艦長を讃えるラストはどうしても納得いかん。 (2002年 アメリカ キャスリン・ビグロー監督) トップへ 『AIKI』 加藤晴彦君の熱演が掛け値なしに見物。今年締めくくりの一本に迷ったら、是非これを。 バイク事故で半身不随になってしまう。生きる希望もない、と荒れる。自殺未遂、を止めてくれた、病院で同室の、これも半身不随の男から、一年生きてみろよ、一年生きてみて何も面白いことがなかったら、死ね、と言われ、一年生きてみる。それでも何も面白いことはない。なのに死ねない。生活はすさみのドン底にまで落ちこんでしまう。 このどん底がいいです。 自分が同じ境遇になったらきっと同じことをする。 酒に溺れ、カップルに絡み、身内には甘えまくりで嫌われる……。 主人公が合気柔術や不思議な女に出会って生活を立て直していく様は、まるでマンガだよな、と思いながらも爽快です。 本気で合気道を習いたくなった。これを見て合気道を習いたくならなかったら外道です。(2002年 日本 天願大介監督) トップへ 『バースデイ・ガール』(12月6日鑑賞) モテないイギリス人男性がインターネットでロシア人花嫁を注文する。花嫁が空港に届く。ところが、英語が堪能なはずなのに「あなたはキリン?」にも「イエス」と笑って答える始末。しかも非喫煙者のはずがチェーンスモーカー。これはたまらんと「返品」を電話で申し出るのだが、つながらない。そのうち言葉を欠いた「夫婦関係」だけはきみょ〜に濃厚になり、辞書をひきひき、「今日は私の誕生日」。んで、パーティ。の現場に現れるロシア人男性二人。ここから話はけたたましく転がりはじめ、主人公の人生も暗転の一途。バカバカしさの中にも優しい男の優柔不断のペーソスが溢れ、ちょっとしたカスリ傷を心に残す。 緊縛シーンが異様に多い。 ニコール・キッドマンも喋らなければけっこう可愛い。 (2002年 アメリカ ジェズ・バターワース監督) トップへ 『マーサの幸せレシピ』(12月5日鑑賞) 自らの完璧な仕事に誇りを持ち、客のクレームにも敢然と立ち向かう女性シェフ・マーサ。ところがマーサ自身が料理に口を付けるシーンがいっさいない。この女、どこか病んでるな、と、観客が気づき始める頃、シングルマザーだったマーサの姉が死に、姪のリナが転がり込んでくる。このリナも心を閉じ、何も口にしない。ビョーキ×2状態。そこで膠着を破るのはやっぱり男、でも同僚のイタリア人とご近所の建築家、どちらの男が? という女性にとっては実にオイシイ状態が続き、接近があって、別離があって、大接近があって、やっぱりラストはこうでなきゃ、と思わせるハートウオーミングな佳作。 不満な点。 厨房は綺麗なのに料理人が不潔でなんかヤダ。髪はきちんと帽子に入れるべきだし、今舐めた指で料理の盛りつけするのだけはやめてほしいし、まな板の上に座るのもどうかと思うぞ。フランスの厨房で働いたオーウェルのエッセイを思い出した(高価なものほど不潔な料理と化しているって話ね。この映画観たら、さもありなんと思えてしまう)。 心を閉じたリナがお隣さんをじ〜〜〜〜〜っと眺めるシーンが実に可愛らしくて、この子役、すごいです。 しっとりしたドイツ語を久しぶりに聞いたような気がする。 (2001年 ドイツ サンドラ・ネットルベック監督) トップへ 『国姓爺合戦』(12月1日鑑賞) デタラメにもホドがある。 台湾武力制圧のためのプロパガンダ・フィルムとしか思えない。 加えて退屈。 しかも『南京1937』の監督らしい歴史の捏造と共産党へのゴマスリに充ち満ちていて、30分も観れば気分が悪くなってくる。 こんなものを合作した日本人の顔が見たい。 国姓爺鄭成功については、陳舜臣『鄭成功』(上下、中公文庫)や白石一郎『怒濤のごとく』(上下、文春文庫)を心躍らせて読んでいただけに、残念極まりない。 (2001年 日中 呉子牛監督) トップへ 『ジョンQ 最後の決断』(11月29日鑑賞) 最愛の息子が倒れて昏睡状態になり、助けるには心臓移植しかないと告げられる。ところが勤め先が勝手に保険のランクを下げていたため、心臓移植は適用外。保険会社への抗議書の提出、役所回り、募金……と、ジョンQが奔走する間にも息子はどんどん弱っていく。 「なんとかしてよ!」 詰め寄る妻。 「わかってる!」 ジョンQはそのまま病院を占拠。息子を移植待ちリストに載せろ、と。 プロットそのものが医療保険制度の整備を訴えるプロパガンダ、なので人物造形は平板にすぎ、ストーリーも躍動感を欠く。良い意味でも悪い意味でも予想を裏切らない一本。デンゼル・ワシントンの名演は見物だけど。(2002年 アメリカ ニック・カサヴェテス監督) トップへ 『マイノリティ・リポート』(02年11月23日鑑賞) 犯罪を予知して未来の容疑者を事前に拘束、収容所送りにする近未来社会。本人も気づかぬうちに犯罪防止システムの致命的な欠陥に触れてしまった捜査官アンダートンは、なぜかいきなり未来の殺人者として名指されてしまう。用意された罠、じわじわと狭まってくる包囲網の中で、運命と自由意志、つまり、神の予定と個人の自由の二律背反がアンダートンに突きつけられる。 結局のところ、物語の枠組はキリスト教中世の神学論争そのもの。ありきたりのタイムパラドックス。だから突きつけてくる二者択一も、「殺す」か「生かす」かってことだけで、倫理的なつめよりかたは極めて弱い。ただし、悪趣味といっていい映像イメージは悪魔的にもの凄く、2時間、ずっと引き込まれて見てしまう(目玉コロコロには思わず失笑)。 まるで良くできたマンガを映像化したような、かなり日本のポップカルチャーの影響が来てる、スピルバーグらしからぬ佳作。 こんどは誰か、殺人ではなく「強姦」を予防する社会へと設定を変え、フェミニズムに支配された近未来世界を描いて欲しい。 (2002年 アメリカ スティーブン・スピルバーグ監督) トップへ 『ごめん』(02年11月19日鑑賞) 演技も演出もカメラも隙がない、もんだから、シナリオとストーリーのバカバカしさがきわだって、見るに耐えぬ、聞くに堪えぬ。母親とか祖父ちゃんとか、こんなアホでトチ狂った関西人がどこにいようか、いたら連れておじゃれ、手打ちにしてくれようぞ。 男の子の「性」を描きたかったんだね、うんうん、その意気やよし。でもね、あまりにも「違う」としか言いようがない。科学的にね。結局、フェミニストとか、その取り巻きとかにとっての理想の男の子なんだね、このセイちゃん。こんな風に「性」を語れたらいいな、とかって。結局、カルトなフェミニズム願望を形にしたらこうなりました、って映画なんでしょう。でもそれなりに綺麗で面白い部分もあり、つまり、駄作にさえもなり得ない半端モノ。 下品でガサツでデリカシィの皆無なギャグに会場が大受けなのが、関西住人として情けない。 (2002年 日本 冨樫森監督) トップへ 『セレンディピティ』(02年11月15日鑑賞) 運命を信じますか? 信じてください。 ってそれだけなんだけど、けっこう爽やかに仕上がってます。 バーゲンでの手袋一つを巡って男と女が一瞬心を通わせ、そして、もし二人が運命の二人ならもう一度必ず会えるはずだからと、男の連絡先を書き込んだ5ドル札は道の売店で使い、女の住所は本の扉に書いて古本屋へ。 数年がたち、男にも女にも別の婚約者がいて、もう結婚式の日取りも決まっている。 それでもあの一夜の清い心の通い合いが忘れられず、互いの手がかりを求めて動き出す二人。 結論はまあ、予想どおり。 でも紆余曲折のエピソードがかなりエキセントリックで笑ってしまう。 けっこう楽しめました。 (2001年 アメリカ ピーター・チェルソム監督) トップへ 『チェンジング・レーン』(02年11月15日鑑賞) 2台の車の接触事故、これで一人は裁判に20分遅刻し、もう一人は重要なファイルをなくしてしまう。20分遅刻した男は家族を失い、ファイルをなくした男は失職と投獄寸前、けたたましく平行描写される二人の一日は悪意によって交差しつつ、善意によってすれ違う。 練りに、練りに、練られたシナリオは先読みをまったく許さないし、その結果、安易な要約は禁じられている。 映像も演技も素晴らしいの一言。 ラストシーンまで瞬きも出来ない必見の一本。 ただし、ストーリーを追うのにかなりの緊張が強いられるので、覚悟して観てね。 (2002年 アメリカ ロジャー・ミッチェル監督) トップへ 『ピカレスク 人間失格』(02年10月22日鑑賞) 戦後すぐの設定なのに、何で愛人の眼鏡が縁なしのプラスチックレンズなの? 井伏鱒二の家の電灯スイッチも新しすぎるし。でもこういう激アマの細部なんかど〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜でもいい。河村隆一のダイコ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ンに比べれば……いかん、紙面が尽きた。(2002年 日本 伊藤秀裕監督) トップへ 『バイオハザード』 何でヒロインだけが色っぽいカッコしてるの? だんだんわかってきます。 ゾンビものだから、当然、死体が蘇って人間を食います。 ヒロインたちは食われまいと闘います。 でもゾンビはぎょーさんいてます。 味方はどんどん食われます。 食われてゾンビになって蘇ります。 ウイルスがどうとか、コ理屈もけっこうあります。 しかも怖いです。 結構楽しめます。(2002年 アメリカ・ドイツ・イギリス合作 ポール・アンダーソン監督) トップへ 『OUT』(02年10月29日鑑賞) 原作は読んでないけど、多分、独立した作品になっているだろうと思う。だって、あまりにも平山秀幸監督の色が濃い。好き嫌いが別れる怪作でしょう。 ドメスティック・バイオレンスな夫を殺してしまうアーパー主婦、から相談を受け、男の死体を風呂で切り刻んで燃えるゴミに出そうとするパート仲間。様々な世代の四人の女たちが繰り広げるドタバタ悲劇を、原田美枝子、室井滋、倍賞美津子、西田尚美が熱演しています。みなが抱える家庭や個人の事情の描き方も細やかで、現代女性の生き方をしっかりと描こうというキャスト・スタッフの気概が伝わってくる。 ただし最初のためらいから行動へと移るまでの心理描写はやや平板。また上滑りかつ下品なギャグが多い。これを面白いととるかどうかは観る人次第。僕は結構面白く観ましたが。(2002年 日本 平山秀幸監督) トップへ 『TAMALA2010』(02年11月13日鑑賞) ものすごく期待してたのに。 駄・堕・惰・打〜〜〜無(ベートーヴェンの第五ね)って感じ。 ちょっとレトロなポスターや、カワイいキャラに似合わぬスプラッターな予告編にソソられた自分の鑑識眼の無さを呪う1時間半。 基本的には作り手の教養の欠如。 これは日本アニメ全般に言えることなんですが。 もっとアニメーターに勉強の時間を与えなきゃ。 (2002年 日本 t.o.L監督) トップへ 『ロード・トゥ・パーディション 』(02年11月1日鑑賞) 親子の絆と、親分子分の絆、どっちが強いか試してみようじゃないか。 と、そんな映画。 アイリッシュマフィアのボスのバカ息子が激高して幹部を殺してしまう、のを主人公マイクの息子・マイケルが盗み見てしまう。バカ息子は口封じにマイケルを殺そうとマイクの家に忍び込み、間違ってマイクの妻とマイケルの弟を殺してしまう。 で、カタキ討ち。ボスは子分のマイクの気持ちを理解しながら、それでもバカ息子をかばわずにはいられない。放たれる刺客、狙われる親子。 暗い画面が陰と陽とを際だたせ、まるでモノクロの任侠映画を観てるみたい。 ロマンスが皆無なのが、ハリウッド的にはちょっと変かな。(2002年 アメリカ サム・メンデス監督) 『モンスーン・ウエディング』(02年11月6日鑑賞) 自分の決めた相手と娘との結婚を大いに祝いたい富豪もどき。けれどその娘は職場の上司と不倫中。 これだけでもいかにインド映画らしくないかわかりますよね。 もちろん、インド映画につきものの、筋と直接関係のない豪華絢爛ミュージカルもありません。 インドを舞台にしたハリウッド的な家族映画というべきでしょう。 人間関係を掴みにくい群像劇だし、スタイリッシュな映像は筋を捉えるのを阻害している。でも、ラスト近く、娘の結婚という家族解体の場面で辛うじて家族の気持ちをつなぎ止める家長の苦しみ(この苦しみはどこから来るか? ネタバレになるから書けない。でも一言言えば、これだけでもインド映画としては破格!)には思わず涙。結婚式という大団円になだれ込んでいくカタルシスは圧倒的で、名作と言ってもいい。 インド映画では初めてみるキスシーンもセクシー。 今年のMYベスト10に確実に入る一作。 (2001年 インド ミラ・ナイール監督) 『たそがれ清兵衛』(02年11月6日鑑賞) 山田洋次って大嫌いなんです。 「『寅さん』? けっ!」て感じ。 「『学校』? 観てないけど、ケッ、ケッ、ケッ!」て感じ。 で、『たそがれ清兵衛』はどうだったか。 よかったぁ〜〜。 悔しいが感動してしまった。 真田がいいとか、宮沢りえがいいとか、大杉漣の迫力がたまらんとか、脇が完璧ですごいとか、そりゃなんとでも言えるけど、やっぱりこれは監督の力量でしょう。悔しいが。 思うに、僕が山田洋次の何が嫌って、演出からあふれ出る人情の押し売りが嫌なんだよね。でも時代劇だと、この押し売りがハマルんだな、きっと。 よいです。素直に感動しました。 (2002年 日本 山田洋次監督) 『凶気の桜』(02年10月23日鑑賞) かなりヤバイ映画かと期待したんだけど、後半はヤクザ映画のノリになっちゃって少々残念。 「右翼なんて冷戦時代の遺物なんだよ、俺たちはナショナリストだ」とか言って、グローバリズム、アメリカニズムに楯突こうとしてる純情なインテリゴロツキがだんだんと既成右翼とヤクザに絡め取られていく。その様は壮絶で、窪塚洋介の熱演が光ってます。でも、とにかく全編、暴力、暴力、暴力で、ちょっとついていけない部分もある。ただ、ただのヤクザ映画と違って、会話のすれ違いが知的でけっこう面白い。たとえばこのゴロツキナショナリスト同士で、窪塚洋介はハンバーガーはアメリカの毒だから食わねーって言いたくて、 「お前、ハンバーグが何から出来てっか、知ってっかよ?」 って聞いたのに、仲間はパーなものだから、 「ハンバーグで出来てんだろうがよ」 こりゃ、駄目だわ。いつまでも仲間でなんかいられるわけはない。切り崩し。分裂。 惜しかったのは、国粋主義団体の黒幕が実は在日で、「ハンオル」(ちょっと翻訳は難しい。「ハン」は、漢字では「漢」「恨」あるいは韓国の「韓」ともとれるし、固有語では「唯一の」「ただ一つの」とか言う意味で、「オル」は「たましい」「こころ」)とハングルで書かれた額を寝室に掲げている、この辺の裏事情も、もっと掘り下げて欲しかった。それと、これから観る人はね、会場が明るくなるまでしっかりと座ってること。大事なシーンを見落としちゃいますよ。(2002年 日本 薗田賢次監督) トップへ 『おぎゃあ。』(02年10月22日鑑賞) 妊娠。相手はどこにいるのかわからない風来坊・ハヤト。そいつを追って、自分の祖母の故郷・沖縄へと向かう19歳の花。故郷での、4つのころに自分を捨てて男へと走った母親との再会。そして出産。 最初の十分はどうしようかと思った。こりゃ啓発映画かいな、と。 ところが、時間が進むにつれ、ストーリーはだんだんと、健全なところの何一つ無い、悪乗りデタラメファンタジーへと悪化の一途、いいですね〜〜こういうの。大好きです。「竜巻注意報」……ってアンタなぁ。 奇妙に明るいのが何より。だって沖縄だもんね。 岡本綾の花がいいし、なにより余貴美子の母親! ど〜〜〜しようもないイカレポンチで、もしこんな母親だったら? どっか遠くの人目につかないところで静かに幸せに生きて欲しいです。あの走りはマジ怖いです。 その他のキャストも、NHKの朝ドラ『オードリー』と『ちゅらさん』、それに映画『光の雨』を混ぜた感じで個人的には何か懐かしくて良いです。上映館も上映回数も極端に少ないんで、ビデオになったら是非どうぞ。(2002年 日本 光石冨士朗監督) トップへ 『宣戦布告』 「北」の潜水艦が日本海沿岸に座礁、武装工作員たちが上陸した。警察の特殊部隊SATが工作員を発見するも銃殺許可が下りたり政治的配慮から取り消されたり。で、隊員が工作員をスコープに収めながらもためらっているところに向こうは躊躇無くロケット砲を打ち込んでくる。炸裂。隊員死亡。 警察ではどうしようもない、と、仕方なく自衛隊が出動。だがそれでもどうしようもない。工作員は人を殺す訓練をきちんと受けていて、なにより必死だ。サクサクと殺されていく自衛隊員。まったく、現地の隊長は手榴弾を使うにも総理の決裁を求めるし、官僚は官僚で、重火器を使うにはこれだけクリアしなければならない法律が、などと分厚い書類を総理に示してみせたり。その間にも最前線の自衛隊員は実にサクサクと殺されていく。 腰にある手榴弾や擲弾筒を使えばすぐに片がつく状況で、しかもこっちの隊員がどんどん殺されている状況で、それでも上からの指示を待ちつつ、銃だけで戦い続けるなんて、これは玉砕以下ではないですか。バカげてる。しかも、同じ状況が現実になったら、多分、日本人は同じことをするだろうなと思われて、なんだかとてもバカげてる。 戦闘シーンだけでなく、スパイ合戦や(『光の雨』で赤軍コマンドを好演した池内万作が「北」のエージェントを演じているのがシャレとして秀逸)帰化した在日の問題なども結構ていねいに描かれていて、チープな割にはまあまあな出来。(2002年 日本 石侍露堂監督) トップへ 『阿弥陀堂だより』 人だらけの都会に疲れたエリート女医の妻を連れ、故郷に帰ってきた売れない作家。 健康な老いがあり、若者の病いがあり、そして死があり、淡々とした物語の中の波乱が人生の意味を考えさせる。 ような映画にしたかったんだろうということはよくわかる。 でもね、物語自体が浄土教の枠組みに寄りかかりすぎて、強さを決定的に欠いている。確かに絶対他力の雰囲気は寺尾聰が良く出してるとは思うんだけど、物書きとしてのエネルギーにどっか欠けていてリアリティがない。悪い映画じゃないんだけど。(2002年 日本 小泉堯史監督) トップへ 『命』 なんかなぁ、柳美里なんて幼稚な作家、嫌いなんです。何がイヤって、社会科学的な記述手法を徹底的に無視したようなナルシスティックな書き口や、それより作家とは思えない言葉遣いの稚拙さ。自分が負けた裁判で「慚愧に堪えぬ」なんて……同じ物書きとしてホントに「慚愧に堪えぬ」。 というわけで、家族とか朝鮮とか、ボクの書くものとテーマはかなりカブってるから、読まなきゃなぁって思いながら、なんとなく避けてます。けっきょく、エッセイをいくつか読んだだけ。感想はね、13歳のこまっしゃくれた小娘が天下国家を論じたらこういうのを書くかもしれないって思いました。13歳にしては才能を感じさせる、かも。 『命』のシリーズなんかとてもとても。でも、古本屋から買ってきたんで、そのうち読もうとは思ってるんですよ。 で、映画『命』。う〜ん、トヨエツは名演です。でもマキコは駄目です、健康的すぎて。(2002年 日本 篠原哲雄監督) トップへ |