複雑系

複雑系の基本的なお話しをして、複雑系に少しでも興味を持って頂くことを意図した部屋です。しかしながら、複雑系に対する考え方は色々あるので、その1部を紹介するに過ぎません。


複雑系とは何か

天気予報がなかなか当たらないのは何故でしょうか?それは、天気がカオスだからであると考えられる(バタフライ効果参照)。だから、せいぜい2週間先までの予測しかできないのである。他にも身近なところに、様々なカオス現象がある。例えば、3体問題乱流くぎの倒れる方向・・・がある。

 

今までの科学の多くは還元主義的であったが、複雑系においては「要素の振る舞いのルールが、全体の振る舞いの影響も受ける」と考えられる。つまり、要素の振る舞いのルールに従って運動する要素が集まって、全体が出来るのだが、その全体の振る舞い方が要素の振る舞いのルールに影響を及ぼすということである。

例えば、バタフライ効果において、気候を変える(この場合、竜巻を発生させる)のは1匹の蝶のせいなのでしょうか?そうではなくて、蝶を取り巻く環境と連結した蝶が原因である。蝶が竜巻を発生させるのと同じだけ、竜巻を消失させているだろう。

つまり、蝶や他の動物や物はあるルールに従って運動している。それが集まって地球が出来ている。しかし、地球という環境のために、1匹の蝶(別に蝶に限らないが)の羽ばたきで、地球という、全体の環境が変わる。そして、全体の環境が変わると、それが又蝶に影響を及ぼし、影響を受けた蝶がまた地球環境に影響を及ぼし・・・というように、「蝶の振る舞いのルールが、蝶などが集まってできている地球環境の影響の影響も受ける」のである。

 

アインシュタインの「神様はサイコロ遊びをするのか?」という有名な言葉がある。量子力学は一般的に、確率的なところまでしか突き詰められないと考えられている(不確定性原理)。しかし、量子的世界のランダムさが実際には決定論的カオスである可能性も考えられる。つまり、確率は偶然の沙汰によるものではなく、ある種の決定論的振る舞いの表現方法と考えられる。

 

「複雑系」は、1980年代後半にサンタフェ研究所から始まった。そこの研究者の一人であるキャスティによると、複雑系は「@モデルを構成している要素は多すぎても、少なすぎてもいけない。Aその各要素は知的な振る舞いをする。B各要素は局所的な情報によって相互作用する。」と定義されている。

 

従来の科学の多くが還元的手法によるものであったと述べたが、では複雑系はどのような手法を用いられるか。それが構成的手法である。しかし、例え構成的手法をを行っていても、複雑系を対象として扱っていなければ、複雑系科学とはいえない。従来の科学では、還元的方法論が多かったけれども、構成的方法もあった。しかし、それらは複雑系を扱っていないので、複雑系科学ではない。

 

ではここで、基本的なシミュレーションを行ってみよう。ある類似商品A、B、Cがある。数百人の人を集めて、それぞれどの商品を買うか?というモデルを考える。

では、まず始めにそれぞれ何も考えずに商品を買うことを考えよう。その時、Aを買う確率、Bを買う確率、Cを買う確率はそれぞれ3分の1のはずである。例えばこれを、サイコロを振り、1,2が出たらAを買う。3,4が出たらBを買う。5,6が出たらCを買う人として、のようなますめを埋めていく。例えば、2,1,6,4,4,3,5,5,1,3,2,6,2,3の順でサイコロの目が出たなら、図2のようにしていく。そうすると、A,B,Cの出現確率はそれぞれ3分の1だから、上記の例のモデルができていることになる。

ではここで、このモデルにちょっとした規則を与えてみる。例えば、Aを買おうとしていたのに、周りのみんながBを買うと言ったらどうだろう?Bを買いたくなってしまうのでは?こういう意志をモデルに組み込むために、規則を与えたのである。この図に、4,3,2,1と書いてあるが、これは遷移率という。この規則に従って、1時間後、2時間後、3時間後・・・とモデルを観察していくと、A、B、Cの割合は図3のようになる。つまり、規則を与えなかった時と同じ、全て3分の1になっている。

では、ここで新たな規則を与えることにする。Aの商品を買おうとしていた人がBの商品を買いたくなる遷移率を、2倍にする。即ち、Aの周りにBが4人いたら、遷移率8、3人だったら、遷移率6、2人だったら遷移率4、1人だったら遷移率2とする。変えるのはA→Bだけで、B→Aや、C→Aの規則は先ほどの規則と同じである。こうしたらA、B、Cの割合はどう変化していくだろう?A→Bの遷移率が上がったから、Bが段々増えていって、Aは段々少なくなっていくのだろうか?少し考えてみて欲しい。さぁわかったでしょうか?

実は、結果は図4のようになる。始めはBは増えるが、段々減って結局3分の1を下回ってしまう。Aは始めは大きく減ってしまうが、段々盛り返していく。しかしそれでも3分の1より小さくなる。それに比べてCは少しずつ増えて結局1人勝ち。AとBが争っている間にいいところを持っていってしまっているような結果になる。

このように予測不可能なのが複雑系。シミュレーションを行うことによって結果を出すのだ。この場合、キャスティの定義にあてはめると、@図1は、ある限られた数であり、少なくもなく、多くもなかった。A買い物をするのは人間だから、知的な振る舞いをする。Bちょっとした規則や、遷移率を変えたりした。よって、@、A、Bを満たしているから、このモデルは複雑系モデルということになるのだ。

複雑系の中に現れる美しい性質の1つに、自己組織化というものがある。自己組織化とは、まるで、ある規則に従って自分を組み立てていくような振る舞いです。自己組織化は、1987年に発表された「砂山崩しモデル」に関する論文によって提唱された。カオスの縁(確率モデルにおいて、カオスが現れるのと現れないのとの境目(臨界確率))において、フラクタル図形が現れることがあるが、それはこの自己組織化のためである。