性教育・模擬授業

小学生に“性交”をどう教えるか


<はじめに>

大学生を児童役として、模擬授業の機会をいただくことができた。「小学生に性交をどう教えるか」という大変難しいテーマである。現場でも賛否両論ある。
 今回わたしは、「小学生にもわかるように、生殖行為としての性交を教えるべきである」という立場に立っている。同じ長期研修教員の塚本 武先生と共同で、次のような流れの授業を行った。

<どこでどう扱うか>

 性交を直接扱えそうなのは、理科5年「人と動物のたんじょう」および、学級活動(保健指導)6年「生命誕生」である。今回は、5年の「人と動物のたんじょう」単元で扱うこととした。
「人と動物のたんじょう」の学習内容は、次の通りである。

  1. お母さんのおなかのなかにいる赤ちゃんの様子(胎児、胎ばん、へそのお、羊水)
  2. 胎児の養分のとり方
  3. 胎児の育ち方
  4. 人間の受精のしくみ(精子、卵子、受精卵)
  5. 男女の体のしくみ(精巣、卵巣、子宮)
  6. 生命の連続性

本時は、4の発展的な学習として理科で扱う。6年の「生命誕生」では、出産・出生に絞って学習することにした。

 また、児童は、5年生までに、次のことを学習していると仮定する。

  • 初経、精通など、思春期の男女に起こる体の変化(5年・体育)
  • 体の変化にともなう心構え(4年・学級活動)
  • 誕生と家族の喜び(4年・学級活動)

<本時のねらい>

新しい生命を創造する営みとしての性交について、植物やいろいろな動物と比較しながら理解させる。

<本時の展開>

 ※ ここに記したのは、大まかな流れであって、授業記録ではないことをお断りしておく。

 超音波断層撮影装置による胎児の様子、出産直後の赤ちゃんの様子をVTRで見る。

『自分が誕生したときのことについて、両親から何か聞いたことがありますか』

1名指名して答えてもらう。そうやってたくさんの人に見守られて、誕生してきたことを話す。


『きょうは、どうやって生命が誕生するのかについて学習します』

人間の男女は、どうやって区別しますか。

お父さん、お母さんの絵を黒板にはる。
「外見で」「体つきで」「顔で」といった答えが続くであろう。教師の方で次のことを確認する。

ペニス、ワギナ → 外見で区別できる。

 男性の体内(精巣)で精子がつくられ、女性の体内(卵巣)で卵子がつくられることを確認する。
女性には、赤ちゃんが育つ部屋(子宮)があることを確認する


花にも男女がありますか。

お花・め花 → 外見で区別できる。
おしべ・めしべ → 一つの花にあるものもある。

 花の実のでき方について確認する。

『自分で動ける動物はどうでしょうね』

魚のオスとメスは、どうやって区別しますか。

「ヒレがちがう」「体の色が変化する」「大きさや形がちがう」など

魚にペニスがないのはなぜでしょう。

「泳ぐときにじゃま」
「オス、メスは、他の所で区別できる」
「必要がない」
「人間のペニスに代わるしくみがある」

魚の受精のしくみについて説明する。

『人間の場合、お母さんの体の中でつくられた卵子とお父さんの体の中でつくられた精子とが、どうやって受精するのでしょう』

人間と魚のちがいをできるだけたくさん挙げてみましょう。

説明中の塚本先生

「人間は、水の中に住んでいない」
         「人間は、お母さんの体の中で赤ちゃんを育てる」
「人間のお母さんは、卵を産まない」
   「人間は、ふつう1度に1人しか産まない」
「人間は、魚よりも進化した生き物だ」

 このことから、次のようなことが導かれることを説明する。

生物の進化(魚→カエル→ヘビ・トカゲ→鳥→哺乳動物)と人間の性交について説明する。
導入で確認した“自分の誕生”と関わらせて説明する。





※ 説明の概要

 人間の生命誕生のしくみは、大切な命が安全に、しかも確実に誕生するように、男性の性器(ペニス)を女性の性器(ワギナ)の中に入れて、精子を送り届けるのです。ペニスは、いわばホースのような役目をしているのです。
そして、お母さんの体の中で精子と卵子が合体して受精し、大切な赤ちゃんをお母さんの体の中で育てるのです。


『きょうの学習について感想を書きましょう』

『動物の交尾と人間の性交のちがいは何でしょうね』(オープンエンド)

<学生の感想から>

植物→魚→人間という流れについて

「スムーズに流れていた」
「性交に対していやらしい感じを受けなかった」
「みんなやって当然のことなんだという印象があった」
「犬や猫などの動物をどのように扱ったらよいか」

性交の説明について

「もう少しくわしく説明してもよいのではないか」
「性交と受精のちがいがはっきりしていなかった」
「実際の性交のイメージとむすびつきにくい」
「もっと突っ込んだ質問がでたときはどうするのか」
「表現のしかたが難しいと感じた」

<おわりに>

 学生の感想にもあるように、小学生に対して「生殖行為としての性交」をきちんと教えることは可能であり、必要なことではないかと感じた。今回の授業の反省点はたくさんあるが、特に今回の説明では、「受精」と「性交」とを明確に区別していなかった。子どもに誤解させる危険がある。
 また、今回の説明では「不十分である」という考え方と「そこまで説明しなくても」という両方の意見があった。現場でも、当然起こり得る論議である。この点については、今後も検討を重ねていきたい。
ご意見・ご感想をお待ちしています。
豊島 登 Noboru Toyoshima