とにかく本を読んでみるで、虫歯治療の例を挙げて次のように述べた。
| 知識と実際に行動を起こすことの間には、「自分にとってとるべき望ましい健 康行動を決定する能力」が必要なのである。 |
このことについて、もう少し深く考えてみることにしたい。以下の記述は、高橋浩之『健康教育への招待』(大修館書店)を参考にしたものである。
やはり、「歯みがき」を例にしよう。今の世の中に、歯を全くみがかない人というのはほとんどいないだろう。これは、ひとえに教育の成果である。しかし、ほとんどの人が歯をみがいているにも関わらず、虫歯に苦しむ人は多い。なぜ「歯をみがいているのに虫歯になる」のだろう。
いろいろな要因があるだろうが、多くの人にとっては「歯みがきが虫歯予防の効果を果たしていない」ということになる。はっきり言えば、虫歯の予防となるようなみがき方ができていないということである。これまでの教育では、歯みがきを習慣化させることには効果があっても、それを正しく行うことができない。つまり、みがいてもみがいても虫歯になるようなことを強要してきたのである。
それでは、本当に虫歯予防のためになる「歯みがき」指導とは、どんなものだろうか。例えば次のようなことが学習内容となるだろう。
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A.どのようなブラッシングのしかたが、どの部分のプラークを、どの程度落とすか。 B.どうしたら、正しいブラッシングを維持できるか(自己チェックの技術を提供する)。 |
Aは、正しい知識を与えるという教育である。これも重要であるが、私がもっと重要だと思うのがBである。こういう発想というのは、これまでの日本にはあまりなかったのではないだろうか。せいぜい、歯みがきカードを全員に配布して、色をぬらせる程度である。そして、「歯みがきが大事だとわかっているんでしょ!」「なぜ、ちゃんとみがけないの!」「もう少しまじめにやれよ!」「虫歯になったって知らないぞ!」となるのである。
話がそれるが、「なぜ子どもは歯をみがかないのか」ということについて、ちょっと触れたい。人がある予防行動をとるための要因には、下のようなものがある。
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つまり、(1×2)−(4−5)が予防行動(歯みがきをする)可能性である。歯みがきの場合は、4が小さく5が大きいことが原因ではないだろうか。
ちなみにエイズの場合、日本では2は大きいのだが1の自覚が全くない人が多いそうである。2がいくら大きくても1が0ならかけ算しても0。だから、予防行動に結びつかないのだ。
さて、Bの考え方である。これは、好ましい健康行動をとるための自己管理技術(ライフスキル)を身に付けさせようというものである。ここでは、オーストラリアの『STAR PLAN』というのを紹介する。
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これは、健康教育に限ったことではない。すべてのことに応用できるが、特に「わかっているんだけどできない」ということに対しては有効である。ここで思いだしたのが、
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といったことである。永遠の課題のように思っていたが、何かヒントを得たような気がする。環境を整えることも大切だが、個人の技術を高める支援をすることはもっと大切のようだ。