健康的な運動習慣を形成するために


はじめに


 以前、健康的な運動習慣の形成を図るためには、次のような教育が必要であることを述べた。



「運動することが自分にとって大事なことである」という意識や「これからも自分で運動をしていこう」という運動に対する肯定的な態度を育てる。
・自分にあった運動を自分で選択し、それを実践、継続していくためのスキルを身に付けさせる。


 今回は、このことについて、なるべく具体的な学習をイメージできるようにしたいと思う。



現行の体育科における運動学習の問題点


 具体的な学習を考える前に、もう一度現行の体育科における運動学習の問題点について、簡単に振り返っておきたい。
 現在の体育科(実技)における学習は、実際に体を動かすということに主眼が置かれている。よりよく動くためにはどうしたらよいかが学習テーマとなる。めあて学習は、子どもの主体的な活動を重視しているが、その中味は「どんな練習をしたら技能が高められるか」が中心である。どのように取り組めば楽しめるかということは学習できるので、その場の運動を楽しくするためには有効である。 しかし、そこで学んだことを自分の力で継続させたり、他の運動にも応用したりする学習は組織されてこなかった。「楽しみ方は教えたのだから、あとは本人しだい」とされてきたのである。これでは、「運動することが自分にとって大事なことである」という意識、だから、「これからも自分で運動をしていこう」という運動に対する肯定的な態度は育たない。「自分でスポーツをするのは好きだが、体育は嫌いだった」という大人が多いのもうなずける。

 では、健康的な運動習慣を形成する学習はどうあるべきだろうか。運動を継続して楽しむことは、余暇開発となるだけでなく、健康のためになることでもある。健康づくりを意識するならば、運動を継続させるための学習が重視される。それによって、日常的な運動習慣と活動的な生活習慣を形成することができると考えられる。
 そのためには、これまでの運動学習の大部分を占めていた競技的な発想による授業づくりから、余暇開発的、健康教育的な発想による授業づくりが必要である。特に、健康的なライフスタイルとして運動習慣を形成するためには、健康教育的な発想が一層重要になってくる。



A 競技的な発想…目先の運動種目をいかにうまく行えるようにするか。
B 余暇開発的な発想…みんなで楽しむ。自分の力に合わせて楽しむ。
C 健康教育的な発想…自分の体、自分の健康維持のために。


 発想のちがいは、次のような授業づくりの視点のちがいを生む。


競技的発想余暇開発的発想健康教育的発想
目 的競技力の向上遊び、娯楽、趣味健康的な生活習慣
内 容運動技能の高め方運動の楽しみ方健康によい運動のしかた
方 法競争、達成、克服レクリエーション知的学習
評 価運動量、技術習得
<結果の重視>
気分転換、気持ちよさ
<過程の重視>
運動の効果
<継続の重視>
児童の変容運動技能の向上意欲・態度の向上行動変容
ルール理解、遵守多様化、創造普遍化
教師の役目個性開発人間関係調整自己尊重的態度の育成

 以下、健康教育的な発想による授業改善の視点について述べたい。



健康的な運動習慣を形成する学習は、どうあるべきか


以上の改善の視点をふまえ、運動習慣を形成するプログラムの目標を次のように立ててみた。



到達目標
自分の運動能力や健康状態を把握し、維持・向上させる能力を育成し、運動の習慣化を図る。
授業目標
子どもたちは、このプログラムを修了すれば以下のことができるようになる。
  1. 自分の運動能力や健康状態を把握するための知識や態度
    • 運動習慣が健康に及ぼす影響の大きさについて議論する。
    • フィットネスを維持・向上させるために必要な要素について説明する。
    • 継続的な運動によって、フィットネスが向上する理由を述べる。
  2. 運動する際の安全性に関する知識や態度
    • 運動するときのウォーミングアップ、クーリングダウンの必要性を説明し、実施する。
    • 運動中の傷害を未然に防ぐ方法について検討する。
  3. 自分の体の状態をモニターするためのスキル
    • 有酸素運動の前後に心拍数をとり、自分の体の状態を把握する。
  4. ライフスキル
    • 自分の運動習慣や生活習慣を振り返り、フィットネスを改善するめのプランを立てる。
    • 継続して運動に取り組み、自分の立てたフィットネス改善プランを評価する。


 また、具体的な学習内容として、次の4つのタイプを考えた。



A 継続的な運動によって、フィットネスが高まることを体験する学習
B フィットネスを高める運動目標を設定し、継続して運動に取り組むための学習
C 運動中に起こりやすい傷害について理解し予防するための学習
D 自分の身近な運動環境に気付き、働きかける学習


この4つをまとめて、総合的な「運動習慣形成プログラム」と考える。現段階では、体育科はもちろん、いろいろな教科・領域で実施することになるだろう。
A〜Dの項目をクリックして、具体的な学習活動の案を見ていただきたい。


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豊島 登 Noboru Toyoshima