中学年からの保健学習をどう考えるか?


1.実技の時間は減るけれど…


 体育の時間が削減される。それに加えて、中学年でも保健学習が導入される。体育の実技の時間はもっと減ることになる。
 しかし、体育の時間だけ十分に運動しても、それが健康に結びつく行動として意識されていないのでは、継続することは難しい。健康を維持するためには、この継続こそが重要なのである。そうした能力や技術を身につけさせる保健学習が中学年でも実施されるのは喜ばしいことである。
 また、中学年からの保健学習は、健康に生きるという価値意識が高まっていることの現れとも言えるだろう。単に、病気がないといった健康観から、生活の質を自らの力で向上させていこうとする健康観へと転換させる契機としたい。

 さて、低・中学年における「保健」は、これまでも学級活動としての「保健指導」として行われてきている。それぞれの学校で独自に年間計画が作成されているが、なかなかその通りに実施できないという現状がある。保健主事や養護教諭がいつも頭を悩ませている問題である。しかも、たとえその通りに実施できても、学校間格差が生じるのはやむを得ないことである。
 しかし、保健学習として行うことになると、どの学校、どの学級でも、同じ内容の学習が組まれることになる。この意義は大きい。だからこそ、学習内容として何を選択するかは、重大な問題である。


2.保健学習が変わる!


 現在5,6年生で実施されている保健学習の内容は、次の通りである。
5年(10時間)…「体の発育と心の発達」「けがの防止」 6年(10時間)…「病気の予防」「健康な生活」

 教育課程審議会の中間まとめの記述によると、これに次のような内容が加わることになる。

  • 心の健康、薬物乱用、生活習慣病、防災や性などの新たな課題についての指導に重点を置く。
  • 健康なライフスタイルを確立するために内容の改善を図る。

まず、学習する内容が大幅に増えることがわかるだろう。「薬物乱用」や「防災」は、これまでになかった新しい内容である。それだけでなく、これまでの学習内容も改善され、「生活習慣病の予防」や「心の健康」などが重視されるということである。
 とは言っても、体育実技との関係でそう多くの時間はかけられない。そこで、何を重点的に学習させるかが問題となる。新たな保健学習では、これまでのような「知識獲得型の学習」ではなく、行動化するための技術や自己管理能力の育成といった「ライフスキル形成型の学習」に重点が置かれることになるだろう。そうした学習の質の変化は、具体的に次のような授業の工夫となって現れる。「つまらない保健」が「おもしろい保健」に変わるのである。

  • 体験的な学習や課題学習の導入。
  • ゲームやロールプレイなど、授業形態の工夫。

3.中学年の保健学習、その中味は?


 なぜ、中学年から保健学習が行われることになったのか。それは、

  • 児童の発育の早期化
  • 生活習慣の乱れ

に対応するためであるとされている。
 例えば、現行では5年生で「2次性徴」を扱うことになっている。しかし、すでに体に変化が現れている子が多くなった。発育の早期化が今後も進むと考えると、中学年で扱った方がよいだろう。体の変化に対して不安を抱かせないよう個人差の指導を重視し、肯定的な性自認につながるよう配慮したい。
 また、子どもの頃に身に付けた生活習慣は、一生のライフスタイル形成に強く影響するという。なるべく早い段階で望ましい生活習慣を身につけることは意義のあることである。
 中学年で学習しやすいものとして、虫歯予防のための歯みがき習慣が挙げられる。歯みがき指導は、これまでも各学年で行われてきたが、系統的に実施されている学校は少なかったのではないだろうか。みがいてもみがいても虫歯になる子は後を絶たない。
 これまでの指導では、歯みがきの大切さは学んでも、どのようなブラッシングが、どの部分のプラークを、どの程度落とすかといった必要なことが学ばれていなかったのである。また、「みがきなさい」と強制するだけでなく、どうしたら、正しいブラッシングを続けられるかという自己チェックの技術も提供する必要があるだろう。

 もう一つ、食事や運動などの習慣形成が健康と大きな関係にあることも、中学年のうちに知らせておきたい。特に、子どもを取り巻く食環境は、豊かである反面、偏ったものも多い。ファーストフードなどの外食産業、スナック菓子、あふれる食品のCMなど、自分で判断して食べ物を選ばなければならない時代となった。子どもたちが大好きなハンバーガー、フライドポテト、ピザなどは、高カロリー、高脂肪、高塩分という3高食品である。私も大好きで、ついつい食べてしまうのだが…。生活習慣病の予防という観点から、どんな食品をどのように食べたらよいか、家庭科とも連携して横断的に学習させたい内容である。


4.新しい保健学習の全体像は?


 最後に、これまで述べてきた学習内容が中学年に導入されることになった場合、高学年の学習内容はどう変わるか考えてみたい。以下、私案としてまとめたものを参照いただきたい。

 5年生では、感染症の予防学習をメインに、エイズ学習にも取り組む。O157などの新たな問題も扱いたい。「保健施設の活動とその利用」では、地域の保健施設に気づき、積極的に利用しようとする態度を育てる。学習方法に工夫をこらしたい。社会科との連携も考えられる。
 6年生では、「喫煙・飲酒・薬物乱用防止」がメインになる。タバコや薬物の恐ろしさだけをクローズアップするだけで終わらせたくない。「タバコを吸わないようにするにはどうしたらいいか」について調べたことを発表し合ったり、友達・家族の影響や自動販売機・広告について考えたりするのも効果的だろう。
「心の健康」は、道徳と、「環境と健康」は、理科との横断的な学習も考えられる。  それぞれの配当時間が短いので、フォローする内容の保健指導の時間はどうしても必要である。特に、性に関する指導、生活習慣の形成に関する指導については、全学年を通して系統的な指導計画を作成する必要があるだろう。

保健学習の内容(私案)
3年(5時間)
生活のしかたによって起こる病気(虫歯の予防を中心に)
交通事故を防ぐ
4年(5時間)
体の発育と思春期の体の変化
生活習慣病とその原因(運動、食事、睡眠・休養との関係)
5年(10時間)
病原体がもとになって起こる病気(エイズを含む)
学校生活におけるけがの防止
保健施設の活動とその利用
6年(10時間)
喫煙、飲酒、薬物乱用と健康
心の発達と健康
環境と健康(水、空気など)


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豊島 登 Noboru Toyoshima