ガサラキとは千年の昔の日本に出現したという鬼神のこと。これを操り、朝廷の下で権威を誇った傀儡の一族の末裔こそ、豪和(ごうわ)家の者たちである。傀儡、即ち嵬(かい)とは実際に鬼神を呼び寄せ操る、言わば巫女のような者のこと。また豪和とは嵬の血筋を受け継ぐ一族のこと。彼らはかつて、鬼を操る能力を持っていたのである。
そして現代‥‥よりも、やや近未来。豪和の一族は、嵬としての力を殆ど失いながらも、ガサラキの伝承と骨嵬(くがい)を継承し、巨大複合企業の経営者として現在に生き残っていた。骨嵬とは豪和に代々伝わる鬼の手、かつてガサラキの力を扱い兼ねた嵬の者が、その力を移しかえたと言う武具。豪和の者たちは、ガサラキの伝承と骨嵬をもってして現代のガサラキとも言える二足歩行兵器の開発に取り組んでいた。この二足歩行兵器を実現した駆動力こそが骨嵬のサンプルから採取した組織を培養して開発した新機軸の人工筋肉なのである。
時は21世紀初頭。世界は政治・民族・宗教の対立から、戦争や内乱、テロの真っ只中にあった。悪化する治安と緊張の増す安全保障上の情勢から、特に都市部において有効な戦術を成しえる新兵器の出現が要請されていた。そんな時代、国連安全保障理事会の常任理事国となった日本は、国連平和維持軍に新たに設立した特務自衛隊(特自)を派遣して、その地位を確かなものにすることを目指す。豪和が開発した二足歩行兵器はタクティカルアーマー(TA)と呼ばれ、日本の特自の切り札と目されていた。
このTAは、豪和によって開発された人工筋肉が駆動力と姿勢制御を担うことで機体のAIへの負担を減らしているのが特徴。特に障害物が多い市街地で運用されることでその性能を最大限に発揮する。二足歩行兵器の高速移動を可能にするロングストライド。建造物への壁面を利用して垂直移動を可能にするリフティングウィンチ。足元の地面や床面を局部的に爆破し、そこに穿たれた穴に機体を沈めるためのアルムブラスト‥‥などなど、既存の車両型兵器では実現不可能なこれらの新機構を駆使する全高4メートルの人型機動兵器は、新時代の戦場の様相を激変させるものと予想されていた。
そしてTAはほぼ完成し、そのテストパイロットの一人として豪和家の四男、豪和ユウシロウが抜擢される。ユウシロウは、豪和家の一族に失われた筈の嵬の力を秘める者であった。彼は特自のTA部隊に配属され、その優れた潜在能力でTAの開発と運用に携わる。「ガサラキの再現」という豪和家の宿願を一身に受けて。
だが、二足歩行兵器の開発を押し進めていたのは、豪和一族だけではなかった。世界経済に隠然たる影響力を持ちながら、その実態は杳として知れない超国家的秘密組織“シンボル”である。彼らもまた、謎の伝承を追っていた。彼らがインヴィテーターと呼ぶ特殊なシャーマンの血筋に纏わる伝承を‥‥。或いは、中国は仰渡遺跡(おおどいせき)で発見した巨人のミイラに纏わる伝承を‥‥。彼らが開発した二足歩行兵器メタルフェイクは、巨人のミイラから採取した組織を元に開発したフェイクと呼ばれる、やはり人工筋肉で駆動し、インヴィテーターとして発見された謎の少女“ミハル”の特殊な力によってその機能向上が図られていたのである。豪和が開発しているタクティカルアーマーと酷似した開発行程を経て。
豪和とシンボル。嵬とインヴィテーター。タクティカルアーマーとメタルフェイク。そしてユウシロウとミハル。ガサラキを巡って織りなされる不可思議な縁に導かれ、物語は動き始める‥‥。
一応主人公なのだが、とにかく自己主張が弱い。序盤はひたすらアニキたちの言いなり。服従しているとというより、人形のよう。中盤以降ようやく自分の意志や感情を露にするようになりますが‥‥。