
「ダグラム」「ボトムズ」とリアル指向が続いた高橋良輔監督のロボットアニメですが、その第3弾では一転して中世ヨーロッパを模したファンタジー風の世界が舞台となりました(近い時期に放映された、同じくファンタジー風ロボットアニメの「聖戦士ダンバイン」との比較も面白いかも)。作品の趣も、やや高年齢向けだった前2作に比べて、一転して古典的ロボットアニメに回帰した感があります。若きヒーローと彼を取り巻く心強い仲間たち、そして彼らに敵対する征服者という構図は新鮮味はないものの、非常に安定感のあるドラマ作りに成功していました。未知なる土地での冒険談や英雄豪傑との対決など、次々と起こるエピソードの中で一人一人のキャラクターの個性が丁寧に描かれているのも「ガリアン」の魅力です。
そして、一見オーソドックスなストーリーで進行していた「ガリアン」が、終盤に至ってマーダルの真の目的が判明することで、物語は急展開します。それまで、惑星アーストの覇権を巡る攻防が物語の骨子として描かれていたのが、突如銀河レベルの社会や歴史が視野に入り、作品は突如SF風へと激変します。そして「繁栄故の停滞と、その打破」というある種現代的なテーマがストーリーに持ち込まれることで、「ガリアン」という作品の奥行きが幾重にも増し、いかにも高橋良輔監督らしい仕上がりの作品として幕を閉じたのであります。
ドラマとしての完成度は非常に高いものとなったものの、スポンサーサイドの事情でシリーズが当初の予定より短縮され、26話で完結することになりました。もっと続いていたとすれば、共通の敵を前にしてジョルディ王子とマーダルが同盟し、共に銀河へ革命を広げていくという構想もあったそうで、それはそれでとても興味深い展開になったはず。かなり残念です。
突如として惑星アーストに出現した征服王マーダルは、地中より掘り出した鉄の巨人・機甲兵の大群で諸国を侵略し、圧倒的な軍事力をもって瞬く間にアーストの国々を統一してしまった。10年前に滅びたボーダー王国もマーダルに征服された国のひとつ。マーダル襲撃の夜に生まれたボーダー国王の遺児ジョルディ王子(愛称ジョジョ)は、マーダルの手から寸前のところで王の重臣アズベスの手によって辛くも逃げ延びる。ジョルディとアズベスは、マーダル打倒とボーダー再興という悲願を果たすためアーストに伝えられる伝説の「鉄巨人ガリアン」を捜し求め、諸国を遍歴することになる。
10年の歳月を経て二人が訪れた白い谷はマーダルに抵抗する人々の最後の砦であり、また同時に「鉄巨人ガリアン」の伝説が色濃く残る土地でもあった。その白い谷にも、ついにマーダルの軍勢が襲いかかってきた。ジョルディは谷の地下で偶然発見した鉄巨人ガリアンに急遽乗り込み、マーダルの軍勢を撃退する。ここに惑星アーストの命運を決める戦いが始まるのであった。
正義感が強く、いかにも好感の持てる12歳の少年、主人公ジョルディ王子。自らに課せられた使命を認識してのことでしょうが、かなり背伸びをした言動をしている印象がありました。しかし、まだ幼さは消えておらず母フェリアのこととなると、やや軽はずみな行動が止められません。そのために一族のリーダーとしての責務を疎かにすることすらありました。アーストの未来のためには、もうちょっと“究極の父性”マーダルにガシガシと鍛えてもらったほうが良かったかもしれません(笑)。
そんなジョルディを慕い、常に行動を共にしようとするのがヒロイン(?)のチュルルです。とにかく元気。10歳の女の子とは思えぬバイタリティ溢れる言動で周囲を和ませます。何しろ他の登場人物が(例によって)オッサンばかりなので、彼女の存在は一服の清涼剤となってます。女性キャラが苦手(?)な高橋良輔監督ですが、この手の元気娘キャラを作らせたらピカイチと言えるでしょう。
また謎の女として登場し、物語の鍵を握ったヒルムカも重要な役どころを担っていました。銀河高度文明連合から来た監視員でありながらアーストの民の中に深く溶け込み、さらに野心家マーダルにも共感を覚えるという、一種橋渡し的なキャラクター。様々な立場を理解しながら傍観者にとどまることなく、積極的に行動を起こしていった姿は、「ガリアン」という作品を考える上でとても重要な要素だと思います。
ジョルディを見込んで仲間になり、周囲のムードメーカーとなったウインドウ。「ダグラム」「ボトムズ」に続き、今回も千葉繁が熱演を見せてくれました。憎めないしぶとさが彼の魅力です。
その他にも忠臣や武人、好敵手や策士など、様々なキャラクターが登場しますが、やはり「ガリアン」といえば“機甲界の星一徹”ことマーダルについて語らねばならないでしょう。善を成すために悪を成し、愛するが故に憎悪を煽り、見果てぬ夢を追い求めた征服王マーダル。個人的に、クライマックスにおけるあの引き際には感極まってしまいました。男は太く短く、の見本です。
しかし世界観とメカデザインの相性はいいものの、機能面・運用面での考察は中途半端という感が否めません。走行システムにボトムズで使用されたローラーダッシュ機構がそのまま採用されていたり、ビーム兵器を搭載する機種と搭載しない機種があったり、(玩具との兼ね合いがあったんだろうけど)主人公メカだけ分離合体/変形の機能があったり、古代高度文明の兵器としてはイマイチ破壊力に欠けるし・・・・と、どうもチグハグな感じが拭えませんでした。ロボットと中世騎士譚風の世界観という一見違和感のある取り合わせだからこそ、説得力ある描写を劇中に盛り込んで欲しかったです。
| ●スタッフ 企画:日本サンライズ 原案:矢立 肇 原作:高橋良輔 監督:高橋良輔 演出:池田成、加瀬充子、谷田部勝義、 知吹愛弓、康村正一、津田義三 他 脚本:鳥海尽三、五武冬史、吉川惣司 作画監督チーフ・塩山紀生 作画監督:谷口守泰、貴志夫美子、吉田徹、 二宮常雄、中村旭良、八幡正 キャラクター・デザイン:塩山紀生 メカニカル・デザイン:大河原邦男 音楽:冬木透 音響監督:浦上靖夫 美術監督:宮前光春 設定制作:今西隆志 制作デスク:山本之文 プロデューサー:初川則夫、木本隆彦、長谷川徹 |
●キャスト ジョルディ(ジョジョ):菊池英博 チュルル:渕崎ゆり子 アズベス:小林修 フェリア:泉晶子 マーダル:加藤精三 ヒルムカ:平野文 レッド・ウインドウ:千葉繁 ハイ・シャルタット:速水奨 ダルタス:筈見純 ローナ:横尾まり ランベル:屋良有作 ドン・スラーゼン:兼本新吾 ウーズベン:井上和彦 ローダン:阪修 プロッツ:石森達幸 ビルセン:坂口正平 |