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| 【解説】 「ダグラム」の後番組、高橋良輔監督によるリアルロボットアニメ第2弾。前作の数々の反省点を踏まえつつ、新たな世界を開拓して制作されたのが、この「装甲騎兵ボトムズ」です。強烈な個性を持った主人公、消耗品として描かれたメカ/ロボット、舞台は1クールごとに移されて作品の雰囲気を一変させる思い切った構成など、数々の工夫が見て取れます。 戦争の中で生まれ育ち、戦闘技術ばかりを身体に叩き込まれた主人公キリコ。そんな彼が仲間や愛する者を得て人間性を回復していく過程がボトムズの物語となっています。と同時にキリコは、予告編の中で「心臓へ向かう折れた針」と称されるように体制への反抗者でもあります。それは「支配の否定」というテーマとして、物語後半に全ての黒幕であるワイズマンが登場すると大きくクローズアップされました。 ガンダム以降に登場したリアルロボットアニメの一つの極致として、或いは高橋良輔監督の代表作として、現在でも高い評価を受けています。 |
| 【物語】 百年戦争の末期、メルキア軍の兵士キリコ・キュービィは、突然転属を命じられた部隊で味方の秘密基地を襲撃するという奇妙な作戦に訳も知らされず参加する。 怪しみながらも任務を遂行し、次々と敵を撃破していくキリコだが、単独行動をしているうちに、奇妙なカプセルのような装置を発見。マシンを降りて装置を調べるが、うっかり触ったスイッチの操作によって偶然にもカプセルのハッチが開き、中に眠っていた謎の物体を目撃してしまう。それは青い光の中で眠る美女、頭髪や体毛が全くない異様な人体であった。驚愕し夢中でカプセルのハッチを閉めた彼のところに部隊の仲間がやってくる。任務完了かと思いきや、上官の命令で基地の外に偵察に出たキリコは仲間から裏切られ、爆弾で宇宙の彼方に吹き飛ばされてしまう。 意識を失い宇宙空間を漂流していたキリコはメルキア軍の戦艦によって収容、容疑者として逮捕される。惑星メルキアに連行され拷問を受けるが、僅かな隙をつき脱走。以後、数奇な運命に導かれ、街から街へ、星から星へ、放浪する。その途上、彼は仲間や愛する者を得て、自分の出生の秘密を探究するという目的を見いだしていくのだった。 |
| 【登場人物について】 無口で無愛想で自閉症気味ではあるが、やるべきことは何の躊躇もなく実行する。それがキリコ・キュービィです。ロボットアニメの主人公というと大抵少年として描かれますが、キリコ(一応18歳)の中に少年なるものは残っていません。その生い立ち故に人間性において未完成ではありますが、彼は完全に「男」として描かれています。ロボットアニメの主人公は数多かれど、そこらへんがキリコの最大の特徴であり魅力と言えるでしょう。「ボトムズ」という作品は、ひたすらこの特異な主人公の魅力を引き出すために形成されていると言って過言ではありません。 キリコの運命を変え、キリコを導く女性、フィアナ。物語の重要な部分を担っているわりに、彼女の性格はいまひとつハッキリしてません。ただキリコの行動の原動力としてのみです。キリコは何故彼女に惹かれたんだろう? 出会いが強烈な(ブッ飛んだ)ものだったというのと、戦争の犠牲者であるという共通点以外にキリコがフィアナにゾッコンになる根拠は見当たらないのですが・・・・。高橋良輔作品は女性キャラがイマイチ、と言われる由縁です。 キリコの行く先々で彼を助ける3人組。ゴウト、バニラ、ココナ。基本的に善人ではあるが、善良な小市民ではないのが彼らの持ち味。必要とあらば非合法行為もお手の物。小悪党的な小賢しさを発揮して暴力全開の権力者に立ち向かっていく姿が痛快でした。そんな彼らがキリコと不思議な絆で結ばれていることがボトムズに一服の清涼剤として作用しています。 その他にも個性的なキャラクターが数多く登場しています。ワイズマンのエージェントとしてギルガメス軍とバララント軍を渡り歩いた熱烈なキリコおたくロッチナ。ひたすら惨めな生きざまと死にざまを見せてくれた第2のPSイプシロン。広瀬正志氏の熱演が光るカン・ユー大尉。クメンの快男児カンジェルマン。挙げていくときりがありませんが、その多くが高橋良輔的存在感を発揮しています。 |
| 【メカ(ロボットについて)】 前作「ダグラム」のコンバット・アーマーのコンセプトが“人型戦車”なら、「ボトムズ」のアーマード・トルーパーのコンセプトは歩兵と戦車の中間、まさに「装甲騎兵」と呼ぶに相応しいでしょう。デザイナーである大河原邦男氏はATに関してジープのイメージでデザインしたとコメントしています。人間の2倍ほどのATの全高は一般視聴者にも実物がイメージしやすいスケールであり、ハイテクらしいハイテクが使われていないATはロボットアニメ史上最も実物を想像しやすいロボットであると言えるでしょう。 AT自体のギミックも特徴的。脚部膝下の関節が前に折れて(なんて言えばいいんだろ?)胴体が地面に接地する降着機構。薬莢で射出されるアームパンチ。二脚歩行型機器でありながら自然な高速移動を可能にしたグライディングホイール機構と滑走移動時の方向転換に使用されるターンピック、などなど。それらの機構を使った挙動は非人間的なアクションであり、ヒーロー性のあるアクションではありません(ローラーダッシュはかっこいいかも)。まるでアクション映画のカーチェイスに使用されるオンボロ車のように酷使されるATに、視聴者はモビルスーツとは別種のリアリズムを発見することが出来ました。 人間の身長の2倍強の全高、足の裏にローラーを装備して高速で滑走するシステム、無骨なデザインなど、アニメに限らずリアル指向のロボットが登場するコミックやゲームなどに様々な影響を残したのもボトムズの功績と言えましょう。 ATで最も特徴的なのが、その運用風景。 「ボトムズ」の主人公キリコは特定の機体を愛機とせず、最も普及した機種スコープドッグ・シリーズを好んで使用しています。このスコープドッグは、ガンダムで言うところの所謂ザク的メカ。まったくありふれた量産機です。これによって主人公と主役メカの同一性は弱くなりましたが、そのかわり、大きな利点が生まれることになりました。 主人公キリコが好んで使用するスコープドッグは軍内部はもちろん、民間にも多数払い下げられているので調達するのに苦労しません。必要に応じて現地調達可能。つまり、ボトムズにおけるロボットは、立ち食いそば屋の割り箸程度の存在でしかないのす(言い過ぎか?)。主人公は必要に応じて、仲間の武器商人のルートから、手近な兵器倉庫から、ジャンク屋のスクラップ置き場から、闘技場の倉庫から、或いは敵のATをかっさらってもいい、使い慣れた武器を容易に調達出来ます。壊れたり、使い終えて邪魔になったら、何の未練もなく乗り捨てちゃってOK。 これは結構大きい。主人公ロボットが特別な存在ではなく、単なる消耗品になったことによって主人公は、輸送やメンテナンスの手間から完全に自由になることができ、移動が楽になったのです。身体ひとつでどこへでも行ける。更に、これまでのロボットアニメの主人公の大半がチームや組織の一員として描かれていたのに対し、主人公を(本当の意味での)風来坊として描くことが出来るようになったのです。第1話で軍を脱走し、以後各地を転々とするキリコは、基地や要塞といった活動拠点に縛られることはないし、移動要塞や宇宙戦艦のクルーとして団体行動を余儀なくされることもありません。戦闘以外では全くデクノボーでしかない巨大ロボットをトレーラーで担いで行脚する必要もなくなったのです(クリン君ご苦労さん)。 これはロボットアニメ始まって以来の快挙です。素朴なSF知識しか導入されていなかった「マジンガーZ」や「ゲッターロボ」の世界ですら、巨大ロボを動かすには相応のバックアップ(組織と設備と資金)が不可欠(主人公も所詮は雇われ運転手)という暗黙の約束事に縛られていました。しかし、ロボットが消耗品という位置づけにまで格下げ(?)されることにより、ストーリー自体に大きな自由度が産まれたのです。 |
| ●スタッフ 原案:矢立 肇 原作:高橋良輔 監督:高橋良輔 演出:加瀬充子、知吹愛弓、谷田部勝義 他 キャラクター・デザイン:塩山紀生 メカニカル・デザイン:大河原邦男 作画監督チーフ・塩山紀生 音楽:乾 裕樹 音響監督:浦上靖夫 美術:東篠俊寿(#1-28),岡田和夫(#29-52) 演出チーフ:滝沢敏文 脚本:五武冬史、高橋良輔、吉川惣司、鳥海尽三 制作:日本サンライズ |
●キャスト キリコ・キュービィ:郷田ほづみ フィアナ:弥永和子 ゴールーズ・ゴウト:富田耕生 バニラ・ハートラー:千葉繁 ココナ:川浪葉子 ル・シャッコ:政宗一成 イプシロン:上恭ノ介 ロッチナ:銀河万丈 バッテンタイン:戸谷公次 ボロー:緒方賢一 カンジェルマン:寺田誠 キリィ:亀井三郎 |