青の騎士
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【解説】
 『青の騎士 ベルゼルガ物語』とは、タカラの模型雑誌「デュアルマガジン」に連載され、その後ソノラマ文庫(全4巻)として大幅加筆書き下ろしの形で発表された「装甲騎兵ボトムズ」の外伝小説です。TV編のキャラクターこそ登場しないもののメカや世界観はボトムズ・ワールドのものを共有し、独自の世界を築いて人気を博しています。著者はボトムズのOVA第3弾「ビッグバトル」の脚本を担当した はままさのり氏。他にメカデザインに藤田一己氏やイラストに幡池裕行氏などがビジュアル的な側面を支え、作品に彩りを添えています。
【物語】
 アストラギウス銀河を二分した百年戦争が終結し、惑星メルキアに帰還した元ATパイロットのケイン・マクドガル。戦うことしか知らぬ彼は、バトリング選手として街から街へと放浪の生活を送っていた。ケインが目的とするのはただ一つ、彼の唯一の友シャ・バックの命を奪ったシャドウ・フレアへの復讐であった。
 戦友の形見のATベルゼルガを駆って、戦いに明け暮れる日々の中で、彼はようやく仇シャドウ・フレアの居場所をアグの街に突き止める。敵シャドウ・フレアと戦う中で、ケインは巨大な陰謀に遭遇、これと戦うことになっていくのだった。
【登場人物について】
 主役のケイン・マクドガル。彼について著者はインタビューで「キリコは消極的ニヒリズムみたいな部分があるでしょう。逆にケインでは積極的ニヒリズムみたいな、その破壊衝動にストレートに突き進んで行けるような男にしました」と言ってます。“積極的ニヒリズム”と“破壊衝動”という言葉によってケインのキャラクターは表現できるでしょう。荒ぶる魂というか、とにかく戦うこと破壊することに異常な集中力を発揮し、描写においてもその部分が最も充実しています。
 対してヒロイン役のロニー・シャトレは所謂ストッパー。己を失うほど戦いに没入するケインに人間らしい温かみを取り戻させる役どころ。気が強そうで、抜け目無さそうで、でも実は女の子らしい素顔を持っている、という辺りなかなか魅力的な性格設定がなされています。う〜む、それにしても彼女の最期の扱いは何なんだ(-_-;)?
 他にもケインの周囲には、マッチメーカーの親父ネイル・コバーンや軍の情報将校ミーマ・センクァターなどが配され、世界観を広げています。それにしても、ボトムズ系作品には「情報将校」ってのが欠かせないんですね。ボトムズしかり、メロウリンクしかり、ブルーナイトしかり。
 プロレスを彷彿させるバトリングの世界を描いていますから、そういう部分でのキャラクターも魅力的です。200人殺しを公言する「青の騎士」ケイン・マクドガルやバララントからやっていた「ファニーデビル」ロニー・シャトレの他にも、レッドショルダーの生き残り「デスメッセンジャー」ラドルフ・ディスコーマや悪役「漆黒の鉄牛」オウラ・ニガッタなどもいいですが、一番爆笑ものだったのがタックチーム「アイアン・ウォーリアーズ」ガニアルとボーグル(いっそブロディやハンセンをモデルにしたバトリングATも出して欲しかった^_^;)。こういう部分で遊べるのもバトリングをメインに描いた青ベルのいい部分です。
【メカ(アーマード・トルーパー)について】
 本作品のメカ、ATは基本的にTV編で登場したものが登場していますが、それぞれバトリング用に改造されていて青ベル独自の魅力を形成しています。戦場ではあり得ないような奇妙な改造を施しているマシンもあり、ボトムズ・ワールドの奥深さを感じさせます。
 またTV編に登場しなかった軍の次期主力AT、FXシリーズ等が独自に登場しているのも見どころ。Zガンダムで手腕を見せた藤田一己氏によるメカデザインによって、TV本編に登場したATとは一味違う、シャープなラインを基調とした新型機が登場し、マニアの目を引いています。ただし小説においては数項のイラストでしかその雄姿を見る事が出来ないので、HJ誌別冊などを参照する必要がありますが。
【番外意見(ボトムズ・ファン保守派からの不満)】
 この「青の騎士ベルゼルガ物語」、アニメ化はされていないものの「ボトムズ」番外編としては「メロウリンク」に次ぐ存在感のある作品です。しかし、本家ボトムズを愛好する層からは必ずしも高い評価を得ておらず、それどころか否定的な意見も少なくありません。実は私もこの作品は一定の評価はするものの、全面肯定は出来ない心情です。それは本来1,2巻で完結したはずの「青の騎士ベルゼルガ物語」発表後、続編のような形式で発表された3,4巻に主因があるようです。
 宿敵シャドウフレアを倒し、その半年後にギルガメス、バララント間の抗争が第4次銀河大戦として再開される、というエピローグで一旦は巻を閉じたのが「青の騎士ベルゼルガ物語」1,2巻。その後を描いた3,4巻ではボトムズの世界観を大きく逸脱し、独自の世界を構築し始めます。史実部分の展開がボトムズ52話以降を描いた「赫奕たる異端」と丸っきり食い違ってるのは仕方ないとして、もっと根本的な部分がボトムズの世界観、高橋良輔監督による世界観と噛み合っていないのです。1,2巻まではまだ本家ボトムズの世界観のうちに納まる規模の話だったのですが、3,4巻ではアストラギウス銀河の成り立ちやら世界観そのものにまで新たなアイディアやテーマを持ち込んでしまい、結果的に「ベルゼルガ物語」はボトムズ外伝という在り方を超え、「はままさのり氏の世界」といしか言えない作品に変質してしまいました。
 それでも、それ自体が気に入ればまた別の角度から評価が出来たしょうが、これが全く私の趣味に合わない代物だったもので・・・・。
 次々と繰り出される特権的アイテムの数々(あぁ、フェティッシュ)、易々と殺されていく登場人物たちによってハードな雰囲気を出そうとする安易さ(別に人命尊重を謳えなんて言わんが)。それに第4次銀河大戦勃発以降の歴史は本作の主人公ケイン・マクドガルなくしては語れない、という描き方も嫌でしたね(「赫奕〜」もそうだが、一応向こうは本家だし。でも、実は私「赫奕〜」もそこらへんが嫌い)。更に言わせてもらえば藤田氏のメカデザインも性に合わない(幡池氏のイラストはいいんだけど)。あのツンツンと突起の目立つデザインは、どうもボトムズの世界に似合わないような気がします。
 1,2巻は結構好きなんですよ。良輔監督とはボトムズ・ワールドに対する解釈が違うものの、それはボトムズ・ワールドの懐の内に収まってるし、ストーリー的にもなかなか面白かった。それに幡池裕行氏のイラストやメカがかっこよかったですから。ついでに言えば、プロレス・ファンでもある私は、あのバトリングの泥臭いノリがたまらなく好きだった。あぁ、なんで1,2巻で止めとかなかったんだろう。それまではTV本編との距離を図りながら丁寧に作り込まれていたストーリーや世界観が、3,4巻は作者がナ〜んにも考えずに暴走しちゃって全然奥行きのないものになってしまった。もったいない。
 出来れば、このモヤモヤを解消させる為にもOVA化して欲しいと思ってます。はままさのり氏は単なる原作者という立場でクレジットに掲載されるだけの存在に甘んじてもらって、良輔監督はプロデューサー辺りの立場で大枠を締めてもらい、あとは新人中心のスタッフに任せる。もちろん設定は本家ボトムズと食い違わない形に改め、3,4巻は闇に葬る。小説「青の騎士ベルゼルガ物語」1,2巻は、とてもOVA向きの素材だと思うので、このまま眠らせておくには勿体ないです。スタッフの皆さん、是非ご一考を。
【青の騎士ベルゼルガ物語】アイテムリスト
  ◆小説
   「青の騎士ベルゼルガ物語@」 はままさのり著(ソノラマ文庫)
   「青の騎士ベルゼルガ物語A」 はままさのり著(ソノラマ文庫)
   「青の騎士ベルゼルガ物語『K'』」 はままさのり著(ソノラマ文庫)
   「青の騎士ベルゼルガ物語 絶叫の騎士」 はままさのり著(ソノラマ文庫)
  ◆ムック
   「青の騎士ベルゼルガ物語 『BLUE KNIGHT』」 (ホビージャパン/絶版)
   「青の騎士ベルゼルガ物語 『BLUE KNIGHTU IN THREE DIMENSIONAL WORLD』」 (ホビージャパン/絶版)
  ◆ゲーム
   「装甲騎兵ボトムズ外伝 青の騎士ベルゼルガ物語」 (タカラ/近日発売予定)


※ 「青の騎士ベルゼルガ物語」の関連商品は大半が絶版になっていましたが、先日ゲームソフトの発売に合わせて(?)ソノラマ文庫の小説が再販されました。カバーイラストは新しくなっていますが、本文のイラストは当時のものをそのまま使っています。未入手の方は是非この機会に購入してみてはいかがでしょうか。ボトムズ関連商品というのはある日突然発売されあっというまに姿を消すというのが常套ですから様子見している余裕はないかもしれません。