OVA「ザ・ラストレッドショルダー」
崩壊したウドを脱出したキリコはバカラシティを訪れた。そこには、従軍時代即ちレッドショルダー所属当時の同僚グレゴルー、バイマン、ムーザがいた。彼らは、かつて自分たちを死に追いやろうとし、心と身体に癒すことの出来ない傷を負わせたレッドショルダーの最高責任者ヨラン・ペールゼンに復讐を果たすため、密かに準備を整えていたのだ。その復讐にキリコも同行することにした。復讐のためではない、ヨラン・ペールゼンがPSを奪った謎の組織と繋がりがあるとにらんでの事だった。ウドで別れたフィアナと再会するには、そんな可能性に賭けるしかなかったのである。
4人は隠れ家にしている工場で、かつてレッドショルダーで使用したタイプのカスタムATを再生させる。レッドショルダーで使用されていたスコープドッグ・ターボカスタムだ。使用した部品の精度は当てにならないが、機体の性能自体はフルチューニングで目一杯まで向上させている。複雑な想いを込めてカスタムATをトレーラーに載せ、朝日の中を出発するキリコたち。目的地はデライダ高地、現在は放棄されたかつての軍事基地跡にペールゼンは潜伏しているらしいのだ。
その頃、彼らの目指すデライダ高地の地下秘密基地では新たなるPSが誕生していた。名はイプシロン、PS第1号のプロトワン(フィアナ)に続く第2のパーフェクトソルジャーである。目覚めたばかりの彼に、人間としての価値観や情緒を教えるプロトワン。そんな彼らを見守る秘密結社の人間の中に、グレゴルーらが復讐の標的としているヨラン・ペールゼンもいた。
イプシロンに人間としての教育を施すことを喜びながらも、何か割り切れない疑問に捕らわれたプロトワンは、ペールゼンにイプシロンのことについて問い掛ける。そんなプロトワンにペールゼンは意外なことを話し始める。自らが創造しようとした最強の戦闘集団という理想、その具現であったキリコとの確執、そして理想の挫折がPSという人間兵器に辿り着いたことを。そして最終的にイプシロンでキリコを倒すことが自分の野望の達成であることを明かす。
目的地に到着し、地下基地内部に突入するキリコら4人のAT。次々と守備隊として配置されたレッドショルダー残党の新型ATを撃破し、基地の奥に侵入するが、彼らの前に突如一際鮮やかな動きを見せるATが姿を現す。戦闘を目撃してPSとしての本能に目覚めたイプシロンの搭乗するATである。
ムーザ、グレゴルーと次々と撃破され、追い詰められながら敵がPSであることを察するキリコ。だが、それがフィアナでなく、第2のPSイプシロンであることはもちろん知らない。ついにATを大破され、機体の外に投げ出されるキリコ。とどめを刺すべく、ATを降りてキリコに近づくイプシロン。彼を止めようと駆け寄るフィアナと、イプシロンにとどめを刺させようと叱咤するペールゼン。フィアナはイプシロンの戦意を喪失させるため、強引に彼の唇を奪う。朦朧とした意識の中でキリコが見たものは、見知らぬ男に口づけするフィアナの姿だった。
遺伝的に生存を保証された特異固体キリコ、彼の能力の危険性を見抜き、自らキリコを葬るため無防備のキリコに銃を向けるペールゼン。だが、寸前でペールゼンの身体を機銃が打ち抜く。満身創痍のバイマンのATである。恨みを果たしたバイマンもそこで息絶える。
自爆装置の作動した地下基地から脱出すべく、フィアナはイプシロンを伴い、ボローらと共にヘリに乗り込む。フィアナにとって、キリコとイプシロンを引き離すにはそれしかなかったのだ。追いすがるキリコが見たのは上昇するヘリの窓からキリコを見るフィアナの姿のみである。キリコが脱出すると間もなくデライダ高地は大爆発した。
追い求めたフィアナを目撃しながら、とうとう彼女を取り返すことが出来なかったキリコ。無人の荒野を一人歩き出す、次なる巡礼地クメンを目指して。
[コメント]
この「ザ・ラストレッドショルダー」はクメン編最初のエピソードでのキリコの失言(?)に端を発しています。ウドでフィアナと生き別れたキリコなのに、3か月後のクメンに来た途端「俺がここに来たのは全てを忘れるためだ」って言ってしまったアレ。まさかTVシリーズ制作当時にこのデライダ高地での事件を想定していたとは考えられませんから、製作者はそんな矛盾の辻褄合わせまでやってくれるのだから頭が下がります。
主人公のたった一言を基に制作されたOVA、でもこの作品って当時何かの賞を貰ったんですよね。偉いもんだ。
副題に「ザ・ラストレッドショルダー」と付けながら、自分たちのATの肩を赤く塗らないのがミソ。バイマンが「こいつの肩は赤く塗らねぇのかい」とふざけるが、他の3人はムッとする。グレゴルーが「貴様、塗りたいのか」とやり返すあたりも無茶苦茶かっこよかったです。ここらへんがキリコやグレゴルー、そして製作者のこだわりなんでしょう。
暑苦しいバカラの四人衆の場面から一転して、デライダ高地地下の花園。見目麗しい美男美女が楽園風の温室の中を手に手を取って歩くというパラダイスを彷彿させる場面が描かれるのですが、なんか凄いギャップでした。でも、どうしてもお花畑の方には馴染めないなぁ。LDではうまくキャプチャーが設定されてるから暑苦しい場面のみの編集で見ることも可なのが嬉しいです。
漆黒のATブラッドサッカーでゾロゾロと出てくるレッドショルダーの残党は弱くて悲しかったなぁ。せっかく次期主力候補のATを使ってるのに、単なるザコ集団に落ちぶれてしまって・・・・。新型に乗り慣れてなかったのか、強者はサンサで全部消費されてしまったのか、或いは全員終戦後に新規採用した兵員なのか(^_^;)。吸血部隊は断片的な情報の中でこそ魅力を発する、このビデオを見て私の中のレッドショルダー神話の一部は崩壊しました。
このOVAでも散々な目にあうキリコ氏。殆ど活躍する間もなくボスキャラにこてんぱんにやられ、惚れた女には目の前で他の男とキスしてるとこを見せつけられ、 駄目押しに核爆発に巻き込まれ(小説版を読むと、キリコはこのとき思いっきり被爆したはずなのに平然としてるのだ!)ボロボロ。なんてカタルシスのないビデオアニメなんだ、と当時唖然としました。だからこそ最後の最後にココナらがクメンで待っているというシーンを挿入したんですね。すごいホッとしたというか、ジーンと来ました。製作者の良心なんでしょうか。このOVAを見るとそのままクメン編のLDを一気観したくなります。