(改正の目的) ■自然公園の役割は、動植物と人間の共生である。しかし、共生がうまくいかないときもあり、今回の法改正では、このような問題を少しでも解決あるいは緩和できればと思う。
今までは、自然の風景地の保護と、人間の健康のためにその利用の増進を図ることというのが自然公園法の目的であった。今回の改正では、生物の多様性の確保にも寄与するということが加わった。しかし、第3条の国等の責務のところにはこの生物多様性という言葉があるが、ほかのところには目的以外には生物多様性の言葉が入っていない。目的に明記されたことは評価できるが、本当にこれだけで生物多様性を担保できるのか。
環境大臣に伺うが、この生物の多様性の確保に寄与をすることを追加することによって、法律の概念や役割はどのように変わるのか。(ツルネンマルテイ)
○懸念も理解できるが、目的の中に生物多様性の項を加えたわけだから、法律全体にそれが係ってくるという意味で、実際には大幅に強化されたと考えている。
具体的な施策として、国立・国定公園における生物多様性の確保を推進するために、一つは海域の保全施策の拡充、それからシカの食害等による被害を受けた生態系の維持回復等のための所要の規定も設けている。これにより、我が国の生物多様性保全の屋台骨である国立公園や自然環境保全地域における生物多様性の確保に関する施策を広く国民の理解と協力を得てより一層積極的に図ることができると考えている。(斉藤鉄夫環境大臣)
■目的について大臣にもう一つ質問するが、この目的にはもう一つの追加すべき言葉があると考えている。法律の中には、「その利用の増進を図る」とあるが、むやみに利用を増進するだけでは良くない。適正でない利用もあり得るし、最近特に増えている。例えば過剰利用ということもあるが、利用に対するルールがはっきりしていない。だから「適正な利用」というように、「適正な」という言葉を目的の中に加えるべきだと思う。(ツルネンマルテイ)
○問題意識はよく理解できる。多少形式的な答弁になるが、第1条における利用とは、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的として行う利用と書いてあるので、この利用の中に適正利用という意味が入っていると考える。
しかし、国民の自然志向の変化により、人為的影響を従来余り受けていなかった地域などを訪れる利用者が増加しており、生物多様性の保全上の支障が生じている事例があることはよく分かっている。このため、今回の改正では、陸域に加え、海域においても利用調整地区を指定することができようにし、一定のルールとコントロールの下で適正な公園利用を推進することとしている。また、国立公園内では従来から法の目的に即した利用の推進の観点から公園利用者に対する普及啓発や指導に努めてきたが、今後も利用調整地区制度や適切な情報提供、普及啓発に関する施策を総合的に講じ、過剰利用やマナー違反による生態系への負荷を回避・低減したいと思っている。(斉藤鉄夫環境大臣)
(生態系の維持・回復)
■第2条7項に、生態系の維持又は回復を図ることが新しく加えられた。自然公園地域には本来そこに生息していない動植物も持ち込まれ、生態系のバランスが崩れ、絶滅のおそれのある動植物もあるが、具体的にどうやって回復を図るのか。(ツルネンマルテイ)
○今回の改正では、生態系維持回復事業を創設し、生態系が完全に損なわれる前に、予防的に、当該生態系の維持又は回復を図るための取組を積極的に推進しようとしている。
法案の第2条7項として生態系維持回復事業の定義を追加しているが、具体的には、外来生物の侵入を防ぐための防護柵の設置や、個体数の調整など生態系に被害を及ぼす動植物の防除のための事業、さらに植生の維持・復元のための事業、生態系の状況を把握するために必要な調査・モニタリングなどを予定している。(黒田大三郎政府参考人)
■琵琶湖の竹生島がカワウだけの島にならないためには、一体どうしたらいいか。視察のときに聞いた話では、処分のためには猟銃で撃って殺し、その数を減らすということだった。もちろんこれもやむを得ないかもしれないが、人間とカワウの共生のため、何かほかの対策が考えられないのか。(ツルネンマルテイ)
○竹生島のカワウだが、昨年秋の滋賀県による調査では、前年の約2倍の6万羽にまで増加している。これは一時捕獲を中止したことも一つの背景にあるようだが、糞による被害などによって樹木が枯れるといった深刻な状況にある。
カワウは非常に長距離を移動する。府県を越えて広域に移動する鳥獣については、広域的な保護管理指針を作り、対象地域における生息状況の調査や被害対策を関係機関が連携して行うことが大事である。滋賀県を含む中部近畿地区においては、平成18年5月に環境省が中心となって関係府県、それから農林水産省、国土交通省の参画も得て、中部近畿カワウ広域協議会を設置している。ここで広域保護管理指針を作成するなど、広域的な保護管理の取組を進めている。さらに環境省では効果的な保護管理を推進していくために、カワウを平成19年に狩猟鳥獣にした。また、滋賀県の協力も得て、竹生島のカワウの広域的な移動に関する調査研究を行っている。今後、関係府県等と連携を図りながらデータの集約、分析という一番基礎のところから実施し、効果的な保護管理が進められるよう努力していきたい。(黒田大三郎政府参考人)
■北海道の知床半島では、クマの存在のせいで、ガイドなしでは安心してハイキングや山歩きができない。クマの数やクマによる人間への被害の状況はどうなっているのか。そして、ガイドなしでも安全なハイキングコースは用意されているのか。(ツルネンマルテイ)
○知床のヒグマの生息数だが、雄は非常に広く移動するので、雌の生息数の推計が現在なされている。少なくとも200頭の雌グマがいるという調査報告があり、なおかつ増加傾向にあると言われている。過去、昭和60年にハンター1名がクマの被害に遭って死亡したが、幸いなことに、それ以降、人身事故は知床では起きていない。
知床半島のハイキングコースは、クマの生息地のコースなので、なかなか安全というわけにはいかない。クマの被害を防止するために、注意事項を記載した利用心得などを配布し、平成17年度から電気柵を併設した高架木道を造り、一般の利用者がクマに遭遇することがなく安全に利用できるように努めている。(黒田大三郎政府参考人)
■シカの被害を食い止めるためには何ができるか。鳥獣保護法や農林業被害関連の法律などとの関連はどうなのか。参考資料を読むと、29の国立公園のうちの19の公園で被害が深刻になっているが、この法律で何か積極的な対策ができるのか。(ツルネンマルテイ)
○国立公園の中でもシカの食害は深刻化している。このため、今回の改正では生態系維持回復事業を創設し、事業が円滑に進むように許可手続などの簡素化を仕組んでいる。
山岳地域でも季節によってシカが大きく移動するので、国立公園の中の対策だけではなく、周辺地域におけるシカ対策との連携が非常に大事だと考えており、具体的には鳥獣の被害特措法に基づく被害防止対策や鳥獣保護法に基づきます特定鳥獣保護管理計画など、他の鳥獣被害対策との適切な連携が重要であると認識している。(黒田大三郎政府参考人)
(民間団体等の意見の反映)
■公園計画や公園事業について、審議会の意見を聴くことにはなっている。去年成立した生物多様性基本法では、例えば21条2項で、民間団体の意見を聴くことがはっきり書かれているが、ここでは具体的には民間団体のことは出ていない。審議会の意見を聴くとき、民間団体の意見をどのような形で反映するのか。(ツルネンマルテイ)
○環境省では、これまでも国立公園等の指定、公園計画の策定、実施のすべてにおいてパブリックコメントを募り、そこで地域住民やNGOの多くの意見を聴いている。そして、その前段階では、公園計画の策定等に先立って、地域の自然保護団体、森林組合、漁業協同組合などの関係団体との意見交換及び地元説明会を積極的に実施しており、ここに民意を反映させている。今後も幅広く国民の意見を聴いていきたい。(吉野正芳環境副大臣)
(施設の充実)
■自然公園内のビジターセンターの役割を評価しているが、施設数や利用者数などの状況はどうなっているのか。(ツルネンマルテイ)
○国立公園の中には、現在環境省直轄のビジターセンターが全国で45か所ある。利用者数は、年間約250万人で、過去3年間はほぼ横ばい状態である。(黒田大三郎政府参考人)
■法案の第2条5項では、「施設」が「事業」という言葉に変わっている。つまり、ハード以外の計画も可能になった。具体的には、その事業の中に新たに何が含まれるのか。例えばアクティブ・レンジャーの活動はもっと増やす予定なのか。(ツルネンマルテイ)
○今回の改正では、施設を事業という言葉に置き換えることで、公園計画の下に、施設に関する事業だけではなくて、生態系維持回復事業も位置付けることにしようと考えている。
アクティブ・レンジャーについては、体制の整備であるので、公園計画に基づくものとは別ではあるが、しっかり整えていきたい。今全国で80名のアクティブ・レンジャーがいるが、これを環境省職員のレンジャーと一緒にして、現場の体制、現場の管理がしっかりいくような体制の充実強化にも努めていきたい。(黒田大三郎政府参考人)
(海域における保全施策の充実)
■海域の範囲が今度広がるが、どの程度まで広げる予定か。例えば、極端に言えば、排他的経済水域まで広がるのか。また、深海はどういうことになるのか。例えば海底の開発行為が出てきたら、この法律は新たにその歯止めになるのか。(ツルネンマルテイ)
○排他的経済水域については、国連海洋法条約や排他的経済水域及び大陸棚に関する法律に基づくと、我が国の海洋環境に関する法令の適用は可能であると解釈され。しかし、排他的経済水域のように沖合の海域や深海については、海洋の生物多様性等に関する情報が極めて少ないのが実態で、実際の法令適用はなかなか難しいと感じている。いずれにしても、今後、これらの情報の収集に努めていきたいと思っている。(古川禎久大臣政務官)
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