日本の森とフィンランドの森と私
 こんにちは。私は、たいへん尊敬しているツルネン・マルテイさんと同じフィンランドで生まれました。‘70年代の半ばからここ日本で生活をしています。
 数年前に、ふるさとの父は日本に住んでいる私のところに遊びに来ました。来る前に、父に日本のどんなところを見たいかと聞いたら、彼は「もちろん森です!」と答えたのです。
 なぜ、父は森にそんなにこだわったのでしょう。
 私の故郷は中部フィンランド。湖がもっとも多いところ。森はどこよりも深い地方。私はそんな景色の中の農家生まれ。家族は農林業で生計を立てました。
 小さいときの遊び場であった森、大人になってからの慰めの場になってくれた森。そして、豊かな幸を私たちに恵んでくれた森とともに育ってきました。
 森は私たちフィンランド人にとって親であり、友人であり、聖なる場所でもあります。森の中で私たちは一番ナチュラルでいられるといっても間違いないでしょう。言うまでもなく、フィンランドの文化を森なしで説明できません。
 ここ30年、毎日の生活を都会で過ごしている私ですが決して森の恩恵を忘れていません。森はいまだに私の慰めになっています。今も私を守ってくれるような気がします。目を閉じればいつでも空想の中で森へ行けるのです! そして一番いいことは、ここ日本にも美しい森がたくさんあることだ!
 今住んでいるところは東京の郊外ですが近くには巨大な公園があり、また電車に30分ほど乗れば、最も素晴らしい森林に囲まれている山があります。都会の生活で疲れた魂を清めるにも、ハイキングにもぴったりの場所です。
 そうそう、この国に来て何よりもうれしい発見は、日本は北欧に負けない森林国家であることでした。主に工業国家として世界で知られている日本ですが、森林国家日本のことは残念ながらあまり外国に届いていないようです。おそらく多くの日本人もそれにまだ気づいていないでしょう。いつも山が多い日本だといわれている中で、この国の面積の七割は森林であることに本当にびっくりしました。かえって「森の国フィンランド」に比べても多いかもしれません。ヨーロッパでもっとも森林に恵まれた国フィンランドの面積の三分の二は「グリーンゴールド=森林」に囲まれているというデータがあります。
 ふるさとの父が見た日本の森は五日市の山奥でした。ある林業農家のお世話になって、山の斜面一面に広がっている杉林を見たのです。父は日本に二週間ほど滞在しました。他にもいろいろなところに連れて行きましたが、彼はやはり一番喜んだのは、この「森への訪問」でした。そしてすっかりと日本の森のファンになり、今もなお故郷の人たちに「日本の森はすばらしいものだ! 北欧に負けないよ!」と自慢そうに話しています。
 日本の森を見て喜んだと同時に、父も私も日本の森へのアクセスしにくさに気がつきました。遠くから眺めるには問題はありませんが、実際に森林の中に入るのは一苦労だと実感しました。さらにあの斜面の木を世話し、間伐し、伐採して運ぶと大きな費用がかかると分かりました。冬が寒くても、雪が降っても、山のないフィンランドで林業をやるのは簡単だと教えられました。日本産の木材は値段が高いこと、そして日本はたくさんのより安い木材や紙を外国から輸入する理由は現実的になりました。
 私は、父のおかげで日本の森林が以前より好きになりました。と同時に、心配するようにもなりました。村の若者は農林業の重労働を好まず町にしごとを求めるようになったことや、残った人々の高齢化によって森林は荒れてしまうことを聞かされました。日本の山村はどうなりますか。そして日本のグリーンゴールドはどうなりますか。たいへんだろうが利用しなければもったいない、と父が言っているような気がします。なにしろ、彼は、日本は雨量が多くて、あたたかく気候が穏やかだから木の生長が速いことがうらやましく、うらやましくおもっているようです。

立川市在住 橋本 ライヤ