
<第2回以降の講義レジュメ>
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第1回 地球にやさしい政策とは
課題:あなたにとって「地球にやさしい」とはどのようなことですか。ポストイットに書いてみてください
1.1 地球へのやさしいまちとは
「地球にやさしいまち」とは、最近はやりの言葉でいえば「エコロジカルなまち」「持続的発展が可能な都市」ということになるでしょう。
(1)エコロジカルとは
「エコロジカル(生態学的な)」とは、もともと生物の食物連鎖による共存関係、あるいはこれらを媒介とした窒素、炭素などの物質循環のしくみを指す言葉です。これらを都市と対比させるために、あえて自然生態系ということもあります。この依存関係、あるいは循環システムの概念を都市空間にあてはめたのが、都市空間にあける「エコロジカル」の定義です。
すなわち、都市活動と自然とが有機的な結び付きをなしていること、具体的には都市活動から発生する環境負荷が自然の浄化能力、復元能力によって緩和されるなどして、人間・人間以外の生物(自然)に対し、悪影響を及ぼさない状態を指します。別のいいかたをすれば都市活動が環境容量の範囲内にある状態を指しているといえます。しかしこれよりももっとゆるい定義として、最近では次のような場合によく使われます(森口,1993)。
・都市活動に伴う資源の流れを循環型にすること(都市生態系の健全化)
・都市空間のなかに自然を取り入れること(自然との共生)
・環境配慮した生活行動や考え方をとること(エコロジカル・ライフスタイル)
このようなまちのことを、「エコタウン」「エコシティ」「エコポリス」などといっています。
(2)持続可能な発展とは
「持続可能な発展(Sustainable Development)」という言葉が、最近よく使われています。そのなかには経済、文化(コミュニティ)、環境の3つの持続性が含まれます。経済の持続性は一言で言えば豊かな暮らしが続けられるということです。文化(コミュニティ)の持続性とは平等で公平な社会が持続するということです。環境の持続性は先の「エコロジカル」という言葉と類似の意味で使われます。おおむね3つぐらいの意味で使われているようです(森田ほか,1992)。
第1は、生物の多様性の保護、環境容量の制約、天然資源の保全といった自然環境の制約下で人間活動を営んでいくという定義です。具体的には自然や資源の利用および汚染物質や廃棄物の排出(これを環境負荷といいます)を、自然の浄化能力や範囲内で行うこと、いわゆる「他生物や自然にツケをまわさない」ことを指します。
第2は、現世代の発展だけでなく、次世代の発展も保証するという、世代間の公平性に着目した定義です。限られた資源を現世代だけで使いきってしまうのではなく後世に残し、逆に廃棄物や汚染物質の処理を後世に託すことをしない、いわゆる「次世代にツケをまわさない」ことを指します。
第3は、われわれ(例えば日本人・埼玉県人)の発展だけでなく、他の国・地域の発展も保証するという、社会的・地域的公平性に着目した定義です。限られた資源を先進国だけで使うのではなくまた他の国に汚染物質を押し付けないということ、さらには発展途上国に絶対的貧困から脱却する権利を保証しながら国際的協調のもとに環境負荷を低減していくことを指します。いわゆる「他地域にツケをまわさない」ことを指します。
(3)「エコロジー」対「アメニティ」
「地球にやさしい」まちとは、いままで述べたような条件を満たすまちといえます。ところが、前回述べた「人間にやさしいまち」は、しばしば地球にとってはやさしくないまちになってしまいます。
例えば、道路を増やせばそれだけ便利になるけれども、自動車が増え一層ガソリンが消費されたり、道路建設によって野生生物の生息地が破壊されるかもしれません。下水道を導入すればその場の水はきれいになるけれども、浄化の際に大量のエネルギーを消費するし、後に発生する大量の汚泥の処分が、また環境に影響を与えるかもしれません。建物や橋などの夜間のライトアップは見ためはとてもきれいだけれど、そのために大量の電力を使っていることは、誰でもわかります。
このように、地球にやさしいまちづくりという観点からみれば、いままで何気なく進めてきたことが、自分たち(の地域)だけがアメニティを享受することを優先しており、他の地域・国・生物にはそのしわ寄せがいっていることを認識し、環境とのバランスに配慮しながら、まちづくりを展開していくことが必要なのです。例えば、水道の需要が10年後に3割増えると予測されるとき、3割増に見合うだけの水源の確保や供給施設の建設を考えるまえに、一度使った水の再利用を促進するなどして、まずこれ以上需要を増やさない努力をすべきです。そして、何よりも環境優先の価値観と生活様式を持った市民やコミュニティを育てていくことが重要なのです。
1.2 自治体にとって地球環境政策とは何か
最近自治体(都道府県や市町村)で、「地球環境政策課」「地球環境課」という名前のセクションがみられるようになりました。これらのセクションでは地球全体の温暖化防止対策やオゾン層保護対策を担当しているわけではありません。国際協力を除けば、政策の対象はあくまで自分の地域です。地球環境へ悪い影響をかけないように、自分の地域を作りかえる政策を実行しているのがこれらのセクションです。すなわち「地球にやさしいまちをつくる政策」が地球環境政策といえます。
具体的にはエネルギー消費の抑制、フロンの回収・破壊など、地球温暖化防止、オゾン層保護、森林破壊、生物多様性確保などに貢献する政策がその範疇にはいってきます。しかし自治体レベルでできることは限られており、実際には地球環境問題のパンフレットを作ったり、環境家計簿をつけてもらったり、講演会を開いたりといった普及啓発だけしかできていないところが大半で、エネルギー消費の少ない構造になるようまちを作り変えるような事業をやっている自治体は少ないのが現状です。
1.3 地球環境政策の立案プロセスと主体
このような政策はいったい誰が作るのでしょうか。通常は、原案を行政職員が作成し、首長(都道府県や市町村の長)が最終決定します。政策や事業は予算として議会に提出され、そこで議会のチェックを受けます。議員はその政策について質問し、政策が納得できなければ修正要求を出します(与党が多数のところが多いので、このようなことはめったにありません)。
一方自治体には審議会ちう組織があります。審議会は学識経験者、団体代表(商工団体、自治会、婦人団体、労働団体などの役員)、議員などから構成されます。行政は重要な政策の方向について審議会に諮問し、審議会は専門的見地から検討し、答申書を首長に提出します。しかし実際は事務局である行政の原案を作り、多少それに意見を言うだけになっている場合が多いです。一方、原案作成の手助け役としてコンサルタントがいます。コンサルタントは行政から委託を受け、審議会用の資料を作ったり、最終報告書を作ったりします。コンサルタントは本来は専門的な技能を持って行政にアドバイスするものですが、単に行政の手足として使われることも多くなっています。
市民や市民団体、事業者はどうでしょうか。こういった政策決定の場からはまったく無縁であることが多いです。その政策が決まるまで全く知らされない場合が多いです。行政は住民の意見を聞いて決めたといっている場合でも、お座なりのアンケートや住民説明会でほとんどアリバイ作りになっているケースが依然として多くなっています。市民団体は、このような行政に対して反発し、情報公開を要求したり、市民運動を起こすというのがこれまでのパターンでした。また一般市民も含め、何でも行政の責任にする傾向にありました。行政のほうも市民団体に対するアレルギーが強く、よい提案であっても自分たちのメンツを守るために受け入れないということがよくありました。マスコミが政策プロセスについて取材し、報道して大きな問題になった例もあります。
しかしこうした傾向が一部の自治体では変わりつつあり、政策決定に市民が関わるようになりつつあります。
1.4 この授業の目的
この授業では、主として地球環境保全に貢献するための主として地域レベルの政策の考え方とその内容について、実例を交えた解説を行います。これを通し、今まさに行政の現場で直面している問題と、変わりつつある政策決定のしくみについて理解することを目的とします。
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