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○出石神社(いずしじんじゃ) 縁起
八十八年の秋七月の己酉の朔戊午に、公家衆に詔して、 「新羅の王子
天日槍(あめのひほこ)の持ってきた宝物が、但馬にあると聞いている。私は、その宝物を見たいと思う。」 と仰せられた。 天日槍の曾孫清彦は、使者から勅を受けたまわって、数々の美しい玉などをみずから献上した。 ただし、出石という名の小刀一つだけは、たやすく献上できないと考えて、袍の中に隠して自分が帯びていた。 天皇は、まだそのことをご存知無いまま、清彦を御歓待になろうと、お召しになって御所で御酒を賜った。 そのとき、小刀が袍の中から出てしまった。 天皇はそれを御覧になって、親しく清彦にお尋ねになって、 「おまえの袍の中の小刀はどういうものであるか」 と仰せられた。ここに至って清彦は、もはや隠し通せないと思い知り、 「献上いたしました神宝の類であります」 と申し上げた。そこで天皇は、 「その小刀を、どうして他の神宝と、離すことができようか」 と仰せられた。 そこで清彦は小刀も献上し、神宝はすべて宝の倉に収められた。 ところが後に倉を開いてみると、その小刀がひとりでに無くなっていた。 そこで天皇は、人を遣って清彦に、 「おまえが献上した小刀が、急に無くなってしまった。あるいはおまえのところへ戻ったのではあるまいか」 とお尋ねになったところ、清彦は 「昨晩、小刀は自ずから私の家に来たのですが、今朝、また無くなってしまいました」 とお答えした。 天皇は恐れ慎まれて、もはやその小刀をお探しにはならなかった。 それから後、出石の小刀は淡路島に現れ、島の人は神だと思って、その小刀のため祠を立てた。 これは今でも祀られている。
日本書紀巻第六より |