02年8月号(No.259)

人権を守る運動を強めよう
―――第1回県委員会で当面の活動方針決める
 
県連は8月3、4日、嵐山町の国立女性会館で第一回県委員会をひらいて、「02年人権と福祉を充実させる国民運動」を中心とする、夏から年末にかけての活動方針を決めました。
 県委員会は、活動報告を承認したあと、国民運動方針、組織・財政方針、国民運動分担金がそれぞれ提案され、2日目の午前にかけて討論がおこなわれました。
 40年以上の歴史を持つ「国民運動」は、一昨年から名称を「人権と福祉を充実させる国民運動」として取り組まれています。3月の全解連定期大会で、今年の国民運動の柱を、(1)政府の21世紀「人権」戦略とたたかい、真の人権の擁護・伸長、教育と福祉の充実を求める、(2)自治体での同和特別対策の終結、同和教育の廃止を実現させる、(3)不公正・乱脈な同和行政に終止符を打つ、(4)諸要求の結集と自治体・政府交渉に取り組む、(5)「基本法・条例・宣言」反対のたたかいを進める、としています。
 県委員会では、医療費の負担増・医療の抑制を強制する医療改悪法の延長国会での強行採決・成立、日本を「戦争をする国」に変えようとする有事関連法案と「人権擁護」の名で人権を侵す人権擁護法案や個人情報保護法案が秋の臨時国会に持ち越されたことなど、今日の政治状況を人権の視点からとらえ、人権の擁護・伸長をめざす根幹の取り組みとしてひきつづき運動をしていく必要を確認。そして、3月の特別法終了後の県・市町村の同和行政・同和教育行政の状況、「人権政策の確立」と称して同和行政・同和教育の継続交渉をおこなっている「解同」の動きなど、政治と部落問題をめぐる新たな状況もふまえて、県連としての国民運動方針を決めました。

「住民の会」で同和行政・同和教育の終結を

 今年の国民運動の重点課題を、(1)憲法が保障する人権、暮らし、福祉、教育の充実、(2)「02年・部落問題アピール」の普及と、同和行政・同和教育の終結を求める住民運動、(3)「人権教育・啓発」の特別体制づくり反対、(4)組織の強化と発展的転換の探究、とし、それぞれ具体的な取り組み方針を決めました。
 この内、同和行政・教育の終結を求める運動は、地方行政の民主主義の課題として、賛同する人々による「住民の会」を組織し、「アピール」の内容を補足する資料パンフの作成や必要に応じて情報公開制度の活用も図っていくことにしています。 県委員会は、国民運動方針を全員一致で確認し、実践にふみ出すことを決めました。
 県委員会では、東日本地方教議会議長の千本美登群馬県連委員長を講師に、「部落解放運動の発展的転換とは」を学習しました。
 千本議長は、同対審答申以前の部落の非人間的な生活実態をあげ、年表で答申以後の経過の解説も加えつつ、答申が示した「社会問題としての部落問題」は客観的に見て今日解決していることを説明。そして発展的転換を提起するに至る全解連運動の経過と、転換にあたって解決しなければならない「解同」問題などについて、群馬県の経験もまじえながら分りやすく話しました。
 県委員会二日目の討論でも、「社会問題としての部落問題は解決した」の認識と、発展的転換と「解同」問題克服との関係の問題に議論が集中し、率直な疑問や意見が出し合われ、引き続きさまざまな場で討論を深めていくことを確認しました。

「同和行政の基本方針」作成を約束
―――おしつけの教職員対象の人権教育研究集会開催も
――――――
「解同」との交渉で市町村

「解同」埼玉県連は7〜8月、同和行政の継続を求めて郡ごとの市町村交渉をおこないました。
 「解同」は交渉の中で、同和行政施策の継続、同和行政推進のための基本方針の作成、人権教育研究集会の開催、人権に関する審議会・協議会の中に同和問題専門委員会や部会の設置などを要求。これに対して、行政はいずれも年度内に同和行政の基本方針を作成する、と回答。教職員を対象とする人権教育研究集会の開催についても、実行委員会を作って開催すると回答しています。
 同和特別法が終了して、なお「同和行政の基本方針」を新たに作ることを約束する行政。いまなぜ「基本方針」か、同和行政の目的と性格・役割は何だったか、行政の姿勢がきびしく問われます。さらに、「同和教育抜きの人権教育はありえない」と主張する「解同」の要求にもとづいておこなう「研究集会」に、行政が教職員を動員するのも不当です。「解同」主導・行政追随をごまかすために「実行委員会」方式でやるという手のこんだやり方ですが、一民間団体の要求を鵜のみにして簡単に「研究集会」のお膳立てをする、こんなことがまかり通れば、教育の自主性・主体性がおかされかねません。早々と十月十二日開催を行政交渉で約束した児玉郡の学校現場では、「8月に人権教育実践報告会をやったばかりなのに、なぜ」という疑問や、「運動団体と行政の約束だけで、なぜ教員が動員させられるのか」との批判の声が上がっています。

「夜明け」の長野と対照的 
 ちなみに同和行政を担当していた総務省地対室長は、2年前の10月に「同和地区をとりまく状況が大きく変化した状況でなお特別対策を継続していくことが問題の解決に必ずしも有効でない」として法の終了とともに特別対策を終了することを説明し、「なお残る差別の感情、意識を行政による啓発だけで解決しようとすること、またお金をかければかける程効果があると考えるのは正しくない」(『アイユ』01年1月号)と述べています。また、いま新たな注目をあびている田中康夫長野県知事は、今年6月、「解同」長野県連役員との知事室での意見交換で、「差別のない社会をめざす志は同じだが、同和対策が政策の軸ではない。(他の差別問題と)並列といえる」と述べ、「解同」県連書記長が「話がかみあわず残念」と語ったと報道されています(6月5日付『信濃毎日』)が、こうした姿勢こそが世の常識に合ったものです。

人権と民主主義をたしかなものに
―――――群馬県で第33回東日本部落問題研究集会ひらく

 「人権と民主主義をたしかなものに」をテーマに、第33回東日本部落問題研究集会が8月24、5の両日、群馬県でひらかれ、東日本各地から380人が参加しました。
 研究集会初日、前橋市の群馬県社会福祉総合センターでの全体会は、青柳健一実行委員長(群馬県労働組合会議議長)の主催者あいさつ、群馬県知事、前橋市長らの来賓あいさつ(いずれも代読)につづいて、女屋定俊事務局長が「基調報告」をおこないました。
 「基調報告」は、集会のテーマが今回初めて「部落問題」に直接関連する用語でなくなったことが示すように、長年の取り組みの成果として部落問題をめぐる状況が大きく変化してきたこと、自治体では特別法の終了で一般対策への移行を基本としながらも、「心理的差別」を理由に「同和」を「人権」に名称変更しながら同和教育の継続が図られている実情などを示し、有事法案や人権擁護法案のもつ人権侵害の動きにもふれて、本当の人権や民主主義とは何かを論議し、実践を交流するよう呼びかけました。

谺さんが人権回復のたたかいを報告

ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会会長代理の谺(こだま)雄二氏が、「光を求めて―ハンセン病裁判、歴史・判決・交渉、いま何をめざすのか」を特別報告。
谺氏は、国の政策の中で、ハンセン病患者が人間の尊厳を奪われてきた悲惨な状況と人権回復のたたかい、そして現在の状況についてせつせつと語りました。ハンセン病患者の人権回復をめざすたたかいが、水平社運動にも触発され水平社創立十年後の一九三二(昭和七)年(患者を終生隔離する「らい予防法」成立の翌年)に全国プロレタリアらい者同盟が大阪で準備され、結成寸前に追放処分を受けたことを紹介、戦後この流れを引き継いで、一九四七年の人権闘争―特別病室(重監房)の廃止運動や特効薬プロミンの獲得闘争、「らい予防法」廃止の長いたたかいについて語り、国を断罪した熊本地裁判決(昨年五月)確定への支援に感謝を述べました。谺氏は、ハンセン病には患者の「家族会」はないが、「支援する会」が「家族」であり、群馬にも六百人の「新しい家族」があると語って、国の明確な謝罪と元患者の名誉回復、社会復帰者と在園者の生活保障、真相の究明など、新たなたたかいへの支援を訴えました。

連動し発展する社会
―――――吉村弁護士が記念講演
 記念講演「人権と部落問題」の中で、ハンセン病国賠訴訟にも弁護士として取り組んできた吉村駿一氏(国民融合をめざす群馬県会議代表委員)は、身近で人権を侵害され人権回復のたたかいがおこなわれている事実を、民主運動に取り組んできた人々も気づかなかったことにふれて、謝罪の言葉を述べるとともに、事実が知らされていない中では同じようなことがあり得るとして、事実を知ることができるようにさせることと、真実を知る国民の努力について語りました。
 相馬が原の村道を進駐軍が行進している幼い頃に見た光景が私の「原風景」、との印象深い言葉で講演をはじめた吉村弁護士は、一つひとつの事柄はバラバラに存在せず連動して存在し発展する、として、天皇主権の明治憲法下での日本の社会と部落問題、天皇の戦争責任免罪やレッドパージをともなった戦後改革の問題、沖縄問題、日本国憲法と部落問題について語り、さらに今日の部落解放運動が地域社会の人権と自治、民主主義の運動へ発展的転換を図ろうとしている状況についてふれて、人権の後進牲が日本の高度経済成長を支え、それが今日も過労死、リストラ、自殺や自己破産の増加、老後不安などを生み、安心して暮らせる社会でなくなっているとして、平和・人権・地域社会の民主主義を一体のものとしてみんなで考えることの大切さを語り、「明日を生きた者はだれもいない、世界中のみんなが、人類の最前線をいま生きているかけがえのない存在」と述べて参加者を励ましました。

歴史、行政、教育など四分科会で報告と討論
   
 研究集会は2日目、会場を高崎市(高崎市中央公民館、高崎市労使会館)に移して、第一分科会・歴史―「中学校歴史教科書の部落問題記述」(都立大名誉教授)、第二分科会・教育啓発「たしかな人権を身につけるための教育の実践・交流を」(埼高教)「『ピース・イン・マツシロ全国高校生集会』の取り組み」(長野高教組)、第三分科会・行政「群馬県同和行政の現状と課題」(全解連群馬県連)「長野県・市の審議会の経過と問題点」(長野県部落研)、第四分科会・理論「人権シンポに取り組んで」(国民融合群馬県会議)「『かながわ人権フォーラム』活動の総括」(神奈川部落研)の各報告と討論がおこなわれました。
 来年、第34回集会は栃木県での開催です。

連載記事
検証―部落問題の解決(1)

 全解連が今年の定期大会で「社会問題としての部落問題は解決した」との認識を明確にしたことが、マスコミをはじめ各方面に大きな波紋を呼んでいます。部落問題は解決したのか――。
 シリーズで検証します。

 具体的な説明を欠く「根強い差別意識」

 春から夏にかけて開かれた各自治体の人権教育(同和教育)推進協議会の年次総会のあいさつや事業計画の説明で、ハンを押したように「環境改善等の実態的差別は相当程度の改善が図られたが、心理的差別についてはなお根強く残されており、教育・啓発に引き続き取り組む必要がある」と語られています。
 八月に各郡でおこなわれた人権教育実践報告会(今年から同和教育から人権教育に名称変更)でも、「同和教育を中核とする人権教育」に取り組んでいるとする実践報告で、「いまなお各地で差別事件が起きている」との説明がありました。何を根拠に――?。
 
今年の夏も出没した「ユウレイ」
 「各地で差別事件が起きている」とのあいさつや報告は、発言している人自身が直接体験したことを根拠にしているのではなく、人から聞いたり何かで読んだりしたことをもとにしているのがほとんどです。「いつ、どこで、どんなことがあったか」と具体的に質問されると、発言者は立ち往生します。「ユウレイ(幽霊)が出た」という話に似ています。「ユウレイ」の話は笑い話か冗談で終わりますが、この場合は、「だから同和対策、同和教育が必要」とする前提にされますので、タチの悪い「ユウレイ」になりかねません。

 本当に差別か?
 7〜8月におこなわれた「解同」の市町村交渉で、「児玉郡で今年二つの差別事件が起きている」実例が出されました。この事例が「差別」なのか。このことから検証します。
児玉町議員の「発言」と上里町の女性の「昔話し」を指して言っているのですが、はたしてこの二つのケースは差別なのか――。
 

コラム【本流】
 黒田庄・東野町長の講演に感銘

 部落問題研究所の夏期講座2日目の分科会「同和行政・同和教育の終結はどこまで進んだか」、兵庫県黒田庄町の東野町長の特別報告に感銘を受けた。「解同」が支配する保守的な町で当選するはずがない、と父親から言われながら、中学校の教員を退職して立候補。町民が主人公の福祉と教育を大切にする町政をはじめ、同和行政終結の公約も着実に実行して、今年2月に再選を果たした▼同和対策事業の廃止では、水道敷設工事の優遇措置、税の減免、団体補助金、解放子ども会などを次々に廃止。「制度を作るのにはお金がかかり、議会の同意がいるので大変ですが、廃止にはお金はかからず、『やめます』といえばやめられるので簡単です」と▼地区住民との合意を得ているのか、独断専行ではないのか、との質問には、「町民多数が廃止を支持していることがはっきりと分かっている」と回答。町民全体の意向を十分ふまえた上での決断と実行であることを説明された▼「字別(地区別)懇談会」も廃止。「あれは、住民に自由な意見を言わせない体制を町のすみずみに徹底させるためのものです」との説明に、ナルホドその通りと思った。「この町には差別があると宣言しているに等しい『差別撤廃の町宣言』のタテ看を撤去したら、「解同」から「器物損壊罪」で訴えられなどの妨害を受けながら、正しいことを町民の支援ですすめている自信に満ちた、それでいて謙虚な話ぶり▼さて、まだあちこちで「字別懇談会」が続いている埼玉県。そして今、「糾弾会」を派手にやっておいて、自治体交渉をすすめている団体がばっこしている状況。何とかしなければ――。