03年4・5月合併号(N0.267・268)

埼解連第29回定期大会
総仕上げの課題達成へ全力
  「地域人権運動総連合」に結集へ

全解連埼玉県連は5月11日、有事法反対、労働法制改悪阻止、同和行政・同和教育終結、運動の発展的転換実現などをスローガンに、熊谷市商工会館ホールで第29回定期大会をひらきました。大会では、部落問題解決の最終段階の課題の解決に取り組みながら、「地域人権運動総連合」(仮称)への転換準備を具体的に進めていく運動方針、予算、役員を決めました。

 吉野副委員長の開会あいさつで始まった大会は、議長に内海、吉野の両氏を選出して進められ、大会運営委員の選任に続いて三枝茂夫委員長があいさつ。
 委員長は、日本を「戦争をする国」にする有事関連法案をめぐる緊迫した情勢にふれて、憲法9条を守り抜くよう訴え、さらに成立した個人情報保護法や審議が始まろうとしている人権擁護法案が、ともに表現と内心の自由はじめ国民の人権を制限し、「有事」に備えてを国民を管理することをねらったものであるとして、人権擁護法案の廃案を求めました。
 ついで3月の全解連定期大会で、来春には「地域人権運動総連合」(仮称)へ発展的転換をはかる方針が決定されたことをふまえ、同和行政の終結と「解同」問題の解決など最終段階の課題に全力で取り組むとともに、「地域人権運動」への発展的転換をめざす埼玉県連の方針と体制を確立する重要な任務をもつ大会であると語って、代議員の討論をよびかけました。
 全解連本部から寄せられたメッセージ(別掲)を議長が読みあげ、ついで、県同和対策課長、江森県人権教育課長、贄田埼教組書記長、武藤埼高教中央執行委員、高村日本共産党埼玉県委員会自治体部長の各氏から激励の挨拶を受け、藤井執行委員が大会に寄せられたメッセージ・祝電を紹介しました。
 大会は午後、松本書記次長の活動報告、川崎会計の決算報告、笠本監査の会計監査報告と各報告に対する質議のあと、全会一致で承認。栗原書記長が03年度運動方針案と大会スローガン案を提案し、川崎会計が予算案を提案。これにもとづいて質議・討論がおこなわれました。

 質議・討論では、県連事務所の体制と県連会計項目の整備、発展的転換準備の具体化などについて、代議員が発言。川崎会計と栗原書記長が質議に回答したあと、三枝委員長が、同和行政の終結を行政の民主化の課題として住民運動で取り組むこと、同和行政を終結すれば「解同」問題の解決も大きく前進する、生活要求の実現をめざす取り組みの中で発展的転換の準備を進め、転換準備は学習と討論を繰り返しながらていねいにおこなう、などの諸点を述べて討論のまとめをおこないました。
 大会は、運動方針案・大会スローガン案、予算案を全会一致で採択し、小寺執行委員提案の「有事法制定と人権擁護法案に反対する」特別決議案、役員選考委員会提案の新役員案、原島県委員提案の大会宣言案をそれぞれ全会一致で採択し、笠本副委員長のあいさつで閉会しました。


全解連本部からのメッセージ

歴史的使命を継承しつつ
新たな地平を拓く発展的転換へ


 埼玉県連第29回定期大会にあたり、全解連本部を代表して祝賀と連帯のご挨拶を送ります。
 周知の通り、3月の全解連第33回定期大会は、1年後に新たな地域住民運動を担う組織体に発展的に転換することを決めました。このことは、私たち全解連が、歴史の流れにまともに立ち向かう勇気と、そこから生ずる社会的責任を引き受ける度量を持つ集団であることを示したものです。
 発展的転換を1年後に控えたいま大事なことは、この歴史の推進者としての誇りを、会員一人ひとりの胸に確かめていくことではないでしようか。 こうした私たちの誇りは、民主主義の課題である部落問題の解決は、まさに民主主義的に行われなければならないという確信のもとに、民主主義に敵対する部落排外主義と仮借ないたたかいを組織してきたことによってもたらされたものです。
  歴史が全解連の存在を求め、歴史が全解連に与えたこの使命は、全解連とその後継組織によって完遂されなければなりません。それゆえ全解連第33回定期大会は、発展的転換とあわせ、特別対策の廃止やいわゆる「解同」問題の克服を含む‘部落問題解決の総仕上げの課題を精力的に成し遂げる’ことも決定しました。
 私たちはこうした責務を継承しながら、発展的転換を準備しつつあります。各地の全解連は、それぞれの地域社会が求める運動を担い、より大きな団結で全国的結集をはかる取り組みを強めています。
東日本における逆流の本拠であったこの地で、埼玉県連が自らに困難を課しながら、部落問題解決のあるべき姿を体現してきたことを、私たちはよく承知しています。そうした県連であればこそ、県民が求める発展的転換の方向を自ら開拓するに違いないと確信しています。
 埼玉県連はともに今日を築いてきた全解連の不可欠の一員です。新しい地平を拓く発展的転換へ、ともに前進することを約束しあってメッセージと致します。

―――――――――――――――――― 2003年5月11日
―――――――――――――――――― 全国部落解放運動連合会
―――――――――――――――――― ――――       中央執行委員長 石 岡 克 美


「説明責任」が果たせるか?
――――法終了後も続く自治体の「特別措置」
――――――――――全解連埼玉県連のアンケート調査から―――

 特別法の終了に合わせて担当課(室、係)の名称を変えた自治体が多い中で、行政施策の実態がどうなっているか――。
 埼連は昨年5月に「平成14年度同和対策関係事業・予算等の内容」について、県内49自治体にアンケート方式で郵送による調査を依頼。調査には、37自治体( 77・5%)から回答が寄せられました(入間郡、大里郡、児玉郡は100%回答)。
 「調査」結果は要請した全自治体を網羅しておらず、部分的に「無記入」もあるなど不十分さはありますが、県内の市町村の同和行政の現状を一定程度示すものになっています。

49自治体に「調査」依頼
 今回「調査」依頼をした自治体は49。国の「昭和50年調査」(「54年調査」)等にもとづいて「同和地区」の指定をし、その後継続して同和行政をおこなってきた市町村を対象にしました(昭和50年調査では55市町村がカウントされています)。 県連の要請に「回答しない」とした自治体の担当者の中には、全市町村を対象とすべきで「49」には科学的根拠がない、として「科学性」をタテに回答拒否をした担当者もありましたが、相当の科学的根拠はあるはずです。

担当課の名称――「同和対策」から「人権」へ
 特別法の終了にともなって、県内の多くの市町村で、「同和対策課」が「人権政策課」「人権推進課」「人権課」などに名称変更(7割以上が14年4月1日)されました。
 それ以前に変更していた市町村も含めて、昨年五月現在の課(室、係、担当)の名称は、「人権」(人権政策、人権推進、人権など)が34自治体 、「人権同和」が4自治体、「同和対策」が8自治体、「人権女性政策」が1自治体、不明2自治体となっています(この項のみ、49自治体。以下は回答のあった37自治体の数)。
 名称の変化にともなう「業務内容の変化」は、「なし」が20自治体(54 %)、「あり」が17自治体となっており、「あり」の「変化の内容」では、「削減されたもの」として「住宅資金の貸し付け」をあげたところがいくつかある程度で、「削減」された事業はほとんどなく、新たに、男女共同参画、人権擁護委員会事務、人権相談、保護司関係事務などが加わっているところが多くなっています。
 同和対策審議会は、28自治体( 75・7%)に存在し、「廃止」は3自治体、「元々なし」が6自治体。すでに「人権政策に係る審議会に再編成」した自治体は2自治体、今後再構成する予定としている自治体が9自治体、「未定」14自治体などになっています。 
 13年度と14年度の同和対策予算額と人権教育・啓発予算額については、北足立郡が1自治体以外は無記入。他の郡ではすべて金額が記入されています。 

 24自治体だけで5億円余――税の「同和減免」
 具体的な事業の中で、「税の同和減免」と「団体補助金」の情況を見ると――
 税の「同和減免制度あり」が33自治体( 89 %)、「なし」が3自治体、無記入が1自治体で、「あり」の33自治体の内、資産や所得に応じて減免率を決めている自治体が16、一律(50%が多い)減免が15自治体となっており、上限を設定していない自治体も16自治体となっています(大里郡など、今年度から改める方向にある)。「終期」を設定したところは3自治体(16年度予定が2、18年度が1)のみで、「検討中」や「未定」が多数を占めています。
 減免の件数・総額・最高減免額については、北足立郡ではすべての自治体が無記入、逆に、入間、大里、児玉、北埼ではすべての自治体から回答が寄せられています。回答があった24自治体分の総計は、固定資産税の減免が4,574件・3億4千7百18万2千6百75円、市県民税の減免が3,541件・1億5千3百52万6百70円、総合計金額5億70万4千3百45円(約5億70万円)となっています。
 
年2千万円以上が2自治体――団体補助金
 運動団体補助金では、「制度あり」が32自治体(86.5 %)、「元々なし」が5自治体で、廃止したところはありません。
 補助金総額では、北足立郡など無記入を除いた27自治体の補助金合計額は190,678千円(約1億9千万円)となっています。最高額の自治体の額は3,190万円、最少額の自治体は97万円で、500万円以下が 11自治体、500万円〜1千万円が10自治体、1千万円〜1千500百万円が4自治体、2千万円以上が2自治体という状況です。

まだ続く子どもの「集会所学習」
 子どもを対象にした集会所学習をおこなっている自治体は27(73 %)、「元々なし」が8自治体、「廃止」2自治体となっています。27自治体の「集会所学習の形態」では、「集会所周辺の子ども対象」が14自治体、「学校全体の子ども対象」が13自治体(両方の形態をとっている自治体あり)、無記入が1となっています。そして、この問題でも、今後については「終期等検討内容未定」と回答している自治体がほとんど、という状況で、地域(運動団体)の意向しだいと見られます。
 
 全体に「終期」など不透明
 全体として、「見直し」「是正」が進んでおらず、終結の見通しも不透明で、依然として運動団体の意向を伺うことが先行し、行政の主体性が確立されていないことを示すものになっています。
 解同」の要求に屈して「法後の同和行政の基本方針」を決め、差別意識の解消を図る教育・啓発の継続を柱に、税の減免を3〜5年継続、団体補助金も当面存続の方針を立てている自治体がほとんどの状況ですが、特別対策終了の大きな流れが全国的に着実に進んでおり、無視することはできません。 「人権政策課」が同和問題だけをあつかったり、税の「同和減免」を継続すれば、矛盾がいっそう明らかにならざるを得ません。
 総務省地域改善対策室長が、「根拠となる法が終了した後も、なお特別対策を継続する自治体には、住民に対する『説明責任』が生ずる」と再三述べたとおり、自治体の対応が問われています。


発展的転換の必然性(上)
社会の進歩に応える転換
 
定期大会で、部落解放運動を発展的に転換させる取り組みを本格化させる方針を決めました。
なぜ転換か――その必然性と必要性を大会議案の「私たちを取りまく情勢」から、該当部分をダイジェストにして2回に分けて掲載します。

部落問題解決の到達段階
――社会問題としての部落問題は解決

 1965年の「同和対策審議会答申」は、部落問題(同和問題)を「日本社会の歴史的発展の過程において形成された身分階層構造に基づく差別により、日本国民の一部の集団が経済的・社会的・文化的に低位の状態におかれ、現代社会においても、なおいちじるしく基本的人権を侵害され」ている「もっとも深刻にして重大な社会問題」としましたが、このような社会問題としての部落問題が解決していることは、埼玉県の実態からも明らかです。

1、生活上の格差は解消
 住宅・生活環境、就労、教育などの格差は、住民自身の努力と長年にわたる同和対策事業の実施により、基本的に解決しています。一部に課題があるとしても、部落だけの問題ではなく、同和対策で対応する問題ではありません。
2、偏見の克服も前進
 1993年の総務庁の「実態調査」で 埼玉県では、60歳以上で「8割以上が地区内どうし」の結婚が、30歳未満では「19%」という前進を示し、結婚に対する親の意識も、 結婚拒否の回答が埼玉県ではわずか 4.8% です。また、となり近所との交際でも、埼玉県では90.2%の人が「同和地区の人であることが分かった場合」も「これまで通り親しくつき合う」と答え、「わだかまり・つき合い拒否」は8・8%です。
 結婚はもとより付き合いでも、もはや9割をこえる人々がこだわらない状況になっています。しかも、これはあくまでも「意識」の回答であって、「結婚拒否」や「つきあい拒否」の事実を示すものではありません。93年「調査」からすでに10年が経過する中で、実態はさらに前進していると考えられます。
 「落書き」や「発言」が問題とされますが、いずれも「根強く残る差別(意識)」を証明するものではありません。「落書き」は、誰がどういう意図で書いたか分らず、非常識なごく一部の事象をもって社会全体の状況を言うのは非科学的です。「事件」として問題にされた「発言」の場合も、昨年の児玉町と上里町の例が示す通り、「発言」の事実が確実でなかったり、「発言」の意図や動機をねじ曲げて問題にするなど、「差別」とは別次元の問題です。
3、解決の主体的条件でも前進
 就労構造の激変、高学歴化の進行、地区外とのつき合いや結婚の増加などにより、前近代的な共同体意識が弱まり、部落外の生活習慣や生活態度が注入され、生活のあり方が大きく変わったことにともなって問題状況はうすれています。
 このように、「非人間的な生活実態」「深刻にして重大な社会問題」とされるような実態はすでに解決されています。部落差別に苦しむ人々が共通の運命として体験した被差別体験、地域的閉鎖性、非人間的生活実態などが基本的に解消されれば、個別的に一部残っても社会問題としては解決したことになります。個別的限定的に部落差別の事象が残っても、それは人権問題の一部として解決していく課題です。
 
派生的に生じている問題
――――地域社会の民主主義の課題

 本来の部落問題そのものではなく、そこから派生した問題を克服する課題として、同和行政と同和教育・啓発の終結、えせ同和問題、「解同」問題などがあり、最終段階の総仕上げの課題として解決が求められています。 
1、同和行政の終結
 同和行政は、同和地区の生活実態や国民の意識のなかに残されている旧身分を理由にした差別の残りものを早急に取り除くために、一般対策を補完してとられた行政上の特別措置であり、特別措置を必要としない状態が実現すれば解消、終結が必然のものです。同和行政は、特別措置の対象を確定するために、地域を「同和地区」に指定し、その地域に事業や施策を重点的に実施することから、部落を周辺地域から分離する「別枠行政」におちいりやすい性格を本来的にもっています。目的達後も特別措置である同和行政を継続すれば、部落問題の解決を妨げることになります。

2、えせ同和問題の解決
 同和問題を口実に行政機関や企業などに不当、不法な要求をするえせ同和行為も問題です。高額な書籍の押しつけ被害が、各種の組合事務所や町工場、商店、保育園などにも広がっており、具体的な対処が必要です。
 同時にこの問題は、行政に「同和問題を口実に不当、不法な要求をする」ことで利権が温存されているところに問題の本質があり、「確認・糾弾」がその背景になっています。「解同」などによって引き起こされてきた数々の事件が歴史的事実としてあり、それがさまざまな形で現在も続いています。「密室行政」と言われるような行政運営こそが、えせ同和行為の温床になってきたのであり、それを正すことがえせ同和行為の根絶に不可欠です。
 この問題は、現実に「解同」などが「部落解放運動」の名で策動していることから、私たちが大きな役割を担わなければなりません。同時に、地域社会における自由と民主主義、住民自治の問題として、住民運動として取り組む課題です。
 
3、発展的転換の必然性と新たな運動の意義
 
 周辺地域との生活上の格差が基本的に解消し、生活要求が周辺地域の要求と共通していることから、今後の運動は一般対策の充実をめざす地域での住民運動が基本になります。 同和行政の終結や「解同」問題などの課題も、地域社会の問題として共同して取り組むものになっており、部落住民を主体にした部落解放運動本来のあり方を越える性格があります。
 地域社会が変化している中で、民主的な地域づくりという点から、新たな地域住民運動へ発展的転換を図る必然性があります。
 政府が進めている「所得格差・地域間格差」拡大の攻撃に対し、介護・医療・仕事保障・子育て・生活保護などの課題で住民が連帯して地域運動を前進させることが求められています。
 部落解放運動の終結にともない、全解連が母胎になって、新たな目的と性格をもった運動体へ連続的に発展させることが必要になっています。