04年1・2月号(No.276・277)

団体啓発助成など
関係者限定事業 04 年度で廃止
県交渉ー教育・啓発含め特別対策終結を求める

埼玉県連は2月5日、県民健康センターで県交渉をおこない、県の「平成14年度以降の同和行政の取扱い方針」にもとづく見直し状況をただすとともに、啓発事業を含め県の同和行政を早急に終結させ、市町村に対しても終結に向けて働きかけを強めるよう求めました。
 交渉では最初に、県庁の組織改革により同和対策課廃止・統合して新たな課になるのに際して、(1)長期にわたって行われてきた同和行政・同和教育行政を総括すること、(2)特別対策の終結を明らかにし広く県民に知らせる措置をとること、(3)新たに設置される課の目的と業務内容を明らかにすることなどを求めました。
これに対して県は、(1)特別法以前の昭和二九年から事業に着手し、平成13年度までで総事業費1,229億円余を使って各種施策を実施してきた。その結果実態的差別は解消したが、心理的差別やえせ同和行為などで今日まだ課題が残っている、(2)「平成14年度以降の同和対策関係施策の取扱いについて」で、「同和関係者」に限定した事業は実施しないことを明らかにし、各場面で一般対策に移行したことを述べて一般対策としての教育・啓発を行なっており、県民への終結表明は考えていない、(3)人権政策を総合的に進める調整窓口となる。人権啓発や人権問題の一つとして同和問題の解消に取り組む。(「人権政策」とは何か、の問いに)人権政策の具体的な課題・内容はその時々の社会の状況による、と回答しました。
 「心理的差別」になお課題が残るから「一般対策」としての教育・啓発を継続するとの県の回答をめぐって、交渉団は、職員研修会で県同和対策課の講師が「同和問題は人権問題の主要な課題」として講演している問題、現在行なわれている「教育・啓発」を県民は「一般対策」などとは思っていない、などを指摘して、「教育・啓発」を含めて特別対策を終了するよう求めました。人権に係わる新しい課についても、県民を啓発・教育の対象とするだけの課にならないよう要求しました。
 特別法終了時の「平成14年度以降の同和対策関係施策の取扱い」の中で、「同和地区・同和関係者に対象を限定する事業は実施しない」としながら、「但し、特に経過措置が必要な事業については、終期を設定したうえで計画的に削減・廃止する」として継続されている問題について、具体的な事業内容は法終了時在学中の高校・大学奨学金、運動団体が実施する啓発への助成、集会所指導員設置(市町村事業)補助の3事業であることを確認、いずれも平成16年度で終了すると回答しました。

終結へ市町村への支援強化を
 これにより「同和地区・同和関係者に対象を限定する事業」は、県の事業ではほぼ終了しますが、市町村が実施している「税の同和減免」は住民税部分で県税も連動して減免されています。廃止を市町村に促すよう求めたのに対して、県は「市町村の権限で条例等により対応していると理解している。納税者の個々の実態に即し、かつ他の納税者との均衡を失わないよう主幹会議等で指導している」と従来通りの回答。
 交渉団は、県連の市町村との懇談で「県からそんな話は聞いたことはない」と驚きの声が出されていることを紹介。「県はそんなことを言っているのか。元々、県が通達を出して始めた事業で、正直言って市町村は苦慮している。その県がそんなことを言っているのか」とあちこちから出されていることを示して、抽象的に言うのではなく「同和問題解決の障害になっている同和減免をやめること」と具体的明確に強く求めるよう要求しました。
 さらに、一般対策に移行した事業である「家庭支援保育事業」が従来の「同和保育所」と同一のままである事実や、児玉町の隣保館に「解同」の事務所がある実情など、県も把握しながら是正にむけた具体的な手だてを講じていないために、事実上、「同和地区・同和関係者に対象を限定する事業」が継続されている実態を示して、早急に改善するよう求めました。
 「解同」と市町村行政による「人権政策確立要求運動実行委員会」の要請行動に、県が対応している問題についても、県が「14年度以降の取扱い」の基本としている昭和51年5月策定の「同和行政推進についての基本方針」に反していることを指摘。県は「51年基本方針は県の方針であり、市町村に強制できない」「県民のニーズに応えると言うことで要望を聞いた」と回答。交渉団は、「51年基本方針」は「窓口一本化」を是正し、行政と運動団対のあるべき関係を明示したもので、これが市町村にも広がって埼玉県の同和行政を大きく前進させてきたことを説明し、押しつけではない必要な指導・援助として県は原則通りきちんと対応すべきだと主張。
 交渉団は最後に、同和対策を基本的に終わりにした国はもとより、県も同和対策費を大幅に削減しているもとで、いま市町村は財政が非常に厳しい中、80〜95 が単独予算で同和対策をやっている状況を示し、市町村が不必要な同和対策を終結できるよう県の支援を強めるよう求めて交渉を終わりました。
 交渉には、渡辺同和対策委員長(総務部次長)はじめ吉田同和対策課長、江森人権教育課長ら13人が応対し、三枝委員長ら県連役員と自治労連県本部、埼教組、埼高教の代表の、15人が出席しました。
熱い一体感の中で人権を学ぶ
ハンセン病をテーマに「講演と映画の集い」ひらく
ーーーーーーーーーーーーーーーNPO埼玉県地域人権ネットワーク
 NPO埼玉県地域人権ネットワーク主催の第二回「暮らしの中で人権を考える講演と映画の集い」が1月31日の午後、熊谷市文化センターで開かれま した。
 「ハンセン病問題を考える」をテーマに、ドキュメンタリー映画「風の舞」の上映とハンセン病国賠訴訟全国原告団会長代理の谺雄二さんの講演がお こなわれた「集い」には、県北各地から300人が参加 。「勉強になった。良い機会を与えてもらったことに感謝します」と感想が寄せられるなど、昨年の「集い」同様に参加者から高い評価を得ました。
 大島青松園(香川県)の塔和子さんの詩を通して、ハンセン病強制隔離の歴史と元患者たちの慟哭の思いや今を生きる姿を伝える「風の舞」の上映では、 会場のあちこちからすすり泣きが聞こえ、映画に続く谺さんの具体的な体験談に、聴衆がもらす驚きや共感の声があがって、映画、講演、聴衆の思いが通じあ う熱く静かな一体感が会場にみなぎりました。
 講演に続いて、会場から谺さんに質問が相次ぎました。「『元患者』と呼べはいいのか、『回復者』と呼ぶのが正しいいのか」「もうハンセン病はなくなったのか、患者と握手しても病気はうつらないのか」「多磨全生園(東京)のすぐそばの病院に入院していたことがあるが、隣に何があるか全く知らされ なかった。無知が偏見と差別を生むのではないか」「ハンセン病療養所の所長はみんな悪い人ばかりだったのか」「今までの人生で最も憎むことと最も感動 したことは何か」等々。その一つ一つに谺さんは丁寧に答えました。
他の病気では「回復者」とはあまり言わないが、元患者、回復者、どちらでもこだわらない。ただ政府がハンセン病問題を過去の問題にしてすまそうとして「回復者」と呼ぶことには反対している。ハンセン病は現在も国内で数件、東南アジア、アフリカ、中近東の諸国などで多数発症している。ハンセン病に限らず伝染病は、疲労による体力の低下、栄養不足、不衛生な情況で病原菌が体内に入ると起こる。戦争や社会の混乱はそうした情況を作る。ハンセン病も伝染病だから病原菌を殺せば治る。元患者は菌を持っていないから握手をしてもうつらない。ハンセン病患者は隔離する必要のないことを主張し実践して、ハンセン病学会から追放された小笠原登医師の存在を銘記したい。最も憎むことは、無知を利用して人を欺くこと、最も感動したことは母の愛情。家族の愛情が人を育む――。
 講演後、控室に「患者と握手しても病気はうつらないのか」と質問した若い女性が「失礼な質問をしてすみませんでした」と恐縮しながら谺さんに握手を求めてきたのをはじめ、十人近い若者などが話に感動して訪れ、谺さんに悩みを訴えて助言と励ましを受けたり、谺さんとメール アドレスの交換をする人などで、控室はひとしきり若い人たちでにぎわっていました。
 (人権ネットでは、講演と参加者から寄せられた感想文を『明日をつくる』誌に掲載します)
栗生楽泉園を訪問
---埼玉県地域人権ネットワークの有志八人が1月14日、講演会に先立ち草津の栗生楽泉園を訪問し、31日の講演の打合わせを兼ねて谺雄二さんと約2時間懇談。その後、谺さんの案内で園内を歩きました。
コラム「本流」

地域人権ネットが熊谷で開催した「暮らしの中で人権を考える市民の集い」。「風の舞」の上映とハンセン病国賠訴訟原告団の谺雄二さんの講演で、集まりは多くはなかったが、「すばらしい内容でした。もつと沢山の人に来てもらえればよかったと惜しまれます」との声が主催者に寄せられている▼講演で若い女性が谺さんに質問した。「ハンセン病はもうなくなったんですか」「ハンセン病になった人と握手をしても、病気はうつらないのですか」。谺さんは、ハンセン病が現在も国内で年に数件、東南アジアや中東地域などで多数発症していること、特別の病気なのではなく、他の伝染病同様に、疲労と栄養不足、不衛生な生活の中で 病原菌によって起こること、そしてどんな伝染病も原因となる菌さえ死滅させれば完治できることをやさしく丁寧に説明。ハンセン病を起こすレプラ菌は感染力が非常に弱いことも話し、「元患者と握手しても病気はうつりません。お帰りの時、どうぞ安心して私と握手をして行って下さい」。さわやかな笑いが会場に広がった▼質問した女性は、講演後すぐに控え室を訪れ、谺さんと握手し談笑して帰って行った。谺さんの病気についての話は、実に科学的、だから説得力があると感じ入った次第。