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全解連の運動の基本的な方向を示す「綱領的文書」
部落解放運動の発展的転換をはかる基本方針
(1)部落問題が解決された状態部落問題とは、封建的身分制に起因する問題であり、国民の一部が歴史的に、また地域的に蔑視され、職業、居住、結婚の自由を奪われるなど、不当な人権侵害をうけ、劣悪な生活を余儀なくされてきた問題をいう。
部落問題の解決とは、1.部落が生活環境や労働、教育などで周辺地域との格差が是正されること、2.部落問題にたいする非科学的認識や偏見にもとづく言動がその地域社会で受け入れられない状況がつくりだされること、3.部落差別にかかわって、部落住民の生活態度・習慣にみられる歴史的後進性が克服されること、4.地域社会で自由な社会的交流が進展し、連帯・融合が実現すること、である。(2)部落解放運動の歴史
「解放令」による封建的賤民身分の消滅以後も、部落差別を残し支える社会的、物質的基礎が存在していたもとで、1922年、差別からの解放をめざす部落住民は、「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と高い理想をかかげて全国水平社を創立した。
全国水平社の運動は、民主主義の旗をかかげ、部落住民の自覚と差別糾弾への決起を呼びかけ、そのたたかいは全国に広がった。やがてこの運動は、個人にたいする差別糺弾闘争から、差別を支える土台にむけての運動に発展、「人民的融和」の理論を生み出した。しかし、ファシズムの台頭と侵略戦争のもとで、全国水平社も1942年に解体した。
一九四六年、部落解放全国委員会が結成され、全国水平社の伝統を批判的に継承して部落解放運動が再出発した。1955年、その名称を部落解放同盟と改称し、民主勢力との共同闘争を強めた。1960年、戦後解放運動の総括の上にたって新しい綱領を決定した。そして部落解放要求貫徹全国闘争を中心とする部落解放運動の高揚にともない、部落問題の解決は国政の重要な課題となった。
しかしながらその間、民主化運動のかつてない高揚のもとで、これに危機感をいだいた反動支配勢力は、部落解放運動の民主的発展をおそれ、部落住民の保守的支配をねらって、1960年全日本同和会を結成させた。また彼らは、民主勢力の分断・支配を進め、民主勢力との共同闘争へ進んでいた部落解放運動に対して懐柔と分裂の攻撃を強めた。
部落解放同盟(「解同」)一部幹部は、反動支配勢力の攻撃に呼応し、部落排外主義をふりかざして反共・暴力の妄動に走り、それに反対する同盟員や支部・府県連を排除し、組織を占拠して、同和対策事業に寄生して利権をあさり、無法な差別糾弾や教育介入、地方自治の破壊など横暴のかぎりをつくすにいたった。彼らは、統一戦線の旗をなげすて、革新分断の尖兵となった。 これに対し、われわれは1970年、部落解放運動の正常化と公正・民主的な同和行政の確立をめざして、部落解放同盟正常化全国連絡会議を組織し、民主勢力とともに逆流とたたかった。人権、民主主義の擁護と新・旧二つの差別主義の克服をめざすたたかいの中で、われわれは部落解放運動の本流として、1976年、全国部落解放運動連合会に組織を改組・発展させ、国民融合路線を提起した。われわれは、1987年、組織内外の英知を結集して、綱領的文書「21世紀をめざす部落解放の基本方向」(「基本方向」)を決定した。
部落解放運動は、一部に弱点をもちながらも、人間の尊厳と自由・平等を唱え、集団の力で歴史の歯車を押し進め、社会問題としての部落問題の解決に大きく貢献してきた。(3)部落問題解決の到達点
第二次世界大戦における日本帝国主義の敗北によって、日本の社会は大きく変化し、農地改革をはじめとする一連の「民主的」措置により、部落差別を残し支えてきた基礎が基本的に解体され、部落問題をめぐる客観的諸条件が一変した。
とりわけ日本国憲法は、主権在民、基本的人権の尊重、戦争の放棄など、平和的民主的原則を謳い、その後の国民のたたかいともあいまって、自由と民主主義、人権の尊重を、国民の社会的規範にまで高めた。
部落問題は、部落住民自身の努力、部落解放運動の取り組み、同和対策の実施、国民的理解の広まりなどにより、解決に向かって大きく前進してきた。
部落問題解決の到達点は、@周辺地域との生活上にみられた格差が基本的に解消されたこと、A旧身分にかかわる差別が大幅に減少してきていること、B住民の間で歴史的後進性が薄れ、部落問題解決の主体が形成されてきたこと、Cかつての部落の構成や実態も大きく変化し、部落の閉鎖性が弱まり、社会的交流が進展したこと、である。
部落問題解決は、いま最終段階を迎え、しかも総仕上げの局面に至っている。このことが部落解放運動の終結・発展的転換を必然化させる要因となっている。(4)総仕上げの局面での運動の課題
われわれは、「基本方向」の路線を継承・発展させて、部落問題の歴史的解決を実現するものである。
われわれは、部落を含む地域社会全体を視野に入れ、部落内外に共通してみられる問題や課題を解決するため、地域で共同の住民運動を大きく前進させて、組織の拡大強化をはかりながら、民主的な地域づくりと主体形成を実現してゆく。
われわれは、反動支配勢力が同和対策を利用して部落住民の間での自立の阻害や民主的自覚を押さえ込むのを許さず、特権的な同和行政や分離主義の「同和教育」など、行政によって生み出されている同和の枠組みや不公正・乱脈な行政運営を早急に除去し、終結をはかる。
われわれは、権力とのたたかいを放棄し、権力にすり寄り依拠することによって、部落排外主義路線の維持・延命をはかろうとしている「解同」の策動を許さず、私的制裁など違法性をもった「確認・糾弾」行為や、「部落民以外はすべて差別者」とする部落排外主義にもとづく国民敵視のあらゆる蛮行を社会的に取り除く。
われわれは、部落排外主義の現れ方を深く分析し、その克服のために、それぞれの地域で中心的役割を担い、具体的に問題を解決してゆく。このたたかいが運動の発展的転換を現実のものにする上で大きな役割を果たすことになる。
われわれは、国民の人権を保障する行政の責務を放棄して、人権問題をもっぱら国民の意識の遅れに責任を転嫁し、国民を教化の対象に位置づけ、「人権」の名のもとに国民の心の中に踏み込みかねない権力による行政主導の「啓発」推進体制づくりを打ち破る。
同時に、われわれは、(1)部落問題解決の到達段階について理解を広げ、(2)部落差別を受け入れない社会的世論を広め、(3)人権と民主主義を尊ぶ地域社会の実現をはかり、(4)住民の間で自立意識を高め、被害者意識の克服と旧身分にかかわるわだかまりを取り除き、国民融合をおし進める。(5)自由と民主主義、平和のたたかい
現在、わが国では、アメリカと日本の大資本の利益に奉仕する歴代反動政治のもとで、国民の人権と民主主義の前進が大きく妨げられている。しかも公権力や「解同」は、国民の「人権意識」や「差別意識」を問題にし、国民の自由な意思形成への管理統制を新たに強めようとしている。
部落問題の解決は、独占資本と反動勢力の横暴な支配を民主的に規制し、民主主義を確立・推進するたたかいを前進させることによって実現できる。
われわれは、戦後の部落解放運動の歴史から学び、懐柔と分断を許さず、民主勢力の一翼として部落問題を解決していく決意である。
われわれは、権力による人権侵害を告発し、国家権力の責任において、国民の基本的人権の確立とその拡充を保障させるために、今後とも引き続き奮闘する。
そして、日本国憲法の改悪に反対し、平和的民主的条項の完全実施、日米安保条約の廃棄、非同盟・中立の実現、国民が主人公の政治の実現、民主的地方自治の確立、社会進歩と民主主義の発展、国民生活向上をめざす国民的な協力・共同を前進させるものである。
こうした運動による住民と地域の民主的力量の成長が、反動支配勢力や「解同」の策動を打破する保障となる。(6)地域住民運動の展望と新たな運動体への発展的転換
今、住民は、人間が大切にされる地域社会の実現を求めている。その要求には、犯罪や災害からの安全、平和な社会、健康で文化的な生活の実現、在宅・地域福祉の充実、就労の拡大、産業の振興、学習・文化・スポーツへの参加、いじめや体罰の根絶、地域の伝統と快適な自然・環境の保全、行き届いた交通網の確立、自由な意見交換、誰もが平等への願い、情報公開・知る権利・プライバシー権の確立、住民参加の地域づくり、住民が主人公の政治の実現、など多様な内容がある。
これら地域住民の要求は、地域社会において実現していく性格と課題を有している。ここに、住民の諸要求の実現と地域の民主化をはかる地域住民運動が成り立つ基盤がある。
われわれは、憲法の保障する人間らしい生活ができる地域社会の実現のため、人権と民主主義、住民自治の確立に向け、主体的・集団的営みと住民自治の自覚にもとづいて、自らの諸権利の擁護と新たな権利の創造をともなう地域住民運動を展開する。
その課題は、(1)諸要求を結集し、生活破壊の悪政とたたかい、人権と民主主義、住民自治が尊ばれる「人間らしい生活ができる地域社会」を実現する、(2)住民相互の助け合いの輪を広げ、住民の連帯感と共同をつちかう、(3)保守的地域支配を許さず、住民が地域の主人公である地域民主主義の前進と、町内会・自治会の民主化を実現する、(4)いっさいの暴力やどう喝、住民分断の策動を許さず、住民が平和と安全の内に生活できる地域社会をつくりだす、(5)国民の内心に踏み込みかねない行政主導の「啓発」体制を打ち破り、住民の自主的学習活動によって、真の人権認識を深める、(6)自治体の民主的刷新を実現し、住民本位の地域づくりの確かな政治的保障をはかる、ことなどである。
われわれは、総仕上げの局面における部落問題解決の諸課題を早急に達成し、同時に地域で部落内外の共通要求にもとづく共同の住民運動を前進させ、新たな運動体への発展的転換をはかるために全力をあげる。(2000年9月3日、第30回臨時大会決定)