『地域と人権』埼玉版『人権のひろば』
---- Net版04年5月号・No.280

酸素を吸うとお金がかかる
埼玉県社保協の自治体キャラバンで切実な訴え次々に

57歳・患者の生活保護申請に
^^「ハローワークに行きなさい」

02年から03年の1年間で県内の国保税滞納世帯が、新たに11万人生じる――。生活がきびしさを増しているなか、「社会保障の充実を求める自治体要請キャラバン」が県内90の全市町村でおこなわれ、高齢者福祉・介護保険、医療、国民健康保険、障害者福祉・支援費制度、子育て・保育、最低生活保障の各分野にわたって行政担当者と懇談、参加者が切実な実態を訴えました。

5月19日に熊谷市商工会館で行なわれた大里郡社保協の懇談・要請では、鈴木会長が「国による財政と制度運用の締めつけが強化されている中、自治体職員のみなさんが苦労されていることを十分承知していますが、健康で文化的な最低限度の生活を保障するために自治体としてやらなければならないこと、やれることに真剣に取り組んでほしい」とあいさつ。
介護保険問題では、利用料軽減と認定に関する実情と要望が次々に出されました。「施設の利用料が高いため支払い困難となり、他所に移ろうとすると前施設の支払証明書の提出が求められる」「非課税世帯には利用料の減免がない。統計でも低所得ほど利用率が低い」「オムツの費用が利用者に負担。利用料の他に、月1〜3万円かかる」「介護用品が高い」「介護度4や5でも、自立度で市役所の窓口ではずされる。認定を実態の中で見てほしい」「個人申請すると介護度が低くされるケースが増えている。百歳の人が要支援で帰ってきたりする。」「制度の使い方が分るパンフレットが欲しい」
医療と国民健康保険問題では、「在宅で酸素吸入している患者が、酸素を吸うとお金がかかるといって我慢し病気を悪化させている。電気代が月6〜7千円かかる。電気代の補助を」「国保税を払いたくても払えない。資格証明書発行の意味、基準、資格証明書のために医療にかかれない実態を明らかにしてほしい」
保育では、「核家族化が進む中、『子育て文化』を伝えるのが保育園。みんなが等しく保育されるよう公立も民間も保障される制度に」「障害児保育が一般財源化されたが、市から従来通り助成してもらい助かっている。恒久的な助成制度にしてほしい」
最低生活保障では、「最後のセーフティネットである生活保護の申請に必死の思いで市役所に行っても、窓口で、車があるとダメ、稼動年齢だからダメなど、制度に無知であることを逆手にとって断られる。57歳の患者が申請に行き、市役所の窓口で、ハローワークに行きなさいと言われて帰ってくる。命にかかわる事態を真剣に受けとめてほしい」「年金改悪法案を廃案にして出直すよう市長から国、各党に要請してほしい」――。予定時間を30分オーバーする要請・懇談となりました。

高知県
  運動団体との交渉内容をホームページで公開
 団体:まだ差別が残っているにもかかわらず、なぜ全日本同和対策協議会(全同対)を脱会したのか。
  :全同対は、法期限を過ぎた今も設置目的を変えず、従前どおりの活動を継続していくとしている。しかし、本県は法期限後は同和地区、同和関係者に対象を限定せず、一般対策の中でそれぞれの課題に応じた施策を行っていくこととしており、全同対の趣旨と合致しなくなったため、脱会した。
 団体:最近、電子メールを使った地区名の照会や県有施設への差別落書き、また、差別発言などが頻繁におこっている。県はどんな対応をしているのか。
  :関係市町村などから、話は聞いている。また、差別発言に関しては、職員が当事者と話をするため何回か会おうとしたが、本人に頑なに拒否され、直接話はできていないが、努力は続けている。差別事象への対応は、差別した人、差別された人、どちらの人権にも配慮し、教育、啓発をそこでかちっとしていくのが基本。
 団体:行政が地区を区別しなくても、社会は区別をする。それをしっかりと知らなくてはいけない。それをどう解消していくかが大事。
  :地対協の意見具申を引用させてもらうと「今後は、同和問題を人権問題という本質から捉えて解決に向けて努力する必要がある。」といってるので、我々もこういう視点で取り組んでいきたいと思う。
――高知県人権課がホームページで公開している「団体との話し合いの概要」の「部落解放同盟高知県連合会との話し合い」の一部です。「概要」には、団体名、日時、場所、出席者、話し合いの概要(経緯、意見交換の概要)が掲載されており、団体の要求書と県の回答書も掲載されています。
 密室行政と批判されている同和行政、埼玉県と市町村でも長野県や高知県にならってオープンにすべきです。県内ではどこが一番最初の行政となるか。

憲法をかかげ命が輝く世紀に
 
憲法改悪許せば戦前の治安維持法以上の国民監視国家に 
   埼玉「憲法のつどい」で大谷昭宏さんが講演

 憲法記念日5月3日、埼玉憲法会議や県平和委員会など34団体主催の「憲法のつどい」が埼玉会館小ホールで開かれました。新婦人秩父支部会員による秩父方言での憲法第9条と第25条の朗読に大きな拍手が送られたあと、ジャーナリストの大谷昭宏さんが講演。
 朝日新聞支局襲撃事件を風化させてはいけないと語りおこした大谷さんは、イラクで人質になった5人の青年に対する政府とマスコミによるパッシングを批判。戦後59年間、自衛隊が海外で1人も殺さず、殺されもしなかったのは憲法があったからであり、この歴史を百年維持すれば、世界の人々が憲法9条に確信をもつ。その意味でもイラクから直ちに自衛隊を撤退させなければならないと語りました。そして、すでに盗聴法、個人情報保護法、住基ネットによる国民総背番号制等々が導入されているなか、憲法が改悪されれば、戦前の治安維持法以上の国民監視国家が出来上がり、自由、人権、民主主義のない国家になるとして、そういう国にしてよいのか、と静かな語り口で訴えました。
 
 第49回埼玉母親大会
肥田舜太郎さんが「被爆医師50年の軌跡――」を講演
「ひろげよう憲法九条!世界の子どもたちに笑顔を」をスローガンに、4月29日春日部市民文化会館で第49回埼玉母親大会がひらかれ、1,200人の女性でにぎわいました。
主催者あいさつ、来賓あいさつ、経過報告のあと、肥田舜太郎さんが「かけがえのない生命を守って――劣化ウラン弾の恐怖と被爆医師50年の軌跡――」を記念講演。被爆者として、また被爆者を50年診察してきた中で、いま私たちがしなければならないことは何なのかを問いかけました。
 ――戦争をしてはいけないと話してもなかなか伝わらない。核廃絶の声も国民をゆり動かすには至っていない。分かってもらうには、獄にとらわれながらも命をかけて戦争に反対した人がいたのに自分はその時何をしていたか、自分たちが戦争をやめさせられなかったのは何だったのか、反省の上に立って語らなければならない。ナチスを知っていながら許したことで加害者となったドイツ国民は、当時自分はどうであったのかを語り始めて反省の後、ドイツは民主的に大きく変わった。本当は敵ではない人たちを味方にするのがこれからの平和運動である。
 大会宣言とイラクの自衛隊撤退を求める特別決議を確認。午後、分科会と見学会に分かれて話合ったあと、春日部駅まで母親行進がおこなわれました

04母親大会 04母親行進

全国人権総が
^^政府の「身元あばき」を批判する「声明」
青年3人のイラクでの「人質」事件をめぐる日本政府と一部マスコミによる人権侵害に対して、4月23日、全国地域人権運動総連合が抗議声明を発しました。全国人権連の「声明」要旨は次の通りです。

自衛隊のイラクからの即時撤退を求めるとともに政府による身元暴きを批判する
ファルージャでの米軍による大規模無差別攻撃は女性、子ども、老人など無辜(むこ)の市民600人以上を虐殺。この間のイラク民間人の犠牲者は1万人を超えると言われている。米軍の「侵略的な行動」を批判する国際的世論も高まりをみせ、イラクからの撤兵の動きも加速されている。いま日本政府がなすべきことは、米軍による虐殺行為を批判し、軍事的占領をやめて即刻撤退を求めることであり、「戦闘地域」と化したイラクから、自衛隊撤退を断行することである。
今回、日本人拘束事件で解放に尽力したイスラム聖職者協会は、「アメリカに従って自衛隊を出したのがそもそもの間違いだった」と述べているが、これは、イラクの人々の共通の感情と理解できる。自衛隊は即時撤退すべきである。
さらに問題なのは、日本人拘束事件にかかわって、一部マスコミが政府による身元調査にあわせて、戦前の特高警察なみの発想で低劣な人格攻撃や被害者や家族の思想信条を攻撃していることである。
官邸は事件発生直後から「自作自演」の仮説を立て、身元調査をした、との報道もある。自公や政府、一部マスコミは被害者の「自己責任論」をおしたて、自衛隊撤退を言うような人間は「非国民」と言わんばかりの雰囲気を情報操作したのである。「権力が情報をしかけ、メディアが協力し、それをふれまわる人間が跋扈(ばっこ)する。戦前の日本、赤狩り時代のアメリカがそうであった」と批判する健全な論調もみられる。さらに国際社会も、被害者のボランティア精神に誇りを持てと協賛し、日本政府の姿勢を批判している。
自衛隊派兵を推進している政府への批判をかわすために、憲法が保障する国民の基本的人権をふみにじる行為は許されない。
自公ならびに政府は、「人権教育・人権啓発」と称して「国民の人権意識」を問題にし改変を押しつけているが、被害者の人権のみならず家族のプライバシーまで侵害したことに対し自ら襟をただし、誠意ある謝罪を公に行うべきである。また法務省は重大なる人権侵犯事件として調査し、適正な処置を講ずるべきである。
以上、強く抗議し、関係者への謝罪と人権回復を求めるものである。

2004年4月23日
^^^^全国地域人権運動総連合 議長 石 岡 克 美


コラム「風&光」
年金未納の三人の閣僚を「未納三兄弟」と皮肉っていた人が、実は未納と判明して党首をおろされ、後任になると見られていた人も未加入期間があったとして突如辞退▼最悪は自民・公明の与党の姿勢。自民は加入・納入情況の公表を拒み続け、公明は、年金未加入・未納問題で官房長官や他党党首が辞任する度に、「年金制度への国民の信頼を傷つけたのだから辞任は当然」とニヤニヤしゃべっていた党首・幹事長・政調会長ら「三役そろい踏み未納」を、年金改悪法案の衆議院通過後に発表、頭を下げただけで責任を取らない。拉致された家族5人のみの帰国など北朝鮮問題に国民の関心が移るのを期待しているらしい▼閣僚や議員の未加入・未納問題でさわいでいる間に、審議拒否をしていた民主党が「起き」たと思うと、法案の衆院通過日程を与党と協議して早々と合意し国民を裏切った。そればかりかこの党は、日本の戦争国家化を具体化する有事関連法案までも、どさくさにまぎれてまともな審議なしに与党との協議で衆院を通してしまった▼自民党若手国会議員との懇談で、小泉総理が「委員会や本会議の審議中に、マンガを読んだりメールをしたりするのはやめるように」と注意したと新聞に書かれていた。こういう人たちに、年金制度をいじったり憲法改悪を合唱させたりしてはならない。いよいよ参議院選挙が来月告示となる


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