Taimen ホール川釣旅  2006.10.30〜11.3

 誰でも、自分の限られた世界で生きている。一歩、自分のテリトリーから踏み出すには、色んな障害があるものだ。
釣りでも同様。はじめは、近所の小川で子供達と小鮒を釣っては喜んでいた。今でも昔ながらのこのスタイルはむしょうにやってみたくなる事があり、子供達を強引に車に乗せては出かけている。その後、違うスタイルの釣りにも足を踏み入れる。それは、人によっては、磯釣りだったり、船釣りだったり。僕の場合は疑似餌だった。もともと、小学生の頃に、その単価の安さからフライフィッシングをしてましたが、道具はすべて、今は亡き母親に買ってもらいました。今思えば、何故、もっと大切にそのフライタックルをしていなかったのか、悔やまれる。
 ルアーでの釣りは正直お金が掛かる。1つ1000円程の餌を投げては、木に、石に、引っ掛けては無くす。釣れるという噂のルアーには飛びついて買った。だから、小学生の頃の僅かなお小遣いでは満足に出来る釣りではなかった。そう、ルアーの釣りにのめりこんだのは、社会人、それも4年ほどまえ。経済的にも自分のお金を持てるようになってからだ。近くの管理釣り場で日曜日になると毎週通っていた。そこで、色んな人達に出会った。本当は釣りを始めたのは一人でも出来るからで、一人になりたかったのも理由のひとつではあった。今ではこの出会いこそ大きな出会いへの一歩だった。でも、今でも、一人ぶらっと渓流でロッドを振るのも大好きで、一人、釣り上げた魚を見てはニヤついている。

管理釣り場に通っていると、一歩外に出たくなる。そこにいる魚のように。 いろんな渓流に足を運んだ。また、その頃から、ソルトウォーターでのルアーにも魅せられ、ルアーで釣れるものは、すべて狙っていった。ある程度満足すると、また一歩外に出たくなる。


 そう、子供のからの夢だった  "幻の魚イトウ”   今では日本では北海道しかいない。北海道に釣りに行くなんて...普通の常識人だったら、考えもしないだろうか。一般の人に、北海道に釣りに行くんだ と話すと、美味しいのその魚?とか、持って帰るのどうするの?という答えがほとんどだ。最初に家族に北海道に釣りに行くというのが、なかなか言い出せなかったのも覚えている。自分ひとりだけ、普通の人でも観光ではなかなか、いけないだろう北海道に行くのだから。でも、家族はあっさり、僕の”わがまま”を許してくれた。
 僕の釣り旅に対する絶対要素としては、貧乏旅行である。家族への引け目からではない。その方が、釣りに集中出来るからだ。食事時間なんて、車での移動中で十分。一番の理由は、想いが強く残るからだ。

こうして、念願の北海道でのイトウ釣りは、成功し初挑戦で運よくイトウの姿を見ることが出来た。すると、春、秋は北海道でイトウを釣るという暗黙の家族の了解も得られてしまった。         

また一歩外に出たくなった。

イトウには5種類、亜種がいる。地域変化と言うべきか。日本のイトウを除く亜種はすべてユーラシア大陸に局限している。このことからも、魚類のなかでは栄えた魚種ではなく、原始的な種である。その内の一種がTaimen(タイメン)。
タイメンは、イトウの仲間の中でも、ロシアの地に数多く生きている。

釣旅のきっかけは、そうスカジット社 皆川氏のふとした言葉だった。      ”5日間でタイメン狙えるんだよ”
恒例となた秋のイトウ釣行に日程が折り合わず、意気消沈していた僕は飛びついた。
 極東ロシアへは、新潟空港からダルアビア航空にてハバロフスクへ2時間あまりで着いてしまう。しかし、運行本数が週2回、月曜日と金曜日にしかない。ハバロフスクへ着いても、ヘリコプターなどで移動する河川も多く、日程としては普通月曜日〜月曜日までの8日間、もしくは金曜日〜金曜日の8日間である。今回訪れたホール川は車でハバロフスクから3時間程度の距離にあり、月曜日〜金曜日の5日間でも十分釣りが楽しめるとの事だった。一人の会社勤めの会社員として、8日間休暇をとることは困難だった。夏季休暇などを組み合わせれば休めるのだが、その時期にタイメンは釣れない。しかしながら、自分でもよく思い切ったと。もちろん、家族もビックリしていた。でもいずれは行くのかなと思われていたのは、好都合であった。次回が行き易い。


1日目 10月30日(ハバロフスク泊)

10月下旬、30日。皆川氏の車で新潟に向った。新潟空港までは、たいした渋滞もなく、以前スノーボードに熱中していた頃通いなれた関越自動車道を飛ばした。地面が剥き出しとなったゲレンデに、昔の自分を思い出した。

新潟空港では、ここから母国ロシアに向うロシアの方が多く見られた。ここで、今回衛星放送BS−iの番組制作をしているカメラマンでもある鈴木氏と合流。今回の釣行の模様はBS−iで12月25日夜23時から放送される。番組名は 世界!秘境釣行。

多くの荷物を抱え、飛行機に乗り込み、3時間ほどで到着してしまった。あっけなくロシア入国。ロシアでは一時間の時差があり、日本時間より1時間早い。空港でガイドのサーシャ氏(優しい顔をしたおじさん)、通訳のイーラ氏(とってもキュートな女性)、いかにもロシア人らしいがっちりとしたトゥーリア氏が、出迎えてくれた。皆川氏にとっては何度か会っているので、久しぶりの再会を喜んでいた。車で空港から宿泊先のホテルへ向った。1泊目と最終日はホテルでの宿泊となっている。僕としては、直ぐにでも現地に向かいたいところである。 ホテルのレストランでみんなで夕食をともにした。ロシアの料理は日本人にはとても慣れやすい。しかし味は薄味である。よく言えば素材そのものの味を楽しんでといったような料理が多かった。レストランでは、ロシア名物ウォッカも頂いたが、僕には無理。キツすぎる。明日からの釣行予定などを話、夜は更けていった。

2日目 10月31日(ホール川 キャンプ)

翌日早朝6時から、車にてホール川上流へ向う。昨日
はさほど感じなかったが、朝は流石に寒い。緯度が高い為、8時頃にならないと明るくならない。車は10数年落ちの三菱デリカワゴン。こちらでは、日本車の遭遇率が極めて高いです。というより、日本車以外を見つけるのが大変。日本では廃車でも、こちらではまだまだ現役のようだ。3時間ほどで到着。道は舗装されていない部分が殆どで、途中パンクしている車もあった。

眼の前のホール川。支流?アムール川の支流の1つに過ぎないが、スケールが違いすぎる。景色はやっぱり北海道を思い出す。同じような緯度であるから木々も似ている。ボート2船に乗り込み、約70kmの行程を下り始めた。気温は0度ほどか、予想していたよりは寒くは無いが、寒さ対策には万全を期したおかげだ思う。 サーモ系インナー上下・ネオプレーンウェーダー・トレーナー・フリース・インナーダウン・レインスーツ上 これだけ着込めば、体は寒くはない。しかし、手や顔に冷たい風があたる。

1船にはエンジン付き(YAMAHA製)で、途中連結しては、ポイントで切り離して釣行していった。川の流れは恐ろしいほど速い。釣行者の一人はマラソンランナーの速度だと話していた。ゆえに、ルアーのアクションが難しい。深場ではルアーを沈めるのは殆ど出来ない。しかし、流石、程なくして皆川氏に、待望のタイメンのヒット。サイズは50cmほどのスレンダーなタイメン。非常に綺麗な固体であった。皆キャストにも力が入る。

ボートを切り離し、釣り下っていくと、岸際に木が生い茂り、いかにもというポイントに来た。スプーンや色々なプラグをローテーションをしていたが、やっぱり、僕にはミノーが楽しい。スカジットデザイン Bマッチ。しばらくキャストしていると、中村氏にヒット。僕と、中村氏、福嶋氏、そしてガイドのトゥーリア氏で乗船したいたボートでの初のタイメンのヒット。なんとか岸に付け、ランディング80cmオーバーのタイメンだった。

イトウの亜種とはいっても、その姿、色はかなり、日本のイトウとは異なる。体色に薄っすらとグリーンがのり、頭はスプーンヘッド(アジアアロワナの固体で使われる言葉)、体はほっそりしているが、頭は大きく精悍な面構え。鰭はどれも傷1つ無く深紅に染まり、とても大きく強い流れに対応しているのが分かる。急流でも十分生活出来ているようで、日本のイトウとは体つきも異なってくるのもうなずける。

深場に差し掛かり、スプーンでの釣りでは流れが邪魔をして、いつもスプーンでの釣りには非常に苦労した。トレースしている深度が流れで何処まで沈んでいるのか分かり辛かった。程なくして同行者の福嶋氏にも待望のタイメン。112cmという立派なサイズだった。太さもどれくらいあるだろう丸々と太ったメスのタイメンだった。さて、後は僕が釣れば全員ヒット。いつもだったら焦っていただろうが、今回はそんな気分では無かった。流れに対してどうやって対応していくかをある程度掴んでいた。昼頃からの釣行であったため、この日は程なくして、野営地(アウトドアキャンプ等という生易しい物では無い)に上陸した。

上陸すると、テントの設営や焚き木拾いです。テントは野営のプロが居ますからね、楽勝です。この方あえて名前は、出しませんが、アウトドアが大嫌いなんです(笑) そう、腐るほどの体験の持ち主。世間一般のアウトドアって、ガスバーナーや整備されたキャンプ場、中には温泉付き、電気コンセント付きなんてものも...。子供達は携帯ゲーム、テレビでサッカー観戦。これってアウトドア? お庭キャンプですね。それが大嫌いと。
初めは意味が分かりませんでしたが、ごろごろした石の転がる川原に、風を考え、火の場所を考え、荷物の置き方を考え、すべて考えつくされています。自称アウトドア派だった僕は、甘すぎました(笑)。 すべて、お遊びでした、僕の日本でやってたことは。

薪は、そこら中に転がっています。何百年もかけて積み重ねられた流木。それも電柱ほどの大きさ。それを運んでは焚き火に。物凄い暖かさです。これほど、火が大切なものだと考えたことはありません。ガイドのサーシャ氏の作る男料理は最高でした。有名なボルシチなんて、この世のものとは思えない旨さ。どんな高級料理も負けます。川の音しかない、この地での、手作りの料理。これほど贅沢はないなと。火を囲み、馬鹿話をしながら、夜が更けていきました。

3日目 11月1日(ホール川 キャンプ)
早朝、気温は−15度を記録。流石に、テント+寝袋(2枚重ね)+コニャックで暖めた体には、よく寝れました。行く前は−15度で生きてられるのか?という不安も少々あったのですが。しかし、ロシアの方々は、なんとも無いようです。淡々と働いています。体力も桁違い。20kgの荷物なんて、僕らの米5kg程度の感じで運んでしまう。しかもとっても、気さく。言葉は通訳のイーラ氏を通じてではないと、伝わらないのですが、身振り手振り、片言の英語などで、人って打ち解けるんですね。
 川には、今日の冷え込みが原因でしょうか、大量の氷が流れています。これでは、釣り辛い状況のようです。川を下っていくと、ようやく氷も少なくなっており、今日ボートは僕の横に鈴木氏。この寒さでバッテリーもすぐに消費されてしまうそうだ。この方、非常に気さくな方です。以前より、何度かお会いしていました。しかし、面白い方です。話題がホントに面白い。やや、カメラが隣で緊張しましたが、だって200万以上もするんですよ、このカメラ。鈴木氏曰く、安い方だと... しばらく、キャストすると、なにやら、僕のルアーに黒い影が追っているのが分かりました。

 Taimenのチェイスです! 鈴木氏もカメラを回します。ボートの直ぐ脇まで追っかけてきました。もう、ラインを巻く距離はありません。なので、渓流や、管理釣り場での、8の字メソッドが自然に。Taimen相手に通用するのか?! なんと、60cmほどのTaimen、ヤマメのようなチェイス!なので、食わせのタイミングを作りましたが、フッキングが甘く、Taimenは水底に沈んで行きました。残念。ルアーは、Bマッチ ホワイトカラー。日本のイトウとは全く性格も違うようです。この一部始終は、鈴木氏のカメラに収まっており、放送だ楽しみでなりません。本音はキャッチしたかったですが...
一緒にいたトゥーリア氏も、このメソッドは初めて見たようでした。もしかして、Taimen相手に8の字かました最初の日本人か!?

 その後川を下りしばらく様子をみましたが、この日は、皆川氏の60cmほどのタイメンのみで釣行は終了。明日に備え、野営の準備です。キャンプ2日目になると、流石に手際良いです。テントなどあっという間です。また、焚き火もなれました。電柱ほどの流木をせっせと、運びながら、4mほどの火柱。料理も、ボリュームが多く、食べ切れません。この日も、夜遅くまで、お酒片手に釣り談話、馬鹿話に... 今回、コニャックを飲んだんですが、あれ、非常に旨い!しかも、あったまる。これ病みつきになりそうです。

4日目 11月2日(ホール川釣行最終日)

さて、気付けば最終日の朝。川に氷はなく、ガイドのサーシャ氏も今日は釣れるぞ!と。準備を済ませ、川の神様に挨拶をして、川を下ります。今日までに50kmほど下ってきており、あと20数キロで最終目的地に着きます。どの釣りでもそうなんですが、最後まで釣れないと、言葉では言い表せないプレッシャーが襲ってきます。しかし、今回は、まったくプレッシャーはありませんでした。 実は、昨日、皆川氏には言えなかったのですが、ラインブレークしてました。ワイヤーリーダーが寒さで弱っていたのでしょう。釣り方や、Taimenのヒットパターンは掴んでいました。
 しかし、実際には、皆川氏が何度も話していた、釣りは旅のおまけのようなもの という内容の話の本当の理由を知ってしまったからです。現地の人々との触れ合い、自然のスケールの大きさ、夜の語らい、日本では有り得ないキャンプ。どれをとっても、ちっちゃな日本だけの価値観を崩壊するしか無い自分が居ました。決して大げさではないんですよ。 猿払での釣行も自分を大きく変えました。楽しむ姿勢を忘れては、趣味ではありません、釣りは。  しかし、所詮釣師、絶対釣って帰るという意気込みは、持っています。

流石に今日は、反応がいいのが直ぐに分かりました。何回かのチェイスが確認出来ました。  キダイ、キダイ! ロシアの言葉で、投げろ、投げろ!の意味です。サーシャ氏がこの言葉を発する時は、Taimenが必ずって良いほど確認できます。まさに川を、Taimenを知り尽くしている方です。
必死で投げ続けると、待望のヒット! しかし、またしてもフッキングは甘かったようです。 仲間内には、詰めが甘い!と自分で語りかけ、笑われてしまいました(笑)

 程なくして、中村氏に大型のヒット!慎重にボートを川原に上陸させ、ランディング。あがってきたのは103cmのTaimen。流石にこの大きさでは太く、日本のイトウにも体型が似てきています。

 
ボートを僕と、中村氏が入れ替わり、皆川氏の横でキャスト! ルアーはマッチベイト ホワイト。 軽くトゥイッチを加え、引いていると...黒い影が見えました。その大きな影が見えたと思った次の瞬間、大きな白い口が見えました。ルアーの下に回りこんだ黒い影は、大きく開けた白い口で、ルアーに襲い掛かってきました。ほんの5mほどの距離です。

ロッドがググッっと絞り込まれました! 今度はフッキングもしっかり入っています。しかし、重い、ドラグの音が響きます。川原に降り立ち、皆川氏のアドバイスを半分聞きながら(正直、あまり思い出せない)...  キャッチしました。 サイズは85cm。サイズとして、アベレージです。ですが、僕にとっては最高の1匹です。尻鰭、尾鰭が真っ赤に染まり、体は薄っすらとグリーンが載って、メタリックな魚体。









最高!




この言葉と仲間への感謝の気持ちしか出てきませんでした。

そして、最終ピックアップポイントに。最後に川とお別れと、感謝の意味をこめて、ウォッカを注ぎます。あんまり、多いと神様も酔っ払うとサーシャ氏。
本当に感謝です。このなんの人工物のない河川、自然。

ホール川下流ピックアップ付近に今回お世話になった、ロシア釣行を企画されているミールさんの建設中のロッジを拝見しました。ロッジは周りの風景に溶け込むような作り。そして、ロシアではサウナが主流のようです。大きなサウナハウス?を見ました。お風呂が恋しくなりました。

 

その夜、ホテルに着いて、みんなでハバロフスクの韓国料理店に行きました。大変美味しく、楽しい時間でした。釣行話に会話も弾み、次回の釣行の話も...

非常に残念だったのは、トゥーリア氏が遠方の為、仕事で帰られてしまったことです。

もう、会えないのでしょうか


さて、ホテルに戻って直ぐに休みました。翌朝、ホテルの部屋からは、アムール川が見えます。向こう岸に見えるのは中州の一つなんです。とてつもなく大きい川です。最終日は飛行機までの時間、市場やお土産を物色。とくに市場では40円のお菓子を食べました。ソフトクリームのコーンに中身は甘いチョコをコンデンスミルクを混ぜたような味。めちゃくちゃ美味しかったです。実はおごって貰ったんですけどね。
時間は過ぎて、空港へ。空港税やオーバーチャージ代など、イーラ氏が全部教えてくれます。なので、すんなり出国。

その時です。  ケンジサーン! 

なんと、遠方のトゥーリア氏が、見送りに駆けつけてくれました! 出国間際で握手は出来ませんでしたが、思いっきり手を振って、

トゥーリア! スパシーバ! 

涙が出そうでした。旅って凄い。もちろん、彼らもビジネスとしてと接している部分もあるでしょう。が、これは。感激、感動、決して大げさでは無く。

本当にまた、この地を訪れたくて。いや、彼らに会いに来たい!


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