ベンチャーを志望する君へ
折々の雑文 #14
時代はまさにIT革命である。Eコマースである。よく分からないが、今ベンチャーが大流行らしい。なるほど、漢(おとこ)たるもの一生に一度だけでも起業をしたいものだ。
ただ、すぐにでも沈むような会社を興しても意味がない。どこかベンチャー企業みたいに一度メッキがはがれると、後はタイタニックの如く沈むのみ。それからは債権者に骨の髄までしゃぶりとられ、散々利用されたあげくマグロ漁船で海の男になるか東京湾に浮かぶ可能性すら否定できぬ。倒産前に、現金を持って海外に高飛びした社長さんもいたりして、どちらかと言えば、僕はそちらを目指すように心がけたいものです。
僕の友人はYは一種の起業家である。彼はTSUTAYA等でミュージシャンや映画のポスターをタダで仕入れ、それをヤフーオークションで売りさばいて利潤を得るという商売を開発した。もちろん、これで得られる利潤というのは僅かではあるのだが、大学生である彼には小遣い稼ぎといったものである。しかも、彼はこの地道な経済活動を続けた結果、ヤフーオークションでの信用度は150ポイントを超えている。彼に仕事は丁寧だ。商品であるポスターにはまず、スーパーから失敬してきた雨の時に使われるビニールの傘袋で包み込み、アニメイトより買い込んだポスター包みでカバーする。このように梱包は完璧だ。もちろん、発送も早い。
ただ、前記の通りYの主力商品はポスターであるため、倉木麻衣や鈴木あみのように高く落札される商品もあることはあるのだが、ほとんど高額で落札されることはない。
ところが、彼は高額で落札されそうな商品を見つけた。粗大ゴミ捨て場に壊れていないソニーのLDプレイヤーを発見したのだ。少々傷物だが、割合高級品らしい。
みなさんもご存じと思うが、ヤフーオークションというものは、詐欺師、厨房にネカマといったネット上の魑魅魍魎が跋扈する危険地帯である。宇多田ヒカルのニセライブチケットやタイムマシンといったものが、オークションにかけられた過去がある。そのような危険地帯であるから、本物のレアモノを出品されたとしても信用がなければだれも入札してくれない。
Yはこれまでポスター販売で地道にあげてきた信用度が功を奏し、大量の入札がありと入札価格もうなぎ登り。結局、30000円ほどで落札された。ポスター売りのYも偉くなったもんだ、と僕はちょっと悔しかった。しかし、Yはこれで羽振りが良くなったのかというとそうではなかった。彼は新たな投機を始めた。将来値が上がりそうなものを、ヤフーオークションで青田買いを始めた。が、結果は芳しくないようだ。最近は、利益より投資価格の方が高くつくらしい。
先日、Y宅に遊びに行ったとき、夏休みの過ごし方について話した。Yの部屋は仕入れて来たポスターを律儀に山積みしていた。
「もう夏休みだからバイトしないとあかんなあ」
僕がこう言うと、彼はこのように切り返した。
「そうそう、やっぱりバイトしたいなあ。死体洗いみたいないいバイトないかあ」ベンチャー志望の皆様、なにか参考にはならないでしょうか? そうですか、なりませんか。
(2000/7/8)
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