折々の雑文 第19回

悪しき隣人たち

折々の雑文 #19

 法律家には、くれぐれも気を付けた方がいいです。突然何を言うのかと思われるでしょう。でもとりあえず、私の話聞いて下さい。私を精神科に連れていくのも、その後にして下さい。お願いっ。
 法律家とは狭義では、裁判官、検察官、弁護士という法の三大悪人を指します。広義では司法書士、税理士、法学部のセンセと学生、インテリヤクザ、総会屋などから極端な場合、自己申告で勝手に名乗ってもまず問題がありません。が、その場合は誰も相手にはしてくれないので、注意して下さい。(※法律家について、いい加減な分類をしましたが、資格が必要な法律家を特に「実務法律家」とわけて呼んだだほうがいいでしょう)
「悪しき法律家は、悪しき隣人」という言葉があります。悪い奴が法律を学ぶと、ロクなことではない。それどころか社会にとって有害だ、という意味です。確かに、バブル期に兇悪な顔をした人たちが六法全書片手にしでかした一連の行為には、この国のいろんな人たちが大きな迷惑を被りました。彼らのおかげで、首をくくった人がどれだけいたことか。

 そんな一方で、「善き法律家は最悪の隣人」という言葉があります。つまり、どっちみち同じです。
 何故か、簡単です。法律家は、戦わなければいけないのです。法律家は修羅の道であって、そこで降りかかったあらゆる火の粉は振り払わなければならないのです。
「あらゆる自分の権利を守ること、それは闘争である」※
 うろ覚えですが、ドイツのある哲学者はこう仰せました。例えば、隣人が勝手に自分の土地に入って塀を立てたとします。その時の権利の侵害は自分のみです。そうであっても、断固戦うべきなのです。しかし、法律家たる生き物に泣き寝入りは即ち、ハラキリと同義です。「自分さえ我慢していたらよい」と言う考えは許されません。彼らは戦うのです。土地の権利を壊そうとする輩を、ギタギタにやっつける必要があります。降りかかる火の粉は振り払うのが筋ってもんです。
 もし、今回泣き寝入りしたたら、今後調子にのった隣人が、もっと大きな権利侵害をするかもしれません。

 私の話を疑問の思う方でも、法学部の教授からの話を聞けば分かります。日本の法律はドイツ法に多大な影響を受けたために、法学の学者たるものはだいたいドイツへの留学経験があります。
 彼らはドイツで何をするのか? 確かドイツでは売春が合法でしたが――それはいいとして、何を学んだかは講義を聴いても分かりにくいが、権利闘争していることだけは分かります。
 私のゼミ教官は朝日新聞に論説が載るほどのセンセですけど、彼のクレームによってドイツの某航空会社を全席禁煙化に踏み切らせた前科があります。大学教授という人たちは、そういう事を自慢したいようです。他にも、某関西マンモス大学の法学部学部長は、ドイツのホテルで盗難に遭いながらそれをホテル側の過失として裁判まで起こし、賠償金をせしめたりと、とんでもない人物がいます。

 その点では、教授や弁護士のような図々しさのない法学部の学生はまだ救われると思われるかもしれません。
 甘いです。
 一年ほど前、関東の某名門法学部の学生たちが、いたいけな女子中学生が輪姦してパクられました。私の同業がゴーカン罪でそれも中学生を逮捕されました。由々しき事態です。あたしも憤りました。
 でも、その時の供述が笑いました。「同意の上だった」と。和姦? よくもいけしゃあしゃと言えたものです。

刑法第177条【強姦】 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、二年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。

 スイマセン、いきなり条文を引用しました。この条文を読んで、不愉快になる方がおられるかもしれません。そのような方は、わたしに内容証明郵便を送ってこられたから、お話したいと思います。但し、私も自称「戦う」法律家ですから、長期戦を覚悟しておいた方がいいでしょう。
 さて、この条文を読んで不思議に思われませんか? なんで「十三歳以上」と定義しておきながら、あとで「十三歳未満の女子も、同様とする」と書いているのだ、と気付かれたあなたは素晴らしい。いまから、司法試験の勉強に励まれることをお勧めします。そして、立派な悪しき隣人になってもらいたいです。
 つまり、彼らの言っていることが、証明できたとしても、「十三歳未満の女子」は要件の一つとなっている「暴行又は脅迫」がいらないのです。あらあら、強姦法学生ピンチです。これでは、有罪です。実刑です。でも、彼らもこう反証するでしょう。
「中学一年でも13歳じゃないですか」
 そうです。あえて書かなかったけど、そういう事態になったらどうするのでしょうか。
 ところが、

刑法第180条【親告罪】 (1)第百七十六条【強制わいせつ】から前条(註:未遂罪)までの罪は、告訴がなければ、公訴を提起することができない。
(2)前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第百七十六条から前条までの罪については、適用しない。

 という条文があります。「輪姦されて悦ぶ女はおらんやろ」という行政の配慮なのでしょう。1対1なら、悦ぶひとがいるとも考えているのかもしれません。私には全く理解不能ですけど。
 警察が「●大生、中学生にご乱行」という事実が知れば、被害者が告訴がなくても起訴ができるのです。大学生をしょっ引いて来て、恐いおぢさんたちの取調を受けたら、軟弱な大学生などすぐに「ごめんなさい」と泣いて自白します。中学生に手を出すくらいだから、余罪も沢山あって、別件逮捕にもことかかないでしょう。
 こう考えると、情けないほど法律知ってませんな、あの●大生どもは。悪しき隣人失格です。

 わかりましたか? 我々の周りには、このように危険な隣人が潜んでいるのです。くれぐれも用心して下さい。しかし、こんなこと書いている私も彼らと同じく、世間では間違えなくどちらも悪しき隣人なのでしょう。
 え? これからお前を府立N病院に連れていく? やめて、拉致らないで! おねがいたすke

(2000/11/12)

※正確には、「法、その目的は平和であるが、その手段は闘争である」――イエーリング『権利のための闘争』より

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