チャンポニズム宣言
折々の雑文 #21
11月も中旬に入り、そろそろ忘年会など宴会の季節である。そして、チャンポニストたちが活動を活発化する危険な季節でもある。
『チャンポニスト』――これは、私が勝手に作った造語だ。意味はヒネリもなく「チャンポンを行う者」の名称であり、私と悪友Mの間では、テロリストや重信房子の次の次ぐらいに恐れられる存在だ。
典型的なチャンポニストである、Y氏について述べておきたい(#14で登場した、ベンチャーな一面もある)。彼は酔うと、人の酒を混ぜたがるのだ。去年、鍋パーティを開催したときには、酎ハイ、安ワイン、ウオツカというスペシャルチャンポンを飲まされた。――人の家のトイレでうずくまることになったのは、記しておきたい。それはもう大変だった。
元々、チャンポンはよい飲み方といえない。悪酔いするらしい。違う方法で精製されたアルコール同士が混ざり合い、胃の中でおかしな化学反応を起こすようだ。それに、日本酒とビールを割ったものなんかが旨いと思う酒飲みは、味覚がイカれているか、あるいはアルコール中毒であろう。病院に行った方がいい。
また、『チャンポニズム』と言われる思想がある。日夜、他人にチャンポンを飲ます事のみを考える、危険思想だ。現在、公安やCIAも大きな関心を寄せているらしい。飲酒を禁じられているイスラム圏では、西洋文明への対抗手段として、古くから分量が研究されていたという。勿論、後ろの方は全部嘘八百だが。
第1回国際反チャンポニズム協会(IACS International Anti-Chanponnism Society)総会の『大阪宣言』で『チャンポニスト』の正式な定義が決定された。チャンポニズムの追放の第一歩、と専門家の評価もおおむね好意的だ。以下にチャンポニスト三則を掲載しておこう。
1.飲まない参加者のグラスに中身が入っているのに、別の種類の酒を注ぐ。
2.それをしきりに勧めるが、自分は決して呑まない。
3.自分が呑まされる場合は、「お前も飲め」とさらに強烈なチャンポンをつくる(これを「チャンポンの連鎖」と呼ぶ)。但しよく誤解されるのだが、IACSはチャンポニズムの撲滅のみを目指しているわけではない。一部でカクテルという有用な飲み方も開発されている。しかし、それはふぐを自分で捌くことのできる人は、免許がいるように、プロのバーテンダーにのみ許された技術なのだ。
ただ、くれぐれも油断は禁物である。チャンポニストたちは、あなたのすぐ近くに潜んでいる。例えば、私が先日体験したサークルのコンパでの出来事である。
「先輩、飲んで下さいよ」
理絵(仮名)ちゃん(そう、#20で書いた理絵ちゃんだ)はそう言って、私にグラスを渡した。渡された液体は、見慣れないオレンジ色をしていた。この店の飲み放題では、スクリュードライバはない。では確か、メニューのソフトドリンクにオレンジジュースがあったような気がする。既に限界点近くまで呑まされている、私にはありがたい。
「これなに?」
「飲んでみたら分かりますよ」
理絵ちゃんは笑顔で答える。一口飲むと、正体がわかった。カルピスの酎ハイに、ビールをチャンポンしたシロモノだ。はっきり言って、飲めたモノじゃない。カルピスの酸味と甘みに、ビールのニオイが最悪の組み合わせとなっていた。
「マズい」と言って私が眉をひそめると、彼女は笑った。テーブルを見ると、ほか数個のグラスにも、禍々しいオレンジ色の液体で満ちいてた。酔った理絵ちゃんがチャンポンしたものであろう。彼女は小悪魔のように言う。
「せんぱぁい、わたしの注いだものは飲むでしょ?」チャンポニスト恐るべし。
(2000/11/29)
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